レサパン商人と魔族の羅刹娘シェリー/「れとりばりっく!」外伝短編集、パラレル未来編(旧稿から)

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遺棄された古代の地下墓地の一角が、魔族の「羅刹娘」シェリーの住み家だった。彼女は一時期に人間の捕虜になって集団暴行されてなぶりものにされ、奇跡的に脱出・生還した経歴の持ち主である。

松明とランプ灯りで照らし出された地下室では、捕らえてきた人間の男が吊されている。舌を噛み切らないように猿ぐつわされ、手足を鎖で固定されている。素っ裸だった。


「きゃはっ! ちいさくなっちゃって、意気地がないんだなあ、男のくせに」


シェリーは軽薄な愉悦の笑顔で、ナイフを巧みに操って虜囚男の急所を玩ぶ。わざと色っぽい挑発的な表情と仕草で、残忍な遊びに耽っている。

やがて男が異常な興奮で生理反応すると、パチパチ手を叩いて無邪気に喜ぶ。


「あはは! 良く出来ました、やっと「男らしくなった」ねっ! こっからが本番だよ、ご褒美あげる!」


次の瞬間、男が呻いた。

ナイフが脇腹に突き立てられ、切り裂いたからだ。

もちろんそれだけでは終わらない。シェリーは目を輝かせて、傷口から細くて小さな手指を差し込み、ねじ込んでいく。こんなときに「女に生まれて、手が小さくて良かったなー」などと思うそうだ。

やられた男は目玉を飛び出させて、猿ぐつわのままに絶叫していた。全身に断末魔の脂汗が滲んで、ショックと苦悶の小便が飛んだ。そして魔術の効果もあってなのか、簡単には死ねず、感覚もおかしかった。


「ほうら! きもちいいでしょ? きもちいいでしょ?」


潜り込ませた手で内蔵を生きたままに玩び、感触と温かさを楽しむ。直腸を優しく握ると大便まで盛大に漏らしてしまうが、足下には大きなたらい桶が置かれていた。前立腺を直に指でくすぐられて、妖しげな感覚が窮迫してきて、とうとう精液まで噴き出させる。


「あーあ、そんなに気持ち良かった? お漏らししちゃって」


シェリーは愉悦と勝利感に酔った顔で、引き抜いた手の血を舐める。魔族にとって人間の血液は酒や蜜のようなものだから。
腹部の穴から膨らみこぼれだした赤黒い腸が、地面のたらいに汚物ととぐろを巻いていく。それでも哀れな男が死ねないのは、拷問者が巧みに致命傷を避けているのと、事前の生命強化魔術が原因だろう。簡単に死んだら、彼女としては面白くないからだ。

思いついたように瀕死の男の猿ぐつわを外してやる。天使のような笑顔を咲かせて言う。


「ねえねえ、あなたはもう助からないけど、可愛がって気持ちの良いやり方で殺してあげようか? お願いしたら、優しくしてあげる」


「お、お願いします! こ、殺して!」


「それだけ? こんな可愛い女の子なのに、それだけ?」


「こ、殺して下さい! あなた様に殺されたいです!」


すると、シェリーは不興そうに、指で男の陰嚢をピンっと弾いた。こんな察しの悪い男は嫌いだった。


「バカ? せっかく「良くしてあげる」って、この私が言っているのに? 可愛がって貰えたら男冥利でしょ?」


男は発狂・絶叫して、気が狂ったようになって「お願いします、どうか可愛がってなぶり殺しにして下さい」と生きも絶え絶えに答えるのだった。

シェリーは片手で男のピクピクしている急所を鷲づかみにし、空いた方の手は自分のスカートの中の濡れた秘部に這わせる。残虐行為しているうちに欲情してきていたらしい。そして頭の中では、エルフでサキュバス騎士のレオのことを考えながら、禁じられた遊びを楽しむのだった。


3

同じ頃、魔族の支配領域にある歓楽街の店の一つでは、魔族の客に特製ラーメンが振る舞われていた。店主はドワーフで、あのレサパン商人ファルコン・チャンの同族の舎弟らしい。


「この店って美味いよねえ、材料って何使ってるの?」


あいにくの隠し味は、魔族の塩漬け肉とケシの実。そして人間などの女性の使用済みパンツも一緒に煮込む(裏ビジネスで中古の女性下着の怪しげな転売などもやっているようで、その売れ残りらしい)。

それだけ無茶苦茶やっても「美味い」評価なのだから、料理人の腕前はたぶん一流なのだろう。
この「レサパン商人」ファルコン・チャンはドワーフ出身の「旧魔王戦役」での英雄、魔獣に覚醒しレッサーパンダになった男(原人騎士クリュエル・サトーなどとは旧知の友人らしい)。現在は商会を営んで、冒険狩人ギルドや都市・村と商売している。

教会堂の村や冒険狩人ギルドの生活風景については既にネタ記事にしたので、今度はレサパン商人・商会のビジネスや謀った奇計について、笑えるものを中心に紹介していこう。


1普通の商売。人間の村や都市、各種のギルドやドワーフ・エルフたちと商売している。本店・直営の店舗では武器・防具やアイテム類を取り扱い、通信網の一端も担う。


2飲食店経営・指導。同族・配下のエルフやドワーフに出資や指揮指導して、町などに数店舗の炒飯・餃子・タンメンなどの軽食堂を経営。本店への商品注文も受け付け、簡易宿泊所や通信も請け負っている。


