時は2XXXX年〇月△日…

人々が地球を離れ、宇宙で生活を始めた時代。
「コロニー生きてぇーなぁー」
コロニー、それは宇宙の中心に位置する人工惑星の名前。世界の中心であるそこには、あらゆる星のあたゆる技術や文化が入り交じり多種多様な多くの人々が闊歩しイベントなんかも多く行われる。
現代で言うところの「東京行きたいなぁー」的なノリである。

「あ!そう言えばさ、2012組の天上。また転校だってよ。」
「「またぁー!」」
「あいついっつも転校してんじゃん、これで何度目だよ。」
「だよなぁー…でも親父さんがあれじゃぁーなぁー」

そんな時代にも、学び舎は存在する。
そして今作の主人公、高天原・華奈、14歳、彼女が通うこの中学の名は…

(朱雀銀河、88番太陽系、緑の月が照らす緑色星(リョウクシキセイ)九十九市立八百万中学校2年1組高天原・華奈。)

「今日からまた学校…だりぃ~」

少し元気がないダウナー系の彼女は最近不登校ぎみだった。その理由は…

「おい!…華奈…」

けだるそうな彼女の名を叫ぶ、赤髪ツンツン頭の男。

「奈落…」
「先輩!だろ?」

彼の名は天獣院・奈落、この学校の番長である。彼に逆らうものはこの学校は愚か、この星中の学生にはいない…そう言えるほどの強さを持つ男が彼に絡む。

「お前まだ学校に来てんのかよ、もうくんなつったろ。その生意気な目…嫌いなんだよ。」

奈落は華奈を威圧し、その鋭い眼濠で睨みつける。しかし華奈はそれに動じることなく睨み返す…が…

「テメェ―…もう一回ボコられたいか。ドMちゃん…」

それは華奈にとっては最悪の記憶…昔まだ幼い彼女は弱虫で生まれ持った目つきの悪さもありいじめられていた。そんな彼女を心配した親はこの惑星で最も治安のいい中心地であるこの八百万中学校に転校させ、彼女もそれに答えるように明るく振舞い姿や立ち振る舞いも大きく変えていった…

しかし、中学生になると彼女には別の問題が起き始めた。それは…

「ねぇーねぇ、彼女。君いい体してんねぇ」

それは第二次成長期による身体への大きな変化、それにより彼女のスタイルは中学生とはお前無いレベルに達してし待ったのである。

「やめて!話して!キモい!」

("これが、全ての終わりの始まりだった…")

それを言った日から突然、彼女の日常は一変していった。

ある日はトイレで頭から水をかけられ…
ある日は屋上から教科書を捨てられ…
ある日は…

「あれ?私の席無いんだけど?」
「お前席?そんなもんあったけ?そもそもお前…」

「「誰?」」

それがクラスの総意だった、昨日まで仲がよかった友達も、何気なく説ましていたクラスメートもそもそも何もかな嘘だったそんな風に見えてしまうほどに…

そして…

「わかっただろ?俺に逆らうとどうなるか…」

そこは校舎裏、誰も通らない先生の監視の目もとどかないその場所で…

「俺の…女になれよ。そうすりゃ助けてやる…」

世界最悪の壁ドン、世界最悪の顎クイ、これは彼女にとって一緒かかっても取れないトラウマになっていく。

しかし、地獄はそこから先…

「オラ!腰ふれ、メス豚!」

毎日行われる淫行、叱咤、暴行…淫行の中で行われる最低最悪の行為の数々に心をへし折られ…そんな嫌なことに逆らうことのできない自身に嫌気が刺して仕方がない。

(こうして私は不登校になった…でも…)

「カナちゃん、ここにご飯置いとくよ。」

それは、毎日毎日引きこもっていた高天原のもとへ毎日3食一日も欠かす事なく持ってくる父の姿だった。

「ごめんね、お父さんこれからまたお仕事だから。」

たった1時間の昼休憩、本来移動も含めて行って帰ってくるしかできない時間に…朝の作り置きを部屋の前まで持っくる父の姿に…

「…辛いかも知らないけど…こんなこと、本来僕が言うべきじゃ無いのかも知らないけど…"また元気な君が見れるとお父さん嬉しいな…”」

父から向けられる無償の愛、それゆえに引きこもり迷惑をかけている自身への自己嫌悪。自身のために引っ越しまでしてくれた父に報いるため彼女は再びこの学校の門をくぐろうとしたやさきに…

これだ…

「なぁーもう一度俺の女になれよ、さもなきゃ…“帰れよ”」

残酷に鳴り響く周囲の生徒からの視線と彼に好悪して起きた「帰れ」というコール。

もう耐えられない…そんな弱音が彼女の心を包む直前…

「”帰るのは…テメェ―だ”」

目の前の景色が変わった、粉塵が、疾風が、桜咲く学校を包み込み彼は現れる。

「大丈夫か?嬢ちゃん」
「あんたは…」

そこに現れた謎の男が、目の前の番長”天獣院・奈落”を一撃で倒したのだ。

「ん?俺か、俺の名は…天上・護。”天上天下は俺が護る”で覚えてくれ。」

その少年の名は天上・護、この旅朱雀銀河の緑色星(リョクシキセイ)に転校してきた転校生である。

「おい…嘘だろ…」
「やばいって…」

その様子を見て回り生徒が騒ぎ立てる。

「イッヒヒ!流石に目立ちすぎたか、転校初日に」
「違うわよ、バカ!」
「あ”助けてやったのに馬鹿とはなんだ馬鹿とは…」
「バカはバカだよ!別の星に来るんだったらしっかりと勉強しておくんだね。この星に住むあたしら”鬼族”は強烈な怒りを感じると激高状態になって理性を失い暴れ続ける。そいつの激高状態はこの星でも10本の指に入るほど強い…あんたおしまいだよ!」

高天原が叫ぶと同時に奈落は蘇った亡者の如く白目を向いて肥大化し、全身に真っ赤な炎を纏い天上に襲いかかる。

「バカバカうるせぇなぁー、激高状態だかなんだかしらねぇーが…俺のが強いから問題ねぇーな。」

目の前で起きた出来事に辺りが騒然とする。

「本当にあんた何者なのよ…」
「だから天上・護、ただの人間だよ。」

これは桜咲く一か月、彼女と彼の出会いと…別れの物語である。

あれから数時間が達、現在。

「えぇー花の第四惑星、ハス之木中学から転校してきました。天上・護、”天上天下は俺が護る”で覚えてくれ。よろしくな!みんな」

高天原は、転校生の天上と同じクラスになりいつものダルそうな暗い表情より一層暗くする。

(なんでこいつと同じクラスなのよ…マジ最悪。)

そんな彼女の思いとは裏腹に…

「お!お前、朝校門の前にいた奴だよな。」

天上は、黒板の前から大声で呼びかける。案の定、先生の「あら、お知り合い」のテンションでそのまま隣の席にされてしまう始末。

そして昼休み…

「あんたねぇ、なんなわけ?」
「なんなって、何がだよ。」

二人は、屋上まで続く階段を椅子にして座り込み話している。

「いや、だからなんで私に関わってこようとしてんのか!って聞いてんのよ。」
「だってお前、またいじめられるかもしれねぇーだろ。護ってやんねぇーとよ。」

高天原は天上の言葉少しドギマギしつつ、次のように返した。

「うっうん!それよりあんた、今自分が置かれてる状況。わかってんの?」
「置かれてる状況?んなもん知らねぇーよ。」
「はぁ〜あんたね、いい。あんたがぶっ飛ばしたあの男、あいつの父親はこの学校の校長なのよ!。…もうお終いよ。」

高天原が警告しても、天上にはことの重大さが理解出来ていない様子でケロっとしていた。

そんなこんなで一日が終わり、夕日が照らす放課後の中。帰り行く学生達の中、天上は転校初日から校長室に呼び出されていた。

「頼もう!」

校長室の扉を強く張り手の勢いで開ける天上の前に、座すのはこの学校の校長。

「天獣院・奈夜だ、以後よろしく頼むよ。天上くん…」
「おう!よろしくな、おっさん。」

天上の態度に少し困惑した奈夜ではあったが、咳払いをして話を続けた。

「噂によると、君が奈落くんを校門の前で張り倒したとの事だが…それは確かかな?」
「おう、間違いなぜ。」
「そうか…それはとても残念だ。」
「ん?」

天上は、奈夜の妙な言い回しがひかかったのか不思議そうな表情を浮かべる。

「天上くん、君にチャンスをあげよう。本来、暴力沙汰を
起こした生徒は即謹慎処分になるのだが今回は転校初日だ。だから今後三ヶ月間"一切の暴力行為をしない"のであればこの件は水に流そう。どうかな?」

かくして、天上は…

「切ったね!シャワーをどうぞぉー」

新たないじめの対象になった。

ある日は水をかけられ
ある日は教科書を燃やされ
ある日は…

「調子こいてんじゃねぇーぞ!クソガキ!」

ボコボコにされ…それでもやり返すことはできない。

(いじめは伝染する、一人が治ればまた次の宿主を見つけて感染する治ることのない病。…)

高天原はその様子を見て、そんな思いにふけっいる。

そんなある日の校門前で…

「なぁー!土下座して謝れよ。オレをこんなにしたことをよぉー!」

あの日から一週間、入院していた奈落がこの最悪の局面で帰ってきたのだ。
来て早々、状況を理解し毎日やり返すことをできずボロボロになった天上の胸ぐらを掴み声を荒げてそう叫ぶ。

「「土下座!土下座!」」

まただ、またこのコールだ。この学校の校歌より聞きなれたこのコールが天上の周囲で鳴り響く。

「なんで!…悪りぃーことしてねえーのに謝らなきゃ何ねぇーんだ。」

その時、初めて天上は目の前の生徒にたてついた。

「あ"?何言ってんだお前。俺が気にいらねぇーからよぉー、ぶっ飛ばすし晒上げるんだよ。俺は”この星の王様なんだよ…」

天獣院・奈落、彼がここまで傍若無人でいられるのには理由がある。彼の父親はこの学校の校長で彼の母は総理大臣で彼の兄は警察庁長官である。

親戚も多くその全てが権力者ばかりのボンボン、だから誰も逆らわないしそれをとがめる親も兄弟もいない。こんな環境で育てば人は、歪む。

彼に犯行する行為はそれすなわち”この国での生き場所を失う”ことに他ならないのだから。

(わるい親父…もう我慢できねぇー。転校、ちょっと早くなるが許してくれよ!)

そんな事、天上は知らない。いや、知らなかった。知って我慢し、耐えては見たが彼の堪忍袋の緒が完全に切れてしまった。だから、その拳は明確な殺意を持って今!振るわれる。

「な…」

しかし、止まった。確かに振るわれはずの拳が、”彼女の介入により止めざるを得なくなった”。

「高天原…なんで…」
「ダメよ!こんなクズのせいであんたまでおかしくなっちゃ。」

それはいつも下を向いて、いつも周りを拒絶してきた高天原・華奈から放たれる明確な意思。

「あ”テメェーも居場所を追われたいのか、高天原。」
「いいわよ、私ならどうなっても。煮るなり焼くなり好きにしなさいよ!…でもね…”私以外には、手を出さないで”。」

それはいつもの高天原からは感じられない優しい言葉だった。
その言葉に最も驚き、目をかっぴらいて彼女を見つめる天上はその胸に抱いた闘志をより一層燃やして彼女の肩に手を置く。

「やっぱお前、優しいじゃん…」
「違う!これは優しさじゃない。ただのあたしの勝手で…」
「じゃーなんで、”学校に戻ってきたんだ”」
「それは…」
「お父さんのため!…だけじゃーねぇーんだろ。今の言葉がその証拠だ、お前自分以外の周りが傷つかないように自分に向いた敵意を他に向けないように…そのために戻ってきたんだろ。違げぇーのか…」

その言葉に、高天原は何も言い返せずいる。

「やっぱりな、だから俺が”やるん”だよそいつとタイマン。」
「なんで!聞いたわよ、あんたこれから一回でも手を出したら謹慎なんでしょ。それにあんたよく転校するらしいじゃない、謹慎なんてしたらもう戻ってこれないかも…だから!」
「それこそ、本当にお前に関係ねぇーじゃねぇーか!」
「なによ!人がせっかく心配してやってんのにさぁ」

二人の思いは互いにぶつかり、決着がつかないかに思われた…しかし天上の次の一言に高天原が折れる…

「心配?やっぱりまた優しさだ。お前は抑えらんねぇーんだよその優しさを、お前はそうきっとそう言う”星の元で”生まれてきたんだ。だから俺は、そんなお前見てぇーな優しい星をを持った奴が傷つかねぇーように、森羅万象、天上天下、その全てで俺が…護る!」

天上が言い放った言葉に、言い負かされる形で高天原はその身を引いた。

「邪魔すんじゃねぇーよ!天上。そいつは俺の女だぁー!」
「はぁ?今更そんなこと言ってんのかよ。そもそもなぁーお前、間違ってんだよやり方が…」
「やり方?」
「そうだ、女を取るのに武力も権力もいらねぇーんだよ。やるなら、”心意気で惚れさせな”そうすりゃ女の方からお前によって来るぜ。」

天上の決しの覚悟に、奈落は激高する。

「邪魔っつんてんだよ!天上ー!」

再びの暴力に、天上はそれを渾身のアッパーで答える。

(あばよ…八百万中学校、それと…高天原)
「短かったけど!お前に出会えてよかったぜぇー!」

この日、傍若無人の暴君王は二度の敗北を知る。”二人の男によって”…

「おい、奈落…何してんだ?」

そこに現れた大きな文字で”塩崎愚連隊”と書かれた法被姿の男がその鍛え上げれた両手で二人の喧嘩を止めた。

「”塩崎・神楽”…」

その男の名は塩崎・神楽、この星の最高権力者。日本で言うとこの天皇である。

「呼び捨てか、奈落…」
「いっいえ!塩崎様。なぜこんなところにいらっしゃるので…」
「うむ、答えてやるが少し下がれ。お前ら”赫鬼は暑苦しくていけねぇー」

奈落は「はい!」と血相変えて即座にその身を引いて、突然現れた塩崎の話を聞いた。

「いやぁーこの旅この学園にわしの息子、塩崎・神居と娘の塩崎・神無が転校することになってのぉー。その挨拶にと…ほれ早くこんか神無、神居。」

呼ばれて現れるの二人の兄妹(きょうだい)。

「ほれ挨拶せい!」
「塩崎・神居です。」
「塩崎・神無です。」

「「えぇぇー!」」

二人のイレギュラーの登場で、どうなる!?今後の学園生活。

《起》星の元で… 完

《承》もう二人の転校生…

「これ、何をしとる。若人よ…」
「塩崎…神楽…」

前回、突然現れた乱入者塩崎・神楽天皇陛下により天上は三か月謹慎の危機を脱した。

ところが…

「紹介するぞ、わしの息子の塩崎・神居と娘の塩崎・神無じゃ。」
「塩崎・神居だ、よろしく頼む。」
「塩崎・神無ですわ、お見知りおきを…」

まさかの転校生の登場に辺りは騒然、どうなる?天上・護のスクールライフ。



時は少したち、転校生二人は校長室の前の椅子に腰かけ。天皇陛下は校長室で天獣院の会話をしていた…

「がっはっは!」
「笑い事ではありませんよ、困りますよ天皇陛下。もうとっくに放課後ですし、転校は来月のはずでは?」
「いや何、来るなら早い方がいいと思ってのぉー。その方が友達も作りやすいじゃろう…」
「いや、そうかも知れませんが…まったくもう、貴方様は昔から破天荒で突飛な方なんですから…」

天皇神楽は笑った、目の前にいるかつてのクラスメート天獣院に会えた事。それと、相変わらずバカ真面目で気苦労の多そうな彼の老け顔を見て…

「そう言えば、また威勢のいいのが入ったのぉー。」
「威勢のいいの?」
「ほれ、お前んとこの息子の奈落と…あれ?あの人間の小僧、名前何ちゅったかのぉー」
「あぁー、天上くんのことですか。…彼がまた何かしたのですか?」

天獣院は不穏そうな顔で、天皇神楽の方を見つめ問いかける。すると、天皇神楽は「いや、ただあの小僧わしが天皇と知ってもなお呼び捨てにしおったのでな」と返し、その場をおさめた。

「そうですか、困ったものですよ…彼には…」
「何でじゃ?、威勢はいいが悪い奴には見えんかったぞあの小僧。それよりお前…”自分とこの倅にちぃーと甘すぎるんじゃないか?”」

