ありのまま起こったことを記述すると、わたし、鳴海千尋が天文部に入部するとすでに廃部が決まっていた。eスポーツ部を立ち上げるための大会に出場するために部長から格闘ゲームの英才教育を受けることになっていた。

 わたし自身、なにが起こっているのかわからなかった。おつむがくるくる回っていた。こんなことあります?

「去年の部員数と活動実績が乏しくてね。生徒会の決定で天文部は今年一年で廃部になることが決定しました。これは職員会議でも決議された決定事項です」護国寺先生はわたしを見下ろした。

「うっしー! なんで廃部に反対してくれなかったの!」
 姫川さんは護国寺先生にため口をきいている。
「うっしー言うな! 先生には敬語を使うように。反対したに決まっているだろ! おれひとりの力には限界がある」

「ブー! ブー!」
「誰のせいだと思っているんだ。もとはといえばおまえらが去年頑張らなかったせいだろうが」
 護国寺先生は姫川さんと折笠さんに大目玉を喰らわせた。

「いまなら入部を取り消してほかの部活に入部できるよう取り計らうこともできます。どうしますか? こいつらにはあとでげんこつだ」
「体罰反対! 暴力教師! 暴力で世界は変わらない!」
「うちのパパにいいつけてやるんだから」
 姫川さんと折笠さんはまったく凝りていない。この人たちは……!

 わたしは思案した。本来ならさっさとほかの部活に転入するところだ。でもさきほど姫川さんが提案した学園生活のサポートを受けられる話は悪くない。
 いや、おいしい……!

 わたしはもともとゲームが好きだし、eスポーツ部を立ち上げるならさほど問題にならないのでは……?
「やっぱりこの部に入ります」
 わたしがそう言うと姫川さんと折笠さんのコンビはハイタッチで歓声をあげた。

「おまえら~!」
 護国寺先生は顔が赤くなるほど怒っている。そして咳払いした。
「本当にいいのかい?」
「はい。わたし、姫川さんたちのこと嫌いじゃないですし」
「きみも物好きだなあ」

「その言葉、愛の告白と受け取っていいのよね。いやだわ。あたしたち初対面なのに積極的ね」
 姫川さんは照れながら髪先をいじる。
「受け取らないでください!」
このときのわたしは見積もりが甘すぎることをあとになって思い知るのだった……!