「俺らのほうはマジで、一つも大した話じゃないんだよ。森に迷い込んで見つけた先に、泉と出入口があって」
「なんか大層なこと書いてる看板があったから、何それオモロってなって……」
「わ、私は止めたんでしゅ……なのにお二人が、ちょっと覗くだけってぇ〜……!」
超古代文明からの生き残り、というハチャメチャロマンあふれる身の上っぽい双子兄妹のヤミくんヒカリちゃんに比べて、この三人組の話は本当に大したもんじゃなかった。
偶然見つけた穴に、危険標識があるのを分かった上で、仲間の制止さえ振り切って入って行ったと。言葉にすればこれだけの、なんとも呆れた話である。
「そしたらなんか、めっちゃ深いところまで潜れちゃってさあ! オイオイオイマジかよ~ってなってたら、なんか子供が彷徨いてるの見つけちゃって!」
「やっと見つけた人間ってことで助けを求めたら、モンスターに見つかってまとめて逃げる羽目になっちゃってね。この人達、あんな化物と戦える人間なんてこの世にいるかーってさっさと僕らを抱えて逃げたんだ」
「……………………」
逃げる判断が早いのは偉いけど、そこに至るまでがなあ……内心、割と本気でドン引き。
そもそも看板を無視するなって話だし、仲間の制止を振り切るばかりか巻き込むんじゃないよって話でもあるよね。その結果双子を発見できたのは偶然でしかないし、そもそもこの階層のモンスターに襲われたら君達ごと全滅だったじゃん! ってのもある。
全体的に結果よければ感漂う、なんとも無謀な一連の流れだった。冒険と無謀を履き違えてはいけないなーと、この三人組を見ていると初心を思い出す気分だ。
とはいえ、この人達がいなければ双子は双子で、誰にも出会えないままどこぞかで野垂れ死んでいた可能性だってあるんだ。巡り合せの数奇というか、これも運命ってやつかな?
オカルトー。
「どうにか出入口まで逃げようって、せめてこの子達とうちのプリースト……マナだけはって思ってたんだけど、道を塞がれてもう駄目だ! ってなってたんだよ。そんな時だ、あんたが来てくれたのは」
「ホンットにありがとう! 助かったわ心から感謝してる! アンタは私達の命の恩人よ!」
「そこは私達からもありがとうございます。いましたね、あんな化物でも粉砕できる人間さん」
「……………………どうも」
直球の感謝、照れるー。黒髪ロングの軽装備の女の子、ツンツンというかサバサバしてて美人系だなー。惚れそう。
でもさっきの泣き虫プリースト、マナちゃんだっけ? も合わせてどーせ、イケメンくんに惚れてるんだろうなー。恋の鞘当てとかしちゃってるんだろうなー。僕とかお邪魔虫なんだろーなー。
「……………………」
「どうかした? 杭打ちさん。なんかちょっと、気落ち気味?」
「も、もしかして怪我とかしてます?」
ああああ間男にすらなれないいいいい! と、内心絶叫してるとヤミくんとヒカリちゃんに心配されてしまった。慌てて首を左右に振る。
イケメンめー! って嫉妬の炎をメラメラ燃やすのはこの場ではやらないほうがいい。いくらなんでも命取りだ、地下86階だよここ。
どうあれ両者の事情は分かったし、どちらの言葉にも嘘は感じられなかった。双子についてはそれでも信憑性が乏しいから、件の眠っていたとかいう部屋に改めて後日、調べに行くとするか。
そうでなくともどうせ、こんな話を聞けば国の調査隊が動くだろうけどね。僕は杭打機を下ろして、みんなに言った。
「……帰って、ギルドに報告を。双子についてはおそらく、国預かりになる」
「く、国ぃ!?」
「でしょうねー……迷宮からやってきた謎の双子、こりゃセンセーショナルだわ」
話が国レベルに広がったことに慄くイケメン君だけど、逆になぜ内輪で終わると思ったのかこっちが聞きたい。
この迷宮都市が属するエウリデ連合王国は、特にここの迷宮攻略にやたら精を出しているのは周知のことだ。冒険者を多く誘致してもいるし、学校なんかでも学生の冒険者活動を応援したりある程度援助したりもしている。
僕こと"杭打ち"ソウマ・グンダリも、冒険者優遇制度を使って学校に通えてるようなものだしね。
とにかくそのくらい国の関心が今、迷宮に向けられているんだ。そんな折に現れたこの双子を、放置しておく道理はないだろう。
「あー……やっぱり大事になるよね。なんかそんな気はしてたよ」
「や、ヤミ……私達、これからどうなっちゃうの……?」
「…………分からない。もしかしたら、僕らは……」
不安げに瞳を揺らすヒカリちゃん。ヤミくんも冷静ながら口籠るあたり、内心は妹同様に不安でいっぱいなのかもしれない。
あまり、酷い扱いを受けないとは思いたいけれど……何せ前例がないからなんとも言えないね、こればっかりは。
「ヤミくん、ヒカリちゃん……」
「可愛そうですぅ……」
「せめて離れ離れにならなければいいのだけれど……ね」
三人組はそんな双子の姿に、ひどく同情して気の毒そうな眼差しを向けている。
やっぱり僕の見た通り、相当な人情家パーティーみたいだね。今回みたいな馬鹿をやらずに順当にキャリアを積めば、すごいところまで行きそうな予感がなんとなくする。
