「で、そろそろいいかねじゃれあいは? 若いことで結構だが、時と場合は弁えてもらいたいものだな二人とも」
シアンさんとリューゼリアの睨み合いにも一段落ついた頃合いで、ギルド長のベルアニーさんがそんなことを言ってきた。
いかにも紳士然としているけど声色や口調は皮肉めいている、という表現がぴったりくるねー。
実際、TPOを弁えたやり取りだったかって言うとそれは間違いなく違うからね。吹っかけたのはリューゼだけど乗っかったのはシアンさん、固唾を呑んで見守るだけだったのは僕達みんなだ。
そりゃあ呼びつけた側としては苦言の一つも呈したくなるってなものだろう。本来の目的そっちのけで、なんかパーティー同士の競り合いしてるんだもんねー。
そこは申しわけない話で、シアンさんも慌てて頭を下げた。まだまだ新人、それも育ちのよろしいお貴族さんだし、ギルド長へも礼儀正しいよー。
「失礼しました、ギルド長」
「けっ、何を今さら良識人ぶってんだタヌキジジイが。テメェが一番この手のいちゃもん、あちこち相手にふっかけてきてたろーが昔はよォー」
反面、冒険者として完成されているリューゼリアの態度はビックリするくらい反抗的だ。普通の冒険者でももうちょい丁寧に言い返すものを、歯に衣着せぬってこのことだよねー。
これについては彼女がベルアニーさんを嫌いとかって話ではなく、ギルド長なんて役職付いてるからって調子こいてんじゃねー的な、冒険者特有の反骨心から来るものだ。
冒険者なら大小あれど、概ね偉そうにしているやつなんて立場関係なしに噛みつきたくなるものだからねー。
だからギルド長なんて立場は実のところ、恐ろしいまでに貧乏籤なんだよー。上に立たれたと見るや即座に喉笛を掻き切ってやろうって連中の、明確に上に立とうっていうんだからねー。
どれだけ報酬がよくても、どれだけ特別手当や福利厚生が桁違いでも僕はぜーったいにこんな役職就きたくないや。
今まさに下手なこと言ったら喉笛掻き切ってやるって空気を出しながら獰猛に笑うリューゼリアに、ベルアニーさんは嘆息混じりに答える。
この人くらい肝が座っているなら、たとえリューゼ相手にだって一歩も引かないでいられるわけだねー。
「昔は昔、今は今だ。どこぞの調査戦隊が発足して以降、冒険者のマナーはそれ以前より遥かに向上したのだからな。いつまでも古い時代を引きずっていてはそれこそ老害の誹りは免れまい。おや、小娘の癖をして老害のような真似を今しがた、していた輩がいるな?」
「その煽り方がタヌキなんだよテメェはァ! ソウマァ、おめーもなんか言ってやれェ!!」
言葉じゃ勝てないのによく仕掛けたよ、リューゼ。しかもこれで手を出したらダサいじゃ済まないものね、詰みだ詰みー。
言い負かされて顔を真っ赤にして、僕に助けを求めてくる戦慄の冒険令嬢さん。いや、なんで僕が何かを言わなきゃならないのかな?
冷淡に告げる。
「なんで僕に指図できると思ってるんだよ老害小娘。お前ついさっきまで誰のパーティーの団長に喧嘩売ってたんだか言ってみろよ」
「ソウマァ!?」
「ごーざござござ。元仲間の好もさすがにああまでやらかされては尽きるというものでござろうなあ。一団率いるリーダーとして、そんな程度のことも分からんでござるか、ごーざござござ!!」
「るっせぇぞジンダイ! テメェのざーとらしい笑い声はとにかく腹立つからやめろや!!」
なんで今さっきまでうちの団長に喧嘩売ってた馬鹿に同調しなくちゃいけないんだか。
サクラさんもプークスクスって感じで笑って小馬鹿にすれば、リューゼはこの手の煽りに相変わらず弱くてすかさず吠えた。
ただ、状況の悪さと言うかどっちが悪いかについては明確に自覚があるみたいだ。3年前よりは頭が回ってるし、それならそりゃわかるよねー。
バツが悪そうに舌打ち一つして、そっぽを向いて拗ねたようにぼやいていた。
「チッ……あーはいはいオレが悪かったよ、良いから本題入るぞ、んどくせー」
「お前ほんと、次やらかしたらぶち抜くからねー。ベルアニーさん、とりあえず話を進めましょうかー」
「そうするか。やれやれ、調査戦隊がいた頃がそのまま蘇ったかのような馬鹿馬鹿しい一時だったな」
「そんな頻繁にさっきのようなことが起きていたのですか、調査戦隊とは……」
まるでいつものこと、みたいに扱う僕やベルアニーさんにシアンさんが汗を一筋流してつぶやいた。近くではミシェルさんがドン引きしてるし、レリエさんもなんか首を傾げている。
ぶっちゃけ傍から見たら仲良しさの欠片もない光景だからね、仕方ないよねー。でも少なくともかつての調査戦隊、それもリューゼ絡みの事件においては本当にこんな感じだったんだよ、いつもいつもー。
調査戦隊一のトラブルメーカーっていうのかな。とにかく話をかき回して無茶苦茶にして、最終的には叱られてしょぼんと不貞腐れる。それがリューゼリアの立ち位置だったわけだねー。