その瞬間、天皇神楽から放たれた殺気に天獣院は過去の映像がフラッシュバックし死を覚悟した表情となり震え軽く失禁する。

「なんの事やら…」
「ほう、わしにうそぶくとはいい度胸じゃのぉー。…奈夜よ、お前息子に好き勝手させといてあの小僧には”謹慎処分”とか抜かしたそうじゃないか。今すぐ取り下げるか倅をその3倍の謹慎をさせぬのなら天皇の権限でお前を強制解雇とする。」
「そんな!おぼうな…」
「横暴?、わしに立てつく気か。奈夜、地球と違ってわしは”人間宣言ならぬ鬼宣言などしておらん”。権威はそのまま残っておるこの星で、わしに立てつくと…」
「…かしこまりました、天皇陛下。以後気負付けさせます…」
「よろしい」

こうして、天皇神楽の手によって天上の謹慎処分は流される結果となった。

そして現在…

「えぇー新入生の皆さんこんにちわー!」
「「こんにちわー」」

次の日を迎え、朝の集会でつげられる”新入生部活見学会”。各部活の代表生徒が部位と同じ部の部位んとともに部活の様子や内容を伝え新入生を引き入れようとやっきになるこのイベント。

ちなみに、この学校の部活動は強制。必ずどこかに所属する必要がある…

「は!せい!」

そんなさなか、剣道部に見学に来た塩崎・神居はその部最強の主将 祓井・閼儀斗の試合を見ていた。

「はぁー…このようにして僕ら剣道部は毎日部活をしています。」

主将の試合を見て、「すげぇー」と言いながら拍手をする同じく見学に来ている新入生。それもそのはず、彼は大会で二連覇を果たした名門八百万中学校の主将にして絶対不動のエース。その剣捌きは相当のもの…しかしそんな中で神居一人だけが拍手もせず目をつぶり首をふる。

「すみません、主将」
「何かな?神居くん…いえ神居様」

新入生だと思って”くん”付してし待ったことに焦り訂正する主将。

「いえ、年齢は下なので敬語はいいです。ただ、折り入ってお頼みしたいことが…」
「なにかね?神居くん。」
「はい!…ぼくと”試合をして勝ったら主将の座を僕にください”。」

その申し出、周囲の新入生はドン引きし部の先輩たちは「何言ってんだ」と立ち上がった神居を止めに入る。

「まぁーまて、みんな。試合は受けよう、だけど…」
「条件は飲めないと…」
「いや、条件も飲むよ。だけど試合前に一つ確認、”僕が君に怪我をさせてしまったらお父さんから制裁とかないのかな”」
「…」

それは主将からの挑発?それとも親切心からくる警告なのか、真実はさておきその言動に神居は「断言します、それはありません。」と答えた。

こうして、二人は胴着と鎧を来て向かい合い。

「さぁー!どっからでもいいよ。」

主将は強者の余裕か先輩故の配慮なのか、先に打たせてやると言わんばかりにその言葉を言い放つ。

「では…」

そう言われ、直に剣を構えやる気を出す神居。

(この威圧、この視線、この構え、そしてこの度胸と威勢。間違いなく只者ではないんだろうけど…悪いねぇーただの玄人じゃ。僕には到底かなわない!)

そう思い至る刹那、彼は視界から消えていた。

「すみません先輩、主将の座もらいうけます。」

それは次元の違う、速度と剣技によって起きた”イレギュラー”。常人…いや、名だたる強者ですら至ことのできない生物の壁を超えた人外の境地。
わかりやすく例えるなら、ファンタジーのキャラクターと現実の人間が一騎打ちをしたような状態。

「「主将!」」

とにもかくにも、神居の竹刀で壁まで吹き飛ばされめり込んだまま気絶した主将の敗北である。

「これって…」
「剣道なのか?」

周囲の新入部員の意見は、ごもっともである。

「うひょー、あいつすげぇーなぁー。」
「がっはは、そりゃーわしの息子じゃからな。」

それを辺りで見ていた、天皇神居と天上。

「どうじゃ?勝てそうか…うちの倅には…」
「うぅーん…」

返答に困ったのか、考えこむ天上。

「”両手、両足しばって、目隠しして頭突き禁止にしても俺の圧勝かな。”」
「がっはっは、そこまでか。あ奴とお前の実力差は…」

天皇と天上はすっかり意気投合した様子で笑い合い、隣で肩を並べてくだらない話をするほどになっていた。

(いやいやいや、それどうやって戦うのよ。当然ふざけてるのよね?そうであってちょうだい…)

一緒にいた華奈が青ざめた表情で心の中でツッコミを入れる。

「はぁー…それじゃー、わしはどうかのうー」
「そうだな、…”ハンデ無し本気でやってごぶごぶかな”。」
「ほほぉー、”全宇宙最強の鬼神カグラ”にごぶごぶとな…」
「そうか、あんたが宇宙最強かなら宇宙てのは案外狭いんだな。」

天皇神楽は、天獣院校長に放ったものとどう質の殺気を放ってなお狼狽え一つ見せず堂々と言い切った天上を見て「本当に面白小坊主じゃ」と高笑いを浮かべながら口にした。

「バカ!あんたはまた考えなしな事いって。相手はあの”鬼神カグラ”なのよ!冗談でもそんなこと言うもんじゃないわ。まったく…」
「冗談じゃねーよ、本気だ。」
「だからバカって言ってのよ、身の程知らずのおたんこなす。」
「あ”お前また馬鹿って言ったな!」
「バカにバカっていって何が悪のよー!この大バカ天上!」

二人が夫婦喧嘩のような微笑ましい喧嘩を始めると天皇神居はそれを見てなお笑った。

「お似合いじゃぞ、おぬしら。」

「「そんなんじゃねぇー!」」

天皇に向けて告げた言葉がどちらも口が悪いことに、果たして高天原は気づいているのだろうか。

その頃こちらでも、才能の片鱗が周囲の視線を可攫っていた。

「すごーい、神無様。初めて?」
「いえ、幼い頃からダンスのレッスンは受けておりましたので。」

それは塩崎・神無の体験入学先のダンス部での出来事。

(正直、私は愚かこの部の誰よりも美味いは…これは期待がもてそぉー☆)

そんなこんなで、4月の眼玉イベントの一つ。新入生争奪戦線・部活見学会はこれにて無事閉幕となった。

部活見学会が過ぎ、正式入部を果たした神無と神居の日常は十分満帆の一言だった。

類稀なら才能と天才のセンス、恵まれたスタイルと体格。全てが、彼らには備わっていた。

しかし、過度な才能は時に波乱をうむ。

「本当に、神無さんて凄いわね。スタイルも良いし、尊敬しちゃう。」
「そんなぁことありませんわ、先輩方だって素晴らしい技術とお体をお持ちですわ。」

それは親し気な会話、何の穢れもない先輩と後輩の理想の形かに思えた。
しかし、世の中には心の狭い者もいるようで…

「何よあの子、新入生のくせして部長と仲良くしちゃってさ。」
「ねぇー、やなかんじ…」

才能をねたむものも多くいる。

「…」

彼女はうすうすかんずいていた、周りの部員達が自身に向けている思いを…しかし最初は彼女も「ねたまれることも、勝負の世界の常識。それをバネに人は成長していくのだ」と割り切って考えていた…

ある事件が起きるまでは…

「次のセンターだが…”神無くん”君に任せよと思う。」

それは重大な事件だった、本来ダンス部のセンターとはもっとも目立つポジションであり…

(私の…誇り…)

この部活での、唯一の理解者であった部長”天野川・織姫”のその誇りを奪ってしまうと言う大罪。これが発端となり、彼女への嫉妬心が…いじめへと”エスカレート”する。

「なんででしょう、なんで…」

川辺で泣く彼女は、特に怪我をした様子もなく小奇麗なまま…しかしその心の大きな傷を負っていた。

それは、高天原や天上が受けた傷とは異なる。大きく空いた”心の傷”、決して埋まることない谷底のような思いが彼女の全身を包む。

「おい!」
「ひゃ!ひゃい!」

唐突に耳元から聞こえた大きな声に驚く神無。

「はぁーなんだ、天上様でしたの…」
「おう!天上でいいぜ。ところでどうしたんだ?こんな時間にこんなところで…」

神無は黙っている…

「いじめ…られてんのか?」
「なぜそれを!?」
「いや、顔にそう書いてあった。てか、今って確か部活の時間じゃね?何してんだよこんなところで…」

神無はやはり黙っている、先ほどよりより一層顔を下にやってうずくまるようにして…

涙をこらえている…

「…なぁー、俺はさ。大雑把で適当だからわかんねぇーけど、多分お前はさ自分をよく見せすぎなんじゃないか?」
「いえ!それは関係ありませんわ。私の…私のせいで皆さまを…部長様の座を奪い!貶めてしまった…」

彼女はその時初めて口を開いた、いつもの気品と余裕あふれる彼女らしくない。感情むき出しの…ただの年頃の女の子のように…

「それだよ!お前に足りないのは…」
「それ、とは?」
「”感情!心…”お前は自分をよく見せようと、天皇家に生まれたお嬢様としてのイメージを崩さねぇーように作り上げられた強い自分で弱い自分を覆い隠す。それじゃぁーさ、俺たち下の奴らには親近感がわかねぇー。だからお高くとまってるように見えちまうし、近寄りがたい…」

横にならび、野原の上で胡坐をかく本状に言われた一言で神無は顔を上げ天上の方を向く。

「ほら!その証拠にー、お前の弟?兄貴?」
「弟ですわ、双子の”姉妹”ですけれど…」
「そうそう、その弟は一日目で剣道部の主将ぶっ飛ばしてその座を奪ったのに今はうまくやってるぜ。なんでだと思う?」

突然投げかけられた質問に、神無は「弟は昔から人に好かれる性格をしていますから…わたくしとは違って…」とこぼした。
すると天上は、違う違うとばかりに首を振り…

「それはな、”自分の弱さをさらけ出したからだ”。」
「弱さ…」
「あぁーそうだ、弱さってのはよぉー。人には見せたくないもんだよな、周りにはカッコよくて、可愛くて、そうやってよく見せたいもんだ。でもよ、それだけで固めた人間に”本当の絆は生まれない”。」
「本当の…絆?」
「いいか、神無。本当の絆、本当の友達、本当の仲間ってのはな…」

天上はそう言いながら、自身の右腕で左胸に手をやり…

「”ここんとこの奥の奥までさらけ出して、お互いにそれを知って初めてできるもんなんだ。”」
「そんなのどうなさればいいのか…」
「簡単だ、周りに見せるために作り上げた自分じゃなくて…お前の本当に”好きなもの”。心の底から魂の底から大好きなもんを、かっこつけ無しで語り合う。馬鹿みたいにデッカイ夢とかでもいい…そうすりゃーきっと、お前の奥底に共感した誰かが絶対!お前の味方でいてくれる。仲間ってのはそう言うもんだ」
「仲間…」

神無の納得いっていないような腑抜けた表情を見て、天上は「いいから、騙されたと思ってやってみな。自分の本当の思いを伝えてみな」と返した。

そして次の日…

「お…おはようございます…」

やはり皆の視線は冷たく、誰も挨拶を返さない。天皇のご子息だから天上や高天原のように直接手は出せないが、だからこそなお。徹底した無視、無関心は揺るぐことなく続く。

「あっあの!」

そんな中、部室でいつもおしとやかなお嬢様である神無が部室中どころか二階にある体育館にも届くような大きな声で言い放ったのを見て。辺りの全員が振り向き、その守りが崩れる…

「わたくし…その…”Kポップが好きですの!”」

Kポップとはここから遠く離れた銀河にある地球の韓国の音楽のことで…2XXXX年になり全銀河中を自由に行き来できるようになった現在でも宇宙中でその名をとどろかせる音楽の一つである。(ちなみに現在韓国は人口増加により火星にテラフォーミングして暮らしている。そのためKポップは現在”韓国のポピュラー音楽”ではなく”火星のポピュラー音楽”の略としての認識が一般的である。)

なにはともあれ、そう発言した神無の持ち込んだCDやアルバムを見てもなお周囲にはよりいっそうシーンとした空気が流れている。

「そう…なんだ…」

しかし今、神無にとっては驚くべき出来事が起きた。そう、なんとあの一見いらい口をきいてくれなかった部長がその口を開いたのだ。

「ぷっ!なんか神無さんて面白いね。」
「以外に天然なとこあんだね。」

それを境に、次から次へと言葉が溢れ出る。

(本当だ…本当に…)

神無はその日初めて知ったのだ。人生において才能のあるなしよりはるかに重要な事…それは…

”自分が何ものなのかを伝える、コミュニケーション能力と常に素直でいる”と言う二点を…

「天上様!」

彼から学んだのだ。

(自分をさらけ出すのはとても怖い事ですわ。嫌われるかもしれない、避けられるかもしれない、受け入れられないかもしれない…でも!)

天上を見かけるや否や駆けだした神無は、全学年の全校舎から見えるこの中庭で…

「わたくしと…」

(でも、思いを押し殺して生きるのはもっと辛い!だから決めましたの…もう何があろうと自分の思いに嘘はつかないと…)

「だから!」と彼女はその思いを天上に伝えた。

「わたくしと、結婚してくださいまし!」



「は?」

それは、凄まじい沈黙の後の天上の返事であった。

その頃一方、高天原が所属する演劇部では…

「高天原さん、ぜひ!」
「いやでも…」

事件が起きようとしていた。

「そこをなんとか、高天原さんの美貌をこの劇で生かしたいんです。裏方なんて宝の持ち腐れもいいとこですよ」

それは今回の劇のお話、その題材は「ロミとジュリエット」。まぁーよくある話だ…

「いやいや、だから私は裏方がにやってるんですって。そもそも、私そんな言うほど美人じゃ…」
「それは100%ない、断言できるわ」

女子生徒Bがそう言うと、つづけて回りの男子生徒も「うん、うん」とうなずいてアレを立たせる。
ちなみに高天原のスリーサイズは上から106、55、88

「いや、だから私は…それに100歩譲って見た目はいいとして台本とか覚えれる自身ないし…」
「何言ってるの、高天原さん毎回全教科学年一位じゃん。つか、全宇宙模試も10位以内だったよね。あんきぐらい楽勝でしょ。」

ちなみにこの宇宙にには多種多様な種族がいるが、鬼族は平均知能指数が下から3番目で人類より低い。

「じゃっじゃぁー演技力!そうよ演技の練習なんて今まで一回も…」
「それを今から練習するんでしょ、まだ本番まで時間あるし…」

部活の先輩のもっともな意見に「そりゃーそうだぁー」とグーの根も出ない高天原。

「とにかく!私は裏方が性格上あっているので、今回の件は…」
「それじゃこう言うのはどう?」

断りきろうとした高天原に現れた部長の提案…

「今回のロミオとジュリエット、当然”キスシーン”があるわけだけど…”相手役を天上くんに任せることにするわ”。」

その発言に高天原は一瞬で赤面し、ならばともっと強く否定する。

「いや!だったら直さらお断りします。誰があんなのと…」
「そうかしら?あの時の言動を見るに”恋愛感情がまったくないとは思えないのだけれど…”」

そらは、例の中庭での出来事…

「天上様。わたくしと、結婚してくださいまし!」
「は?」

その会話の後、天上の「は?」と腑抜けた声をかき消すほどの…

「はぁぁぁーーー!!!」

と言う大きな叫び声が聞こえてきた。

「はい?そこにいらっしゃるのは高天原様ではございませんの。何か申し出たい事でもありまして…」
「あるわよ!ちょーおおありよ!。そもそもこんな全校生徒から丸見えのとこで告白するのが非常識だし、てか天上とあったのってつい先週よね?それでなんでそんなことがいきなり言えるわけ?」
「殿方を好きになあるのに、時間など関係ありませんことよ。それに、なんでわざわざ貴方に叱咤されなければなりませんの?高天原さん。」

赤面し、思わず叫んでしまった高天原。そのままの勢いで本人の前に立ち文句を言ったらまさかの開始に言葉が詰まる…

「まさか?貴方も天上様の事が好きなのかしら?」
「いや、そんなわけないでしょ。なんで私がこんなのと…」
「でしたら、私が天上様と結ばれても問題ないわけでございましょう。ね!天上様♡」
「な!離れなさいよ」

目をそらして誤魔化した高天原の隙を見て、天上の腕に胸を当てて抱き着く神無。

そして現在…

「あの後、天上くんが「いや、俺そう言うの興味ねぇーわ。つかお前の事よくしらねぇーし」と返した時。すごく安堵してるようにみえたのだけど?ねぇー高天原さん。」
「いやだから…あれはその…」