3トレジャー・ハンティングで森やダンジョンを徘徊してアイテムを収集・入手する。ただしエルフやドワーフの村や冒険狩人ギルドからの購入・代理販売が過半、縄張りや管轄の問題もあるので「付き合い」で同行するような場合が多い。


4エルフやドワーフが秘密栽培や収集した麻薬性の植物などを、魔族の支配領域に密輸する。支配下の人間の貧民に出来るだけ打撃を与えない配慮から、魔族などの支配層への嫌がらせ・混乱惹起のために高級クラブなどに裏取引。

マフィア・レサパンの別名の由来。だが魔族側も人間側に同様の嫌がらせと破壊工作しており、水面下で死闘と報復合戦が続く。


5魔族側の支配領域下の人間やエルフ・ドワーフのレジスタンスに、武器や物資を廉価輸出や援助する。魔族同士の紛争に危険度の高い兵器を売りつけて内戦を激化させることも。もちろんクリュエルなどの防衛・冒険狩人ギルドの一部も共謀・グルである。

実は魔族側も人間側領域にに対して同様の撹乱・破壊工作を(略)。


6人間やエルフ・ドワーフなどの女性の使用済み下着を購入し、魔族(や物好きな変態)に転売する。建前は救貧対策だとか? 冒険狩人ギルドの裏ビジネスの春画(エロ絵)の製造・販売と並ぶ「シュールな暗部」で、そちらの「たぬきっき画伯」とも交流があるそうだ。


7地溝油とダンボール餃子の事件。都市下水道に浮いた油を精製した「地溝油」や、再生資源ダンボールを餃子の具材にして、魔族領域に密売したことがあった。しかし現地の下層民である人間に被害が出て、苦情が殺到して中止されたらしい。


8人間側領域での死刑囚の肉を塩漬けなどにして、魔族領域で「珍味」として販売する。ただし「魔族の屍肉との合い挽き肉」であり、「共食い文化の加速」を謀る奇計。


9魔族領域で高級ラーメン屋(屋台?)ビジネス。危ない塩漬け肉や、売れ残りのパンツなどを具材やダシにしているが、「幻のラーメン屋」として好評らしい。


10半魔族とされる鮮魚人とも取引している疑惑があるようだ。鮮魚人はエルフやドワーフのような「人間の亜種」のはずなのだが、より進化系統・血縁は遠い種族らしい。素行と性質の悪さから「下級魔族の一種」と見做されることも多い。
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時に、旧魔王戦役の時代。


「おい、ガジュマル。このアホどもをどうする?」


眼帯でカンフー服のレッサーパンダ、ファルコン・チャン(後のレサパン商人)の冷酷な問いかけ。

周囲では配下のエルフやドワーフたちが陰険な笑みを浮かべ(エルフがしたらダメな表情で!)、柱に縛りつけられた魔族の捕虜数名を囲んでいる。

ガジュマル・リーは無骨なナイフを持った、いかついエルフの青年。顔や腕に刺青まで入れて、凶暴と残忍のオーラを漂わせている。


「酷刑」


「是!」


「凌遅」


「是!」


目をギラつかせたガジュマルは、まず陰茎を睾丸を切り取る。それを受刑者魔族の口に詰め込んで、針金のような金具で唇を貫いて縫い合わせる。吐き出せないように。

どっと歓声が上がる。


「凌遅刑だ! 愚かな魔族どもに、身でもって恐怖を教育してやらなければならない! 我々を思い出すだけで震えが止まらなくなるよう、この辺りいるだけで吐き気がして生きた心地がしなくなるよう。奴らを躾けてやる見せしめだ!」


拳を振り上げたガジュマルにレッサーパンダのボスは腕組みで満足げに頷き、構成員メンバーたちも賛成の怒号を上げる。皆が怒り狂っているのであった。

この「凌遅」とは、恐るべき古代チノ帝国が編み出した残酷刑罰の筆頭格で、生きたまま何百回も肉を切り取って殺すやり方だ。

まず、ガジュマルが胸元の肉を切り取り、ナイフを次の者に渡す。切り取られた傷跡からは恐怖であまり血が出ず、魚の鱗のような切り口になっている。別名「魚鱗刑」たる由縁であった。

肉片は、痩せ衰えた魔族の捕虜に投げ与えられる。地面に口をつけて貪り食う姿は動物のようで、手足はへし折られ切り刻まれ、銀の釘が打ちつけられている。両目は抉られて、真っ暗な眼窩にはとっくに知性が欠落している。頭にも釘が何本も刺さっていた。


