何度もあの頃の夢を見る。
 自身の意志とは関係なく、何度も———

 「先輩は良い意味でも悪い意味でも他の人とは違う‥‥‥少しでも目を離したらあっさり死んじゃってもおかしくないぐらいに純粋な人ですから」

 これで何回目だろう。何のためにこんなものを見せられているのだろう。

 「だからっ!どうしていつもいつも赤の他人のためにそこまでするの⁉今の状況本当にわかってる?死にかけたんだよ?
 ———ううん、正確にはアンタは2回死んでるようなもの。だっていうのに、なんでまだそんなことを続けるの⁉」

 大丈夫、わかってる。
 お前らが言ってた通り、きっと俺はもうどうしようもないぐらいに頭がおかしいイカレた奴なんだろう。
 死ぬとか生きるとか正直どうだって良い。
 そんなことよりも今目の前で誰かに降りかかっていた不幸を———理不尽を振り払えるのなら———
 泣き喚いたって誰も文句なんか言わないのに、歯喰いしばって耐えてる人がいる。そんな奴らの重荷を少しでも軽くしてやれるのなら———


 「今を形作っているのが過去であるということは今さら説明する必要はないでしょう。それは時間の経過と共に曖昧になっていき、想いは移ろいでいくものです。それが”普通”なのです。人間という種全体ではなく、個人において忘却は何よりの良薬になります。だから、貴方は”忘れてしまうこと”に罪悪感を覚える必要はないんです。ましてや、正確に記憶し続ける事は苦痛にしかなりません」

 アンタの言った事は正しい。きっと、そうするのが普通で楽でみんながそうしている事。

 でも———
 じゃあ———


 ———それで俺は納得できるのか———


 これは、ただそれだけのお話。