部員全員で「そのぉー」と合わせて行った瞬間、高天原は考えるのをやめ

「とにかく!その件とこの件では話がべつ。あいつとは何もないし…それにあいつ部活未だ無所属のはずですよね?なんで演劇部に…」
「いや、この前先生に注意勧告されていたのを職員室で見かけたから。幽霊部員でもいいからって入部届出させたわよ。」
「いやいやいや、部長が幽霊部員でもいいとか言っちゃいますか…」

そんなツッコミむなしく、背後に立ち「おう!」と聞きなれた声が聞こえたことで高天原はビクっと体を震わせ背後を見る。

「それにもう呼んであるしね、どうぞ天上君。自己紹介を…」
「えぇー2年1組、天上・護、人間族地球出身。天上天下は俺が護る!で覚えてくれ、演劇とか見たことも聞いたことも当然やったこともねぇー完全完璧な若輩もんなんでそこんとこ”夜露死苦”。」

いまだかつて類を見ないほどに、やる気のかけらをもない自己紹介に皆が騒然としながら高天原はそれを見て少し落ち着いている。

「あんた、ロミオなんてやる気ないでしょ?」
「ロミオ?なんだそれ。うめぇーのか?」

それを聞いて一安心し、「ほら言ったでしょ、こいつがそんなの引き受けるはず…」と高をくくった。

「天上くん」
「なんだ?部長パイセン」
「…もし引き受けてくれたらぁー…”お菓子のカール三枚あげるわ”」

部長の発言にあたりの者達の目が点になり「?なにそれ…」と言う雰囲気に包まれている。
そんななか天上だけが…

「まっ…じかよ…」

その目に涙をこぼし号泣している。

「え?」

状況を飲み込めない高天原は、「どうしてこいつは泣いてるんだよ」「てかカールって何?」と頭の中で繰り返し唱え続けながらフリーズする。

「仕方ねぇーな、引き受けてやるよその頼み!。任せときやがれってんだ、部長の姉御。」
「うん、任せたわよ。」

「えぇーと」とやはり状況が飲み込めない一同であった。

ちなみにお菓子のカールとは、地球の日本でわりと昔から親しまれたお菓子だが2017年5月25日に地域限定販売となりその後人類が異星人を見つけ宇宙へ進出した9XXX年ごろには完全に販売中止。

しかし日本の人工の低下により日本の人工のほとんどが他民族に埋め尽くされたある時代において、販売中止前にそのお菓子を手にとった元アメリカン人の男性によって「この味を永劫不滅のものにしたいと…」との思いからそのオリジナルはコールドスリープに入り宇宙進出を終えた現在になって発見され…

「宇宙世紀カールさんとして再販売、そのオリジナルは長い間行方知れずだったけど。実は裏ルートで密かに販売されていたと言う分けさ。」
「んな貴重な三枚を…この俺に…」
「うん!手伝ってくれるなら。上げてしんぜようぉー」

(裏ルートって何よ?それって合法よね。本当に…)

そんな確実に無駄なくだりはさて置き、高天原はそれでも頑なに意志を曲げない。

「部長、お気持ちは嬉しいですけど…やっぱり私できません。だって今まで私が裏方として照明とか小道具づくりをしている間先輩方はずっと劇を成功させるために必死に演劇の稽古をしてきたはずです…それをただ見た目がいいってだけで採用していただくのは…なんだか納得いきません。」

部長は高天原の周囲を思う気持ちを尊重したうえで、こう言葉を返した。

「いい、高天原さん。確かに私達は貴方の言うとおり今までこの部をよくすために精一杯努力してきたわ、その中には主役になるために部活動を頑張ってきた人ももちろんいる。だから、高天原さんの思いは決して間違ってないしなんなら私よずっと正しい意見よ。でもね、高天原さん…」

部長の最後の言葉に…

「”今回は新入生歓迎会のための劇、だからこそ経験や実績をまだ積み切れていない貴方や天上くんにもチャンスがあるって姿を…”新入生の子達に見せてあげたいの。」

高天原は覚悟を決めた。

「わかりました、引き受けます。だだをコネてすみません…」
「いいのよ、拒否する権利は全員平等にあるのだから。」
「”キスシーンって、マジでキスするんですか?”」

雰囲気を一遍させるマジレスに迷わず部長は「そのつもりよ」と返した。

(だってその方が面白そうだから…)

やはり部長は悪い人だった。

こうして始まった演劇の練習…

台本読み
動きの確認
発声練習からトレーニングまで…

あらゆる活動に、”二人で”取り組んだ。

「よぉーし、ここでいったん休憩にしよう。お疲れ様…」

部長がそう言うと、部員全員が一斉に尻もちをつくとうに倒れこんで座った。一人を除いて…

「はぁー、あんたも座りなさいよ。」
「あ?なんでだ、せっかく体が温ったまってきたとこなのに。」
「あんたって本当に、体力お化けね。どういう体の仕組みしてんのよ、宇宙一ひ弱な種の癖して…」
「人間の中にもひ弱な奴とそうでない奴がいるってこったよ。」

ちなみに、鬼族は全宇宙強さ序列の第32位である。32位って言ってもピンとこないと思うが、無限と呼ばれる宇宙の広さを鑑みれば最上位クラスであることは想像できるだろう。

「でもあんた、台本の方は同なの?あんたいつも成績悪いし、正直かなり心配よ。」
「あぁーそれなら問題ねぇー、創造の通りボロボロだ。」
「演技もでしょ、そんなこったろうと思ったわよ。」

(まぁーでも、完全な未経験者でありながら動きを一発でトレースした時は何事かと思ったけど…問題は…頭ね。)

天上に備わっているのは、その類まれなる戦闘センスからくる動きの模倣のみ。頭は人類の中でも下の方、IQは高いが成績が悪いタイプの天才である。

「ほら貸してみなさい、どっか読めない字とかある?」
「これなんだけどさ…」

当然だが、字は日本語ではなく鬼族の言葉で書かれているので天上は覚えたて一週間で発音は現地住民とそん色ないほど覚えたがいかんせん、読み書きが不得意である。

「これはこう読むのよ…」
「ほうほうそう読むのか…」

その後も休憩時間の30分で皆が会話をしたり寝転がってリラックスしたりケータイをいじる中…

二人はひたすら台本の読み合いと演技の練習をしていた。

(演技をしていて思うことがある)

かくして二人はかなりのハイスピードで上達し衣装を来てのリハーサル。

「おぉー可愛いわよ、高天原ちゃん。」

目貸し込んだ高天原は、平常時の数倍は光を放ち輝いていると錯覚するほど美しく。元から併せ持つ宇宙三大美人にも数えられてもおかしくないほどの美貌に華やかな衣装と上品なメイクがあわさり。

皆は口をそろえてこう言った…

((ジュリエットを超えた!))

本人を超えたと錯覚するほどの眩し過ぎる彼女を眼前に置き、直視できるものはこの世界に彼を除いて他にいないだろう。

「お前、目貸し込むとほんと可愛いな。高天原…」

女子達の黄色い歓声を浴びながら現れるのは、同じように衣装に着替えたロミオ役の天上だった。

「かっ可愛いとか!…軽率に言わないでよ。マジキモイから…」
「そうか、悪い悪い。つい本心がな…」

二人の微笑ましい雰囲気に…

「写真OKすか?」

と煽る先輩の姿。

「ダメですぅ!」

そんなこんな出迎えた、劇の本番は驚くほどの大観衆の前で…

思い描いたまま、理想が現実になったように華やかに執り行われた。

「では、動かないで、お祈りの効(しるし)を僕が受け取る間は」

それはキスシーンでのロミオのセリフ、いつもの無礼でがさつで大雑把な天上からは想像もつかないような丁寧セリフに思わず笑ってしまいそうになりながら高天原はその唇を…

(私は…本当に…)

奪われた…

(こいつの事が好きなんだって…)

こうして劇は閉幕、それを見ていた一人の少年が客席から乗り出して決意する。

(僕は、あの人が好きだ…)

そう高天原に思いを寄せる神居であった…




新入生歓迎会から5日後、神居もまたその思いを剣にのせ精進努力を重ねていた。

「1!2!3!4!」

それは剣道の素振りの練習中に起きた衝撃の出来事だった。

ガラガラガラと言う音がなり、誰かが武道場に入ってくる。

「はい!皆さん注目です。」

いつも自身らを監督している剣道未経験の先生が連れてきた、青いスーツを着て頭にターバンを巻く黒髪ロン毛のひげズラ親父。

「えぇー初めまして、今日から狐面(きつづら)先生に代わりこの部を担当することになりました。”堕天・楽土”と申しまーす。これからよろしくな!餓鬼共…」

タバコを加えたターバン教師の乱入に、周囲は騒然とする。

「あのすみません、代わるってどうしてですか先生!」
「いやね、元主将である祓井くんのおかげでここまでやってこれたけどさ。本来はもっと経験ある先生に教わるべきだとおもったんだ、君達はこの名門八百万中学の名前を背負っているわけだし…」
「ですが!こんな、”剣士”にとって神聖な領域である武道場にタバコを盛り込むような人を先生だとは認められません。」
「剣士…ね」

つかかる祓井に、近寄って眼を飛ばす堕天。

「なんですか?事実を言ったまでです。礼儀としてタバコを教師が職務中にしかもこの武道場で吸うなど言語道断!貴方の人となりが察しれますね…」

祓井はまじめだった、馬鹿が付くほどまじめで礼儀を重んじる。だからこそ、言わなくてもいいことでも間違っていることを否定してしまう…そんな生きにくいほどの正義感がここでもまた発動してしまった。

”この男を前にして…”

「威勢がいい…ってのは、いいことだよな。そうであってくれよ、餓鬼…」
「餓鬼ではありません、祓井・閼儀斗(フツイ アギト)です。それにタバコはやめてください、未成年の前ですしそれに!」
「御託はいい、体に悪いとか抜かしやがる気だったんだろう。わるいが、んなことを心配される筋合いはねぇーしそれに…肺を悪くして体力が落ちるなんつーのはあくまで同格かそれ以上での話し。テメェ―みたいな餓鬼相手に息切れなんて起こさねぇーから安心しろ…」

そう言う堕天の手には、いつの間にか竹刀が握られていた。

(いつのまに…)

冷静に観察していた神居は、その以上に誰よりも早く気付く。

「ほれ、それで相手してくれや。そうしてテメェ―が勝てたら、潔く出てってやるよ…」
「本当…ですね…」

ここで、新任教師堕天・楽土(ダテン ラクド)VS祓井・閼儀斗(フツイ アギト)との戦いの火ぶたが切って落とされた。

「どうぞ、どこからでもいいぞ。」

しかし不可解な点が一つある、なんと堕天はまだ道着も防具も来ていない。

「防具…着ないんですか?」
「いらねぇーよんなもん、動きにくし…それに、お前には必要ねぇーだろ。どうせ一撃もあたんねぇーのによ。」

それは極めて危険なことだ、人間同士の剣道の試合ですら最悪死人が出るし普通に負傷する可能性の高い竹刀の勝負で生身!?しかも相手は人間よりも遥かに強靭な肉体を持つ鬼族。

「死に…ますよ…」
「ほぉーそれほどの自信か、でもなぁ~安心しろ。”どうせすぐ終わる”面白味もなくな…」

堕天がそう言うと、祓井は思わず怒りをのせて即座に切りかかる。

「でしょうねぇーーー!!!」

そうい着こんで振るった次の瞬間…

「はい…お疲れ。」

一撃だった…その場にドサっと言う音が鳴り響くまでわずか”1秒未満”。認識の方が遅れるほどの音速で倒しのけてしまう堕天に周囲は…

((この人、絶対逆らっちゃいけねぇー。怖ぇー!))

との印象を持った。

「戦場にたったこともない餓鬼が、剣士を名乗るなおこがましい。テメェ―らはしょせんチャンバラごっこのお侍さんがお似合いさ…」
「あの、ちょっといいですか?」
「ん?なんだ、お前もやるか。餓鬼2」

そう言って立ち上がったのは、現主将の神居。

「いえ…その技。僕にも教えてください、どうしても勝ちたい奴がいるんです…」

それは、昨日の出来事だった…

(あの人が…好きだ…)

あの劇を見て、見とれてしまった自身の目を、惹かれている自身の心の決着をつけたい。
だから挑みたくなった、自身の憧れである高天原の心を射止めた…”天上・護”に…

そこは食堂、昼の休み時間には生徒がごったがえすその場所で…

「天上・護!俺と勝負しろ!!!」
「なんで?」
「”高天原先輩を賭けてだ”。」

二人の恋を巡った決闘が今!はじまろうとしていた…

「え?…えぇぇぇーーー!?」

当然、高天原本人の同意などは一切な突然のものだった。

「ちょちょちょ、何いきなりいってらっしゃいやがりますか”塩崎・神居様”」
「神居でいいですよ、姫君」
「姫…君?」

その立ち振る舞いはまるで中世の騎士の如く、その剣は…

「ってその刀どっから出した?」
「何をいっている、貴様。青鬼の特性もしらんのか?」
「青鬼?なんだそれゲームか?」

ここで鬼族の特性について説明しよう、鬼族の中には9種の鬼がおりそれぞれどの系譜の血筋かまぁーつまり家系できまる。

1.赤鬼:基礎身体能力、攻撃力が非常に高く”激高状態時には炎を吹きあがらせその性能を大幅に強化する。
2.青鬼:剣を使わせれば敵なしの技術タイプの鬼。頭の角は抜くことが可能であり抜き取ると角の形状が変化し刀となって変幻自在の斬撃を放つことが可能。
3.黄色鬼:陰陽五行に属する火、水、土、木、金の性質に加え風と重力を操ることのできる鬼。
4.緑鬼:超回復能力を持つ鬼で、自己治癒はもちろん他者の治癒もできるものもいる…
5.白鬼:他の鬼や異星人の能力をコピーできる。
6.黒鬼:黒いものに紛れる能力を持つ
7.灰色鬼:煙に紛れることができる
8.紫鬼:他人を誘惑する能力をもつ
9.虹鬼:全ての鬼の性質を持つ鬼

これら全ての鬼は角の色で判別がつくようになっている。

「なんだその唐突なバトル漫画の能力設定開示みたいなのりは!?そんなの聞いてねぇーぞ。」
「それは勉強してきてないあんたが悪いでしょ、ちなみに私は…」
「紫だろ」
「違うわよ!赤!赤鬼よぉ。角のいろ見なさいよバカ!」

高天原の誘惑はスタイルによるものである。

「とにかくわかったか、姫君は僕の者だ。対決しろ、さぁー!」
「ちょと神居くん、対決って。それに私まだ神居くんのこと全然知らないし…」
「いいぜ、のってやるよ。」

天上は余裕の表情で神居の挑戦を引き受けた。

「バカ!」
「おいおい、ついに俺の名前を言わなくなったな。もうその域に!?」
「おい!いいんだな…本当に…」
「いいっていってんだろ?こいよ。それとも怖い…」

「怖いのか?」そう言い切る前に既に神居は動いていた。

「のかって…言わせろよ。」

天上はその背後に回って繰り出した高速の一撃を、さもそれが当たり前かの如く容易く受け流し。

「いくぜ…一撃腹パン!!!」

ポケット突っ込んでいたその腕を、取り出すやいなや構えることすらせずそのどでっぱらに鋼鉄の如き拳をぶち込んだ。

「ぐはぁ!」

まるでノーモーション、勢いなどつけることもせず放った見るからに大したことのない一撃を放たれた。しかし神居はその一撃で喰ったものを全て吐いて倒れる。

「これで満足か?てかお前…”よぇーよ”。」

天上の吐き捨てた言葉に、神居は激高し…

「もう一度だ…」

立ち去ろうとする天上の背後から、激高状態の神居がその角刃を再び天上の心の蔵に向けて一突き。

「もう一度行ってみろぉーーー!!!」
「だから…よぇーつってんだよ!」

怒りで覚醒、敵を圧倒し圧勝、怒らせると怖い…そんな思春期男子諸君が一度は考える夢物語を…

”現実に引き戻す一撃”

「ほぉーやはりやりおるわ、このわっぱ。」
「おっさん、また来たのか。」
「そりゃー天皇じゃからの、いつでも出入り自由じゃ。」

そう言って自身を後目に、話始める強者二人を見て。神居は…

(とどかない…”あっち側には…決して…”)