「ひいいいいい!」


怯える魔族の捕虜を取り囲んで残酷刑罰を執行しつつ、「リョーチ、リョーチ」と手拍子しながら、皆が残酷な笑顔で見守る。


「ひゃめいぇくれ!」


命乞いに呻く顔面に、ガジュマルの鉄拳が炸裂する。口が切れて血を流し、折れた歯を吐き出したところへ、さらにボディブローが太鼓を破るような音を立てる。容赦はない。

嘔吐する魔族捕虜。もしかしたら、肋骨にひびくらいは入ったかもしれない。


「やかましいんだよ、この豚犬野郎!」


そのまま殴り殺しそうになるガジュマルを、仲間たちがどうにか制止する。あまり楽に殺してはダメだ。


「殺す。ゆっくりと、殺す」


鬼の形相で歯の間から押し出すように呟く。燃え立つ憎悪で目が血走っている。しかし、彼だって最初からここまで凶暴凶悪だったわけではなかった。

最初は普通にエルフ村で慎ましくものどかな暮らしを営んでいて、人間の村にもシューマイや薬草を売りに行っていた。ところが人間村が魔族の襲撃で襲われて惨状を目の当たりにし、妹が誘拐されて探す目的で反魔王レジスタンスに入団したのだ。

だが、ようやく再会した妹は剥製にされて飾られ、両手足と乳房・肝臓は切り取られていた(魔族の晩餐にされたのだろう)。無残に切り拓いて展示された腹の中には魔族との赤ん坊が晒されていた。

以来、ガジュマルは完全な復讐鬼と化していた。みんな、多かれ少なかれ、似たり寄ったりだ。


「よーし、埋めてやろうぜ」


最後に柱ごと穴に向けて倒し、みんなで投石して、そのまま生き埋めにする。

村の老人や女たちも参加していた。エルフ・ドワーフや人間の生き残りたちも。
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馬車の後ろに、のこぎりで手足を切られた魔族の女が鎖で繋がれている。

この捕獲された「人食い魔女」は一通りにエルフや人間の女たちから「同性ゆえにかえって無慈悲な」制裁と拷問・虐待を受けて、凌辱されていた。皆が見ている前で犬と交尾させ、極太の棒きれを股間に二本押し込んで、漏斗で大量の水を飲ませた。それで吊し上げ、三カ月の妊婦のように膨らんだ腹を怒った女たちが順番で殴り続けたのだ。

今は馬車の後ろにつないで引きずり回し、「便所」にしている。訪れる女たちがスカートをめくって小便をかけて、罵倒するのだ。


「可哀想」


たまたま偶然に近寄ってしまった一人の小さな男の子が、それを見て呟く。

レオはまだほんの三歳くらい。半魔であるサキュバス姫男爵の息子のエルフだから、魔族の血筋も引いている。あるいは、哀れな捕虜の女を母親と似た何かとでも思ったのか。


「ちょっとだけ、ママに似ているし」


居合わせたガジュマルは頭を振った。


「こいつはな、お前の母ちゃんのサキさんとは違うんだよ。人を襲って食べる悪い奴なのさ。だからみんな怒っている。逃がしたら、また悪いことするし、犠牲者が出る」


「そうなの?」


「そうさ。敵なんだ」


決まり悪そうなガジュマルに、小さなレオは考え顔になっていたが、ややあって言った。


「だったら、僕が殺して楽にしてあげていい? こんなの、あんまり可哀想だよ」


呆気にとられて、返事に困る。しかし少年の目を見て本気なのだと悟る。「賢い子供だな」と思いつつ。


「わかったよ」


ガジュマルは魔女を押さえつけ、レオが小さなナイフで喉を切る。どうせいつかは自分でやるしかなくなるのだから、決断を助けることにしたのだ。最初に手を下す理由が優しさや慈悲の方が、手遅れな憎悪や復讐より救われる気もした。

そして半死半生だった魔族の女はどこか安堵の表情で息を引き取った。きっと、これで良かったのだと思いながら、半泣きの小さな男の子の頭を撫でてやる。


「よくやった。上出来だ」


そこへ、ドワーフの若い女が二人やって来る。あらかた用を足しにきたのだろうが、予想外の光景驚いているようだった。


「殺しちゃったの? まだもうちょっと可愛がってやろうと思ってたんだけど。・・・それにレオ君にそんなことをさせるなんて!」


「男が決断してやったことに、女がピーピー言うんじゃねえ」


それは、レオの一番幼い頃の思い出だ。彼は先天的なエルフの「狩人」だったらしいが、成長後のアイデンティティにも影響を残した遠い記憶の物語。
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ついに捕縛された「ホットドックの魔女」。一説では彼女の有名な伝説的な得意技の一つは人間の男を誘惑・虐待して、勃起した陰茎をパンに挟んで食い千切ること。これは真偽不明で風説なのだが、単に好色であることを「雌犬」と揶揄したという見方もあるようだ(その点で人間女性たちからも激しく憎まれていたようだ)。

ともかく、魔族の女が人間を偽装して都市に紛れ込み、徒党で人間を騙したり襲ったりしていたのだった。捕獲された一派は人間の手下を含め、数十人に上ったという。

怒り狂った人間の都市住民たちは、復讐と見せしめを兼ねて残酷な虐待とリンチに及んだ。保安官(官憲・警察)や守備隊(軍)の大部分も手を焼いており、(普段から魔族と結託した腐敗勢力・マフィアからの)脅迫や政治圧力で押さえつけられていたので快く思っておらず、この際に特に止めようとも思わなかったらしい。