未来の英雄に会っちゃったかも? 自慢話になるといいなー。
「なんか大層なこと書いてる看板があったから、何それオモロってなって……」
「わ、私は止めたんでしゅ……なのにお二人が、ちょっと覗くだけってぇ〜……!」
超古代文明からの生き残り、というハチャメチャロマンあふれる身の上っぽい双子兄妹のヤミくんヒカリちゃんに比べて、この三人組の話は本当に大したもんじゃなかった。
偶然見つけた穴に、危険標識があるのを分かった上で、仲間の制止さえ振り切って入って行ったと。言葉にすればこれだけの、なんとも呆れた話である。
「そしたらなんか、めっちゃ深いところまで潜れちゃってさあ! オイオイオイマジかよ~ってなってたら、なんか子供が彷徨いてるの見つけちゃって!」
「やっと見つけた人間ってことで助けを求めたら、モンスターに見つかってまとめて逃げる羽目になっちゃってね。この人達、あんな化物と戦える人間なんてこの世にいるかーってさっさと僕らを抱えて逃げたんだ」
「……………………」
逃げる判断が早いのは偉いけど、そこに至るまでがなあ……内心、割と本気でドン引き。
そもそも看板を無視するなって話だし、仲間の制止を振り切るばかりか巻き込むんじゃないよって話でもあるよね。その結果双子を発見できたのは偶然でしかないし、そもそもこの階層のモンスターに襲われたら君達ごと全滅だったじゃん! ってのもある。
全体的に結果よければ感漂う、なんとも無謀な一連の流れだった。冒険と無謀を履き違えてはいけないなーと、この三人組を見ていると初心を思い出す気分だ。
とはいえ、この人達がいなければ双子は双子で、誰にも出会えないままどこぞかで野垂れ死んでいた可能性だってあるんだ。巡り合せの数奇というか、これも運命ってやつかな?
オカルトー。
「どうにか出入口まで逃げようって、せめてこの子達とうちのプリースト……マナだけはって思ってたんだけど、道を塞がれてもう駄目だ! ってなってたんだよ。そんな時だ、あんたが来てくれたのは」
「ホンットにありがとう! 助かったわ心から感謝してる! アンタは私達の命の恩人よ!」
「そこは私達からもありがとうございます。いましたね、あんな化物でも粉砕できる人間さん」
「……………………どうも」
直球の感謝、照れるー。黒髪ロングの軽装備の女の子、ツンツンというかサバサバしてて美人系だなー。惚れそう。
でもさっきの泣き虫プリースト、マナちゃんだっけ? も合わせてどーせ、イケメンくんに惚れてるんだろうなー。恋の鞘当てとかしちゃってるんだろうなー。僕とかお邪魔虫なんだろーなー。
「……………………」
「どうかした? 杭打ちさん。なんかちょっと、気落ち気味?」
「も、もしかして怪我とかしてます?」
ああああ間男にすらなれないいいいい! と、内心絶叫してるとヤミくんとヒカリちゃんに心配されてしまった。慌てて首を左右に振る。
イケメンめー! って嫉妬の炎をメラメラ燃やすのはこの場ではやらないほうがいい。いくらなんでも命取りだ、地下86階だよここ。
どうあれ両者の事情は分かったし、どちらの言葉にも嘘は感じられなかった。双子についてはそれでも信憑性が乏しいから、件の眠っていたとかいう部屋に改めて後日、調べに行くとするか。
そうでなくともどうせ、こんな話を聞けば国の調査隊が動くだろうけどね。僕は杭打機を下ろして、みんなに言った。
「……帰って、ギルドに報告を。双子についてはおそらく、国預かりになる」
「く、国ぃ!?」
「でしょうねー……迷宮からやってきた謎の双子、こりゃセンセーショナルだわ」
話が国レベルに広がったことに慄くイケメン君だけど、逆になぜ内輪で終わると思ったのかこっちが聞きたい。
この迷宮都市が属するエウリデ連合王国は、特にここの迷宮攻略にやたら精を出しているのは周知のことだ。冒険者を多く誘致してもいるし、学校なんかでも学生の冒険者活動を応援したりある程度援助したりもしている。
僕こと"杭打ち"ソウマ・グンダリも、冒険者優遇制度を使って学校に通えてるようなものだしね。
とにかくそのくらい国の関心が今、迷宮に向けられているんだ。そんな折に現れたこの双子を、放置しておく道理はないだろう。
「あー……やっぱり大事になるよね。なんかそんな気はしてたよ」
「や、ヤミ……私達、これからどうなっちゃうの……?」
「…………分からない。もしかしたら、僕らは……」
不安げに瞳を揺らすヒカリちゃん。ヤミくんも冷静ながら口籠るあたり、内心は妹同様に不安でいっぱいなのかもしれない。
あまり、酷い扱いを受けないとは思いたいけれど……何せ前例がないからなんとも言えないね、こればっかりは。
「ヤミくん、ヒカリちゃん……」
「可愛そうですぅ……」
「せめて離れ離れにならなければいいのだけれど……ね」
三人組はそんな双子の姿に、ひどく同情して気の毒そうな眼差しを向けている。
やっぱり僕の見た通り、相当な人情家パーティーみたいだね。今回みたいな馬鹿をやらずに順当にキャリアを積めば、すごいところまで行きそうな予感がなんとなくする。
未来の英雄に会っちゃったかも? 自慢話になるといいなー。