これは、君と私の生きる理由を探す











                    
                     旅のお話し














              君の生きた時間が皆に届くその日まで














                    一章  
 

「…遅い」

一人でいるには広すぎる部屋。

中心には大きいテーブルに、その形に添って置いてある椅子。 

数だけで10個以上はある。

その中に一人椅子に座って悪態をつくのは大学1年生の白鳥夢来(しらとりゆら)

これでも世界的にも人気なYouTuberなんです。

因みに私がいる場所はテレビ局。

なんでここに来ちゃったのかな…。

それはさかのぼること2日前、私が所属している事務所から電話があって

「オファーがきたからテレビ局に明後日行くからね!」

と言われた。

急すぎるしオファーって…俳優か?!って突っ込みもいれたかったけど儲かるならいいよねって事で来て

しまった数時間前の自分を殴ってやりたい。

私がYouTuberになったのは憧れとかじゃなくてしっかりとした理由があった。 

私の家は母子家庭だ。生きるためだからってお母さんはずっと仕事に行って帰ってこない日も多かった。

だから、少しでもお母さんの負担を減らせるかな?っと思ってYouTuberになった。

今はお金もそこそこ稼げてるから良いものの、これがなくなったらお母さんの負担が大きくなっちゃうか

らずっと続けてる。そんな時に電話があったのだ。

お金が貰えるなんて嬉しいに決まってる! 

だから、オファーを断るつもりはないし、いくら待ってもお母さんの負担が減るなら頑張れる!