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「や、やめろおお!」


吊されて、鬼の形相の女たちから交代で鞭打たれる「ホットドックの魔女」。魔族ゆえに見た目は若いようだったが、とっくに血塗れになっているのだった。

先に男たち数十人で入れ替わり立ち替わりに輪姦されていらために、焼き切れた股間からは生臭い液体と血が混じって内股から足元に流れている。

それだけで済まない。

なにしろ人間の女たちからすれば、男たちを騙して奪われたことだけでも殺意に十分だろうが、子供なども誘拐されて大勢犠牲になっている(男以上に、極めて重大だろう)。しかも本人たちも騙されて魔族の男たちに売り飛ばされ、虐待されて命の危険にさらされたような者も多い。


「このゴミ女、雌犬が!」


「こんなもんじゃ足りないわ! 思い知らせてやったらいいんだわ!」


「ガツンとやってやれ! はい、これ使って!」


とっくに手足の骨はへし折られ、骨盤までが折れ砕かれていたが。しかも乳房には十何本も太い釘が深く刺さっている。騙しで追い込まれて家庭崩壊、夫を自殺させられ娘二人を奴隷に売られた大工の女房が持ってきたのだ。


「うぎいっ! い、痛い!」


執行人の一人(マッチョな女兵士、保安官だった父親は魔族との戦いで殉職)に手渡された大きな金槌で、陰部の恥骨が無造作にガンガンと打ち砕かれる。

叩かれる恥丘の陰毛が消し炭のようになって焦げているのは、さっきマッチの火で炙り焼かれたからだ。親の借金のカタに未成年売春を強要されていたマッチ売りの少女が持参した。男の処刑囚人の金玉を炙った残りのおすそ分けだったらしい。「女の人にはあんまり効かないかもだけど」とおずおずと言う少女に、他の仲間たちは「ありがとう、そんなことないと思う」「みんなで力を合わせるのが大事なのよ」とか、「あなたも辛かったもんね、あなたの分もちゃんと仕返ししてあげる」などなどと優しい言葉をかけたらしい。

ただし、その優しさや温和で思いやりある感情的交流はあくまで味方側・仲間内でのもので、凶悪犯で組織犯罪者でテロリストで敵の魔女は「除外」だけれど。


「痛いか! 痛いか、ええっ? この腐れアマ! さっくりぶっ殺す前に、あの世でも二度と女の真似出来ないようにしてやる!」


「いーぞ、潰しちゃえ! どうせ最初から心の中も爛れたマンコも腐ってるんだし、お清めしてやった方がそいつのためなんだわ」


「ほら、これもプレゼントしてやって。最後に満足させてやろうよ」


抵抗不能で大股開きに縛り吊された魔女は苦悶にのたくったが、新たに見せつけられたおぞましい凶器を見てブルブルと震え出す。

それは、子供の腕ほどもある棒だった。先端を丸くして人形のようにしてある。


「ま、まさか?」


「そうよ。これ、あんたの中に入れてあげるの。地獄で寂しくないようにねえ。永久に地獄の火で焼かれて悪魔に鞭打たれながら、一人で寂しくマンズリして悶えてろよ。「あひーっ」とか、お前の汚いイキ顔見たらしい、悪魔だってどん引きするでしょーねえー。

どっちみち、お前に与える余分な男なんていないんだから。あいつら私らに奉仕したり、ウチらの町や村を守ったり子供らとか養うだけで手一杯なんだし。私らだって別に鬼じゃあないから、健気な男どもの面倒くらいはちゃーんとみてやるし。あんたみたいな腐れ魔族女なんかより、料理とか身の回りの世話とか夜のアッチだって、私らの方がずっと良いに決まってるでしょ? 後家さんもいるしそこいらの婆さんだって、あんたら非人間の出来損ないなんかよりまだ良いんじゃないのぉ?」


どっと笑う女たち。ついでに近くに居合わせた男たちに同意を求めるチラチラした視線が鋭かった。
見かねて同情や制止する素振りを見せた男の腕を捕まえて、さりげなく「だめですよー」とやたら可愛らしい眼差しで叱りつける。

これみよがしに手近・手頃な男に取り縋って、わざと甘えかかってキスして見せつける女もいた(前から狙っていた相手なのか? それとも親しい間柄なのか)。処刑されている魔女を睨む彼女の眼差しは「コイツも、お前のものじゃないから。私や私らの所有物だから」と暗黙に宣言している(冷酷な勝利感で目が輝いている?)。


「はーい、プレゼント」


「は、入るわけない! そんなの入るわけない、壊れるから、ぷべしっ!」


怯えて抗議してた凶悪魔女の顔面を、別の女の革紐を拳が「黙れよ!」と力いっぱいに叩き潰していた。過去に彼女は魔族の手下たちから森で誘拐されて集団暴行され、一緒にいた婚約者と兄も殺されていた。


「どうかしら?」


取り囲んだ人間たちは冷酷な笑顔で見守っている(鬼か悪魔か?)。そして「女の敵は女」という格言も実現されているようだった。

最後のサプライズ・プレゼントの挿入式が始まる。


「あぎいい! さ、裂ける! 裂ける! オマンコ裂けて死んじゃう!」


「へー、死んじゃうくらい気持ちいいんだ?」


「うわあアアアアア! やああああ! やあアアだアアアアアアア!」


これまでに散々に悪行を重ねてきた魔女。犯罪組織の幹部で騙しや詐欺に殺人くらいは朝飯前、攫った子供を生きたまま内蔵を焼いて食べていた魔族の女(表向きは権力者の愛人で社交界や宮廷にも出入りするピアニストだったらしいが)。今は無力な子供のようになって泣き叫ぶのみ。


