10
体操とミーティングが終わった。遥香は着替えをすべく、他の会員と同様に更衣室へと向かっていた。すると、「アルマ」と背後から平静な声がする。
足を止めた遥香は、振り返った。すると、神妙な顔付きのブラムがじっと見詰めてきていた。
「明日の相手は、フィールド外で敵を壊すような常識外の奴らだ。試合中に何をしてくるかわかったもんじゃない。だから、身体をぶつけたりは絶対になしだ。約束してくれ」
ブラムの口振りは有無を言わせぬものだった。その頑なさに遥香は絶句する。しかし少し考えて口を開く。
「でも、ブラムたちは接触プレーをするんでしょ? 危険だ危険だって言ったらなんにもできないわよ。私だって、女だって、思いっきりプレーがしたい。ハンデも制約も一切なしで、みんなと同じ立場でサッカーの楽しさを味わいたいよ」
遥香は懇願を込めて言葉を紡いだ。ブラムに自分の思いを、サッカーへの余りある熱を伝えたかった。
しかしブラムは変わらない、変われない。「どうしてわからないんだ」とでも言いたげに、難しい面持ちでゆっくりと首を横に振る。
「アルマは忘れがちだけどな。フットボールは本来、男のためのスポーツなんだよ。止むを得ず女子がする場合は、男が危ない部分を肩代わりする。英国紳士としては、当然の心掛けだ」
変わらぬ厳格さでもって、ブラムは反論をしてきた。遥香は「だけど」と、わずかに俯く。
ふーっと息を吐いたブラムは、遥香への視線をさらに強めた。
「この際だから、打ち明ける。よく聞いてくれ。俺はアルマと仲違いをしてでも、アルマを大切にするよ。アルマが、好きだから」
真っ正直な告白が来た。ブラムは揺らぎのない瞳で遥香を見つめ続けている。
遥香は凪いだ精神状態で思考を巡らせる。
(予想はしてたけど、このタイミングで告げてくるなんてね。ほんと、どんどん状況がややこしくなってくよ)
体操とミーティングが終わった。遥香は着替えをすべく、他の会員と同様に更衣室へと向かっていた。すると、「アルマ」と背後から平静な声がする。
足を止めた遥香は、振り返った。すると、神妙な顔付きのブラムがじっと見詰めてきていた。
「明日の相手は、フィールド外で敵を壊すような常識外の奴らだ。試合中に何をしてくるかわかったもんじゃない。だから、身体をぶつけたりは絶対になしだ。約束してくれ」
ブラムの口振りは有無を言わせぬものだった。その頑なさに遥香は絶句する。しかし少し考えて口を開く。
「でも、ブラムたちは接触プレーをするんでしょ? 危険だ危険だって言ったらなんにもできないわよ。私だって、女だって、思いっきりプレーがしたい。ハンデも制約も一切なしで、みんなと同じ立場でサッカーの楽しさを味わいたいよ」
遥香は懇願を込めて言葉を紡いだ。ブラムに自分の思いを、サッカーへの余りある熱を伝えたかった。
しかしブラムは変わらない、変われない。「どうしてわからないんだ」とでも言いたげに、難しい面持ちでゆっくりと首を横に振る。
「アルマは忘れがちだけどな。フットボールは本来、男のためのスポーツなんだよ。止むを得ず女子がする場合は、男が危ない部分を肩代わりする。英国紳士としては、当然の心掛けだ」
変わらぬ厳格さでもって、ブラムは反論をしてきた。遥香は「だけど」と、わずかに俯く。
ふーっと息を吐いたブラムは、遥香への視線をさらに強めた。
「この際だから、打ち明ける。よく聞いてくれ。俺はアルマと仲違いをしてでも、アルマを大切にするよ。アルマが、好きだから」
真っ正直な告白が来た。ブラムは揺らぎのない瞳で遥香を見つめ続けている。
遥香は凪いだ精神状態で思考を巡らせる。
(予想はしてたけど、このタイミングで告げてくるなんてね。ほんと、どんどん状況がややこしくなってくよ)