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 ピーターバラ駅で降りた桐畑たちは、歩いてウェブスター校へと向かった。
 校名が記された瀟洒な看板を通り越して、十人分ほどの幅の道を行く。左右には、よく手入れのされた芝生と、赤く染まった広葉樹が見られる。
 桐畑は先頭のダンに続いて、道に繋がった数段の石の階段を上った。すると、ウェブスター校の校舎が目に飛び込んできた。
 白を基調とした石製の校舎は、さながら荘厳な城だった。一階部分は柱と柱の間がアーチとなっていて、下を通過できる様子だ。二階から上には、ずらりと大きな窓が並んでいる。
 三階建ての上に急角度な薄黄緑の屋根がある構造だが、階段の真正面だけは違った。三階の上にも、他より大きな窓がある。さらに上部には、槍の穂先のような屋根の間に、盤が黒で、針が金色の時計が見られた。
(こりゃあまた、すっごい雰囲気がある城だな。おとぎ話の城よりは屈強な感じで、俺はこっちのほうが好みだぜ。何日か、住みたい気すらするよな)
 桐畑は、校舎を見上げたまま圧倒されていた。
 すると、「遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます」と流麗な、やや高い声が聞こえた。
 桐畑は、水平に視線を戻した。すると二歩ほど前方で、後ろ手を組んだ男子生徒が、「礼節を弁えた笑顔」の手本のような表情を浮かべていた。
 男子生徒はやや面長で白人で、桐畑と同い年ぐらいに思えた。鮮やかな金と茶の中間色の髪を、オール・バックにしている。
 目鼻立ちはきりっとしており、背も低くはない。西洋人の美形と聞くと、多くの人がイメージする風貌だ。
 だが桐畑には、男子生徒は、どことなく冷たげな印象だった。
 服装は、白地のところどころに黒の線が入った、フットボールの練習着だった。服から伸びる手足は、スポーツ選手としては普通の太さである。
「ウェブスター校のフットボール・クラブでキャプテンを務めています、ヴィクター・カノーヴィルです。お見知り置きを」
 ヴィクターはくっと、ダンと片手で握手をした。またしても、型に嵌ったような所作だった。
「では、グラウンドにお連れします。従いて来ていただけますか」
 ヴィクターはすっと校舎へと向き直り、ゆったりと歩を進め始めた。ホワイトフォードの面々は、ヴィクターに続いて歩き始める。