それは、神居が生まれながらに持つ劣等感。

父、鬼神カグラは偉大な父であった。その時代はまだ町のヤクザが派閥を聞かせ、それらに名を売ろうと自身を強く見せようと不良が跋扈する荒くれの世であった。

そんな時代に、弱きを助け強きをくじく西暦2万年の石川五右衛門こと”塩崎愚連隊”と言うチームが誕生した。それらは荒れ狂う世をすべ、力を誇りとする鬼を沈め奪われる者達の安息の地となった…

偉大な父の過去を知っている…偉大な家系に生まれている…しかしとどかない…
”目の前のただの人間に”

「おい!待て…待てと言っているぅ!」

声を荒げ、止めようとしても這いつくばる敗者を前に…誰も振り返らない。

そうして、天上と天皇神楽はその場を静かに立ち去り…他のクラスメートも食事を終えてその場を後にした。

「くっそ!くそくそくそぉー!」

悔しい、悲しい、虚しい…自身に課せられた血筋と言う業を、”超えられない二つの壁を前に…”

少年は倒れた…

「大丈夫?」

ただ一人の少女を除いて…

「高天原…さん…」
「今、神無さんが保健室の先生読んでるからちょと待っててね。私じゃ神居くん運べないから…」

目の前の高天原を見て、神居はよりいっそう決意する。

そして時は現在、武道場…

「僕は!女神を守る唯一の騎士になりたい!、そのために強くならねばならないのです。先生!僕に強くなる方法を教えてください。」
「おっおう!わかった、お前が割と関わっちゃいけないタイプなのはよぉーくわかった。」

堕天はちょとこの学校に来たことを後悔しつつ、稽古を始めた。
ヤニカス教師堕天は以外にもしっかりとした教師であった、その学びは深く実力は上記の通り折り紙付き。そんな堕天が一目置く生徒はやはり…

「神居!こっちこい」

すると堕天は唐突に神居のみを呼び出し、他の生徒とは違がった特別指導をすると言う。

「特別指導って…なんだか”響きが凄く卑猥ですね”。」
「お前は思春期男子か!そうだったなおい!。…そうじゃねぇーよ、ただお前には普通の指導じゃもう意味がねぇーと思ってな…」
「普通の指導?と言うのは普段の稽古のことですか。しかし他に何が…」
「そりゃーお前…”鬼術(キジュツ)の指導だ…”」

鬼術とは、さっき言った格鬼の特性の事である。

「鬼術の指導って、何を教えると言うのです。僕はこう見えてしっかり能力について把握しているし、使用だってしている…」
「それじゃ足りねぇーって言ってんだ、いいかお前が負けたもしくはとどかないほどの圧倒的強者つったらまず誰を思い浮かべる。」
「それは…父上です…」
「だろ、ならなおの事剣だけじゃダメだ。奴の強さの秘訣はその身体能力だと思われがちだが実際はそれだけじゃない、奴はこの世でも珍しい天皇家に伝わる”虹鬼”だ。だから全ての鬼術を完璧に使いこなし、併用できるそしてその血が…”お前にも受け継がれている。」

そう語ると堕天は、「剣を取れ」と言って竹刀を投げ渡す。

「いいか、本来剣道の試合じゃ鬼同士でも鬼術は禁止だ。だが今回は思う存分つかえ、もちろん俺も使うがな…」
「では…」

すると神居は竹刀を投げ捨て、角を引き抜き構える。

「お願い…」
「違う!そうじゃない、竹刀を渡したんだから竹刀で戦え」

神居が「鬼術を使え」と言ったから剣を取ったら、堕天はなぜかそれに腹を立てて怒る。

「いや、しかし鬼術を使ってよいと言ったではありませんか!」
「そうだぞ、使え”竹刀をもったままな”」

そう言われ渋々竹刀を片手、もう片手に角の剣を持ち人生初の二刀流で堕天に向けて牽制と言わんばかりの斬撃を放つ神居。

「違うな…」

しかし、その斬撃は堕天の体をすり抜けて通り過ぎ武道場の壁を真っ二つに両断する。

「見ての通り、俺は灰色鬼だ。全身を煙化している間はあらゆる攻撃が俺には当たらねぇー、だが攻撃のさいは実体化しねぇーと!」

堕天は突如として神居に接近し、その竹刀を堕天に向けて思いっきり振りかざす。

しかし…

「すり抜けた」
「そうだ、俺達灰色鬼は全身を煙かして移動する関係上”武器にもその性質を付与する必要がある”。じゃねぇーと…」

説明の途中、堕天の持っていた竹刀が突如として堕天の手をすり抜け落ちてしまう。

「持てないんだよ、煙は煙同士しか。だから剣ごと自身の鬼術に巻き込んで持ちあてるときには実体化する。そこで考えてみろ、”別の鬼でも武器に纏わせることは可能なんじゃねぇーかって”…」

そこで神居は初めて理解した、堕天が伝えようとしている本当の意味を。

(纏う…斬撃を…竹刀に…)

神居がそうイメージする青い刃の形をした光が竹刀を覆う。

「わかったか、それができらばお前はその辺に落ちてる鉄パイプや木の棒ですら刀に変えられる。二刀流の完成だ…」

堕天の発言に、胸が躍り何より二刀流と光の刃とか言う。思春期男子ならだれでも憧れたなんかカッコいい感じに、自身がなっていることに胸が躍りワクワクと興奮が止まらない神居。

「なるほど…”二刀流は男のロマンですもんね”。」
「いや、論点はそこじゃねーけどな」

そういいつつも、神居の目を輝かせて喜んでいる様子を見て悪い気はしない堕天であった。

「よしそれじゃぁー次が本題」
「まだあるんですか☆」
「いや…うんまぁ―落ち着け、気持ちはわかる俺も学生の頃はそうだった。…斬撃を武器に纏える、つーことはだ…」

神居は目の目にいた堕天が視界から消え驚き、背後を見るとそこには…

「俺ら灰色鬼は煙に紛れると同時に、近くに自然発生した別の煙があるとそこに瞬間移動できる。これは周囲の自然物に自身の煙の性質を付与しているからだ。ここで問題お前の斬撃を他の物体に付与するとどうなる?」

そう言われ、神居はすぐさま壁に触れ斬撃を付与するイメージをする。
すると壁はみじん切りになり粉々になって壁に穴が開く…

「そう言うことだ、これでお前は斬撃による中距離と剣での近距離。それに加え、”五体を刀に変え、剣を奪われても戦える無刀を習得したんだ”。どうだ、便利だろ。」
「はい!」

その後も神居と堕天は稽古を続け、斬撃の形を変化させ切り方を変える技などをマスターしていった。

ちなみに破壊した武道場は全額堕天先生負担である…

「やり過ぎたー」

今後三ヶ月の給料が0円になったことに涙する堕天。

「いや、専用のサンドバックとか用意しろよ」と全員が思いつつ、なんやかんやで部員は堕天先生を認めることとなった。

そして愛の頂上決戦当日…黒い雲が覆う空のしたのグラウンドにて…

「天上!今日はこの前のようにはいかんぞ。」
「そりゃー楽しみで夜しか寝れねぇーや…」

天上vs神居の高天原を巡る戦いの火ぶたが切って落とされた。

最初に仕掛けたのはもちろん神居。

「お!なんだその青いの!新技か?」

今回、神居は堕天に頼んで自身の角の剣ともう一つ。斬撃を纏った竹刀を持っての二刀流での戦闘となっている。

それに天上は反応し、ワクワクした様子を見せる。

「その余裕もここまでだ!」

二刀流に対応できるよう、堕天とは特訓を重ねてきたためか剣の速度は凄まじくキレがあり早い。
さらに…

「おい!こりゃただの蹴りじゃねぇーな」

”切れる蹴り”、それはあの時の特訓で得た周囲に斬撃を付与するイメージによって生まれた技の一つ。さらに…

(空気に斬撃を付与するイメージ…)

神居がそう思うと、神居の周囲に斬撃が発生。斬撃のバリアが出来上がる…

「これで近づけまい」
「そうだな、普通ならそうだ。でもそれ空気なんだろ…だったら…」

と、天上は空気中に張り巡らされた斬撃を全てその一撃の風圧のみで吹き飛ばす。

「化け物め…」
「残念、ただの人間だぜぇ!」

まただ、またあの腹パンだ。そう悟っり過去がフラッシュバックした神居は手に持った自身の五体に宿った角の剣で天上の脇腹に一突き…

「こりゃーいい…すげー技だ。」

リーチの差により天上の拳が届く前に、仕掛けることのできた神居は天上の脇腹に斬撃を付与したうえでその斬撃の形を「螺旋状に動く、細かな斬撃」とイメージした。

これにより天上の脇腹には大ダメージが刻まれ、脇腹が抉り取れるはず…だったが…

(傷が…浅い!)

なんとその攻撃は、天上に細かなかすり傷を負わせる程度だった。だがなぜ、確かに威力は人間より遥か硬い壁を切り刻んでしまえるほどだったはずなのになぜ!?

「ん?ちげぇーぞ、お前の威力が足りなかったんじゃねーむしろ十分過ぎるぐれー。」
「ならばなぜ!貴様には聞いていない…まさか防御力まで父上と同格だとでも言うのか…」
「いや、”嫌な感じがしたから致命傷を避けて避けただけだ”」

天上がさも「あたりまえでしょ」みたいなノリで言った言葉に周囲で見守る生徒達は「いや…そんなことできんの?いやできないよ」と全員が思った。

(神居よ、理解したか。あの小僧の強さはわしのような五体の基礎性能の高さではない…それは攻撃を予見し見切り、模倣し、対策するたぐいまれなる戦闘センスととっさの判断力による戦闘IQの高さそして…)

「それじゃーいくぞぉー!」

(敵を前にして狼狽えるどころか、よだれが垂れるほど興奮しさらなる進化を生み出すその”圧倒的な爆発力”。相手の強さの”真”を見極めれぬとは…やはりまだまだじゃのぉー神居。)

屋上から戦闘を眺め、冷静に考察する神楽と「天皇陛下危ないですよ、降りてください」と屋上の塀のテッペンから見下げる天皇を止める狐面先生とそれを見守りながら「あの人、あんなところから良く見えるな」と内心思っている職員一同であった。

が、そんなことはさておき最後の一撃で神居は自身が剣道部の主将にやったように遠くのグラウンドフェンスを破壊し体育館の一回の壁にめり込んで止まる。

「やはり…僕では届かんか…」

その悲しみを表すかのように、曇った空からついに雨が…

それにより雨に濡れとんでもない姿があらわになる神居。

「なぁー神居、お前…”女だろ”」



「「えぇぇぇーーー!!!」」

実は神居、この戦いが始まる前「学ランは重たくて邪魔になる」と思い高天原に持っていてといい「この戦いに勝ったあかつきには、その学ランを勝利の証として女神に贈呈いただきたい」と頼んでいたため学ランは来ていない。

(いや、勝たなくても取りにきてよ…)

とその時は内心思っていた高天原だが、中シャツは塗れると透ける。しかも、さっきの天上の一撃で胸に巻いていた晒が中でほどけて…(当然下着は着ていない)

その可愛らしいピンク色の乳首が透けて大変卑猥なことになったいる。

「わぁぁぁ!!!天上様見てはいけませんわぁぁぁ!」

急いで走ってきたのは神無。おそらく、自身と顔がうり二つの双子の弟(女)の痴態を見られるのが耐えられなかったのだろう。

「とっとにかく男子達は目をつぶるって…」

近くにいた男子は全員その姿を目にとめた瞬間に大量の鼻血を出してぶっ倒れている。

「「最低」」

女子が全員ドン引きし、遠くで観戦し見に行こうと走った男子生徒は全員その場で静止し気まずいムードになっている。

「てか天上!知ってたのなら何でわざわざ見に来るのさ!てか戦い挑まれた時点でとめなさいよ。女の子のお腹っ大切な器官がいっぱい入ってるんだからね!何考えてんのマジ。あとお前も目をつぶれぇぇぇ!!!」
「と言いますか、天上様。いつからお気づきに…」
「最初っからおかしいとは思ってたんだ、なんかいつも胸が苦しそうだったし、男の癖して上半身の体格の悪さのわりに太ももとケツの辺りの脂肪がやたら多かったし足小せぇーし…何より…最初戦った時の”股関節の動き”と”腹触ったときに胸に晒巻いてんのわかったから”それで…」

と、割と長々と語った天上を見て上から学ランをかけて隠した直後の高天原が鬼の形相になりその手で…

(パンパンパンパンパンパンパン!)

おおふくビンタを喰らわせ、天上はその後「高天原だけは怒らせないようにしよ…」と心に誓って二人に謝罪した。

そして翌日の朝…

「やっぱり姉さん、スカート何て恥ずかしいよ。」
「我がままはおよしになって、神居。もうばれてしまったのだから規則に従う他ありません。」
「でも…」

そういって開いた扉の先にはクラスメート達がいつも通りホームルーム前で、ざわついている。

「お!神無さんと…神居…くん?」

神居は赤面し、恥ずかしそうにスカートを握り入ってくる。

そして男子は歓喜、女子も女子で盛り上がった。ただ…

((スカート短くない?))

と言う部分だけが気になったが、そこは神居曰く「恥じらいはあるが、機能性を重視した」と語る。
当然、健全な思春期男子諸君はさらに大きく歓喜したとさ…めでたしめでたし。

「めでたくないわぁー!」
「つか、何で男のフリ何てしてたんだ?」

すると1年の教室の窓に、突然天上と高天原が現れる。

「きゃー!天上様ぁ♡」
「我が愛しき女神、言ったいそのような不遜の獣を連れて何用で?」
「おいテメェ―!不遜な獣って誰のことだぁーコラ」

二人の登場に、神無以外の女子は距離を置いて天上を凝視し、男子は全員高天原に駆け寄った。

「なんだよぉー、何度も謝ったじゃねぇーか」
「「最低…」」
「うぅー」

女の恨みは怖いようだ。

「で!何で男のフリを?」
「それは…」
「天上様、だいだい我々鬼族の天皇家は”男子がその跡継ぎとなる”決まりがありますの。しかし、わたくしらの父神楽の妻”塩崎・神咒”は子供に恵まれず。後年で唯一生まれたのがわたくしたち双子なのです…」
「ふぅーん、なるほど。男じゃねーと後を継げないが御袋さんはもう子供を産めるような体じゃないと…だから双子の片方が男のフリを…」

すると天上は神無の前を通り教室に入って神居の頭にポンと手を置く。

「プレッシャーあったよな、悪いなあんなこと言って。…”よく頑張った、これからも姉ちゃん護れよ。”」

すると神居は自身の頭に触れている天上の手を振り払い、「当然だ、お前こそ女神高天原に何かあったらただじゃおかんぞ。」と脅しをかけた。

「おう!お互い、頑張ろうぜ。」

神居はだされた拳を付き返し、二人はお互いをよきライバルとして認め合った。

そんなこんなで天上は、高天原、神無、神居ら三名を中心に絆を深め合っていき2、3日の平和の日々が過ぎた…その次の四日目、誰も予見しなかった衝撃の事件が彼らの平和なスクールライフをぶち壊す。

「ハロー♠」

《承》もう二人の転校生…完

《転》百鬼夜行

神居と神無の教室で、授業を受けていると突然現れた…

「呼ばれてないけど、にゃにゃにゃぁーん♠」

黒い角を持った黒ずくめの男が黒板から突如現れたのだ…

「初めまして、僕の名前は”百鬼・奈闇”。この学校のOBって奴さ、今から何人か攫っていくけど…よろしくちゃーん♠」

いきなり現れた奈闇と名乗る男は訳のわからないことを喰っちゃべり、先生は奈闇に対して「コラ!君一体どこから…」と注意の言葉を浴びせ取り押さえようとしたその瞬間。



グチャ…と言う音が周囲に響き渡り、先生の首が吹き飛ぶ。

「はいはーい、奇麗な花火が打ちあがりましたねぇー♠。あれ?今って授業中、それじゃー問題…どうやってやったでしょーか!♠」

奈闇の狂った行動に、思わず逃げ惑う学生達。

「ダメダメぇー逃げるような悪い子さんの首はぁー…”全部ひん曲げちゃうぞ!”♠」

奈闇がそう言うと、辺りの生徒達の影か動き出しその首をあらぬ方向に曲げようと構えたその瞬間だった。

「おい!」
「あ”?♠」
「やめろよ、気狂いやろー。」

奈闇の背後に立つ、神居はその首に剣先を向けて構える。

「やってごらんよ、おちびさん♠じゃないとぉー…」

それでも奈闇はその行為をやめない。

「おい!やめろぉー、本当に切るぞ。」
「だからやってごらんって…”殺(や)ったことないみたいだけど”、大丈夫そう?」

奈闇が放った凄まじい殺気に、気圧され身動き一つとれない神居。
握った剣が一瞬にして、手汗でべとべとになるほどに目の前の奈闇に恐怖している。

「やめてくださいまし!」

そんな二人の緊迫した状況を止めたのは、一人の少女の叫び。

「姉さん!」

それは双子の姉であり、天皇神楽の娘である神無の声であった。

「おっと、凄いねぇ―君♠。他のクラスメート全員、我さきに逃げようとしてるなかで唯一君だけが全く動じず焦る様子もない…息巻いて登場した彼ですら冷や汗ダラダラでカッコ悪いことになってるってのにさ!」

奈闇の言うことは正しかった、確かに突如現れた謎の不審者に襲われ目の前で教師をいともたやすく殺害して見せた彼になぜ神無は一切の動揺も狼狽えもしないのか。

いやそれ以上に…

(姉さん!なぜ動いたんだ。わざわざ危険を増やすような真似をどうして!?)

