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 用事を終えた芹野が教室に戻ると、すでに大半の生徒が次の授業の予習をしていた。
 本来であれば芹野も同じように予習をしていたが、担任の教師から今日の放課後から始まる調整プロジェクトの件で呼ばれていたこともあって、特例で予習の時間は逃れた。本来であれば、一秒でも遅れたら反省文相当に匹敵する。
 そんな中、手をひらひらと振って芹野を呼んだのは、浦辺だった。
 出会って数時間、たいして話してはいないが、とっつきやすい浦辺はすぐに芹野の懐に入った。人懐っこいのはともかく、猫みたいな気分屋なところは音羽那留を連想させる。
 そんな浦辺と那留を会わせてから三十分も経っていないのに、なぜか浦辺の頬には赤い紅葉がついていた。

「それ、どうした?」
「いやぁ……仲良くしようって握手しようと思ったら叩かれた。意外に平手打ちって痛いんだな」
「那留に何を言ったか知らないけど、過度な接触は嫌われるよ」
「先に言っといてくんない? あーあ、那留ちゃんと仲良くなりたかっただけなんだけどなぁ。あと意外に力あるのな、あんなにひょろいのに」

(本当に何をしたんだコイツ……)

 芹野も那留とはそこまで長い時間を過ごしてはいないが、まさか手を出すとは意外だと思った。逆に羨ましいまである。

「……浦辺、お前は随分お気楽な性格だな」
「ん?」
「うちの学校は暴力禁止なうえ、加害者も被害者も両成敗ってことで、ペナルティが与えられるんだよ。プロジェクトの項目に乗っ取ってね。だからなるべく目立つ行動は控えたほうがいい」
「げっ……マジ? どんなペナルティ?」
「反省文ならまだいいさ」