「けっこういけてる? 流石は魔女! お腹、中から膨らんできてない?」


「うおおおおお、うおおおぉぉぉぉ、ひゃめへ、ひゃめへえ! アアアア、ああ!」


「おーい、大喜びしてる?」


「痛い痛いいたいいい! いいいい! うううう、もう嫌だ! 殺せ! 殺せよ、早く殺せぇぇ。殺して下さいお願いします、殺して、痛い、鬼、鬼、鬼っ! 人でなしだあ、早く殺せよぉ」


「へー、そうなんだー。でも「人でなしの鬼」はお前の方だろ、バぁーカ」


冷たい眼差しの女の一人が横っ面を平手で引っぱたくと歓声が上がる(攫われ貪り喰われた子供の母親だったらしい)。みんなでヒソヒソと言い交わしながら、手を叩いて嘲りながらゲラゲラ笑う女たち。

通常・普通の状態ならここまでの残酷は、本人たち自身の連想や恐怖心から忌避したかもしれない。

だが、彼らの精神状態は日常的な恐怖と怨嗟の限界を超える蓄積によって「とっくに一線を越えていた」。家族・身内や友人・知人が直接の犠牲者になった者も少なくなかったし、犯人の一党が何食わぬ顔で都市内部に我が物顔で平然と過ごしていただけでも、人間側には凄まじい侮辱屈辱と潜在ストレスや恐怖だったのだろう。


「おっ! おおお、うぐえ」


凄惨なリンチで破壊・懲罰処刑されている魔女は再度に失禁して、苦痛で嘔吐までしている。

見守る男の見物人たちですら止めようとはしないのは、とっくに「それ」を女として認識していないからなのだろうか?(通常の優しさや欲情の心理的な対象から除外されているらしい)


「うわっ! きったねえなあ! 何しやがるんだよ! もう丁寧にやるの止め! こんなもん、オラア!」


拷問と処刑の執行人、夜叉のような剣幕の女兵士から、怒りの声と共に無造作に「蹴り込まれる」(魔族や手下たちによっぽどの恨みがあったらしい)。ブチッと断裂的な音がして血が噴き出し、根元まで血塗れた胎内にめり込んでしまった。


「ふぎっい! うっ、ぐ!」


ショックのあまり頭をユラユラ揺らして、激痛すら自覚できずに朦朧となっている。とっくに彼女の「女」は使用不能にまで破壊されていた。たとえ白眼になって気絶しても、まだ悲劇は終わらない。押し込まれた凶器の先端には導火線。執行者と見物人たちは点火して遠巻きに見守る。


「え! え! うががが!」


壊れた女性器の中で花火が炸裂し、子宮に高熱の火花が噴出される。


「アアアアアアア! あ、熱い! 熱いいいいいい! うわがあああああ! おおおおおおおおおおおおお!」


ホットドックの魔女が目玉が飛び出しそうになって、もがき足掻いていた。人間の言葉ではない動物の断末魔が喉から迸り出、最後には気が狂ってしまったらしい。号泣しながらニタニタしだし、ケタケタ笑って「くえっ!」と叫んで絶命してしまったようだ。
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かつて「旧魔王戦役」の時代の魔族全盛には、特殊な時代状況の理由があった。実は人間側の支配層の一部と魔族側で「裏協定」が結ばれており、「一定レベルまでの魔族の悪行と人間の犠牲は黙認・黙殺されていた」のであった。理由は、魔族側の支配圏で奴隷状態や二等市民扱いに服している大勢の人間やエルフを、奴隷労働力や購買力として活用して利益を上げられたからである。それによって魔族が優勢になり、人間側が友好容認派(買収されている)と反魔王強硬派に分かれて激しく対立。多くの政治権力者や商人ギルドの有力者は目先の利益と安全のみを追って日和見し、無知な民衆の大部分は右往左往しながら犠牲者を出し続けていた。

その暗黒協定は反魔王レジスタンスにとっては大きな足枷にもなっていた。魔王軍と戦っているにも関わらず「勝手な行動をとっている過激派武装集団」のような扱いになってしまうため、人員や資金・物資なども圧倒的に不足していた。もちろん保安組織や都市守備軍などには内心で共感や同調する者も多かったものの、彼ら自身が日常的に魔族利権マフィアからの脅迫や腐敗勢力からの政治勢力による押さえ込みされていたためにどうにもならない(裏では連携していたにせよ、表だっては限界があった)。あのクリュエル・サトーが「原始人」と化して投擲武器に「符呪した石器」を使うようになったのも、それら背景事情がある。後に村の教会堂に任命される司祭なども一時は陰謀で陥れられ、身柄を拘束・投獄されたことまであったらしい。

この事件の舞台となった都市ではそれまで蓄積された怒りと不満と憎悪に引火して、発覚した数十人を皮切りに一時は内戦状態に突入。ついに保安官や都市守備隊も民衆側に全面加担し、それまでの報復で魔族利権マフィアの掃討戦したとか。



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最終的には周辺地域を含めて数千人が虐殺・処刑されたそうだ。主犯格の政治権力者たちの生首や死体も城壁に数多く並べられた。

