家に帰ると、甘酒を飲み干して着物からいつもの私服に着替える。やはりこの服の方が楽だ。
 マグロは今、台所に置いてある。運び込んだ時はあやかし達も手伝ってくれた。

「さあ、マグロの解体ですね……」

 沼霧さんも割烹着を着て、準備万端だ。

「まずは頭を落としますね」

 あやかし達にも手伝って貰い、まずはざくっとマグロの頭を落とす。目はまだぎょろっとしていて角度によっては光を放っている。

「頭ってどう調理しましょうか?」
「焼く、とか?」
「さすがに焼くしか出来ないでしょう。煮るのは無理よ。鍋に入りきらない」

 確かに母親の言う通りだ。マグロの頭は後程焼く事になった。
 次は胴体。いつも魚を卸す時のようにまずはお腹を割いて内臓を取り出す。内臓を綺麗に取り終えたが、内臓を全部捨てるのもなんだか勿体無い気はしてきた。

「とりあえず、洗って煮てみましょうか」
「そうだね」

 そして内臓を取り終えて、身を5枚おろしにしていく。マグロ自体大きいので3枚おろしよりかは5枚おろしの方が良いと母親と沼霧さんの意見からそう決まったのだった。

「よいしょ……」

 沼霧さんの無駄が無くてかつ力強い包丁さばきは実に見事だ。ここまで来ると職人の領域に入っている気もする。

「これで5枚おろし、出来ました」

 マグロが見事にいくつかの塊に分かたれた。ここからさらに食べやすく切っていくのだが、中々時間がかかりそうだ。

「お昼はこのマグロの刺し身と、煮しめの残りで良いですか?」

 沼霧さんからの質問に、私と母親はそれで良いと頷いた。

「とりあえず刺し身にはこの部位を使いましょうか」

 刺し身に選んだ部位を、沼霧さんはさくさくと切ってすぐに刺し身が完成した。

「お味噌汁いります?」
「そうね、お願い」

 母親の注文によって、味噌汁も作っていく。太ネギとマグロを一口位に切り、昆布と味噌を入れて完成だ。

「どれも美味しそう……」
 
 正月のお昼ごはんが完成した。最後に麦ごはんと、温めた煮しめの残りもそれぞれお皿によそって、食卓につく。

「では、いただきます」