と意気込んで数十分。

今私は悪態をついている。

「次の企画でも考えておくか。」

鞄からパソコンを出し、机に置く。

カタカタとキーボードに指を置き動かす。

あれから五分経過。

私は腕を組んでいた。

「どうしようかな…」
企画自体は思いついてるのに、それを実行しようとするとかなり時間がかかる。

「うーん…」

悩んでいると


コンコン

とノック音がした。 

「失礼します。」

どドアを開けると同時に声が聞こえた。

声の主が顔を出す。 

資料らしきものを持ってこちらに来る人物。

早足で私の向に立ったその人は見た目からして20代ぐらいの人…。 

とっても顔立ちが整っている…これを世に言うイケメンとゆう奴だろう。

まぁ、どうでも良いけど

「私はここ、toujours(トゥジュール)の社長をしている渡瀬です。」

椅子から立って頭をさげる。

「YouTuberのあすかです。」  

と短い挨拶をした私。 

「すみません、私から呼び出しておいて待たせてしまって」

「いえいえ!とんでもございません。社長となれば時間をとるのも大変でしょうに…」

そう、toujoursは、世界的に有名な芸能事務所。その社長となれば忙しいはずなのだ。

「それでその忙しい渡瀬社長から直々にお話しとゆう事は、それ程重要な事なのでしょう。」

「あぁ、そうなんですよ。」

と少し困り顔をしながら話し続けた。

「実は世間で名を馳せるあなたにお願いがあるんです。」

「一人呼んでも?」

意図は分からないが挙止する事もないと判断し、頷く。

それを確認したやいやな電話をかけた。 

社長が携帯の電源を落としたと同時にドアが開いた。
「失礼します。」

入ってきたのは今世間を騒がせている俳優の金森悠斗

面倒事に巻き込まれるような気がした。

まぁその予感は的中するのだけど。

彼は私を見てお辞儀をして社長の隣に座った。

「彼は金森悠斗、君も聞いた事ぐらいはあるだろう。」

彼が椅子に座った事を確認して話し始めた。

「えぇ、小耳には挟みますね。」

ちらりと彼の事をちらりと見て、気にしてなさそうなので話しても良いと思ったから続けた。

「余命が一年しかない…と」

私の言葉を聞いて、社長は静かに頷いた。

「そうなんだ。」

「そして、私達は彼に今までの事に関して感謝しているんだ。」

「だから、彼がしたい企画を考えた。」

「そのしたい事は、彼から話してくれるようだ。」

と言い彼がいるほうに目を向けた。

彼に頷いて合図をする。

それを見て話し始めた。

「俺は、生きる理由を探したいんだ。」

「でも一人ではないと思う」

「今まで俺をテレビに写す事は沢山のスタッフさん達のおかげだから。」

と言って口を閉ざしてしまった。 

それを見た社長が私に話しかけた。

「つまりねあすかさん。」

「悠斗に協力してくれないか?」

「撮影の為のお金も出すし、他で金も出す。」

「お願いします!」

「…ッ」

夢来はその時、ある日の記憶が浮かんだ。

それはなくなった父の言葉だ。

『人間には始まりがあるとすれば、終わりもあるんだよ』

『夢来?お父さんとお母さんはね、ずっとここにいる訳じゃないんだよ』

『それはお父さんとお母さんだけじゃなく、これから出会って仲良くなった人、今仲良い子達にも言える事なんだ』

『困ってる人がいたら手を差し伸べるんだぞ?』 

『夢来が手を差し伸べたことで何かが、変わるかもしれないから』

幼い頃の私には、何を言っているか分からなかった。

そんな事を言っていた父は1年後亡くなった。 

夢来の父も余命宣告をされていたのだ。

だから、人事には思えなかった。

「…わかりました。」

「引き受けましょう」

ただこの人の見る景色を私も見たいと思った。


「ありがとうございます」

私の返事を聞くなり嬉しそうに目を輝かせた。

「ただし条件があります」

「1つ撮影費以外のお金は…いりません」

「2つ事前に予定は教えてください」
 
「3つ、学校にはそちらから説明してください」  

「4つ、…私はあなたがたの協力者です。なので言いたいことがあったらすぐに言う。
 協力できることはするので、相談してください」

「最後に」

「私は別にあなた方に苦しんで欲しくないんです。それが有名人の金森悠斗でも、その前に一人の人間なんです。」

「あなたは有名人だからって一目置かれて苦しい思いをする時もあったでしょう。」

「でも、有名人の前に人間なんです。全員、YouTuberでも社長でも。」

「その事を自覚してください」

「そして、自分の事を大切にしてくださいね」

言い終わって一息つく。

「どうして…」

前から声が聞こえた。

顔をあげると彼と目があった。

「…ただあなたの見たい景色を私も見たくなっただけです」

その日は企画の説明をしてから解散した。

「疲れたー!」

テレビ局から出て少し歩いた所で背伸びをした。

すると後ろからトントンっと背中を叩かれた。

びっくりして振り向くとそこには金森悠斗がいた。

「あの今日はありがとう」

と頭を下げてきた。

「頭をあげてください!私はそんな感謝される事はしてないです!」

おずおずと顔を上げた。

「あの…本名、教えてくれない?」


「白鳥由来」

「由来さん…」

「由来でいい」

「わかったじゃあ由来も悠斗でいい。」 

「わ、わかったよ」

不意打ちの名前呼びにびっくりしたけどまぁいいや

するとスマホのアラームがなった。

「いけない!配信だ!」

「早く行かなきゃ…」

視線がいたいなぁ…

ちらりと悠斗の方をみると無言で私の方に目を向けていた。

「家来て一緒に配信する?」

あぁ…なにいってんの??

「え、いいの?」

自分で言ったんだからことわれないぃ…

「いいよ、一応2人分の機会はあるから…」

「じゃあ行く」

返事をきいた私はTwitterに『ごめん!ちょっと遅れちゃう!でも今回は、大事なお話しするから

きてくれると嬉しいかも!』

とツイートしてタクシーも呼んで

「タクシー呼んだから待ってて」 

と悠斗に言った。

「わかった」

とゆう短い返事をした。

そして無言の時間

…おいおいおいおいいぃ!

私ばか?!

なんで初対面の男子を部屋に呼ぶの?!

「タクシーついたよ」

後ろから声をかけられてびくっとしたのはなかったことに…

まぁそんなこんなで今悠斗は私の家にいます。

時間は…7時半

ちょうど良いかも

「ねぇ悠斗?」

「なに?」

「今日配信に悠斗もでで」

「今日の事言うから」

「わかったよ」

スムーズに行く会話…

Twitterに『今から配信するよー!』とツイートして

配信用の机と椅子に座って

「悠斗もおいで」
 
と隣の席に目を向けた。

悠斗は静かに座った。

時間になってヘッドホンをして配信のボタンを押す。

悠斗も同じようにヘッドホンをした。

ピコンっと音がなった。

1人、また1人入ってくる
  
大きく息を吸って

「皆ー!今日も元気に過ごしてる?」

「今日も元気いっぱいなあすかだよー!」

「遅れちゃってごめんね…」

「今日はコラボしてくれる人がいます!」

私の一言でコメントが騒がしくなった

『だれだれ?』

『まさか、コラボ相手と大事なお知らせはつながってる?』

『YouTuber?』

『俳優?』

コメントを見ながら悠斗に目を向ける

「それじゃあ自己紹介してもらいましょう!」

その瞬間悠斗が深く息を吸ったのがわかった。

「皆さんこんにちは、俳優の悠斗です。」

その一言でコメントは一層騒がしくなる。

『悠斗ってあの悠斗?』

『なんであすかと悠斗がコラボ?』

『なにしきたの?』

『意味わかんな』

『凄いコラボだー!』

『めっちゃ良いペア!』 

多くの不思議がってるコメントと応援してくれてるコメント

酷いコメントもついている。

それを見た悠斗が自分の手で拳を作っていた。

「今回は悠斗と一緒にゲームしまーす!」

「悠斗!なにやる?」

「えー!好きなのでいいの?じゃあブロクラやりたい!」

「いいよー!やろやろ!」

みたいな感じでゲームをした。

「よし!今日はこれで終わり!最後に私と悠斗から大事なお知らせ!」

と良いながら悠斗の方を見た。気づいたのか目が合う。

静かに頷いて、口を開いた。

「俺が余命が1年なのは知ってる人がほとんどだと思う。」

「この一年は、俺のしたいことをする」

「そこで私!あすかが協力する事になったの!」


『えー!』

『どゆこと?!』
 
不思議がってるコメントが沢山ついた。

そりゃそうだ…。

今まで関係を見せていなかった2人が急にこんな事言い始めたら誰だってこんな反応になるだろう。

隣で私が悩んでることがわかったのか悠斗が口を開いた。

「皆、よく聞いてね」

「確かに今まで俺とあすかは関係がなかった。」

「でも俺はあすかと一緒にやりたい事をしたい。」

「その理由は、あすかは覚えてないと思うけど」

と言って私の方を悲しそうな笑顔をして私を見た。

「1年前のことかな、あすかがちょうど人気になってきてドラマに出た時。」 

「俺とあすかは共演してた。」

「その日発作が出てしまったんだ。」

「その時助けてくれたのがあすかだったんだ。」

「…」

覚えてるよ…覚えてる  

「その時俺は、あー、この人は優しい人なんだなって思ったんだ。」

「俺を見る目が皆と違ったから優しいそうな不安そうな本気で俺の事を心配してくれてる目」

「だから、俺は一緒に活動するってなったとき真っ先にあすかの事を思い浮かべた。」

『それってどゆことw?』