──そして、一時間後。
ようやくやってきた騎士団の本隊と冒険者ギルドの面々を前に、僕は待ちくたびれたと言わんばかりに告げていた。
いや本当に長いよー。もうちょっとパパっときて欲しいなー。もうそろそろ夕暮れだよ、日が沈むよー?
言いたいことはいくらでもあった僕だけど、とにかくようやっと騎士団も冒険者達も到着だ。
ここは大人しくして、彼らの出方を見ましょうかねー。
「遅い……」
「く、杭打ち……!? なぜここに!?」
「まさか妨害に来た!? マーテルと繋がっていたのか!?」
地面に突き刺した杭打ちくんの上に腰掛けて足を組み、悠然と待ち構えていた僕。冒険者"杭打ち"の姿に、騎士団の面々がどよめくのを聞く。
反面冒険者達は静かなままだ。ベテランはどこか興奮に目を輝かせてるし、ギルドでよく見る新米さん達もいるけど、彼らはどこか期待の眼差しで僕を見ている。
なんならレオンくんたちのパーティーとかヨルくん、ヒカリちゃんもいるね。
なんで? って感じだけど察するに、騎士団と組むにあたってその時ギルド施設にいた者を総動員したみたいだ、ギルド長は。
そしておそらくその時に事情は伝えてるんだろう……面白がってるんだもんな全体的に。大方、杭打ちvsシミラ卿、サクラさんの戦いが見れるってんで嬉々として参加してる感じかなー。
元調査戦隊メンバー同士に、片割れのほうにはSランク冒険者までついての大喧嘩。茶番にしても齧り付きで見たいものなんだろうねー。
当のシミラ卿とサクラさんは静かに僕を見たまま、闘気と戦意と殺意を練り上げている。いい気迫だ、それはそうとしてシアンさんまで連れてきたんだね。サクラさんが何やら語りかけている。
「……生徒会長、いやさシアン団長。これからの戦いをよーく目ぇかっぽじって見るでござるよ。紛れもなく冒険者界隈における、最強の座をかけたタイトルマッチの一つがこれから行われるでござる」
「はい。旅団を率いるにあたって私が今後、見据えていかねばならない頂の世界。どこまで理解できるか分かりませんが、必ず無為にはいたしません」
ずいぶん大仰なこと言うね、サクラさん。
最強をかけたタイトルマッチって、興行用スポーツじゃないんだからさあ。何をもって最強の冒険者とするのかって話は割とデリケートなんだし、やめといたほうが無難だと僕は思うよー?
シアンさんもシアンさんで、ひたすら真面目に頷いてるし。
別に今からやる戦いなんて今後、僕やサクラさんが入団するんだからいつでも見られるんだしそんなマジで齧り付かなくてもいいのに。
でもこれはこれで好都合だ、彼女に僕のかっこいいところをお見せできちゃうもんねー!
