「浦辺、君の言っていることが非常識だって思わないの?」
「『みらい成長プロジェクト』はただの施策だ。法律に載っているわけじゃないし、違反したって罪に問われることも死にもしない。ただの厳重注意で終わり。……まぁ、それ自体おかしいんだけどさ」
「……昨日からなんなの?」

 意味ありげに話す浦辺の言葉はすべて遠回りで、戯言で、綺麗事だ。
 那留自身も『みらい成長プロジェクト』をよく思ってはいないが、ひとりの力なんてたかが知れている。覆せないことは身に染みてわかっている。

()()()は壊れている! 世間から許されるべきではない、いい子でいなくちゃ捨てられるんだよ! ……いや、いい子じゃないから捨てられたんだ。いらない子はゴミ箱へ、当然のことなんだよ。みんながみんな、君みたいに思ったことをベラベラ口に出せるような奴らばっかりじゃないんだ! ちょっとくらいわかってよ!」
「自分をゴミ同然に扱うな!」
「えっ……」
「他人の評価なんて知るか! 大人の事情なんてもっと不要だ! それよりも、自分の価値を底辺以下にする奴に耳を貸す必要なんてねぇよ!」

 突然、浦辺が那留の声を遮るようにして怒鳴り込む。圧倒的な威圧感に押され、那留も芹野も言い返せない。浦辺の言っていることがわからないわけではない。
 むしろ、浦辺の言葉を信じたいと思ってしまった。

「……俺はわかったうえで厳しいことを聞くけど、那留ちゃんも試験官に指摘されたことがあるんだろ。例えば……口調とか、髪型。本当は腰くらいまで長かったはずだ」
「そ、それは……」