素直に斬首や城壁からの突き落としくらいでアッサリと済んだ処刑受刑者はまだ運が良かっただろう(一番に「人道的で優しい」扱いの部類であった)。斧で切り刻まれて頭を叩き割られたり、ナイフでめった刺しされたり、棍棒で生きたまま全身の骨と肉をカツレツ調理のように砕かれるくらいは序の口であった。

甚だしい悪人・首魁と目されれば、口から金属の漏斗で大量の沸騰した熱湯を注ぎ込まれたり、白熱するまで焼けた鉄の棒を肛門から差し込んで内蔵をグチャグチャに焼きとかされたり(男女平等、踊り飛び跳ねながらのたうち回って死んでいったそうだ)。

しばらくは野犬たちが勝利感に満ちた顔で楽しげに、死体の腕や足を咥えて駆け回っていたとか(残骸は豚たちが食べて清掃したとうである)。

きっと、永年月の常態的な悪行と卑劣によって、魔族たちはあまりにも怨恨と憎悪を買いすぎていた。長い戦乱によっても人々は荒みきって、完全にキレてしまっていたようであった。

これは「旧魔王戦役」の終盤にはあっちこっちで多発した典型的なケースの一例でもある。



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その頃、あのサキュバス姫男爵サキの長女のミリア(六歳)は、傷痍兵たちの病院でお盆に載せたご飯を運んでいた。背後には溺愛されている男のレオ君(四歳)が、トコトコと水差しとコップを持ってついていく(まだ生意気になる前で、異父姉に従順で懐いていた?)。


「今晩は魚のシチューです」


「はい、水です」


彼らの母親のサキは厨房で食事作りしたり、薬草類の調合や簡単な治療などもやっている。「若い・元気な・持て余した男たち」に不自由しない環境も、サキュバス的には好都合だったのかもしれないが。普通、異種族間や混血では「受胎する確率が低い」はずなのだが、どうやら三人目をご懐妊であるらしい。

やはりサキの場合には「母の同胞」である人間に悪意がないことや、人肉食を「共食い」として好まなかったことが大きかった。魔族混血の場合には純血の魔族へのコンプレックスや人間への優越感から余計に凶悪になる者もいるから、個々人の性格と巡り合わせもあるのだろうか。


「ありがとよ。ミリアちゃん、おっかさんに似て美人になるよ。レオ君、あんまり女の子を泣かせるなよ」


包帯の兵士が笑って、子供たちに言う。ときどき他の子供たちと読み書きや計算などを教えたり、話し相手にしたり。だって彼らは「身内」で、戦友の誰かの子供でもあったのだから。
(その1)
作中で登場した魔族の羅刹娘シェリー。旧魔王戦乱で捕獲・懲罰される前にどんなふざけたことをやらかしていたのか、代表的な一部を箇条書きで紹介しよう。


1攫った人間の子供を生きたままで焼く。切り開いた内蔵を煮立てて鍋物にする。


2女の乳房をフグ刺身のように切り刻み、血で作ったソースで食べる。肝臓や太股もポピュラーかつ好みであるらしい。


3犠牲者の人骨を動物のものと偽って、人間の料理店に売る(スープのダシ)。


4見た目が美しい娘なので偽装して騙し、人間の女や子供(ときには男)を魔族の仲間に奴隷や食肉に売る。


5民家や教会施設・物資倉庫に放火したり、井戸に毒を入れたり畑を汚染や焼き払うなどの撹乱工作で、魔王軍による侵略を助ける。


6政治有力者や守備隊の隊員に買春や色仕掛けし、言葉巧みに情報を引き出して魔王軍に通報・売却する。


7見た目を悪用して「被災者の人間の娘」を偽装して入り込み、避難民キャンプで残虐事件して疑心暗鬼にさせ混乱させ、守備隊や保安官を闇討ちする。


8押し入った民家で、親に子供を殺して共食いさせたり、近親相姦や乱交させて見物する。


9悪魔教団のカルト宗教ビジネスの教祖になり、破壊工作や組織犯罪する。人間のマフィアやヤクザ結託し、麻薬売買や管理買春なども一通り。


10歌手や踊り子を偽装するなどしてデマや流言飛語を散布。要人暗殺や爆破も。



(その2)
今回は魔族の羅刹娘シェリーの悪行の傑作選な続き。「半不死身」であった驚きの裏事情。


1捕獲した人間の頭蓋内を切り取って、中身の脳味噌を食べる。高級食材で、貧しかった子供の頃から憧れだったとか。


2頭蓋骨の上半分を切り取った生首を器に加工し、人体脂肪や香料の蝋を詰め込んでキャンドルにする。ママとの家内産業の思い出で、今でもよく作ってプレゼントや上位魔族への献上品にするらしい。


3人間の骨盤部分で大皿を作ったり、肋骨部分でランプの傘を作る。子供時代からの生業でもあって、魔族社会では悪くない値段で売れるらしい。


4拉致監禁した人間の女を魔界の豚と交尾させて種付けし、「人豚」を出産させて魔族に高級食材として売る(人豚同士では繁殖出来ない)。もちろん搾乳し、ついでに(豚の赤ちゃんを)妊娠中に売春もさせる一石三鳥。


