「恋愛ごっこ」が可愛く変身したら本当の恋愛になった!

火曜日、先輩と廊下ですれ違った。私はイメチェンしたリクルートスタイルだ。すれ違いざまにニコッと微笑む。先輩も笑みを返してくれる。幸せな気分になる。その日の夜に私から電話した。

「昨晩はありがとうございました。ところで次のデートの予定を決めたいのですが、よろしいですか?」

「望むところだけど」

「恋人同志なら月一回はないですよね」

「そうだね。毎日会社で会えるけど、毎週でも外で会って話がしたい」

「それじゃあ、今週の土曜日に鎌倉へ行くのはどうですか?」

「いいね」

「時間と集合場所ですが、早めでよければ、午前8時に溝の口駅のJR方面の出口でどうですか?」

「了解した。楽しみだね」

「お天気になればもっと良いけど」

「雨なら、場所の変更もありで」

「分かりました」

◆ ◆ ◆
土曜日は快晴の上天気になった。少し暑くなりそうだ。私は約束の時間に軽快なスタイルで着いた。

白っぽいスカートにこの前と同じ白いスニーカーを履いて、白い半袖のポロシャツ、ピンクのリュックサックを背負って、ピンクのハットをかぶっている。

先輩はカッターシャツにコットンパンツ、歩きやすいようにスニーカーにしている。二人は気が合うというか、ほぼ同じスタイルになっている。

「お弁当におにぎりを作ってきました。お昼に食べてください」

「いつもありがとう」

二人はJRの溝の口から川崎へ出て、横須賀線に乗り換えて、北鎌倉で降りた。晴天の土曜日だから電車は混んでいたので、話はできなかったが、私は先輩に身体を寄せることができて、幸せな気持ちでいっぱいだった。

北鎌倉から歩いて途中のお寺などに寄りながら鎌倉の鶴岡八幡宮へ向かった。明月院でアジサイを見た。丁度見ごろだった。鶴岡八幡宮でお参りをしてから境内でお弁当のおにぎりを食べた。

先輩に大きめのおにぎり3個、私は小さ目のおにぎり3個を分けて包んでおいた。おにぎりの具は鮭と昆布とおかかにした。水筒を取り出して、カップにお茶を注いであげた。

横に座っている先輩が私のことをみている。目線を感じて顔を向けると目線を外された。

「おにぎりどうでしたか?」

「とてもおいしかった。いつも心のこもったお弁当ありがとう」

「ただのおにぎりですが、そう言われると作った甲斐があります」

私は水筒と包装紙をリュックにしまった。二人はまた手を繋いで歩き始めた。そして参道の回りの店を見て回る。

「何か記念になるものでもプレゼントさせてくれないか?」

「必要ないです。その代わり記念に一緒の写真を撮ってください」

途中、先輩が私の写真を撮ってくれたが、二人一緒の写真は撮っていなかった。そばにいた人に頼んで、鶴岡八幡宮を背景に二人の写真を撮ってもらった。

私のスマホでも撮ってもらった。私はとっても嬉しかったのでその写真を先輩に見せた。先輩が私の肩をしっかり抱いてくれている写真だ。私が笑って写っている。大切な記念の写真だ。

「これからどこへ行きたい?」

「まだ、時間がありますから、由比ガ浜へ行ってみたいけど」

「ここから歩くと30~40分かかるから、鎌倉駅から江ノ電で由比ガ浜へ行こう。そこから歩いて海岸へ行けば良いみたいだ」

「そうしましょう」

由比ガ浜へ着いた。海の匂いがする。波はほとんどない。二人で手を繋いで海を眺めている。私は海に入ってみたくなって、スニーカーを脱いで波打際まで行った。先輩はそれを写真に撮ってくれた。

ここでも一緒に写真を撮りたいと言って、近くの人に頼んで江の島を背景にして撮ってもらった。私は素足で先輩はスニーカーを履いている写真だ。

先輩はそろそろ帰ろうと言って、足が濡れて砂がついている私を座らせて、ハンカチで足を拭いてスニーカーを履かせてくれた。そうしてくれたことがとても嬉しかった。

帰りは由比ガ浜から江ノ電に乗って藤沢へ抜けて、川崎から溝の口へ戻ってきた。川崎から溝の口までは座席に隣り合わせで座ることができた。

座るとすぐに私は先輩の肩に寄りかかって眠った。疲れた。先輩は寝過ごすといけないので起きていると言っていた。

溝の口に着いたので、私を起こしてくれた。

「これからどうする。食事をしようか?」

「ちょっと疲れたので、焼き肉を食べて元気をつけませんか? 安くておいしいところがあります。店はあまり綺麗ではありませんが、今日はこんな格好ですし、においも洗濯すればとれますから」

