プロローグ

 生きてて良かったと思える瞬間の事を幸せと言うらしい。

 晴れ晴れとした良い気持ちのことを嬉しいというらしい。

 のびのびと満ち足りた気持ちの事を楽しいというらしい。
 傷つくときに悲しいというらしい。
 興奮状態になり荒くなる事を怒りというらしい。
 可哀想と思う事を哀れむというらしい。
 
 人間が抱く感情は2185もあるという。

 でも私は感情を顔に出した事がない。いや、出せないんだ。

 ため息が出そうだ。

 でもそんなことはどうでも良い


 私は今日も息をする。


 生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして息をして


 今日も適当にバレない嘘をついて

 笑顔を貼り付けて


 


 あの日、私ははじめて、本気で笑えた。

 そして思った。

 彼らのように楽しく正直に生きてみたいとだから、私は君達には悲しんで欲しくないんだ。

 ごめんなさい、ありがとう、  私は今日も嘘をつく _______ 。




 1

 騒がしい教室の隅で本を開く
 どこかのお姫様と王子様が幸せになった話。
 幸せなんて触れただけで崩れていく。
 だから、私には、この世界の中では、おとぎ話の様なことは起こらない。

 「結良ー久しぶり!!」

 明るい声が後ろの方で聞こえたと同時にトンっと肩に軽く重みが乗る感触がする。
 腕を首に回されぎゅうぎゅうと抱きつかれる。

 「暑苦しいよ…月愛」

 「えへっ」  

 後ろに振り向くと同時に腕を軽くどかす。

 「そーいえば結良の隣の席は空席だね」

 そう言って私の横の席に目をやる。

 「そうだね~」

 と言いながら本に目を落とす。

 絶対興味ないてしょ!と月愛に言われたけど、当然興味はない。

 「今日空いてる?」  

 「空いてるよ」
 
 私の言葉を聞くとすぐに顔を明るくしてじゃあさじゃあさと言ってスマホを見せてくる。

 「新しく出来たカフェ行かない?ここおいしそう何だよね!」

 月愛が見せてきたスマホをみると、フレンチトーストやパンケーキ、ファフェなどスイーツが載った写真と『猫、犬も連れてきてOK!店内にも動物が何匹かいるのでゆっくりとおくつろぎ下さい。』と一言書いてあった。

 月愛が好きそうなところだ。
 別にアレルギーも持っていないし、大丈夫だろうと判断した。 
 その事を伝えると

 「やった!じゃあ放課後行こうね!」

 とニコニコしながら自席へと歩いていった。



 チャイムがなる。

 「次、数学だって…やだね~」

 クラスメートの声を聞きながら窓の外を見る

 数学…か、いつぶりだろうか、そしていつまでその単語を聞けるのだろうか。
 扉が開き数学の田口先生が顔をだす。

 それと同時にチャイムがなった。

 「起立」

 学級委員の号令で全員が動き出す。

 「寄与付け、礼」

 「ちゃくせ…」
 その言葉を遮るかのように、教室の扉が開いた。

 「すみません、遅れました。」

 「は?優斗?なんであんたがいんの?」

 いやいやなんであんたがいんの?クラス間違えてんじゃない?!
 と田口の方をみると何食わぬ顔で

 「おぉー久主ノ瀬、これたか」

 いやいや先生なにいっちゃってんの?!


 「え?誰?」

 クラスメートの声が飛び回る。

 そーだよね!こいつがきたら皆頭こんがらがるよね?

 「でもイケメン~」

 はぁこいつのどこがイケメンなんですか??

 「お前の席は紡糸の隣なー」


 と田口が指を指す。


 …は?私の隣??
 確かにあいてるけど…こいつの隣?!

 「先生?なんで優斗が隣なんですか?」

 「おーお前久住ノ瀬と知り合いかーじゃあ案内とか宜しくなー」

 じゃねーよ!

 ちらりと隣を見る。

 バチッ
 目が合う。

 ニコニコしながら

 「おー結良~お久ー」

 なんなんだこいつは…
 なんでくっついてくんだよ!