5人間の子供や少年の誘拐ビジネス。シェリーは見た目が美少女であるため、騙しやすいらしい。特に気に入った少年はサディスティックに犯すのも楽しみらしく、魔族相手の見世物ビジネスでも好評だとか。

ただしレオ(エルフ少年、当時十歳)に見抜かれて問答無用にナイフで刺され、あと一歩で殺されかかってから彼に執心している(母が半魔族のサキュバスであるため、「こいつは魔族で母親と同年代だ」と喝破した)。


6復活・自己回復魔術。深淵の邪神に生贄の死体アートを献上したり奉仕して、特殊な上級魔術を授けられている。死亡や一定以上の身体損壊で自動修復の魔法が発動する(ただし完全な不死身ではないらしい)。

それによってシェリーは思い切ったリスキーな行動をとることができ、窮地に陥っても生存確率が高い。人間にとっては脅威である。
(その1)
1たまに恐ろしいレッサーパンダや原始人に追い掛けられる。死の鬼ごっこ。


2誘拐したドワーフの小さな女の子に騙されて(それは罠だった?)、形状記憶合金爆弾キャンディを食わせられる。体温でイガグリのように変形する「爆弾」を溶けにくい断熱キャンディで包んである。

シェリーは「パンっ!」とハリセンボンのように膨れ上がる。腹部に二つ、口の中で一つ。内蔵や脳味噌まで穴だらけになり、貫通した金属針が飛び出してサボテンのようになる。

そのまま追跡してきたドワーフたちに捕獲され、「嘘ばかり吐いているから針千本飲まされるんだよ!」と蹴り飛ばされる。あとで爆弾除去と復活に丸一日を要したらしい(地獄の苦しみだった)。


3人間の都市(魔族被害者たち多数)に売り飛ばされ、監禁されて男たちから性奴隷として欲情便所にされる(非人道兵器ハリセンボンのトラウマでしばらく従順だった)。

人間やドワーフ・エルフの女たち(しばしば自分自身や身内・知人が直接間接の魔族被害者で、恐怖に怯えて憎んでいた)も陵辱を見物して嘲い、殴る蹴る・鞭で引っぱたくなどの虐待し、挙げ句はレズ趣味の物好き女たちから二人・三人がかり極太玩具でハードレイプされる(並みの男相手よりキツいらし)。


4焼き印を捺される。乳房と尻などに。


5両の乳首と陰部のクリトリスに「専用の呪いのピアス」される。魔力封じと性感が七倍、連日に発狂状態になる。精神の体力の限界を超えて気が狂ったり死んだりしても「自動復活」するので、トコトンで終わりない。


6定期的な市場で、公衆の見守る中で「馬と交尾ショー」させて見世物にされ、巨根で恥部が裂けて内蔵が破れ潰れて絶命・死亡する。

ただし自分自身の魔術ですぐに自動復活してしまう。「ふざけるな! 畜生!」と怒りの絶叫して観客たちから拍手喝采。


7水牢で小型肉食魚・食用ピラニアの餌食にされる。「自動回復魔法」があるため、いくらチマチマ食い千切られても、死ぬことすらできない。肥え太らせた魚は魔族の支配領域に裏ルートで売られたそうだ。


8監禁中の牢屋に見物にきたエルフ少年のレオから「うちのお母さんと同い年くらい?」と見抜かれて(母親は半魔族のサキュバス姫男爵)、「臭い」とか「ババア」とか言って(人格・人権否定レベルで)蔑み罵倒される。彼は重度のシスコンで異父姉とはほとんど近親相姦関係らしく、(慣れと耐性があるので)魅力で誘惑どころか幻惑魔術もほぼ効かない。

後に脱出・逃亡してからも再会時にナイフで「この妖怪ババアめ!」「死んだ方がいい、介錯してやる」とメッタ刺される。


9サキュバス姫男爵サキとの境遇や扱いの違いに絶望する。「差別だ!」と不満を抗議しても「だってあなたはわるいことばかりして、人間を殺して食べる魔族じゃない?」と真理を指摘され、どうにもならない。


10(予定)ドワーフ娘のアネチカとサキュバス姫騎士ミカ(サキの末娘)から再度に討伐されて、再び楽園崩壊。


(その2)
シェリーNG集の続き。

1潜伏・逃亡中、エルフの村人から石器の斧(製作者はクリュエル・サトー?)で側頭部を打撃され、ショックで反対側の目玉がポォン!と飛び出してしまう。

2潜伏・逃亡中、間違ってレサパン商会(恐ろしいレッサーパンダ)の食堂に入ってしまい、「注文の多い料理店」される。あと一歩で肉まん具材にされそうになり、命からがら逃げ延びる。

3エルフのたぬきっき画伯にヌードモデルのアルバイトで売り込もうとするが、「むしろ試し斬りの方が良くないか?」されそうになる。

4エルフ・ドワーフや人間に捕縛されてさんざん虐待調教され(前述)、何もしなくても勝手に絶頂する身体になってしまう。いわゆる「イクイク病」になる。

5エルフ少年のレオ(思春期)を誘惑しようとチャレンジするが、姉や母親で色々と慣れているため、トコトンまで冷淡に対応されて弓矢で射られる(魔法の火矢)。
異父姉ミリアとイチャついている現場や異父妹ミカに優しいお兄ちゃんしているところを盗み見て、落差と嫉妬で気が狂いそうになる(恋の病に落ちた?)。さらにミカの友人のドワーフ娘アネチカともまんざらでもなさそうなのを目撃し、「あんなドワーフの芋なんかに!」と絶望する。