「そうしよう。案内してくれる」

駅前から歩いて5分くらいのところに古いビルがあり、その二階に焼肉屋がある。私はいつも食べている肉をそれぞれ二人前とごはんを注文してあげた。それとビールも頼んだ。喉が渇いたので二人で飲みたかった。でも飲み過ぎには注意しよう。

「ここは焼き肉が食べたくなった時にときどき一人で来ています。値段の割においしいです」

「良いお店を知っているね」

「女子が一人焼肉って、おかしいですか?」

「いやいや、女子も肉食系が多くなったと、ちまたでは言われている」

「それどういう意味ですか?」

「別に深い意味はないけどね」

ビールと肉が配膳された。カルビとロースが二人前ずつ。まず、ビールで乾杯する。冷たいビールがおいしい。私は肉を焼き始める。焼き上がると二人で食べ始める。おいしい。タレも良い味だ。ごはんと一緒に食べる。

焼き肉がおいしいので二人は夢中で食べる。私は先輩のコップが空くとビールを注いであげる。それから肉も焼いてあげる。もちろん焼き上がった肉は食べている。二人とも無言だ。

ようやく食べ終わった。やはり二人ともお腹が空いていた。ようやくお腹が落ち着いたところで、私はスマホの写真を見ている。

「楽しかったね」

「思い出の写真です。今日を精一杯生きた証になります」

「大げさじゃないか? また、行こうよ」

「大げさではありません。だって、明日、私が生きている保証なんてありませんから」

「生きているさ」

「本当にそう言えるんですか? 父は一晩で亡くなりました」

「そうだったのか?」

「先輩も明日はいなくなっていることもありえます。帰りに事故にあったりして」

「縁起でもない。僕は沙知さんのためにも今は死ねないし死なないから」

「誰も明日のことなんか分からないと思います」

「確かに、前にも言ったと思うけど、神様だけが知っていればよいことを僕は知ろうと思わない。ただ、今を精一杯生きていくだけだ。それに沙知さんのために事故にも合わないようにしてね」

「だから、私も一日一日を大切にして生きていきたいのです」

「ごめんね、不用意なことを言ってしまった。二人で毎日を大切にしていこう」

「そうおしゃっていただいて嬉しいです。この写真は二人が仲良く生きていた証になる思い出の写真です」

勘定は割り勘にしてもらった。先輩は意外に安いので驚いていた。二人は駅のホームで別れた。今日もまた楽しい良い一日だった。
『恋愛ごっこ』が終わってから、期待していたけど、先輩はずっと私をマンションに誘ってくれなかった。私も先輩をアパートに誘わなかった。部屋に誘えばどうなるか二人には分かっていた。

「今度の土曜日に多摩川で花火大会があるけど、部屋に来て一緒に見ないか? 部屋から花火が見えて綺麗だから、それにらくちんだぞ」

「本当に部屋から花火が見えるんですか?」

「入室してから花火大会があって初めてベランダから見えるのに気が付いた」

「一緒に花火を見てみたいので行きます」

「それなら、6時に来てくれる。飲み物と食べ物を用意しておくから」

せっかく先輩が部屋に誘ってくれた。行かない手はないし、この機会を絶対に断ってはいけない。私は先輩とならもうどうなっても良い、いや早くどうかなりたいと思っている。迷わずにそれを受け入れた。

◆ ◆ ◆
土曜日、私は朝から落ち着かない。今日は浴衣を着て行くときめている。花火大会見物ときたら浴衣にきまっている。でも可愛い浴衣はあるが、父に買ってもらってから何回も着ていない。うまく帯が締められるか心配だ。

それで朝から浴衣の帯を締める練習をする。まず、ネットで帯の締め方を検索する。一人で締める方法があるし、結び方も色々見つかった。浴衣で締める練習をすると浴衣に皺ができると困るので、まず部屋着で練習する。

前で結んで後ろへ回す。何回か締めると要領が分かってきてできるようになった。ほっとした。これで浴衣姿を先輩に見せてあげられる。

今日持っていくものを考える。ひょっとしてお泊りになるかもしれない。そういうふうになったらいいなと思うけど不安だ。あとで借りてきたDVDを見ておこう。

そうなると、朝帰りになるから、浴衣で帰るとまるでお泊りしてきたみたいだから、恥ずかしい。念のため着替えを用意していこう。

あれもきっと必要だと思うけど、私が用意していくのもおかしいし、もちろん手持ちもない。先輩は気の付く人だから、準備はしてくれているだろう。その時はそのときだ。なるようになる。そうなる覚悟は誘われた時からできている。

先輩は飲み物と食べ物は用意しておくと言っていた。でも何か持っていこう。おいしくて気に入っているナッツの買い置きがあった。先輩も気に入るはずだから持って行こう。
 
準備ができた。遅い昼ご飯を食べながら、DVDを見ておく。まえにも1回見てこれが2回目になる。何回見ても恥ずかしい。一人だから見ていられる。先輩と一緒だったら恥ずかしくて見ていられないと思う。気持ちの整理のためにしっかり見ておいた。緊張して見ていたせいか少し疲れた。

