仮入部をしてから1週間がたち、仮入部期間が終わり入部届を出した私は、料理部の新入部員となった
部室の雰囲気も良く先輩にもよくしてもらっている。入学してから1ヶ月以上が経ちついに体育祭まで残り9日をきっていた。
部の雰囲気も良く、良い友達にも恵まれた私は自分の【舌】のことをいつ切り出そうか迷っていた。
体育祭の練習も終盤。当日は協力して行う競技が多く夢ちゃんと出場予定の種目もいくつかあった。
優里は私の【舌】のことを知っているが、夢ちゃんにはまだ言っていない。
でも、いつかは言わないといけないこと。私は今日夢ちゃんに【舌】のことを話そうと決めた。

授業が終了し教室から出ていく中、私は夢ちゃんに声をかけられた。
どうやら夢ちゃんも話があるらしく、二人でグラウンド近くのベンチに座った。
私達の手には、来るときに買ったホットココアが握られていた。

「少し肌寒いね。それで、話ってどうしたの?」

「すみません。わざわざ外まで来てもらって。あの、信じてもらえないかもしれないんですけど、私、、人の感情や経験が色でわかるんです。人の周りにもやみたいなのがでて、それで感情とかが分かるんです。昔、このことを仲がいい子に話したら、気持ち悪いって言われちゃっていつ言おうか迷ってて、」

「私もね。今日、夢ちゃんに話そうと思っていたことがあるの。」

私はマスクの紐に手をかけそしてゆっくりとマスクを外した。

「私ね、味を感じられないんだ。」

「えっ・・・味を感じられない、、」

「うん。夢ちゃんが教えてくれたゼリーさ、自分用も買ってみたけどやっぱり駄目だった、優里はねこのことを知ってるんだ。
いままで黙っててごめんね。」

「そんな!謝んないでください!私だってこの感情が見えるってこと隠してたんですから。それに私は結ちゃんが優しいことを知っています。味が分からないのは大変だと思います。きっと辛い思いをしたこともあったと思います。でも、安心してください私はあなたの友達をやめる気はありません。」

まっすぐ私の目を見つめて思いを伝えてくれた。勇気を振り絞って言ってくれたはずなのに、この子は本当にすごいな。
だから、次は私の番。

「ありがとう。夢ちゃん。夢ちゃんも、その力で色んな事が起こったと思う。でも、その力は夢ちゃんの【能力】だから。
自信を持って。それに経験までわかるなんてすごいね!」

私の不安を感じ取ったのか友達をやめる気はないとはっきりと言ってくれた夢ちゃん。
だから私もはっきりと伝える。

「夢ちゃん。これからも友達としてよろしくね。」

すると夢ちゃんは目元に涙を浮かべてこういった。

「はい!結ちゃんの言葉でずっと悪い方にしかとらえていなかったこの力と向き合うことが出来そうだよ。本当にありがとう。」

「こちらこそ。」

2人でたくさん笑い、沢山涙を流した。
学校を照らす光が私たちの心も明るく照らしてくれた。