神居はそこが引っかかる様子だった…

「狙いは”わたくしでしょう”」

その言葉に、クラスの全員とそして何より…神居が動揺する。

「あなた方の狙いはわかっています。それは”天皇に対して何らかの要求をすること”、そのための人質ですものね。わたくしが…」
「そうだなぁーそれもあるが…ただ脅すんじゃ日が暮れるんでな。女を連れてって時間がたつごとに一回”犯す”。そう言う遊びがしてぇーのよ、だから娘のほうだけもらって息子の方は…ってあれ?息子ちゃんの方がいないよぉーな…」

奈闇の挑発に、神居はその震える全身を自身の手荷物”得物”で刺し無理やり止めて目の前の奈闇を凄まじい形相で殺しにかかる。

「覚悟しろ…”姉さんを傷つける奴は皆悪だ”!」
「姉さん?♠」
「やめなさい神居!その男には勝てない!」

神無の必死の抵抗虚しく、切りかかった神居は避けられた表しにその両手を抑えられ身動きが取れなくされる。

「ほほぉーなるほど、姉さんってことは君が息子ちゃん♠。まさか両方女の子だったとはねぇー驚きだ、跡継ぎの件で男の子のフリとかそんな感じ?それにしては随分攻めた格好してんだねぇーこれじゃー馬鹿でもわかるよ♠。」

狂気じみた笑いを浮かべながら、取り押さえた神居の耳元にそーと近づき。

「”どんなプレーが、お好きかな?”」

と、この世でもっとも気色悪いことを気性く悪い方法で問い詰める。

「やめてくださいまし!連れて行くならどうぞわたくしを、その代わり神居には手を出さないで。」
「姉さんー!」

それは神無の決しの覚悟、本来は神無も怖い。しかし、それより遥かに怖いことが目の前で起ころうとしている。

そう、大切な妹を失うこと…

「それはできねぇー、こいつも連れて行く。天皇家の女であるなら誰であろうとな…」

しかし男も曲げない、と言うか曲げる必要がない。なぜなら、彼の実力なら二人とも攫ってとんずらできるからである。

「ならばこうしましょう」

と神無が出した打開策は、技術の授業で使うカッターを自身の首に突き立てること。

「このまま頸動脈を切って自殺しますわ、そうすれば貴方は任務を果たせない。”父上に恨みを持つ百鬼組のお頭様が”そんな失態許すかしらね…」

神無の発言からするに神居とは異なり、神無は何かを知っているようだ。それがなぜかは知らないが、とにかく彼の任務が二人を攫うことなら一人でも逃すのは惜しいだろぉー。

「そうだね…でも…確実に今、僕ちんの手の中には攫える人質がいるのになんお保障もなしにその言葉は鵜呑みにできないなぁー♠。その意見が正しかったとして、君の妹を攫わない理由にはならなくない?」
「なりますわ、貴方がたのボスは妹の存在を知らない。つまりは、どちらか片方を連れてきてもう片方は殺した思うはず。なら、その子のことを黙っていれば誰もあなたを責めない。安心してくださいまし、戸籍上の塩崎・神居を死んだことにいたします。そうすれば貴方はお咎めなしその子と違って私は抵抗などいたしませんことよ。」
「抵抗つったってたかが知れてる…」

奈闇がそう返した瞬間、神居は堕天から教わった斬撃応用を使い奈闇はとっさにその手をどけて回避した。

「ほらね?」
「でもさぁー♠僕ちんには容易く完封できるんだよねこの状況、だって僕ちん…”最強だからさ”」

そう語ると、奈闇の影が教室中を覆い隠し取り込み全員を捕縛する。

「このまま持ちかっちゃおうかにゃーん♠」
「お願いです…”私だけにしてくださいまし?”」

黒い何かの中で、たった最後のたった一言それに奈闇は釘付けになった。

「なるほど、君”紫鬼”か♠…」

紫鬼の能力は、”誘惑”。老若男女、種族、性別を問わずいかような存在でもそのその本能に”子孫繁栄の意志”があるのならその対象を自身に向けさせることが可能。

「なるほど、いいよ♠。でもこれは君に魅了されたからじゃにゃーよ、ただ…そこまで自身の全てをさらけ出してすら妹を護ろうとする意志♠。その強固な意志を…”性の快楽でグッチャグッチャにしたいだけさ”。」

奈闇は悪趣味で最低な男だった、しかし逆らえない。圧倒的な力の前では無力。

「それにここには”やっかいな奴もいるし”。事を終えるのは早い方がいい…」

(やっかい?)

奈闇の最後の言葉が引っかかりつつも、神無はその場から連れ去られることとなった。

「あ?んだよ、今の揺れは…」

その頃、上の階にいた天上と高天原ら2年生は教室で数学の授業を受けていた。
天上達がことの顛末を知ることになるのはそれから5分後、校内放送を聞いてから出会った…

「ぐぅー…姉さんが…」

それを聞いてすぐ駆け付けた、天上と高天原は腰を抜かし気絶しているほとんどの生徒の中に一人。下を向いて悔しそうにしている神居を見つけて駆け寄る。

「一体何があたって言うのよ…」
「百鬼・奈闇と言う黒鬼が黒板から突然現れ…天皇の娘である姉さんを連れて行った。」
「こんな時にさのおっさんは何してんだ…」

苦言を呈する天上の胸ぐらを摑み、神居は一言。

「お前は何をしていた!僕よりずっと強いお前なら姉さんを護れたのにぃ!」
「ちょっと神居くん、それはいくら何でも横暴じゃ…」
「悪い…でもよぉー神居。”姉ちゃんを俺が護っていいのか?お前は何もしねぇーのか?”」

天上の告げた言葉に、ついに心が折れる神居。

「もうこのバカ!もっと言葉を考えて…」
「悪い…悪いな神居、俺もお前なりにお前の姉ちゃんとその奈闇とか言う奴探してみるわ。お前も神無も高天原も…”天上天下の全ては俺が護るから”それまで…少し待っていてくれ…」

こうして、悲劇の日は過ぎ去り神居は再び堕天の元へ向かうこととなる。

「おいおい、勝ちたい奴の次は護りたい人がいるだ?お前どんだけ欲張りなんだよ…」
「すみません…ですが、僕はもっと強くならなくては!」
「それはいいが、今回ばかりはそれだけじゃ無理だな。強さだけじゃなくて策がいる、相手はあの”黒鬼奈闇”なんだからな。」
「黒鬼奈闇(クロオニナアン)?」

その頃一方、事件を聞いた天皇神楽はこのことを内密にし、他言しないように学校側に言った上で神無の誘拐事件に対しての対応は相手の出方を待つこととした。

「え!警察とか使って捜索とかしないんですか?」
「せぬよ、せぬ方がいい。わしを相手になんせ相手は"百鬼組"。宇宙最強のわしを相手どることを想定して作戦を立てとる連中じゃ、下手に動けばその方が神無の身が危うい。」

神楽は意外にも冷静だった、まるでこの状況に慣れているかのように…

「なぁーおっさん、その百鬼組ってのはなんなんだい?」
「…百鬼組はわしらがお前さん達くらいの頃に使った暴走族、"塩崎愚連隊"結成当時。誰もが憧れ名をうろうとしたこの星随一のヤクザの名前じゃ。」
「「ヤクザ?」」

その発言に、天上と高天原が首をかしげる。

「つまり!神無ちゃんはヤクザに攫われちゃったってこと?天皇への身代金請求のために?」
「いや、多分そんな単純な話ではない。奴らは身代金なんぞより"かつての仇であるわしを貶めることが目的じゃろう。"。」
「つまりは見せしめるにするってことか…」

二人が神楽から、百鬼組について聞いている間神居は奈闇について聞いていた。

「あいつは、この星随一の反社会武装組織"百鬼組"の構成員でこの学校の校長。天獣院・奈夜の息子で奈落の兄貴であった男だ。」
「天獣院と言えば、国の有力者ばかりが集まるエリート一家。そんな家計にまさか反社会組織の人物がいたなんて…」
「そう、だからやっぱ家を破門になり苗字を変えて活動している。百鬼は百鬼髪の二代目組長"百鬼・悪路"の養子となって付けられた名前だからな。」

堕天が百鬼組のことを語っていると、神居はある疑問が湧いて来た。それと同時に…「この場所には厄介な奴がいる」と言う発言がフラッシュバックし堕天に…

「堕天先生、なぜそんなにお詳しいのですか?その組織について…」
「それはなぁー…元々俺は、"百鬼組初代総長天上・釈迦の右腕だったからな"。」
「天上・釈迦?」

その会話により、神居は驚くべき真実を知る事となる。

「でも安心しろ、天上はこの件に関係してねぇーよ。奴が生まれて物心着く頃には釈迦の兄貴はすでに宇宙一硬い鎖に四肢を繋がれたまま口も目を塞がれて収監されている。繋がっている説はゼロ皆無だ。」
「…」

神居はその説明を聞いてもなお、堕天を睨む。

「まさか俺を疑ってんのか?ないない、もうそんな元気。それに俺は昔神楽に脅されてとっくの昔に会心してるよ。本当さ…」
「そうですか…で、その奈闇の何がそんなに警戒すべきことなのでしょうか?」
「お前もまただろ、あの影。あいつは黒鬼の中でも最上位の実力をもつ奴だ。簡単には勝てない…しかし弱点は明確にある、光の多様場所に弱いつーじゃくてんがな。」

そう言って堕天との作戦結構当日、神居は敵を誘い出すために街中の百鬼組に関わるヤクザの事務所を片っ端から潰し尽くして行くこととなる。

当然名前は偽名、風貌はフードで隠した。

「よし次は…」
「やぁーやぁーやぁー♠︎、君が噂の道場破りくんかな?。」

そうこうしていると、まんまと13件目の事務所突入時にその姿を表す…

「そうだなぁー久しぶり…」

しかし、そこにいたフード男はなんと神居では無く。

「おーこれはこれは…堕天先輩…」
「元気にしてたか?クソ坊主。」

それは神居との作戦、堕天が言うには奈闇の拠点は工場が立ち並ぶ海外沿いのスモーキータウンと呼ばれる場所にあり。そこから最も近い下請けの事務所もしらみつぶしに潰していけば10を過ぎる頃には確実に奴が現れるそう。

そしてその予想は見事に的中し、しかし神居は顔が割れると神無に危険が及ぶため堕天が出向くこととなった。

「俺が潜伏していること、なぜ知っていた?」
「何のことだかさっぱり♠︎」
「厄介な奴ってのは、天皇の周りをうろちょろ嗅ぎ回ってるテメェーらクズ共を駆除するために宇宙警察から派遣された俺を恐れての発言だろ?そんなに怖いか!元右腕の俺が…」

堕天のその煽り文句に、奈闇はニタニタ笑いを浮かべながら。

「勘違いしないでよん♠︎、確かにあんたは俺らの事務所の位置も組織のことも知ってて厄介だが…"怖がるほどの実力なんてあんたにはねぇーよ♠︎。」

そういうと奈闇は、堕天の影に瞬間移動して攻撃を仕掛ける。

「影で足を縛った上での瞬間移動、無い頭で考えたな。だが…"ここはスモーキータウン"。俺のテリトリーだ…」
「元な!」

そこで行われるのは、煙に紛れ瞬間移動する堕天と煙により光の当たりにくいこの街の闇に紛れて瞬間移動する奈闇の姿。

「知ってるかい?先輩。黒鬼は影を操るが…潜むのは影だけじゃない…"僕ちん達黒鬼は、あらゆる黒に潜むのさ。"それが例え、工場の排気ガスによる黒い煙でもねぇー!」

紛れるものどうしの戦いは熾烈を極めたが、後一歩のところで奈闇が黒い煙を操り煙どうしの干渉により惜しくも堕天が捕まり敗北。

かに思われたが…

「なぁー奈闇…もしよぉーもし。"この街の煙が一日でも完全に止まったとしたらどうするよぉ!」

奇跡はその瞬間に起きた。

(これは…竜巻!黄色鬼か?)

突如として発生したストーム、それによってスモーキータウンの煙が堕天と奈闇がいるその場所だけピンポイントに晴れ光が差し込む。

「バカかにゃーん♠︎、太陽の光を当てたって影がでからみょーん♠︎僕たちはそこに紛れるだけ…」
「できねぇーよ、テメェーの周囲にあるのは竜巻じゃねぇー…"青鬼の持つ斬撃の嵐だ"。」

堕天がそう語ると、上空から神居が出現。
そう、そのストームの正体は神居が作り出した筒状の斬撃だったのだ。

(堕天先生に教わった他対象に付与する斬撃、それで空気に斬撃を付与することで風を生み出し煙をかき消す。)

二人の連携がなした奇跡の一撃で、その円には煌々と光が刺すだけでなく周囲の影までの間には無数の斬撃が飛んでいるため脱出は不可能。

「つまりお前はもう、"ここから、無事には出られない"。」
「と、思うじゃぁーん♠︎。」

すると奈闇は、光さす斬撃の嵐の中に少しだけ…ほんの少しだけできた自身の影を拡大し斬撃のストームを自身の肥大化した影で覆い尽くして飲み込む。

すると斬撃の嵐は突如として発生した、実態を持つ影の圧力に負け周囲へ霧散し消滅する。

「残念ねぇーん♠これでおしまい俺の勝ぃー!」
「だと…思うだろ♧」

しかし、確かに消し去った斬撃の嵐。それに歓喜し、狂気し両手を広げて勝利の雄叫びを上げていた奈闇の背後から堕天がその胸に一刺しして勝負は逆転勝利にて閉幕。

「語尾のトランプは俺の特権だぞ」
「どうして…それにその刀どこから…」
「いやねぇー、弟子から投げ渡されたのさお前が影を同行してるときに…」

そう言われ上空を見上げると確かに神居の頭部にあったはずの、一本角がなくなっていた。
そしてもう一つ、このトリックには明確な”手品の種が存在する”。

「タバコはどうしたみゃ、堕天先輩♠…」
「これか?投げたよ、”刀受け取るついでにな”」

種証をしよう、流れはこうだ。まず堕天が奈闇を拠点であるスモーキータウンに誘い出し一騎打ちをする。奈闇が戦いに集中している間に煙の上、遥か上空うから神居が天皇家のヘリに乗って上空から登場し斬撃の嵐を作り出す。

すると奈闇は突然の事態に対応しようと、一瞬完全に意識を斬撃の方に向かせた瞬間にタバコを開いた奈闇の開いた股の間からちょうど背後になるように捨て奈闇が影を操作すると時決まって動作が振りかぶる形で大きくなり一瞬地面を見るその隙に刀を上空の神居から回収。

頭を上げた時には目の前の堕天はタバコの煙にて瞬間移動を果たし奈闇の胸を貫いてチェックメイト。

「おっと、暴れても無駄だぜ♧。」

捕まるぐらいならと、内臓ぐちゃぐちゃになるかもしれないリスクを犯してまで堕天の突きさした刃を振り払おうとする奈闇。

しかし堕天はそうなることを予見して、ヘリにあらかじめ黒鬼の特性を完全に完封する全面が白い板電気で覆われた折り畳み式の白い箱を積んでおいたのだ。

「そいつの名は”ホワイトボックス”、天皇家の財力を拝借して俺が作らせた特注の捕縛アイテムだ。そいつの全面は板電気つーもんで覆われてるから影はできねぇー、そしてお前が服の黒を操ろうとしても…」

中に入り、怒り狂う奈闇が服の黒を操ろうとした瞬間。四方八方から掃除のような音が鳴りだす…

「箱の四方八方には、操られた黒に反応して吸引するダイソンもびっくりの宇宙掃除機が搭載されてる。やろうと思えばブラックホールすら飲み込めるしろもんだ。お前じゃ到底出れねぇーよ♧」

これで完全に終わった、決着がついた、そう判断し神居は纏っていたフードを脱ぎ捨て箱の中にいる奈闇に神無の居場所を聞き出そうと近づいた。

「姉さんはどこだ!お前ら本拠地か?それは一体どこにある!」

そう叫ぶ神居の答えは、箱からは聞こえてこない。

「こりゃダメだな、仕方ねぇー本部の場所は初代の時の一件で移動して立て直されてるはずだからまたしらみつぶしに探すしかねぇーな…」
「そんな!そんな時間は…」
「まぁー落ち着け、こいつはもう出てこない。中で拘束されてるからスマホも出せない、それならお前の存在を報告もできないから姉ちゃんに被害が及ぶことはよっぽど…」

二人が勝利の喜びに浸りつつ、会話をしている真っ最中背後に忍び寄る影に堕天と神居は気づかなかった。

「そうだみゃ、先輩♠。」

それは堕天の”黒い”髪を起点に瞬間移動してきた奈闇の姿だった。

(どうして…まさかこの土壇場で、能力の解釈を広げたのか!?)