眠っていた。気が付いたら4時少し前だった。行く準備をする。シャワーを浴びてお化粧をする。それから浴衣を着る。帯を締める練習をしてあったが、実際の浴衣となると、うまくいかない。3回目でようやく気に入った締め方になった。ホッとした。

◆ ◆ ◆
電車に乗ったら、浴衣姿の女の子が大勢いた。それにもう花火会場へ向かう時間なので、とても混んでいた。二子新地では大勢の人が降りたので助かった。

6時少し前に先輩のマンションに着いた。私がここに来るのは、先輩がインフルエンザで寝込んだ時以来だ。6時丁度に部屋のドアホンを鳴らす。

先輩はドアを開けるとピンク地に赤い花模様の浴衣に真っ赤な帯を締めた私を見つけた。じっと私を見ている。気に入ってもらえたみたい。

赤い鼻緒の下駄を脱いで玄関を入る。そのまま窓際まで歩いて行って外を見てみる。

「花火の準備がしてあるのが見えますね。本当にここは特等席ですね。楽しみです」

「今のうちに飲んだり食べたりしないか? オードブルもあるし、暗くなる7時過ぎにならないと始まらないから時間がある」

「準備するのをお手伝いします。おいしいナッツがあったので持ってきました」

「お酒は何にする? ビール、赤ワイン、缶チュウハイ、ジンジャエール、ジュース、何でも用意してあるけど」

「赤ワインはどうですか? ここなら酔っ払っても心配いりませんから」

「いいね」

部屋は前に来た時よりすっきりしている。それに良いにおいがする。きっと大掃除をしてくれたみたいだ。窓も綺麗に拭いてある。室温も涼しくて快適だ。勧められてソファーに座る。

二人で赤ワインを飲みながら、オードブルを食べる。私の持ってきたナッツがおいしいのか食べてくれている。日没が近いけど、外はまだ30℃以上はあると思う。来るときにかなり暑くて汗をかいた。でも室内は冷房が効いていて汗も乾いた。

二人はソファーに座って、外が少しずつ暗くなっていくのを見ている。私のグラスのワインが少なくなると注いでくれる。

「この赤ワインおいしいですね。少し酔いが回ってきたみたい」

そう言って、先輩の肩により掛かってみた。

「僕も気持ちよくなってきた」

お互いに寄りかかる。お腹が膨れてアルコールが入ったので、少し眠くなってきた。

いつのまにか二人はもたれ合って眠ってしまったみたいだ。「ドーン」という大きな音で目が覚めた。もう外はすっかり暗くなっている。先輩も目を覚ましたところだった。

「花火が始まったみたい」

「ベランダへ出ようか?」

ガラス戸を開けてベランダに出ると、ムッとした暑さだった。でも時々川風が吹いてきて不快というほどではない。

どんどん花火が上がっている。始めは二人で立ってみていたが、部屋の端に腰を下ろして花火を見ることにした。背中は部屋の冷房で涼しい。

「とってもきれい。聞いていたとおり、ここは特等席ですね」

「部屋の明かりを落としたほうが見やすいかもしれない」

先輩が部屋の明かりを落とした。私は花火を見ながら先輩の手を握ってみる。そして肩に頭を寄せてみる。先輩は私の肩に手を廻して抱いてくれた。すぐに身体を預けてみる。良い感じだ。

私は花火より気持ちがそっちの方に向いている。でもこうして身体を寄せ合っているとなぜか幸せな満ち足りた気持ちになってくる。

私は花火を楽しんでいる。大好きな先輩とこんな良い場所で一緒に見られるなんて最高だ。私は先輩の腰に手を回している。先輩はまんざらでもなさそう。しめしめ。

花火が終わった。長いようであっという間だった。終わってからもしばらく二人は動こうとはしなかった。このままずっとこうしていたかった。

どちらからでもなく、自然にキスをした。先輩は私を抱き締めてくれた。待ってましたとばかり力一杯抱きついていく。

「今日は泊ってほしい」

耳元で囁かれた。すぐに頷く。先輩は立ち上がって私の手を引いて寝室へ向かう。そして二人はベッドに倒れ込んだ。私はどうしてよいか分からず先輩の腕をつかんでいた。先輩が浴衣に手をかけてくるので緊張してドキドキする。心配になって私は先輩の耳元で囁いた。

