『お腹の赤ちゃんのお父さんは誰かしら』
数日前、病院に行った時に女性の医師にそう言われた。エコー写真と共に。
武臣、彼しかいない。
10何週目だなんて言われてもわかんない、アスミは写真を車の中で武臣に見せたら蹴られて出された。
「彼氏……か」
「はい」
「暴力振られてたのか」
「いいえ」
「こんなことするなんて立派な暴力だ。気付かぬうちに受けてたはずだ。酷すぎる」
ダイの口調が強くなった。
橋を通る。川の上を走る。車通りも深夜だが増えてきた。
「他に隠してることあるやろ」
「……」
「こんな真夜中に初めて会った男には話せないか」
「……」
夜の川、暗く、もしこの上で事故して落ちたら……川の流れが強かったら……。
「もうこれっきり会うことはない、そう思えば話せるんじゃ無いか?」
「……」
そうなんだろうか、アスミはどうしても話せない。
「もう一度言う。話をしてくれないか」
「……」
「もし病院に行って元の生活に戻ったら君はまた同じことが繰り返される。今度は怪我だけでは済まない。辛いことが待っている」
ふと武臣を思い出した。さっきまでのこと。
『もう一度言う、お前とは結婚するつもりはない、子供をおろせ』
アスミはブワッと涙が込み上げてきた。だんだん呼吸も荒くなり声を上げて泣き出した。
「ごめん、アスミ」
自分は呼び捨てされた、と思いながらも涙は止められなかった。
橋を渡り終わり、車は近くのコンビニに。
「大丈夫。もう僕らはもう会わない、もう二度と会わないから……全てを話してくれ」
「うううっ」
「約束する、誰にも言わない。病院に着いても僕の口からは言わない、誓うよ」
アスミは体を震わせて声にならない声と共に泣き喚くとダイがアスミを抱きしめた。
「大丈夫だから……」
「うあああああっ」
温かいダイの身体。武臣のタバコ臭い服の匂いとは違った石鹸のいい匂い、アスミは顔をうずめた。
子供がお腹の中にできれば武臣も気持ちを変えてくれる、そんなことを思ってたがそんな容易いことで気持ちが変わるものではなかった。
「さぁ、行こう……君の体が心配だ」
と身体を離そうとするダイ。
「もっとこうしていたい」
アスミがそういうと
「わかった」
とダイも抱きしめてくれた。
いつから自分と武臣の間にほつれ目ができたのだろう。
会った時にこんなふうになるとは思わなかった、とダイの温もりの中で思い返すアスミ。
「もう行こう」
ダイは体を離した。アスミは名残惜しい。
「ねぇ、どこか空気のいいところに……連れてって」
「病院行こう」
「ううん、お願い……あなたと二人でいたい」
ダイは困った顔して苦笑いした。
「少しだけだよ、もう困らせないでくれよ」
アスミも笑った。自分自身、何してるのかわからないがまだダイとはいたい、それが本能的にあるようだ。
数日前、病院に行った時に女性の医師にそう言われた。エコー写真と共に。
武臣、彼しかいない。
10何週目だなんて言われてもわかんない、アスミは写真を車の中で武臣に見せたら蹴られて出された。
「彼氏……か」
「はい」
「暴力振られてたのか」
「いいえ」
「こんなことするなんて立派な暴力だ。気付かぬうちに受けてたはずだ。酷すぎる」
ダイの口調が強くなった。
橋を通る。川の上を走る。車通りも深夜だが増えてきた。
「他に隠してることあるやろ」
「……」
「こんな真夜中に初めて会った男には話せないか」
「……」
夜の川、暗く、もしこの上で事故して落ちたら……川の流れが強かったら……。
「もうこれっきり会うことはない、そう思えば話せるんじゃ無いか?」
「……」
そうなんだろうか、アスミはどうしても話せない。
「もう一度言う。話をしてくれないか」
「……」
「もし病院に行って元の生活に戻ったら君はまた同じことが繰り返される。今度は怪我だけでは済まない。辛いことが待っている」
ふと武臣を思い出した。さっきまでのこと。
『もう一度言う、お前とは結婚するつもりはない、子供をおろせ』
アスミはブワッと涙が込み上げてきた。だんだん呼吸も荒くなり声を上げて泣き出した。
「ごめん、アスミ」
自分は呼び捨てされた、と思いながらも涙は止められなかった。
橋を渡り終わり、車は近くのコンビニに。
「大丈夫。もう僕らはもう会わない、もう二度と会わないから……全てを話してくれ」
「うううっ」
「約束する、誰にも言わない。病院に着いても僕の口からは言わない、誓うよ」
アスミは体を震わせて声にならない声と共に泣き喚くとダイがアスミを抱きしめた。
「大丈夫だから……」
「うあああああっ」
温かいダイの身体。武臣のタバコ臭い服の匂いとは違った石鹸のいい匂い、アスミは顔をうずめた。
子供がお腹の中にできれば武臣も気持ちを変えてくれる、そんなことを思ってたがそんな容易いことで気持ちが変わるものではなかった。
「さぁ、行こう……君の体が心配だ」
と身体を離そうとするダイ。
「もっとこうしていたい」
アスミがそういうと
「わかった」
とダイも抱きしめてくれた。
いつから自分と武臣の間にほつれ目ができたのだろう。
会った時にこんなふうになるとは思わなかった、とダイの温もりの中で思い返すアスミ。
「もう行こう」
ダイは体を離した。アスミは名残惜しい。
「ねぇ、どこか空気のいいところに……連れてって」
「病院行こう」
「ううん、お願い……あなたと二人でいたい」
ダイは困った顔して苦笑いした。
「少しだけだよ、もう困らせないでくれよ」
アスミも笑った。自分自身、何してるのかわからないがまだダイとはいたい、それが本能的にあるようだ。