堕天は黒鬼の能力をこう解釈していた、自身と同じ視認した対象物に潜む能力だと…しかしそれは大きな勘違いだった。

認識とは目で見るだけではない…頭で記憶する”存在の認識”、それもまた認識の範囲である。
そして奈闇はその認識の範囲を”視覚から記憶”へ広げたことにより、記憶の中の堕天の黒髪に溶け込み移動いしたと言う仕組みである。

「なに調子ずいてやがるんだにょ♠堕天先輩。まさかあんた、教え子を持ったことで自分が強くなったとでも勘違いしてんじゃぁーねぇーよなぁー♠。」

奈闇はそう語りながら、堕天を彼方へ蹴り飛ばし手刀での斬撃で応戦してきた神居を鬼術により堕天の煙化の如くすり抜けて避ける。

避けるついでに神居を影で縛り捕縛、そのまま工場の壁に打ち付けられ足を広げ倒れている堕天に近づきこうのべた。

「ちげぇーよバーカ!あんたは”悪路の親父に負けて泣かされて、釈迦の右腕の地位を奪われた時となーんも変わらねぇー!。ただのカスのままだ…にょ♠」

それは堕天にとっては恥じるべき最悪の過去で、神居にとっては自身を鍛え上げてくれた尊敬すべき恩人の衝撃の過去に驚きそして少しの失望を覚えた。

それは実力に対するものではなく…

(堕天先生は自分の意志で組織を抜けたんじゃないのか…)

神居が抱いた疑念は失望をうみ、そもそも組織に属していただけでも疑わしかった彼に対する信頼は地の底についた。

「神居!ちがうぞ…俺はもう組に未練なんて!」
「あるよなぁー♠、ないわきゃない…でも怖いから従ってんだろ。”鬼神カグラ”…あなたはいつだってそうだ。強い奴の背中についた金魚の糞のように、弱いくせして幹部面して指示なんてだしちゃってさ!。組織での信頼関係ってのは実力が基本だろ…ちがうかい?」
「黙れ…」
「そもそもお前が右腕になれたのは、悪路の親父の兄。”百鬼・釈迦”に気に入られていたからこそ♠。ただのコネやろーが僕ちんを見下してんじゃねぇーよぉ!!!」

奈闇は、堕天の態度に腹を立てたのか。目の前で叫びながらその顔面を何度も何度も踏みつけて顎が外れるんではないかと思えるほど大きく口を開けて目の前の堕天に叫び散らす。

「はぁー…まぁーいい、先輩はそこで黙ってみていてください♠。本命は君だ、神居ちゃん。せっかく戸籍上の死で許してあげるって言ったのに、君は僕ちん達に真っ向から喧嘩を売ってきた…もうこれは”犯しまくって二度と逆らえないよう調教しないとねぇー”。女の子なんだから…」

縛り上げた彼女の影の紐をさらに強く縛り上げ、その女体が服の上からでもくっきりはっきり食い込んで見えるほどに縛り上げて髪を掴みその生意気な顔の前でそう語る。

「最低だな…兄弟そろって…」

そう吐き捨てた神居は、目の前の奈闇の顔面に「ペッ!」と唾を喰らわせ奈闇はそれに激怒する。

「お仕置き…調教…いやそんな事よりまずは…」

奈闇はおもむろにスマホを取り出しどこかに電話しようとする。

「これで君の姉さんはおしまい、大事な処女もファーストキスも…”汚い大人にボロボロに怪我されて、足腰動かなくなるまでイカされてそれからまた薬ずけにされて…”とにかく終わりだよ。」

神居が絶望の表情で「やめろぉぉぉ!」と叫ぶ寸前…

「気色悪いこと抜かしてんじゃねぇーぞ!…”ド三下”がよぉー…」

つるし上げられた神居の右を頬をすれすれに通ってきた、”つまようじ?”が奈闇のスマホを貫通し中のバッテリーを完全に消灯させる。

「天上…」
「悪い、遅くなった。神居…」
「誰だお前…」

三人はお互いにアイコンタクトをし、奈闇は初対面である天上に「誰だ?」と言って困惑した表情を見せる。

「俺は天上・護、父百鬼・釈迦と母”天上・酒童”のつがいの子で、そこにいる塩崎・神居とテメェ―らがさらった塩崎・神無の…”ただの友達件先輩だ。”」

堂々と登場してきた天上の発言に、奈闇は再び高揚し…

「そうか…お前があの尻軽”天上”の子か!通りで…母親譲りか?その周りを狂わす才能は♠」
「狂わしてるつもりはねぇーよ、誰のなにもな…」
「それだよそれ!その自覚の無さがあの尻軽そっくりだ♠。無自覚に他者を魅了し狂わせそして…”見捨てる”。この神居ちぁんもその口かぁ?」

奈闇が母親の件について語りだすと、天上と神居は「何言ってんだこいつ…」的な疑問の表情で奈闇に返す。

「だ・か・ら・よ…”神居ちゃんはこの男に惚れてんのかって聞いてんの?”」



「なっ…なわけないだろぉ!なんで僕がこんな奴。」
「おぉーい、聞こえてるぞぉー」

奈闇は神居にそう返されると「そうか?でもお前の姉貴はそうじゃなかったがな…」と神居にのべ。
神居や天上も、神無の天上への気持ちを理解していたため否定できない。

「それがお前ら”天上”の才能、鬼や他の異星人達のような能力によるものではない”無自覚無制御の魅了の力”わかりやすく言うと”ハーレム体質の持ち主”。それが、母親にそっくりだっつってんだよ。」
「そうか?俺を好きなのは神無だけだろ。神居は高天原だし高天原は友達だし…」
「そう思うか?そうだな、そんなことどうでもいいな。そうだ…神居ちゃんのお仕置きの途中だったんだ♠」

そう言って奈闇は、再び神居を締め付けその美し顔に近づこうとした…その時…

「だから…やめろっつってんだよ。三下!」

天上は神居や堕天が二人がかりで策を講じ、やっと作れてた抜け目ない奈闇の隙を一瞬で突き。
奈闇を吹き飛ばし、工場汚染の進んだ海の中へと沈めた。

「おいおいマジかよ…」

驚くべきはそれだけではない、神居の斬撃の嵐ですた押しつぶされた強固で強力な影の紐をいともたやすく破り捨て神居を開放する。

「大丈夫か神居?」
「当然だ…この程度…」

そう返し目を背けた神居の頬に触れ、神居にこちらを向かせたうえでのその目をじっと見る天上。

「そうか、よかった。それじゃ…」

天上は立ち上がり神居に一言…

「下がってろ神居、こっからは俺がやる。」
「なっなにをふざけたことを!お前になど頼っていられるかぁ!」
「悪い…だけどよ。あん時はまに合わなかったが今回は違う、神無も高天原も…そしてお前も…”全部俺が護る”!。最前線でな…」

天上のその言葉に、またおいて行かれる感覚を覚え焦るように神居は…

「僕は…誰がに守られるほど弱くない!」

それは、過去に天上の言った「お前、よぇーよ」から来た発言。
それに対し天上は…

「あぁー確かにお前は弱くねぇー…むしろ強い。どこまでも高見を目指し決して折れないその心意気はな…だけどお前には悲しむ家族がいる。部活やクラスの仲間もな…俺と違って帰るべき場所の多いお前だから護りたいんだ。…頼む神居…護らせてくれ。」

神居は言葉の内容のままなら、いつもの天上の言葉なら反論するつもりだった。しかし彼の言った「俺と違って…」その部分からにじみ出る悲しき背景に…その思いを聞き入れずにはいられなかった。

「わかった、だが!…今回だけだ。お前に護られてあるのは、次からは僕も戦うぞ。」
「おう!それじゃ…」

二人の会話の途中、汚染された海から上がってきた奈闇が堕天と同様黒い髪をした天上の髪から出現し首に目掛けて明確な殺意を持って蹴りこもうとした。

「行ってくる…」

しかし、あの堕天ですら対応できなかった奈闇の不意打ちを天上はいともたやすく受け止めそしてその足を掴んで…

「いっちょ!おてんとさんに挨拶してこぉぉぉい!」

天上はそのまま奈闇をグルングルンと振り回して上空に投げ飛ばし、スモーキータウンの霧の向こう側にある太陽がさす快晴の青空まで奈闇をやったあと。

「おい、まだ逃げんな…」

そんな遥か上空から再びスモーキータウンの地面へと突き落とした。

(こいつ!?本当に人間かぁ?)

天上のあまりの強さに奈闇は彼の素性を疑い始めるしまつ。

「よっこらしょ!まだ寝るなよ…”今から神無の居場所吐くまで殴り続けるから…”いやならさっさっと吐けよぉ!」

奈闇が「誰が吐くか」とお決まりの文言を言ういとまも与えず、天上は奈闇に馬乗りになったままその顔面が崩壊するまで殴り続ける。

「俺はお前が居場所吐くまで!殴るのをやめない!」

それから12時間がたち…

「天皇家のお嬢さんならブッフォ!…○○県○○市○○町まるまるまるまるの本部に…いる…グヘェ!」
「そうか!わかった、ありがとな。」

この日、堕天は初対面ではあったが天上に神楽や釈迦と同じ関わっちゃいけないタイプの狂怖を感じた。

「よし!それじゃー早速殴り込みと行きますかぁー。」
「いや、一回帰ろうぜ。あとお前は風呂入れ、返り血でものすごい怖いことになっるぞ。寝ちまった神居も休ませないといけないし、正直おじさんも疲れた…」

堕天の説得により、神居を連れて天上はいったん天皇神楽の屋敷に戻る子にした…

「ん…ううん…」

目が覚めた神居が辺りを見ると横にいたのは、神楽。

「うわぁ!お父さん。何してるんてますか!」
「何を恥ずかしがっておる、男を名乗っておった癖に男と共には寝れんのか?」
「いや!…そもそも女だろうと男だろうと同じ布団で寝ないでしょう。はしたない…」

神居は神楽の奇行に驚きつつも、久々の平穏の一時に安堵し今まで押し殺していた笑顔をやっと覗かせた。

しかし…

「そうだ!姉さんは!…それに、天上の奴がみあたりまけんけど…」
「天上ならもうおらんぞ、先に行きおった。」
「とこに!」
「…"奴らの本拠地に".単身で…」

それを聞くやいなや神居は天上に抜け駆けされた悔しさと約束を破られた喪失感でそのまま立ち去ろうとする。

「まて神居!どこに行くつもりじゃ?」
「どこって、僕も姉さんを助けに!」
「それはならん」
「なぜですか?」

神居が神無を助けに行くことを、否定する父神楽。

「狙われとるのはお前も同じじゃ、乗り込めば捕まるのが関の山。危険すぎる!」
「…捕まるのが関の山って、どう言ういみですか?お父さん…」
「あまり言いたくはないが…”お前はまだ弱い”。少なくとも、到底奴らに敵う実力は持っておらん…かと言ってわしが動けば奴らは真っ先にわしを警戒し何らかの手をうつじゃろう。神無が危険にさらされる可能性も高い…だからわしはいけん…」

まただ、神居はそう思った。見放せる感覚、見下される感覚、期待されていない、どうせ無理だと…わかっている。父は息子も娘も可愛がっているだけ、だから自身や他人の子の身より強く警戒し護ろうとする。それは重々理解した上で…

どこまで努力しても、全宇宙最弱種族純潔の人間である天上にすら強さによる信頼が圧倒的に足りていないことに…焦りと苛立ちを覚える神居であった…

「そんな事は僕が一番理化しています。しかし、僕は!…」

それでも叫んだ、愚かだと、息子が父に向けた現実味の無いただのわがままだと知った上で…神居は全力で叫んだ。

「”僕は姉さんの家族なんです!家族が何もせず他人任せにすることを、僕の心は許さない!”…僕は愚かとただの現実味にない無謀としっても…”動かざるにはいられない、そう言う星の元で生まれてきたんです。”きっと…」

それが神居の答えだった、父は腕を組んだまま奴らの危険をもっともよく知る父神楽が…その心からの叫びに…

「いけ、神楽。そのかわり…”必ず生きて、姉と共にこの地に戻れよ”。」
「はい!」

父と子の一瞬の親子喧嘩h、ただの言霊に心を乗せた神楽の勝利で幕を閉じそして神居は走り出す。



「道場破じゃ!コラ…」

その頃本部へ乗り込む天上は凄まじい形相で鬼族最恐のヤクザ、百鬼組の組員を全員なぎ倒し本拠地にいる神無の元へ向かう。

「わたくしと…結婚してくださいまし」

敵をなぎ倒し、駆け走る天上の脳裏に過る神無の姿。

(待ってろよ、神無。今行くぜ!)