「優しくしてください」

「ああ、優しくする。心配しないで」

それを聞いて力一杯しがみついた。私はこうして先輩のものになった。

◆ ◆ ◆
この部屋は3階だから、明かりを消していても街灯のあかりが入ってきて、薄明るい。冷房は良く効いている。

私は布団の中から先輩に話しかける。顔が見えないけど、恥ずかしいので布団にもぐりこんで顔を出さない。

「少し眠ってもいいですか」

「だめ、もう一度可愛がってあげたいから」

「もうこれ以上は無理です。まだ痛みがあって、ごめんなさい」

「分かった。でも少し話をしないか? そのままでいいから」

「はい」

「大丈夫だった」

「ええ、でも思っていたよりも痛かったです」

「沙知さんを早く自分のものにしたくて力が入った。ごめんね、もっと優しくするんだった」

「いいえ、優しかったし、とても嬉しかった。それからもう沙知と呼び捨てにしてください」

「分かった。そうさせてもらうよ」

「私、こうなると思って、ビデオを見て、予習してきたんですが、やはり緊張してしまって、それに予想以上に痛かったので」

「痛がっていたのは分かっていたけど、途中でやめるわけにはいかなかった。ごめんね」

「うまくできましたか、よく分からなくて」

「ああ、うまくできたから」

「よかった」

「そのビデオは『処女喪失』ってやつかな?」

「そうです。何回か見てきました。でもやはり実際は違いますね」

「ビデオを貸してあげてよかったのか、悪かったのか?」

「見ておいてよかったです。心の準備というか、覚悟はできましたから」

「まあ、結果オーライということかな?」

「慣れてきたら、別のビデオのようなこともしてください」

「ああ、沙知の望みどおりになんでもしてあげる」

「ギュと抱き締めて寝てくれますか?」

「もちろん、いいけど」

「抱き締められたままで眠らせて下さい。あのあとにこうしてもらうのが夢だったんです」

「分かった。いい夢が見られるように、沙知、大好きだ」

先輩は布団の中に入って来て抱き締めてくれる。抱き締められた私も力一杯抱きついた。良い感じ。そのまま静かに動かずにいると、いつのまにか二人は眠ってしまった。

◆ ◆ ◆
夏の夜明けは早い。4時ごろには明るくなってくる。目を覚ますと先輩の腕の中にいた。私は丸まって背中を向けて寝ていて、それを先輩が後ろから抱きかかえてくれている。抱いて寝てもらった。幸せな気持ちでいっぱいになる。

夜中にまどろみながら何度も抱き合ったり離れたりしていたような気がする。この形が一番落ち着くみたいだ。そのうちにまた眠ってしまった。

先輩が動いたのでまた目が覚めた。もうすっかり明るくなっている。このままでは恥ずかしいので、先輩が目をさまさないうちにベッドから抜け出してバスルームへ着替えを持って入った。

先輩は私がバスルームを出たときのドアの音で目を覚ましたみたい。私を見つけてじっと見ている。私はTシャツとミニスカートに着替えていた。

「おはよう」

「おはようございます。昨日の残りで朝食と昼食を作りますから食べて下さい。朝食を食べてから帰ります」

「休みだからゆっくりしていけばいいのに」

「帰ってお洗濯やお掃除をしなければなりませんから。今度の土曜日には私の家へ泊まりに来てください。夕食を作りますから。中華はどうですか?」

「もちろん喜んで」

「紙袋を貸してください。浴衣を畳んで持って帰りますから」

「その浴衣、とっても似合っていたね。それにとっても色っぽい」

「父が大学へ入学したときに作ってくれました」

「着替えも準備して来てくれたんだね」

「花火の浴衣で朝帰りするわけにはいきませんから、女の身だしなみです」

「ありがとう」

朝食の後片付けをしてから、私は幸せで胸をいっぱいにして帰ってきた。
今日は外勤で大岡山まで研究委託の打ち合わせに行ってきた。お昼に商店街を回っておいしそうな中華料理店をみつけた。そこで昼食に冷やし中華を食べた。とてもおいしい冷やし中華だった。

打合せが終わって会社へは4時ごろに帰って来た。それで帰宅中にお腹の調子が悪くなった。帰るとすぐトイレに行きたくなった。下痢をしていた。食欲もないので、そのまま休むことにした。

すぐにまたトイレへ行きたくなった。やはり下痢が治らない。トイレの中が少し赤くなっている。嫌な感じだ。お腹も痛くて不快感がある。

しばらく眠ったみたいだけど、お腹が痛くて目が覚めた。またトイレへ行きたくなった。下痢がとまらない。相変わらずお腹が痛い。11時だった。心配になって先輩に電話をかけた。

