掃除で残っていた人たちも帰宅し始め教室にいるのは、課題をやっている僕だけになった。


周りが静かになったことで順調に進み始めたが苦手な数学に差し掛かり、ペースが一気に落ち始めた。


「あ〜終わんねー」


集中力が限りなくゼロになった僕は雄叫びを上げる。


もうやめてしまおうかと思い手を止めるが朝の武田先生が頭によぎる。


シャーペンを持ち直し再び解こうとするが、やはり進まない。


そのため一度休憩に自動販売機へ行くことにした。


教室を出て階段に向かうとサッカー部の後輩たちが走っており声を掛けられた。


この学校の階段は上から下まで一直線に連なっているためトレーニングには最適な場所だ。


実際僕も怪我でサッカーができなくなるまでは散々走らされた。


正直今1番会いたくない人たちであり、軽く返事をしながら僕は足早に階段を降りた。


階段を降り終えると図書室があり、そこを左奥に進むと目的の自動販売機がある。


後輩から逃げるために急いだため怪我をした脚が痛み、着くと同時に僕は壁に寄りかかった。


こんなことで動けなくなる自分の情けなさに笑えてくる。


痛みが治るまでしばらく待ち、僕は自動販売機に向き直る。


放課後ということもあって、2台ある自販機も売り切れが目立ちお目当てのエナジードリンクは売っていなかった。


仕方が無いので渋々缶コーヒーを買い、ゆっくり歩きながら飲み始めた。


本来ここですぐに教室に戻るべきなのであろうが山積みの課題を思い出すとそんな気も失せてくる。


そのため、コーヒーを飲みながらしばらく校内を巡ることにした。


各教室では美術部や吹奏楽部などの文化部が活動している。


運動部でずっと外にいた僕には真新しく輝いて見える。


そしてそれと同時に今こんなことをしている自分が酷く惨めになってくる。


「でも所詮部活だろ」


僕は吐き捨てるように言った。


自分の中の本音とホンネが食い違う。