天上がそう決意した、瞬間であった。

「”陰陽五行、木の門…樹海縛斗”」

地面から伸びたツタが、天上の全身を一瞬にして縛り上げその全身の身動きを止める。

「これで捕縛成功?奈闇ちゃんを倒したって聞いたからどんな手練れ方と思ったが大したこと…」

そこに現れた黄色い角を持つ逆立つ金髪の男は寺陀・崇(テラダ スウ)、黄色鬼で陰陽五行を操る鬼術師だ。

そんな彼の攻撃をもろともせず、天上はその全身のツタを引きちぎって脱出し…

「おっとマジか…」

寺陀を驚かせる。

「ならこれはどうだ、火の門、鬼火ぃ!…そのまま焼け死ね…」

寺陀の必死の猛攻に、流石の天上も心が折れ…

「効かねぇーな…この程度暖ったかくていい感じに…」

折れない!それどころか、その拳の風圧で炎をかき消し…

「体があったまってきたぜぇ!」

振り上げる拳の衝撃波が、纏った火炎でなけでなく寺陀の胴体をえぐる。

「これで勝ったと思うなよ、ガキんちょ。まだまだこれからフルスロットルで行くんだからよぉー!水の門、龍流舞そして火の門応用、火電(カデン)。」

龍の形状をした水に炎によって作り出されたプラズマを利用した電気の生成により、天上を痺れさせ大ダメージを期待する寺陀。

「悪いがよぉー、”その手は読んでる”。」

初めて見る攻撃、しかし天上は相手が陰陽五行を扱う黄色鬼だと知っていたためかその攻撃を事前に予見し紙一重で避けて喰らわない。

「もう一発!」
「そうさせねぇー、陰陽五行外伝、重力の門・重怠屡(オモダル)×軽我(ケイガ)それに同じく外伝雷の門・電伝虫(デンデンムシ)を加えるぜ!」

その攻撃の直後、まず天上の体は重く振り上げた拳が完全に重さに負けて直前で静止。その後彼が発動した軽我により自身の重力を軽くさらに電伝虫で電気を纏い全身の電気信号を操作しビー玉のように軽くなった体に更なる速度を加える。

「これが俺様の十八番、相手の重力を増して身動きを取れなくした上で自分は軽くしてさらに強化する。これを喰らったやつぁー何もできずにボッコンボッコンよぉ!ハハ!そんでもって知ってるか?一見害のなさそうなただのビー玉でもよぉー…」

その宣言通りの高速の動きで寺陀は天上の腹に向けて蹴り上げる。

「”光速で動けば、一撃で星を破壊しちまうんだとよ。まぁーもっともそれは俺様も困るんで亜光速で我慢してやんよ!”」

叩き込まれたそれに、流石の天上も血反吐を吐いて倒れるかと思われたが…

「確かに重めぇーな、これ…」

驚くべきことに天上は寺陀の渾身の蹴りを片手で受け止めそして寺陀が「なんでこいつこの高重力の中で動けてんだ!」と思ったその瞬間に叩き込まれる世界一思い天上の拳。

「だけどよぉー、体が重くなったってこたぁーよぉー。その分攻撃も重くなって軽くなったってこたぁー吹っ飛びやすくなったったってことじゃねぇーか!」

それは、天上の暮らしていた地球にて流行っていたゲーム。大乱闘スマッシュ○○〇ーズで得た知識で、重たいキャラは吹っ飛びにくく攻撃力も高い傾向にあるが軽いキャラ吹っ飛びやすくそのかわりに移動速度や攻撃速度が速い。
そのゲーム知識が、この戦場で寺陀を打ち破るきっかけとなった。

そして天上は寺陀の待ち構えていた百鬼組本部の表門をくぐり内部へ侵入を果たす。
当然その事は相手側の耳にも届いており…

「悪路の親父、大変ですぜ。」
「どうした?」

女を侍らせ踏ん反り変える悪路の前に現れたスキンヘッドの部下、魅ぢ腕の大門・金閣。

「はい!何ものかが東門の見張り番寺陀をのしてそのままの勢いで次々とうちの部下をなぎ倒しながらここに向かってるようで…」
「なに!?そいつは誰だ、まさか塩崎・神楽か。監視班はどうした、奴の動向は常に瞬き一つせず監視してろとあれほど…」
「いえそれが…その男は、”天上・護”と名乗る中坊のガキ…らしくて…」
「天上…」

組織の上が何やら不穏な動きをするなか、天上はバッタバッタと敵をなぎ倒し続け時には脅し道を聞き。ついに最下層へと続くエレベーターまでたどり着いた。

「こいつに乗っていけばいいのか、にしても悪趣味な柄してやがるぜ。ヤクザが悪趣味なのは万星共通か?」

当然ボタンを押して開いたエレベータには、侵入者を撃退するため重火器で武装したヤクザが天上を迎え打つ…が…

「あれ?誰もいねぇーじゃねぇーか…」

そこに天上の姿はない。

「ここだよ…天上だけに天上に隠れてみただけだ…」

そんな凍えるほど寒いギャグをかました直後、男達が上を見上げたと同時に落下し視界から再び消えて男達の乱射を受けることなく全員をエレベータの外へと蹴り倒し、殴りたし、放り投げた。

「じゃーなぁーおっさん達。」

追い出された男達は体制を立て直し銃を拾うが、銃口がいつまにかへし曲げられており引き金を引くと同時に中の火薬が詰まって爆発する。

「人様にチャカなんて向けるからそう言うことになんだぜ、反省しな。」

エレベータに続くまでの道の全てを薙ぎ払い、焼き払い、倒れ気絶した男達を後目に先へ先へと進んでようやく…

「ここが…」

そこは百鬼組の本部ビルの最下層、”超新星・吉原”、花魁道中、この世の快楽の全てが詰まったその地下世界に天上は今足を踏み入れる。

「なんだこのデッケー赤いの…」
「それは内核、あらゆる星の中心に存在する高温の物質ですよ。」

そう天上に説明したのは、この女の肉体を求めて飢えた下品なケダモノ達のひしめくこの街に似つかわしくない。いたって真面目そうな丸眼鏡に銀髪、緑袴の男。

「兄ちゃん誰?」
「己の名は銀閣、大門・銀閣と言うものです。以後御見知りおきを…」

その男は言ったって冷静で、そして極道の人間とは思えないほど礼儀正しく誠実そうなとにかく…
なんか爽やかな男だった。

「で、兄ちゃんもヤクザなのか?」
「どうだね、このビルにいるのはみーんな裏で名を上げた荒くれもの達ばかりさ。そしてわかっているとは思うが、己は君を止めに来た刺客…”仲良くはできないよ”」
「そうか、なんかもったいねぇーな。兄ちゃんいい奴そうなのに…」
「そんなことないさ、己だってここまでなるのに何千、何万の返り血を浴びてきた。君もその一人になる…」

睨み合う二人の構図、それを見て緊張が走る周囲。

「そういえば君、今まで何種類の鬼を見てきた?」
「えぇーと、赤に青に黄色に灰色…そんで黒と虹と…”今から助けに行く紫の合計7種類だ”。」
「そう…でさ、出会ってない鬼はあと何と何がいる?」
「緑と…”白”…」

その発言の後、天上はその角を見た。その色はコピーの白鬼であった…

「なら兄ちゃん、俺の技もコピーできるかい?」
「むろん、己ら白鬼は全宇宙のあらゆる能力、身体機能、技術、そしてその経験すら全てをコピーできる。できない道理はないよね…」
「なら兄ちゃんは俺に勝てるかい?」
「それは…”無理”」

銀閣のまさかの返事に天上は「は?」と、逆に驚きずっこける。

「いやぁーだって君強いもーん、己じゃ絶対無理だね確実に。」
「そんなやってみなきゃわかんねーだろ、俺の戦いを見たわけじゃねぇーんだし。」
「わかるよ、己ら白鬼はその性質上だいたい相手の実力や戦い方が戦う前からわかるんだ。でさ、君に会ってから何回かイメトレしてみたんだどさ。どうもこれが上手くいかなくてもう完敗、正直戦いたくないねぇー。」

銀閣は拍子抜けするほど弱気だった、と言うかいさぎがよすぎる。
反応に困りつつ、天上は…

「んじゃ通してくれよぉー!」
「それはできない、絶対に。と言っても勝てないのは確実だから、どうせ君は通るんだけど。あいにくボスからの命令なんだよねぇー、兄さんはやる気みたいだけど僕はそんなにだからさ。テキトウに頼むよ。」
「えぇーやりずれぇー…」
「そう言わずに、ボスと君どっちにボコられる方がいいか聞かれると正直どっちも嫌なんだよね。だったら絶対本気で殺しにかかってくるボスより君の方がましかなと…」

銀閣がそう答えると、天上はニヤ付いて臨戦対背に入り。

「なら、100倍嫌になるぜ。そのボスって奴よりな…」
「わぁーお、本気じゃん。いやになるねぇーこの仕事…」
「そういや兄さんってのは、誰と戦ってんだ?」
「ん?知らないの神居って子。」

その頃神居もまた、天上とは真逆に位置する西門から敵をなぎ倒し入って来ていた。

「ここの門番はわい、金閣が務めさせてもらう。悪いな若いの、今日は担当者がお休みなんだ…」
「そうか、いかにもモブそうな見た目で助かる。」

反発する神居に、金閣は挨拶替わりの一撃をお見舞いする。

「この程度なら…”僕の学校の先輩の方がずっと強い”。」

そう返して、刀を抜きその刃の抜刀で金閣の腕を切り裂く神居。

「そうか、でもよぉーわいの真骨頂はパワーじぁねぇー。”再生能力の方だ”…」

金閣は瞬時に斬撃によって切り落とされた腕を再生し、その丸太のような拳で再び打撃を喰らわせる。

「ならば、切り刻んで塵にしてくれる。」
「おぉー怖い、ちびっちまいそうだぜ。」
「なめやがって!」

即座に放った神居の斬撃は当然避けられるが、それはブラフ本命はその後の…

「螺旋斬撃(ウィンドブレイド)」

その言葉はまさにスタイリッシュ…ではないが、まぁーなぜか一人だけ漢字読みじゃなくて英語読みなのは彼のセンスが光る。

「うぁー!つって倒れりゃ満足か?」

男はその切り裂く竜巻をうけ、かけらも残さず木端微塵になるかに思われたがとっさに自身の上半身と下半身を切り離しその即時再生。

しかし…

「わぁぁぁ!貴様、なにお粗末なもの汚物を見せつけているのだ。」
「酷いねぇーお粗末とは、これでも嬢を何人も足腰立たなくなるまでイカせてきた上物なんだぜ。まだフル勃…」
「わぁわぁ!何を言おうとしとるのだぁー、このド変態めが。」
「いいねぇーその反応、でもこうしたのはお前さんだろうが…」

神居はとにかく焦って目を手でふさぎ顔を今までにないほど真っ赤にして、「ぐぬぬ…」と耐えている。

「そんでさ、いいのかい?そんなに無防備で…」
「しまった!」

金閣が狙ったのは隙のない神居の隙を作ることであった、やり方は最低だが確かに理にかなっている。
しかし彼は知らなかった…神居が極度の…

「いやぁぁぁ!!!」

男嫌いであることを…

「おっ!…」

不死身の再生能力を有する最強の敵を前に、神居は生での金的蹴りで一撃ノックアウトさせた勝敗を決めた。

「くっ…再生したくてもあんまりにも痛くて集中できねぇー…こりゃわいの負けだな。流石だ姉ちゃん、勝者はお前…」
「こんな勝利!全然嬉しくないわぁー!」

なにはともあれ神居は金閣に勝利し、当然…

「やっぱ無理だね、君強すぎ。コピーしてもコピーしても進化して上回ってくる…ダメだこりゃ…」
「ニッシシ!兄ちゃんも強かったぜ。見たことねぇー技ばっかだったし…」

天上も余裕のある勝利を飾っていた。

そして二人は組長室の前で邂逅し目を合わせ…

「いくか!」
「むろん」

再び前を向いて、襖をあけた瞬間。

「まっておったぞ、塩崎の倅に兄貴の倅。」

待ち受ける強敵、百鬼組組長”百鬼・悪路”と対面する。そこで神居は自身の角を引き抜き刀に変え目の前の悪路に向け、天上は拳を突き立てる。

「「さぁー神無を/姉さんを、返してもらおうかぁー!」」

二人同時に戦線を布告した。

「それが叔父さんに対する態度か?天上…」
「叔父さん!?と言うことはお前も鬼の血が…」
「血の繋がりはねぇーだろ、そもそも親父はお前の実の兄じゃねぇー養子の子だし天上は人間族の家名だ。俺は正真正銘の純潔の人間だから安心しな神居…」

そう答えた天上の姿に驚きを抑え、また平常心に戻る神居。

「そうか、すまんすまん。でも俺は本気で兄貴を慕ってたんだぜ。”本当の兄貴みたいに…”何よぉーなんで兄貴は俺達を裏切った。」

そう語る悪路はとても女々しく、まるで生娘のごろき脆い涙を見せた…

「でもよぉーそれもこれも全てはお前の…天上の血が原因。お前の母さんは罪な女だ、宇宙中の何にも男を抱いて惑わせ狂わせる売春婦の女だ。宇宙最悪のヤリマンの血を次いでお前もそんな目ぇーしてる、人を口説く目だそりゃーぁ。あーあ、お前がせめてもう少しでも兄貴似だったら…こんなにせずに済んだのになぁー…まったく叔父さんは残念んだよ。」

そう言う男の全身から熱気が溢れ出る…

「あれは…」
「激高状態だ、理性を失い襲ってくるぞ。気負付けろ!」

それは赤鬼特有の激高状態時に起きる凄まじい体の肥大化と、熱風。

「苛立ちが力に変わる、赤鬼ってのはいいよなぁー…シンプルでよぉー」

悪路が二人に襲いかかってくるが、そこには小さな違和感があった。

(激高状態なのに…”理性を失っていない!”)

神居が感じた違和感に、二人遥か遠くに蹴散らし組長室からいくつもの襖をぶっ飛ばして吉原の街まで吹き飛ばされる神居。

「ぐはぁ!」

その上で、追いついてきた悪路に首元を掴まれ呼吸を止められる。

「ご明察、俺は鬼の中で唯一。激高状態を御せる鬼だからな。」
「なんだその、大猿化時に理性を保てるベジータみたいな設定は。ありきたり過ぎてつまらねぇーぞ、タコ。」

そのまま吉原の中にある50の塔の最上階から首を絞めれ落下した神居の元へ駆けつける天上。

「天…上…」
「安心しろ、もう助けてる。」

その姿を見るや否や、何かを口にしようとした。「まだ生きていたのか」とか「そうこなくっちゃなー」的なありきたりな文句を。しかし、天上はそんな隙も与えず一瞬にして神居をその手から攫い”お姫様抱っこ”をして悪路に見せつける。

「悪いが、こいつは俺の”女”だ。汚ねぇー手で触れてんじゃねぇーよベジータもどき…」
「なぁ!」

その言葉に、神居は赤面し「さっさとおろせ!」と天上の顔を押して降りる。

「なんだよ、助けてやったのにぃー」
「だっだれがそんな事たのんだ!それに今の発言…」
「悪いなお二人さん、若人の青春の邪魔をする気はねぇーが…俺も気が短い方なんでね、かたーつけさせてもらうぞ。…”第二形態でな”」

そう言い放った悪路の肉体がさらに変形し、両手がブレードのような形になる。

「ちなみに言っとくが、俺はまだ形態を三つ残している。どの形態でもいい、オレを楽しませろよぉー」
「なんて奴だ…父上も同じことができるがまさかこいつも…」
「あのよぉー」

神居がその姿に驚き、父である神楽を思い出している最中に天上は水やりを入れるかの如く…

「”形態変化ってカッコつけただけの、ただの手加減だろ。”なら…こいつで本気にしてやるよ…」

そう語ると天上は、構え拳を振りかざす。すると悪路もそれに対抗するように刃の拳を向ける…が…

”天上には通じない”

(流石は兄貴の息子、俺の第二形態を一瞬で破壊するなんざこの宇宙でもそうはいねぇー。)

悪路は天上拳に刃の切っ先が触れた瞬間に、その刃が先端からボロボロと崩れ去るさまを見てニヤ付き。次の形態の準備をする…

「まだまだ終わってねぇーぞ、ぼんくら」

しかし天上の拳は刃の拳を砕いた勢いをそのまま止まることなく、悪路に強烈な腹パンをお見舞いする。

「ぐほぉ!」

すると悪路の体はその腹パンに耐えるため一瞬にしてセーブしていた力を開放し、残り三つの形態を全て使ってその攻撃を受け止める。
そうしたことでんとか、死への回避を果たした悪路の姿は天上の予告どおり…

”すでに最終形態へと至っていた”。

「やっぱ、ステゴロは最初っから本気じゃないと面白くねぇーよな。」
「やはり血は争えんか…最弱種族人間にして全宇宙でも匹敵するほどの強さ。兄さんと同じだ確かに似ている…その見た目は母親にだが中身の化け物は父親譲りか…」
「御託はいい、さっさと始めようぜ。」

天上が煽ると悪路は待ち構えると二人の方へ、最初と同じタックルを仕掛ける。

「なんだよ、ワンパターンだな。ネタ切れか?」
「そう思うか?しっかりと見た方がいいぞ…」

天上と神居はその攻撃をすでに見ているからと、両者余裕の表情で左右へ行けた。しかしまだ最終形態の真骨頂は最初のような肉体強化だけではない。

「気負付けろ天上!赤鬼には身体能力向上だけではなく…」
「は?」
「”熱気による火炎特性がある”」
「鬼火(オニビ)!」

悪路の放ったタックルの通ったその場所には遅れて業火が灯った、事前に特性を知っていた神居は間一髪助かったが天上は…

「ふぅーどあぶねぇーぜ」

ギリギリで学ランを盾にして炎を回避した天上の元へ、「そうだよこなくては」とお決まりのセリフを今度こそ言い切って現れる悪路。

しかし悪路も理解していた、今のままでは勝てないとだから極めたこの技でかたをつけることにした。

「形態変化とはそれすなわち、赤鬼の肉体強化の強化箇所を言ってんに絞ることで生み出される”変幻自在の肉体”。できないことはねぇーんだよぉーーー!!!」

悪路の体はまさにモンスター、第二形態で見せた両腕のブレード化だけでなく頭や髪に無数の目が出現し、背中には翼が生え、足は数十本の鋭い牙を持つ触手へと変化する。

「こりゃーどうなっんだ…」
「ありえない…が、父上も虹鬼の能力を単純化し運用しやすくするため各鬼の血からを使分けることで戦っている。つまりこれは赤鬼の洗剤的な身体能力の向上を極め、あらゆる器官を異常値まで強化したと考えれば合点がいく。それでもってこれは…」
「その全てが解き放たれた状態…」