 「離せ‥このくそったれ」

 「え~口悪ー!ひどいな~ひさびさの再開なのに」

 「だからってくっついて言い訳じゃない」

 「冷たい事言わないでー、俺たち仲良しなんだからさー」



 その一言でクラスから悲鳴や驚きの声が飛び回る。

 「んなわけ」

 「いーじゃん!」

 「あー、はいはい」

 イライラしていると田口が

 「お前仲がいいのは結構だが、今は授業中だからあとでやれー」

 と言ってくれたので優斗が離れてくれた。


 なんとか授業に集中してお昼休み月愛がすぐに来た。

 「ねぇ結良!あの人だれ?!」

 「…しってるよね?優斗」

 「あー優斗ねぇ…」

 と言いながら優斗のほうに顔を向けた。

 優斗の席には大勢の人達が集まっていた。

 月愛…殺気やばいよ?

 「ねぇ、月愛…優斗の事見過ぎ。」

 と耳うちするとすぐに殺気をしまった。

 「まさか、雪桜の幹部がね…、結良狙い?」

 月愛が言ってる雪桜は全国 No.1の暴走族だ。

 因みに、私と月愛も昔は幹部に入っていたし、それなりに仲は良かった。

 でも、長い付き合いでも、簡単に壊れる…。

 新しく入ってきた幹部の正体に気づいて月愛と私は密かに調査を進めていた。

 けれど、その事に気づいたのか、そいつは私達を裏切り者だと皆に言った。

 その事をあいつらは簡単に信じて私と月愛を追放した。
 のに、今更何しに来た?

 すると優斗が来て私達に言った。 

 「月愛も久しぶり~」 

 月愛はすごい目つきで睨んでいる。

 優斗はそんな事気にしないで

 「腕なまってないよな?、26 倉庫の前に来いよ」

 今、私と月愛は静華の総長と副総長だ。

 因みに静華は世界No.1の暴走族。

 だから、喧嘩の腕はなまっちゃいないわ

 「なまってるわけないでしょ?、いいよっいってあげるよ」

 そう答えると優斗は笑いながら

 「約束な?他の奴連れてくんなよ?二人でこいな」

 と言い残して席に戻った。

 「ごめんね?大丈夫?」

 と月愛に言うと

 「なにいってんの?大丈夫に決まってる!」

 と笑顔で答えてくれた。

 二人で話し合って今日は帰る事になった。

 因みに静華の幹部達も集めて。

 倉庫直行。

 倉庫に行くと、すでにメンバーが集まっていた。

 「ごめん~遅くなったー!」

 「もー!遅いですよ!」

 最初に声を上げたのはNo.4の凪《なぎ》

 ちょーかわいい!

 「なんでこんな時間にあつまるの?」

 この白髪はNo.3の優留《すぐる》

 こんな可愛い顔して私と月愛くらいには強いのよね~。

 「待ちくたびれました。」
 この緑髪はNo.5
 柊人《しゅうと》
 めっちイケメンすぎ…
 これで喧嘩強いとかヤバいは

 「結良!大丈夫か!」

 心配そうに私の方へ駆け寄るイケメンは
 副総長の爽葵《そうき》

 いかにもイケメンって感じの名前…


 あ!ちなみに私の彼氏!

 あれ?咲駒は?

 No.6の咲駒《さく》
 彼は色んなところで寝てるから…
 どこにいるかわかんないんだよねー

 「ここにいるよ!」

 と上から降ってきた…。
 うん、バケモンだわ…。


 「よし!メンバー集まったし!ちょっと相談てきな!話するからね!」

 一通り話し終えたら皆なんて言ったと思う?

 《…殺る》だよ??
 怖い怖い
 
 「まぁ大丈夫だよー」

 「いや、俺たちも行く!」

 …優しいな

 「でも大丈夫!何かあったら連絡する!」

 と言うと渋々了承した。

 その後は皆で遊んで解散になった。

 そして迎えた26

 「服なににしよっかなー?」 

 「動きずらいのはやだなー」

 手に取ったのは黒のズボンとシャツ

 シャツにはネクタイがついててチェーンがついている。
 ズボンもチェーンがついててシャツとセットで買ったもの。

 さっさと着替えて月愛と合流しないと。
 月愛に連絡したら『大丈夫!』と返ってきたのでそのまま倉庫直行となった。

 月愛はバイクで行くらしいから私は歩きでいこ~

 るんるんで行く私は数時間後あんな事になるなんて思っても観なかった。