「夜分すみません。お腹が痛くて、下痢をして、トイレが赤くなっています。どうしたら良いのか分からなくて、心配で」

「それは大変だ。すぐに行くから、休んでいて」

先輩が来てくれる。そう思うと安心した。お腹が痛いけど眠れそうだ。

部屋の明かりが点いたみたいだった。

「沙知、大丈夫か?」

先輩の声が聞こえた。目を開けると先輩が私を心配そうにのぞき込んでいる。

「沙知、大丈夫?」

「うーん、痛い、お腹が痛い」

「大丈夫か?」

「おトイレに連れて行って下さい」

先輩は私を起こして抱きかかえてバスルームに連れて行って中へ入れてくれた。やはり下痢が止まっていない。トイレの中が薄赤い。

ドアを開けて出て行くと、心配そうに先輩が立っていて、今にも倒れそうな私を支えてくれる。

「血便が出ているみたい。トイレの中が赤くなっているから。それにお腹がとっても痛い」

「重症かもしれない。すぐに救急車を呼ぼう」

「お腹が痛い」

私をベッドに寝かせるとすぐに119番をして何か言っている。意識が朦朧としている。救急車のサイレンの音がする。

救急隊員の人が私を覗き込んで状態を聞いて確認した。そして私を担架で救急車に運んでくれた。寝台の横には先輩がいて手を握って励ましてくれている。

「沙知、しっかりして、大丈夫だから」

受け入れ先がきまったみたいで救急車が動き出した。救急車に乗るのは初めてだった。大丈夫かなと思ってうとうとしていると病院に着いた。

すぐにストレッチャーで診察室へ運ばれた。夜勤の医師が診察してくれた。そして採血、レントゲン撮影、心電図をとるように言われた。トイレでは血便を採取された。

再度の診察があった。すぐに入院して点滴を開始すると言う。看護師さんが3階の病室へ運んでくれた。まだお腹が痛いので心配だ。点滴を開始したら安心して眠くなった。

どのくらい眠ったのだろう。お腹の痛みは弱くなっているが、不快感は残っている。トイレに行きたいのでブザーで看護師さんに来てもらった。下痢は続いていて血便も出ている。

次に目が覚めたら、もう明るくなっていた。痛みは治まりつつあった。看護師さんが容態を見に来てくれた。体温を測って、お腹の具合を聞かれたのでありのままを答えた。

「婚約者の方が心配して何かあったら知らせてほしいと言ってロビーで徹夜されていました。夜明け前にお腹の痛みは治まりつつあって落ち着いて眠られていますと伝えてあります」

「婚約者というのは?」

「保証人の欄にそう書いてありましたよ」

「そうですか。会社に私が緊急入院したと連絡してくれるように伝えてもらえますか?」

「そうお伝えします」

それから今は面会謝絶となっていて、検査と診断の結果は午後には出るとのことだった。

午後1時になると先輩も病室へ呼ばれて、主治医から病状の説明があった。私の腕には点滴のチューブが繋がれていたが、その時はもう落ち着いていて、先輩に微笑む余裕があった。先輩も私の顔を見て安心したようで嬉しそうに微笑んでくれた。

診断の結果、病原性大腸菌O157の感染とのことだった。手当が早かったので重症化は免れたという。しばらく点滴して様子を見るが、下痢と血便が治まったら、食事を開始して一週間くらいで退院できるとのことだった。それを聞いて二人とも安心した。

先輩はすぐにその診断結果を研究開発部へ連絡してくれた。病室で二人になると私はニコニコして先輩に話しかけた。

「私との関係を婚約者と書いたそうですね」

「ごめん、入院の書類を提出しなければならなかったから、そうでも書かないと不審に思われるから、そうした。実際、赤の他人が真夜中に一緒にいるとおかしいだろう」

「看護婦さんから婚約者の方が一晩中ロビーで心配していましたよと聞きました。とても嬉しくて、ありがとうございました。それにアパートまで駆けつけてくれて、救急車を呼んで入院させてもらって、朝まであのままだったら手遅れになっていたかもしれません」

「『明日、私が生きている保証なんてありませんから』と言っていたのを思い出して気が気ではなかった。鍵を預かっていて本当によかった。すぐに部屋に入れたから」

「気が付いたら枕もとに居てくれて嬉しかった。私は一人でないと分かって」

「当たり前だ。沙知は一人なんかじゃあない。いつも僕がついている。ところで原因はなんなの? 心当たりはある?」

「外勤のお昼に食べた冷やし中華だと思います。そのあと、お腹の調子がおかしくなって、夕食は食べませんでしたから」

「災難だったね」

「これからは気をつけます。それから、一週間くらいは入院しなければならないので、とりあえず、歯磨き、カップ、ティッシュ、着替え、スリッパなどが必要ですが、入院の手引きに書いてあるそうです。パジャマとタオルはレンタルにします。ご都合の良い時に持って来てもらえませんか?」

「いいけど、着替えは下着だよね」

「はい、クローゼットの中のプラケースを見れば分かるので、何枚でもあるだけお願いします」

「いいのかい」

「恥ずかしいけど仕方ないです。あまり見ないで下さい。ほかに頼める人もいませんので。でもそれ以外のところは絶対に見ないで下さい」

「分かっている。一日休暇をとってあるので、これからすぐに行って持ってきてあげる」

「すみません。お願いします」

入院した総合病院は溝の口駅のすぐ近くだった。先輩はそれからアパートへ戻って、手引きに書いてあった必要なものを紙バッグに集めて持ってきてくれた。そして私へそれらを手渡すと早々に帰っていった。ありがとう、お世話になりました。