6村人(人間やドワーフ)の少年たちを誘惑して成功し、「大漁だわ!」と喜んだ拍子にイクイク病が炸裂。為す術もなく集団で輪姦乱交されて発狂状態になる。
駆けつけてきた大人たちも参加し、やっぱり正体を見抜かれて最後は殺されそうになり(なかなか死なないので奴隷化?)、川に飛び込んで逃げる(逃げ切りまでに何度も溺死する)。

7再起するために、色々と権利確保(縄張りや狩猟権)のために上級魔族に掛け合うが、「敗北主義者・魔族の面汚し・下層階級の売春婦」としてしばらく酷い惨い扱いになる。
自動復活魔法で簡単には死なないため、宴会で魔の野獣と戦って食い殺される見世物にされ、女体盛り・活け作りにされたことも。

8力を取り戻して強化するために、再びに自ら暗黒深淵の邪神の生贄巫女になる。もはや人としても女としても、尊厳も正気も残らないが、一周回って(病的に?)元気になった。

9人間やエルフ・ドワーフの村人たちから「発情便器の魔女」というあだ名を着けられる。完全に汚物妖怪という認識や扱いされる。
逆にサキュバス姫男爵のサキが村人から「女神」扱いで、愛称も「蜜吸い看護婦」「夜のハチドリ姐(ねえ)さん」や「教会堂の薬師巫女殿」などおおむね肯定的であるため(本人の振る舞いや人間性・関係性、無害さと有益さから)、余計にプライドを傷つけられ嫉妬で頭がおかしくなりそうになる。

10自動復活魔法のせいで自殺すら困難。悲哀のあまりに全裸で徘徊して「私、綺麗でしょ? 可愛いでしょ?」 と「愛を乞う人」になってしまう。
見た目が美少女の部類なので「釣れる」のだが、たいていは遊ばれて捨てられる。本性が最悪過ぎるために純真・誠実な男も「君とはやっていけない」と去って行く。
1

旧魔王戦乱の終盤、人間領域内部では魔族利権マフィアの駆逐双頭があっちこっちで行われていた。それらの事例の中から大規模だった「鮮魚の一党」と「赤の団」の処刑風景(裁判官・役人や学校の教授なども多数だったから驚きだ)。


2
まず「罪の軽い者たち」が素直で苦痛の少ない斬首刑であっさりと楽に殺されていく。それすらも人数が多すぎたために一日では片付かず、一週間がかり。

より効率的に、かつ適当な苦痛や恐怖を与えるため、城壁から数珠つなぎで突き落とすやり方も行われた。これは手を縛った囚人たちの首にロープをかけて一列に並ばせる。先頭の一人二人に重りを付けて高い城壁から突き落とすと、その目方で後続の者たちは次々と首が絞まり、しばらくは耐えるのだが順次に引きずられ雪崩を打って全員転落死する。

同様に「やや罪の軽い者」への別の対処は、一通りに集団リンチで痛めつけたあとで地面に掘った大きな穴に入らせる(これも鞭打ちながらに自分らで掘らせたらしい)。上からショベルで火のついた石炭を投げ入れ浴びせかけ、生きたままで焼き殺し窒息死させる。熱さで踊り飛び跳ね、二酸化炭素で泣き叫びながらにバタバタと倒れていき、穴から這い上がろうとすると兵士たちに突き落とされる。まだ窒息で気絶出来る可能性があるために、「数珠つなぎで城壁から突き落とし」と同程度の「優しく手加減した殺し方」だったらしい。

逆に「やや罪が重い」場合には、一定人数で檻に詰め込んで飢餓状態にさせ、共食いさせるような手法もとられたそうだ。もっとも罪が軽い、連座した有罪者の家族などは鼻や耳を削いで焼き印を押され(手足を切断されたりもした)、魔族側の支配領域に奴隷・食用として売り飛ばされた(それはあくまでも「救済措置の一種」であると見做された)。


3
それと平行して重罪人たちの念入りな処刑が行われたのだが、実に凄惨な具合であった。それらは人々からどれだけの憎悪を買っていたかを物語っていた。

一人一人に手間をかけるくらいの主犯格などは、前述のように簡単には済ませられない。革など柔らかい素材ではなく、よくしなって強度と打撃力の高い金属製の鞭でぶちのめす。

反応が鈍くなってきたら小さなナイフで顔面や全身を切り刻み、最後は短い投げ槍を即効の致命傷になりにくい腹部に深々と刺して、とどめを刺さず死ぬまで晒して放置する。やや慈悲がある場合には腹を切り裂いてより重傷にし、早く死ねるように配慮したそうだ。


4

その間、舞台となった都市群や近隣の村々はずっとお祭り騒ぎであった。没収された資産はこれまでの損失補填と被災者の救済に充てられた。

家畜の豚たちは餌(死体)が豊富にあるためによく太り、その冬の食料は豊富で人々は幸福であった。余った処刑囚人の骨は集めて砕き粘度と混ぜて焼いて、煉瓦にして道路の舗装などに有効活用されたという。