シアンさんとリューゼリアの睨み合いにも一段落ついた頃合いで、ギルド長のベルアニーさんがそんなことを言ってきた。
いかにも紳士然としているけど声色や口調は皮肉めいている、という表現がぴったりくるねー。
実際、TPOを弁えたやり取りだったかって言うとそれは間違いなく違うからね。吹っかけたのはリューゼだけど乗っかったのはシアンさん、固唾を呑んで見守るだけだったのは僕達みんなだ。
そりゃあ呼びつけた側としては苦言の一つも呈したくなるってなものだろう。本来の目的そっちのけで、なんかパーティー同士の競り合いしてるんだもんねー。
そこは申しわけない話で、シアンさんも慌てて頭を下げた。まだまだ新人、それも育ちのよろしいお貴族さんだし、ギルド長へも礼儀正しいよー。
「失礼しました、ギルド長」
「けっ、何を今さら良識人ぶってんだタヌキジジイが。テメェが一番この手のいちゃもん、あちこち相手にふっかけてきてたろーが昔はよォー」
反面、冒険者として完成されているリューゼリアの態度はビックリするくらい反抗的だ。普通の冒険者でももうちょい丁寧に言い返すものを、歯に衣着せぬってこのことだよねー。
これについては彼女がベルアニーさんを嫌いとかって話ではなく、ギルド長なんて役職付いてるからって調子こいてんじゃねー的な、冒険者特有の反骨心から来るものだ。
冒険者なら大小あれど、概ね偉そうにしているやつなんて立場関係なしに噛みつきたくなるものだからねー。
だからギルド長なんて立場は実のところ、恐ろしいまでに貧乏籤なんだよー。上に立たれたと見るや即座に喉笛を掻き切ってやろうって連中の、明確に上に立とうっていうんだからねー。
どれだけ報酬がよくても、どれだけ特別手当や福利厚生が桁違いでも僕はぜーったいにこんな役職就きたくないや。
今まさに下手なこと言ったら喉笛掻き切ってやるって空気を出しながら獰猛に笑うリューゼリアに、ベルアニーさんは嘆息混じりに答える。
この人くらい肝が座っているなら、たとえリューゼ相手にだって一歩も引かないでいられるわけだねー。
「昔は昔、今は今だ。どこぞの調査戦隊が発足して以降、冒険者のマナーはそれ以前より遥かに向上したのだからな。いつまでも古い時代を引きずっていてはそれこそ老害の誹りは免れまい。おや、小娘の癖をして老害のような真似を今しがた、していた輩がいるな?」
「その煽り方がタヌキなんだよテメェはァ! ソウマァ、おめーもなんか言ってやれェ!!」
言葉じゃ勝てないのによく仕掛けたよ、リューゼ。しかもこれで手を出したらダサいじゃ済まないものね、詰みだ詰みー。
言い負かされて顔を真っ赤にして、僕に助けを求めてくる戦慄の冒険令嬢さん。いや、なんで僕が何かを言わなきゃならないのかな?
冷淡に告げる。
「なんで僕に指図できると思ってるんだよ老害小娘。お前ついさっきまで誰のパーティーの団長に喧嘩売ってたんだか言ってみろよ」
「ソウマァ!?」
「ごーざござござ。元仲間の好もさすがにああまでやらかされては尽きるというものでござろうなあ。一団率いるリーダーとして、そんな程度のことも分からんでござるか、ごーざござござ!!」
「るっせぇぞジンダイ! テメェのざーとらしい笑い声はとにかく腹立つからやめろや!!」
なんで今さっきまでうちの団長に喧嘩売ってた馬鹿に同調しなくちゃいけないんだか。
サクラさんもプークスクスって感じで笑って小馬鹿にすれば、リューゼはこの手の煽りに相変わらず弱くてすかさず吠えた。
ただ、状況の悪さと言うかどっちが悪いかについては明確に自覚があるみたいだ。3年前よりは頭が回ってるし、それならそりゃわかるよねー。
バツが悪そうに舌打ち一つして、そっぽを向いて拗ねたようにぼやいていた。
「チッ……あーはいはいオレが悪かったよ、良いから本題入るぞ、んどくせー」
「お前ほんと、次やらかしたらぶち抜くからねー。ベルアニーさん、とりあえず話を進めましょうかー」
「そうするか。やれやれ、調査戦隊がいた頃がそのまま蘇ったかのような馬鹿馬鹿しい一時だったな」
「そんな頻繁にさっきのようなことが起きていたのですか、調査戦隊とは……」
まるでいつものこと、みたいに扱う僕やベルアニーさんにシアンさんが汗を一筋流してつぶやいた。近くではミシェルさんがドン引きしてるし、レリエさんもなんか首を傾げている。
ぶっちゃけ傍から見たら仲良しさの欠片もない光景だからね、仕方ないよねー。でも少なくともかつての調査戦隊、それもリューゼ絡みの事件においては本当にこんな感じだったんだよ、いつもいつもー。
調査戦隊一のトラブルメーカーっていうのかな。とにかく話をかき回して無茶苦茶にして、最終的には叱られてしょぼんと不貞腐れる。それがリューゼリアの立ち位置だったわけだねー。