先輩はそれから毎日、退社してから病院へお見舞いに来てくれた。私も回復してきてメールのやり取りも可能になって二人の意思疎通はできるようになっていた。

先輩が私の緊急入院の対応をしたり、会社へ病状を連絡したり、お見舞いに来てくれていることは会社では知られていると思う。皆は私たち二人をもう先輩後輩だけの関係ではないと分かっていると思う。

私は入院してから一週間後に退院した。先輩は退院に付き添ってあげると言っていたが、重要な会議が入ってそれができなくなった。私は体力も十分に回復したのでタクシーで帰るから大丈夫と言っておいた。入院の時はパジャマで運ばれていたので、先輩は退院用に頼んでおいた衣服や靴を届けてくれた。

退院の日、先輩は仕事が終わってからアパートに様子を見に来てくれた。私はアパートで3日ほど療養したあと出社した。先輩、お世話になりました。
私が食中毒から回復してから二人の付き合い方にも変化があった。まず、会社の廊下でそばに誰もいないに時に会ったとき、私は以前にも増して、先輩に嬉しそうな笑みを見せるようにした。それは二人が先輩後輩以上の関係であると周りも分かったこともあるだろう。

あれから毎週末になっていたデートは、先輩が私の部屋を訪れて夕食を食べて愛し合ってお泊りして帰るというパターンと、二人が行きたいところへ出かけてから外食をして先輩の部屋へ戻って来て愛し合ってお泊りして帰るというパターンになっていた。

◆ ◆ ◆
私は敏感になってきて、愛し合っている間に何回も昇りつめるようになっている。その時は黙って力いっぱいに抱きつく。そうしないとどこかへ行ってしまいそうになる。先輩もそれが分かるのか力いっぱい抱き締めてくれる。幸せを身体いっぱいに感じることができる。先輩もそうなっていることを喜んでいるみたい。

敏感になったわけはあるものを一人の時に使っていたからだ。ある時にDVDで使われていたものをネットで調べてみたところ、いろいろなタイプや形のものがあることが分かった。

それを先輩も言っていたように興味本位で選んで買ってみた。恥ずかしいので品物はコンビニ受け取りにしたが、それとは全く分からないように包装されていた。

振動するタイプと吸い付くタイプの2種類をさっそく試してみることにした。振動するタイプをあそこに当てて、マニュアルどおりに最初は弱く徐々に強くしていく。指だけよりずっといい、気持ちいい、病みつきになりそう。

次に吸い付くタイプを試してみる。あそこに当てた瞬間に吸い付いた。使っていると快感で腰が震えて身体に電気が走ったようになって力が抜けて気を失いそうになった。初めての経験だった。きっとこれがイクっていうことだと思った。

◆ ◆ ◆
私は愛し合った後はいつも先輩に抱きついて一緒にいたいと言っている。先輩が帰る時はいつもまだ帰らないでと駄々を捏ねていた。私の一緒にいたいという思いは募ってきている。

先輩は私が入院した時に先輩が保証人欄に婚約者と記載したことをとても喜んでいたことを覚えてくれている。先輩も本当の婚約者になっておかなければならない、早くけじめをつけておかなければならないと思ってくれているようだ。それはよく分かっている。

私はこのごろプロポーズを待っている。先輩は私がプロポーズを受け入れてくれるのは間違いないと確信していると思う。その準備もしてくれていると思っている。

いつか相談したいことがあって話を聞いてもらっているとき、私が右手の薬指の指輪をいじって回していたことがあった。

「その指輪、素敵だね、どうしたの?」

「これは就職して最初のお給料をもらったときに買ったものです。よくここまで頑張れたという自分へのご褒美です」

そのとき、何気なくサイズを聞いてくれた。

それから子供のころの話をしていたとき私の誕生日を聞いていた。小学校に入学した時、3月生まれだから身体が小さくてランドセルがとても大きく重いので大変だったけど、今は3月生まれは同期より一年若いので得していると話した。

◆ ◆ ◆
昼休み、先輩から携帯に電話が入った。こんな時にゆっくり話せない。電話なら夜の落ち着いた時にしてくれればよいのにと思った。

「今週の金曜日、大切な話があるから、新橋の和食店『四季』へ7時に来てくれないか?」

「大切な話ですか? 分かりました。『四季』へ7時に伺います」

先輩は緊張していた。声で分かる。先輩の悪い癖で一度思い立つともう居ても立ってもいられなくなって行動に移してしまう。そのせっかちな性格がお付き合いするうちに理解できてきている。

『四季』はあの日『恋愛ごっこ』をやめて本当の恋愛をしようと言ってもらった思い出の店だ。先輩はどこにしようかと迷ったはずだ。あそこなら個室もあるし、和食のフルコースもある。周りを気にしないでゆっくり話せる。打ってつけの場所だ。間違いない!