「いい心構えでござる。杭打ち殿を御するのであれば常に頂を意識せねばならぬでござるからね……でござろ、シミラ卿?」
「うむ。やつこそは大迷宮深層調査戦隊にあってもなお、最強クラスとして扱われていた者だ。そんな杭打ちを今後従えるのであれば、今現在の強さよりもこれから先の展望を、己の器を常に磨いていかねばなるまい。少なくともレイアリーダーは、それを意識しておられた」
「………………………………」
今度はシミラ卿とサクラさんがやり取りしているわけだけど、頼むからシアンさんに無茶振りするのはやめてあげてほしいよー。
いくら彼女が文武両道美貌もカリスマもある天才だからって、いきなりレイアの後追いは難しいと思うよー。
っていうかレイア、そんなこと意識してたんだ? 別に僕だって器で彼女についていったわけじゃないんだけど、そんな風に思ってたんだとしたらちょっとショックー。
今度なにかの拍子に出くわすことがあったら聞いてみたいなー。まあたぶん、調査戦隊解散の引き金を引いた僕は殺したいほど憎まれてるだろうから無理だと思うけど。
さておき、そろそろ会話もやめようか。本当に身体が冷える。
せっかく班長さんに手伝ってもらって、どうにか人間相手の加減を調節できたんだからねー。感謝しつつも僕は、杭打ちくんから降りて着地した。
そしてそのまま杭打ちくんに隠れて彼らには見えない死角から、すっかりズタボロになって気を失ってる班長さんを抱えてみせた。
「…………」
「!? クロスド班長!」
「先行していた班長が、先に杭打ちとも交戦してたのか!?」
「何という酷い姿に……! おのれ杭打ちぃー!!」
「……………………」
特に騎士団員の反応は劇的で、ボンボンの集まりみたい連中が一気に僕に殺意のこもった目で見てきた。やめなよ通りもしない殺意なんて、なんの役にも立ちはしないのに。
ていうかクロスドっていうんだね? この班長さん。僕のウォーミングアップに最後まで付き合ってくれたから感謝してるくらいなんだけど、ま、もう用はないし返すよ。
騒然とする騎士団達に、僕は班長さんをポーイと投げ渡した。完全にぐったりして力が抜けているし、死んでるんじゃないかと一見不安になると思うけど全然生きてるから大丈夫だよー。
慌てて騎士団員達が班長さんの介抱にかかるのを意にも介せず、シミラ卿とサクラさんが徐々に距離詰めてきた。周囲に被害が及んでも人を巻き込まない程度まで、お互い牽制しながら移動する。
「さて。杭打ち殿……どれほどのものでござるかね」
「油断していると一撃で破られるぞ、気をつけてくれよジンダイ殿」
「…………」
さてここからはジョーク抜きだ。草原の中、広々とした空間にて。僕とシミラ卿、サクラさんは適度な距離をおいて向かい合う。
一気に場の空気が引き締まり、凍りついたものへと変化する。当たり前だ。今からSランク相当の戦士が3人、暴れるんだからね。
精々、巻き込まれないように気をつけてねー。
ようやくやってきた騎士団の本隊と冒険者ギルドの面々を前に、僕は待ちくたびれたと言わんばかりに告げていた。
いや本当に長いよー。もうちょっとパパっときて欲しいなー。もうそろそろ夕暮れだよ、日が沈むよー?
言いたいことはいくらでもあった僕だけど、とにかくようやっと騎士団も冒険者達も到着だ。
ここは大人しくして、彼らの出方を見ましょうかねー。
「遅い……」
「く、杭打ち……!? なぜここに!?」
「まさか妨害に来た!? マーテルと繋がっていたのか!?」
地面に突き刺した杭打ちくんの上に腰掛けて足を組み、悠然と待ち構えていた僕。冒険者"杭打ち"の姿に、騎士団の面々がどよめくのを聞く。
反面冒険者達は静かなままだ。ベテランはどこか興奮に目を輝かせてるし、ギルドでよく見る新米さん達もいるけど、彼らはどこか期待の眼差しで僕を見ている。
なんならレオンくんたちのパーティーとかヨルくん、ヒカリちゃんもいるね。
なんで? って感じだけど察するに、騎士団と組むにあたってその時ギルド施設にいた者を総動員したみたいだ、ギルド長は。
そしておそらくその時に事情は伝えてるんだろう……面白がってるんだもんな全体的に。大方、杭打ちvsシミラ卿、サクラさんの戦いが見れるってんで嬉々として参加してる感じかなー。
元調査戦隊メンバー同士に、片割れのほうにはSランク冒険者までついての大喧嘩。茶番にしても齧り付きで見たいものなんだろうねー。
当のシミラ卿とサクラさんは静かに僕を見たまま、闘気と戦意と殺意を練り上げている。いい気迫だ、それはそうとしてシアンさんまで連れてきたんだね。サクラさんが何やら語りかけている。
「……生徒会長、いやさシアン団長。これからの戦いをよーく目ぇかっぽじって見るでござるよ。紛れもなく冒険者界隈における、最強の座をかけたタイトルマッチの一つがこれから行われるでござる」
「はい。旅団を率いるにあたって私が今後、見据えていかねばならない頂の世界。どこまで理解できるか分かりませんが、必ず無為にはいたしません」
ずいぶん大仰なこと言うね、サクラさん。
最強をかけたタイトルマッチって、興行用スポーツじゃないんだからさあ。何をもって最強の冒険者とするのかって話は割とデリケートなんだし、やめといたほうが無難だと僕は思うよー?