昼休みが終わって居室にもどる途中に先輩に会った。先輩は私に会って落ち着かないようすだった。私は余裕を持っていつもどおりニコッと笑みをあげた。

◆ ◆ ◆
約束の金曜日、先輩は早めに会社を退出して「四季」へ向かった。この時も私は早めに出口から離れたところで先輩の出てくるのを待っていた。そして先輩の後を少し離れて歩いていった。

6時30分には「四季」着いた。約束の30分も早い。ほんの少しだけ間をおいて私も店に入った。先輩は私を見て驚いていた。係の人が二人を奥の個室へ案内してくれた。この部屋は初めてだった。掘りごたつの席で落ち着ける部屋だった。さすが先輩。

飲み物にサワーを二つ頼んでくれた。すぐに先付が運ばれてきたが、料理は少し時間がかかると言われた。7時からの予約だった。とりあえず乾杯したが間が持たない。先輩は緊張している。

「大切なお話ってなんですか?」

「そのことだけど、この前は『恋愛ごっこ』をやめて本当の恋愛をしたいと話したけど、今日は『恋愛』はもうやめにして結婚してほしい。どうかお願いします」

「でも『恋愛』はやめたくありません」

「ええっ、どうして」

先輩は動揺を隠せなかった。私はすぐに先輩の動揺に気づいて話し続けた。

「いつまでもお互いに恋愛をしていたいからです。もちろんプロポーズをお受けします。とっても嬉しいです。ありがとうございます」

「よかった。一瞬、断られたかと思った」

「お答えの順序が逆になってしまってごめんなさい」

「いや、僕の言い方が悪かった」

「お断りするなんて、そんなこと絶対にありえません。入社して初めてお会いしてからずっとこの時が来るのを夢見て待っていましたから」

「そうだったのか? 早く気がつかなくてごめん」

「お気になさらないで下さい。いつかおみくじを引いた時に末吉が出ましたね。そのとおりになっただけです」

「これを受け取ってほしい。婚約指輪だけど、3月の誕生石のアクアマリン。沙知に似合うと思って僕が探して選んだデザインだけど、気に入ってもらえると嬉しい」

私はケースの中の指輪を見た。横一文字に小さなアクアマリンが並んだ素敵なデザインの指輪が入っていた。嬉しくて嬉しくて涙が出そうになった。

先輩はその指輪を左手の薬指に嵌めてくれた。そして私の薬指に口づけしてから、唇にもそっとキスしてくれた。

「とっても素敵な指輪ですね。このデザイン大好きです。こんな高価なものをありがとうございます」

「いや、もっと高価なものをと思っていたけど、値段は申し訳ないほど安かったから」

「そんなこと関係ありません。私に似合うと選んでくれたのが嬉しいんです。ありがとうございます。大切にします」

丁度良いタイミングで料理が運ばれてきた。これでゆっくり味わって食べられる。それからは料理を食べながらいつものように話がはずんだ。私は一皿一皿味わいながら食べた。そして私は就職して半年後に配属されて先輩と初めて会った時のことを話した。

「百瀬先生から先輩の吉岡君に面倒を見てくれるように頼んでおいたから挨拶に行くようにと言われていました。それでご挨拶に行ったのを覚えていますか?」

「ああ、百瀬先生に頼まれていたリクルートスタイルの地味な女子が挨拶に来たのを覚えている」

「私、そんなに地味だったですか? あれでも形の違ったスーツ2着を交互に着て、ブラウスも毎日変えて、おしゃれしていたんですけど。今でも毎年新調しています」

「東京で派手なスタイルを毎日見ているとどうしてもそう見てしまうんだ。でもあの突然の変身には驚いた。急に綺麗で可愛くなって、あの時から沙知のことが気になりだした。男はだめだね、話していると心が和む良い娘だと思ってはいたけど、見た目に捕らわれてしまって」

「私は一目見ただけでかっこいい素敵な先輩だと憧れてしまいました。それで何かと面倒を見てもらううちに本当に好きになってしまって『恋愛ごっこ』をしてみないかと誘われたときは本当に嬉しかったです。それに彼女がいないと分かったから、気に入られようと一生懸命におしゃれしました」

「それで今度は僕が夢中になってしまった。なるようになったということだろう。沙知とはなぜか気が合って一緒にいると心地よいというか癒されるのが分かった」

「私もそうです。一緒にいると幸せな気持ちになります」

「お腹が一杯になったところで帰ろうか? 今日はこれから僕の部屋に来ないか? まだ、放したくないから」

「私も一緒にいたいからそうします」

私は化粧室へ立った。戻ってくると先輩はもう会計を済ませていた。今日は記念の日だから自分が持つと言って『恋愛ごっこ』をやめた日のように私の肩を抱いて駅へ向かった。
先輩の部屋に着いた。もう10時をかなり過ぎている。帰るのに時間がかかった。途中、電車が混んでいたので離れ離れになって立っていなければならなかった。

ここがどこよりも一番落ち着くのが二人には分かっている。私はこの時を待っていたように抱きついた。二人はベッドに倒れ込んで愛し合う。

始めのころとは違って、二人とも愛し合うことに慣れてきている。始めは私が積極的でまだ試したことのない体位を求める。私はいつも貸してもらったDVDを見て予習してきている。それが先輩から貸してもらったお礼だと思っている。私は何回も昇り詰める。

愛し合うことに疲れ果ててひと眠りすると、今度はすごく恥ずかしくなって布団の中にもぐり込む。布団の中で私は話し始める。

「私はいつだって今が一番良い時で幸せだと思うことにしています。今日は特にそう思っています」

「昨日はどうだったの?」

「昨日は今日のことを期待してとても幸せな気持ちでいられました。毎日そう思うようにしていると毎日幸せな気持ちでいられます」

「僕もいつのころからか、そんなふうに思うようになった。毎日仕事に追われていると、学生時代は良かったなと思う。時間もあって何でもできた。でもあのころは、学生だと言う閉塞感と将来の不安もあって、いつも悶々としていたように思う。早く就職したいとも思っていた」

「そして就職したてのころは将来に希望を持って仕事もできた。脇目もふらずに研究していた時のことが懐かしくなる。でも、あのころは思いどおりにいかなくて日々悶々とした生活を送っていたように思う」

「毎日良いことも悪いこともあるけど、それでもいつも今が一番良い時なのではないかと思うになった。そうなら、この今の時間を大切にしなければならないとも思うようにもなった」

「私と同じように考えているのが分かりました。だから気が合うようのかもしれませんね。その理由が分かりました」

「じゃあ、今を大切にするために私をもっと可愛がってください」

「ああ、気が遠くなるまで可愛がってあげる」

私が抱きつく。二人が婚約したこの夜はまだまだ続いた。

◆ ◆ ◆
次の日の朝、私は先輩に抱きついて眠っている。先輩が動いたので目が覚めた。

「おはようございます。抱きしめて寝てくれてありがとう。ぐっすり眠れました」

「僕も沙知を抱いて寝ると良く眠れる」

「毎日、こうして目覚めたい」

「じゃあ、思い切って一緒に住まないか」

「ここに私が? 一緒に住む? いいんですか?」

「1LDKだけど二人住めないことはない。こうして沙知と一緒にいると本当に心が休まるというか、癒されるから。僕はほかの人には頼らないで何でも一人でやる覚悟はできている。沙知に何かしてもらいたいから一緒に住もうと言っているんではないんだ。一人ではやはり寂しいんだ。自分のことは自分でするから、一緒に住んでくれないか。もちろん沙知のめんどうもみるから、考えてみてくれないか」

「私も一人暮らしは寂しいので一緒に住んでみたいです」

「できれば結婚式をあげて入籍して一緒に住むのがいいと思うけど、準備に時間がかかりそうだから、入籍しないで一緒に住んでくれというのはとても心苦しい。でも沙知と一緒に住みたい思いは強い」

「大好きだから、今を大切にしたいから、それでいいです。先のことは先のことですから、後悔しないように今を生きるだけです」

「そういってくれて嬉しい」

「さっそく、引越しの準備をします。いいですか」

「僕も手伝うから」

◆ ◆ ◆
それから、二週間経った土曜日に私は引越しをしてきた。そして3か月後に二人は結婚式を上げた。すぐに二人で恩師の百瀬先生に結婚の報告をした。

「二人が結婚して本当によかった。上野さんは苦労しているが良い娘なので、実はこうなることを期待して、吉岡君の会社を勧めたんだ」

「良かったら嫁にもらってやってくれは冗談と思っていましたが、先生の思いどおりになったということですね」

「上野さんにはそういうことは一切言わなかったけど、僕は吉岡君の優しい性格をよく知っていたから、すぐに挨拶に行って何でも相談にのってもらうように言っておいた」

「先生のご配慮で、良い人と一緒になれて幸せです。ありがとうございました」

「本当によかったね。二人末永く仲良く暮らしてください」

私たちは本当に仲良く暮らしている。ただ、週末には私の選んだDVDを見せて、このとおりにしてほしいと先輩にねだっている。それで可愛い私のためと努めてくれているけど、いつもぐったりするほど先輩は疲れ果てている。私は快感の海に沈んで安らかな眠りに落ちるだけだけど。

きっと先輩はあのとき全部20枚も貸すんじゃなかったと後悔しているに違いない。でも私は全部借りておいて良かったと思っている。いろいろなことを試せて最高に幸せだから!


これで私と先輩の「恋愛ごっこ」のお話はおしまいです。めでたし、めでたし。

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