シアンさんもシアンさんで、ひたすら真面目に頷いてるし。
別に今からやる戦いなんて今後、僕やサクラさんが入団するんだからいつでも見られるんだしそんなマジで齧り付かなくてもいいのに。
でもこれはこれで好都合だ、彼女に僕のかっこいいところをお見せできちゃうもんねー!
「いい心構えでござる。杭打ち殿を御するのであれば常に頂を意識せねばならぬでござるからね……でござろ、シミラ卿?」
「うむ。やつこそは大迷宮深層調査戦隊にあってもなお、最強クラスとして扱われていた者だ。そんな杭打ちを今後従えるのであれば、今現在の強さよりもこれから先の展望を、己の器を常に磨いていかねばなるまい。少なくともレイアリーダーは、それを意識しておられた」
「………………………………」
今度はシミラ卿とサクラさんがやり取りしているわけだけど、頼むからシアンさんに無茶振りするのはやめてあげてほしいよー。
いくら彼女が文武両道美貌もカリスマもある天才だからって、いきなりレイアの後追いは難しいと思うよー。
っていうかレイア、そんなこと意識してたんだ? 別に僕だって器で彼女についていったわけじゃないんだけど、そんな風に思ってたんだとしたらちょっとショックー。
今度なにかの拍子に出くわすことがあったら聞いてみたいなー。まあたぶん、調査戦隊解散の引き金を引いた僕は殺したいほど憎まれてるだろうから無理だと思うけど。
さておき、そろそろ会話もやめようか。本当に身体が冷える。
せっかく班長さんに手伝ってもらって、どうにか人間相手の加減を調節できたんだからねー。感謝しつつも僕は、杭打ちくんから降りて着地した。
そしてそのまま杭打ちくんに隠れて彼らには見えない死角から、すっかりズタボロになって気を失ってる班長さんを抱えてみせた。
「…………」
「!? クロスド班長!」
「先行していた班長が、先に杭打ちとも交戦してたのか!?」
「何という酷い姿に……! おのれ杭打ちぃー!!」
「……………………」
特に騎士団員の反応は劇的で、ボンボンの集まりみたい連中が一気に僕に殺意のこもった目で見てきた。やめなよ通りもしない殺意なんて、なんの役にも立ちはしないのに。
ていうかクロスドっていうんだね? この班長さん。僕のウォーミングアップに最後まで付き合ってくれたから感謝してるくらいなんだけど、ま、もう用はないし返すよ。
騒然とする騎士団達に、僕は班長さんをポーイと投げ渡した。完全にぐったりして力が抜けているし、死んでるんじゃないかと一見不安になると思うけど全然生きてるから大丈夫だよー。
慌てて騎士団員達が班長さんの介抱にかかるのを意にも介せず、シミラ卿とサクラさんが徐々に距離詰めてきた。周囲に被害が及んでも人を巻き込まない程度まで、お互い牽制しながら移動する。
「さて。杭打ち殿……どれほどのものでござるかね」
「油断していると一撃で破られるぞ、気をつけてくれよジンダイ殿」
「…………」
さてここからはジョーク抜きだ。草原の中、広々とした空間にて。僕とシミラ卿、サクラさんは適度な距離をおいて向かい合う。
一気に場の空気が引き締まり、凍りついたものへと変化する。当たり前だ。今からSランク相当の戦士が3人、暴れるんだからね。
精々、巻き込まれないように気をつけてねー。