端的に言うと暴走状態に近いが、悪路の理性を保つ才能が不自然に絡み合い理性を持ったままの怪物としてその場に立ちはだかる悪路。

「白目むいてるし見た目は完全に理性がぶっ飛んでるが、意識はあるんだろ?なら最後にチャンスをやる…”神無はどこだ”、言ったらこれ以上はしないでやるよ。」
『はぁー!何抜かしてやがるんだぁ、テメェ―は俺に負けてあの世でお前を生んでおっちんだあの尻軽かーちゃんの乳でもすってんのが関の山だ。そんなやつに何が…』

かろうじて保っている理性も限界なのか、その越えは複数の人間が喋ったような混ざり合った独特な声となり口からは泡を吹いて白目を向いている。それに何より、先ほどとは大きく違って冷静さを欠いている発言が目立つ。

「極道の棟梁ともあろう奴がここまで脳足りんだとは…でも安心しな。俺と神居でお前ぶっ倒して、百鬼組は今日で解散させてやるよ…」
『はぁー?何を抜かしてやがるこの精子キッズが、お前の才能は無能、低能なお前のヤリマンママンがうちの優秀な兄貴とやったから持って生まれただけで別に元々お前のものじゃねー。すげぇーのはお前じゃなくて、そんな優秀な精子を持っていた俺の兄貴だ。兄貴こそが偉大ななのだ勘違いしてイキってんじゃ…』
「なんだ?理性ぶっとんで随分と悠長に話すようになったじゃねぇーかおっさん。なんだ?身体強化ってのは頭の回転のことか?あ”ー!…ちげぇーだろ。ダラダラだべってねぇーで文句が案ならこいよ…筋肉ゴリラやろぉー…」

その時悪路が口にした思いはおそらく全てを語っていた。彼は最初にのべた通り兄である釈迦を本当に慕っていたのだ。そして…”愛していたのだこの世の誰よりも”…だから許せなかったのだ尊敬する兄の背中を奪った天上と言う女の存在がどうしても許せなかったのだ。

そして今、悪路を煽るのはその許されざる穢れた血を百鬼の家に持ち込んだまがい物の贋作。それがこの俺様を否!この百鬼組総大将・悪路王様を本気でなめて余裕をもって当然勝てる気で嫌がる事実がなんと腹立たしいことこの上ない!。

「お前はここで…”はでろぉぉぉ”!」

その事実が悪路の怒りを頂点に達しさせ、その全身全霊で天上に襲いかかる。

「なんだ、やればでんじゃん?でも…”相手は俺だけじゃない”」

怒り、それは爆発すると制御をはずれ理性を鈍らせ視野を狭くする。その代償に強固な決意と、手加減を忘れさせてくれる良き感情でもある。しかし、ことこの局面においてはそれはただの…

”徒となる”。

「僕もいる!決して忘れるな…」

百鬼組組長、百鬼・悪路はこの日…一人の挑発と、一人の一太刀によって…

”敗北し、これにて組は完全消滅となった”

そして…

「そこにいるのは…天上様…」

死ぬ間際の悪路から、全てを聞き出し天上と…

「姉さん!」
「神居…」

神居は再開を果たし、姉妹は仲良く抱き合ってこの長い戦いは以外にもあっさりと…終幕を迎えた。

「これにて一見落着…なんてな」


その後ほどなくして、外に待っていた堕天と高天原に迎え入れられ…

「神無ちゃん!」
「高天原さん…」

高天原は神無に抱きしめられ堕天の車の前で少し話す。

「心配したんだから…変なことされなかった?」
「はい、あいにくとされる前に天上様と神居が助けてくださいましたので…」
「俺は何もしてねぇーよ、なぁー神居。お前の大手柄だもんな!」
「なぁー天上…少し話があるんだがいいか?」

神居は何やら不穏な雰囲気をかもち出していたが、何はともあれ一向はいったん天皇神楽の待つ別荘へと向かう。

「お父様!」
「おぉー神無よ、無事で何より…怪我はないか?辱められんかっか?処女膜は…」

パチン!と神楽言いかけた言葉に反応し、神無はビンタをかます。

「お父様、お言葉には起きおつけあそばせ。」
「そうですよ”クソ父上”…」

神居は緑鬼金閣を倒した金的蹴りのを寸止めして、父神楽に迫る。

「すまなんだな、娘達よ。とにかく無事でよかった…天上、それに高天原さんも。この度はうちの娘を助けそして心配してくださりありがとう。」
「いえ!私は何も…」
「いいや、高天原が神居が誘拐の一件で学校に来れない間。剣道の堕天先生もいないからって色々調べてくれたから俺は神居も神無も救えたんだぜ。ちーと地味な役周りだが、お前は十分今回のことに力貸してくれたんだ。誇れよ…」
「天上…」

見つめ合う二人の前に、「うっうん!」と咳払いをして割り込む神無は天上に「今回の件、車の中で神居から聞きましたが…」とポエムのような甘ったるくて長い意味深な言葉で感謝を述べた。

「あ!そういや神居、最後のあれって…」

天上が神居から話の内容を聞こうとすると、神居はアイコンタクトで「黙れ、ここでは言えない」と返してきたので天上はいったん黙って怪しむ神楽と神無、高天原に少し誤魔化しを入れてその場をたった。

そして次の日の学校でも「神無さん!」と多くの生徒が、登校してきた彼女のことをあたたかい言葉で出迎えた。

「で?話って」
「今日別荘の僕の部屋にこい、窓は開けておく…」
「窓って、俺は猫か?」

クラスがお帰りムードで賑わうなか、天上と神居の二人だけが眉間に皺を湯せて少し不穏案まま…

物語はいったんくぎりとなる。

《転》百鬼夜行…完

それは深夜、誰もが寝静まるその時間に天上は事前に神楽に了承をえたうえで神居の家のまどから侵入。

「おーい、来てやったぞ」

窓から入ろうとした天上だったが、返事がない。と言うか…

(あれ、鍵空いてねぇーじぁん。それになんだこの湯気、なかが見えねぇー)

その状況を見た瞬間、天上は神無との一件を思い出し。もしかしたらこれは天皇家のちの党首である神居を狙っての襲撃による催眠ガスかなんかだと思い窓ガラスを割って突入する!。

「神居!大丈夫か!」

そう息巻いて入ったその時、コトン!と言うまるで”風呂場の桶でも落としたような音がなり響き天上は全てをさっした…”

(窓がデケェーからわかんなかったけど、ここ…風呂だ…)

当然、ガラスを割ったので警報がなり寝ていた神楽や神無や他の使用人達も駆けつけるしなんなら天皇陛下の別荘に侵入者とか言う危なすぎる状況に軍まで動くしまつ。

しかしそれより何よりもまずいことは…

「え…」

目の前に広がる神居の裸と、その後に待っている…

「いやぁぁぁ!!!」

神居の鼓膜どころか別荘の窓ガラス全て割りさるほどの、以外にも甲高い兵器級の叫び声のほうだった。

《結》対抗戦編

「天上…お前…」
「悪い…」

天上は当然、四方八方ありとあらゆる団体、組織そして身内である高天原や神無、神楽などにも怒られたしおまけに次の日の学校でおそらく校長に呼び出される。

(次は退学かなぁー、自業自得だけど)

天上は次の日のことで不安で胸がいっぱいのようすだ。

「はぁーとりあえずチ〇コだせ…」
「は?」
「勘違いするな、切り落としてやるといっただけだ。」

天上は神居の部屋で私服姿の神居い一瞬襲われるかと、「そう言うことか!」と呼びだした理由を深読みしたがその理由を聞いて少しがっかりした。

それを見て神居が「ほほぉーあまり反省していないようだから、本当に切り落として反省を…」と構えた瞬間。渾身のジャンピング土下座で神居の怒りを鎮めた。

「まぁいい、とにかく今回お前を呼んだのはだな。…お前の”あの発言がきになってな”。」
「あのあぁーあれな、あれ。」

神居が聞き出したいのは、天上の口走った「俺と違って帰るべき場所の多いお前だから護りたいんだ」と言ったことについてその真意と共に釈迦との関係を聞き出そうとしていた。

「あれだろ、”俺の女だ手を出すな”的なやつ。」
「絶対言うと思ったがそこではない!と言うか本当に、あれは何であんなことを言ったんだ。正直認めたくはないが、お前には姉さんや女神高天原がいるだろう…なぜ私なんぞにうつつを…」

神居は何度も助けてくれた天上のその気持ちに嬉しさを覚えつつも、その周囲にいる女達をないがしろにしてまで自身を選んだことに少し腹をたてていた。

「何言ってんだ、あれは俺の”友達”の女。略して俺の女だぞ、何も不自然なとこないだろう。」



「殺すぞお前」
「なんでだぁ!」

一瞬あまりの予想外の返しに、フリーズする神居だが自身の思い過ごしであることに安堵しつつ内心自身への好意と受け取ってしまっていたため少しムカついてそう返した。

「まぁー三億歩譲ってそれはいいとして本題だ。」
「いや、譲り過ぎだろ。ごめん、オレまたなんかやっちゃいました?もしかして怒ってる。」
「怒っていない、だから茶化すな切り落とすぞ。」
「何を!てかやっぱ怒ってるだろお前!」

二人は何の中身もない、いつも通りの他愛ない会話を繰り広げた後神居は本題にうつる。

「まず、お前の「俺と違って帰るべき場所の多いお前だから護りたいんだ」と言う発言はどう言う意味だ。」
「あぁー黒鬼の時の奴ね、あれはあれよそのまんま。俺には親がいねぇー、母ちゃんは生まれる前に死んでるし、父ちゃんは物心つく時には死刑囚だったからな。部活も流れで入ったけどロミジュリの劇以降俺は出てねぇーしなんだか他の部員との温度差も感じて…それがどうかしたか?」
「本当にそれだけか?天上…あの時のお前はまるで”自身の身は朽ち果てていい”そんな自滅願望にもよくみた意味合いに聞こえたんだが。いつも能天気なお前には相応しくない、悩みの深そうな顔をしていたが本当にそれだけか?」

神居は誤魔化が効かないよう、グイグイと攻めていく。その意志は無意識に行動にも表れどんどん肉体的にも精神的にも近くなる。

「かっ神居、近い近いわかったからもう少し離れろ!」

天上は神居の夢中になると周囲が見えなくなる癖を知ってか、もうちょとで唇が触れそうに近かった神居のデコにデコピンをして正気を取り戻させそして下がらせた。

「俺の父ちゃんは、お前も知っての通りの死刑囚。昔の宇宙戦争で13の星を滅亡させた大虐殺犯だ。そんで今は父ちゃんが”仙人”つー種族を脅して作らせた仙薬、それで不死身になった父ちゃんを殺すための方法を宇宙警察の奴らと一緒に全宇宙を対象に探してる真っ最中だ。」
「ほうほう、なるほど。だからお前は転校が多いわけか…」
「そう言うこと、そんでもって…”俺は生まれた時に母ちゃんを殺してる”だから父ちゃんは狂ったんだ…」

続いて天上の口から語られた衝撃の真実に神居は動揺する。

「いや、それは横暴過ぎないか?第一体力消耗による死なら事前に勧告があったはず。選んだのはお前の親じゃないか」
「その場に…父ちゃんはいなかったんだ。宇宙戦争に出ていてな…」

宇宙戦争、それは220年全宇宙を巻き込んで起きた種族生き残りをかけたおお勝負。勝者は敗者の星を侵略し植民星にできる権利をえる、そんな戦争。

当然、人類より遥かに高度な知性を持つ者、あるいは鬼族のように人類より遥かに強い肉体を持つ者や人類にはない特殊能力を持つ者が跋扈するこの宇宙で人類の勝てる道はないかに思われていた…
一人の現人神と呼ばれた男を除いて…

「それが…釈迦?」
「父ちゃんは地球のスラムってとこで生まれてな、小さい頃に親に売られたらしい。そんで人身売買のオークションに出品されたんだが…当然面恋女でもないけりゃー目つきも悪い男の奴隷なんて誰も欲しがらなかったが、悪路の親父。百鬼・夜光だけは親人の目を見て一目惚れしたらしい。「こいつはいい目だ少なくとも子供のしていい目じゃねーな」って…」
「それなら釈迦はなぜ、地球に?地球側についたら百鬼に立てつくことになるんじゃ…」
「それが、悪路や奈闇の言ってた”尻軽”つー母ちゃんのせいだろ。だから父さんは恨んでるんだよ、つかまった今でも俺のことを…”自分の全てをなげうって、同胞とも決別して添い遂げた妻を”俺に殺されたってな…」

そんな事を悲し気に語る天上は、最後にいつもポジティブ通り越して能天気な彼からは一生見られないと思っていた不安と悲しみと絶望と…”今すぐにでも自滅してしまいそうな不安定差をもった表情で”神居に質問する。

「なぁー神居…俺ってさ、生きてて…”産まれてきてよかったのかな?”」

神居は言葉に一瞬言葉に詰まり、何も言わない選択しもあったが…そう語る天上の”震えて今にも泣きだしてしまいそうなそれをこらえている”そんな姿を見て一言。

「なぁー天上、お前は確かにちゃらんぽらんで空気が読めなくて、能天気でバカでスケベなどうしようもない奴だ。」
「だよな…悪い…やっぱ」
「でもな、”お前がいなきゃ僕や姉さん、それに女神高天原もここにはいなかったんだぞ”。お前が救ってくれたから、お前が繋げてくれたからできた繋がりと絆だ。ありがとう…命と心を護ってくれて…」

それはいつも誰とでも張り合う神居から到底出そうにない、母性すら感じる優しい言葉だった。
その言葉に、天上は方の似が下りたようにその胸に倒れ。

「おいおい、あんまり奥に行くなよ。」
(谷間の…)
「おう…悪い。」

神居は倒れてきた天上の背中に手をやって、その頭を「よしよし」と撫でてやった。

そしてその頃上の階に実はいた、神無と…

「ねぇー”神無ちゃん”」
「ねぇー”高天原”さん…」



「「あれって!正ヒロインのやる奴じゃん!」」

と、何とも自分勝手で不謹慎でかつメタい発言をしていた。

「交流戦?」

昨日の一件を受けて翌日、14年前仙人の一族であったマスタースパークと言う男が終わらせた宇宙戦争の和平条約の一環として他校との”交流戦”があると学校中の報じられその時期が一週間後であると唐突な発表がなされた。

「なんだそれ?」
「知らないのー!そうか、地球の人類って15年前に滅んでるもんね…」
「ん…」

天上は滅ぼした原因が父であることを知っているため、その発言は痛い。その表情を見て昨日の盗み聞きした会話から色々を察したうえで「そうでなくても、自分の星が滅んだって言われんのやだよなー私最低」と思った高天原は天上に誤ったが帰ってきたのは天上のぎこちない苦笑いだけだったことに高天原は少し不安そうな顔をしながら話をつづけた。

「えっとね、交流会ってのは仙人族である宇宙一の英雄。”マスタースパーク”終わらせた戦争終結を祝って4年に一回行われる他の星の中学との交流戦争よ。もっとも、同じ銀河団の子達だけとだけどね。」

補足しておくと銀河団とは、現実にも存在する銀河の集合体である。

「でもよぉー平和を祝う祭典なのに、なんで戦うんだ?」

天上のあまりに適格なツッコミに、クラスの全員が…「確かに」と心の中でハモッタ。

そうして交流戦が開催されるまでの一週間学校は大忙しで他の星の生徒を出迎える準備を始める中、高天原と天上ら演劇部もエイキシビションで行う劇の準備を始めていた。

「ほんと大掛かりよねぇー、まぁー他の宇宙なんてそうそう会えないからこれが普通か」
「そういえば、皆は他の宇宙に旅行いくならどこがいい?」

部位がぼやき、それに続いて部長が周囲にいた先輩部員と高天原に言った質問に先輩部員は…

「私は観光なら断然コロニー、でも行ってみたいと言えば最近地表観光できるようになったダイヤモンド星に行ってみたいわぁー。高天原ちゃんはどう?天上くんとの親交旅行。」
「私はー…」

そう考える高天原の脳裏に過る昨日の、神居と天上の後継。

「コロニー…断然コロニーです!絶対!」

そう断言する高天原を見て先輩達はこう思った…

((あれ、いつもなら天上君との関係反論してくるのに今回は認めた…))

と、「ついに付き合ったか!」みたいな深読みをしつつ準備をつづけた。

そして、神居とのことで少し悔しさを覚えていた高天原は帰り際天上デートに誘いその日を交流戦二日前の土曜日に決め部長や先生にも許可をもらって休みをもらって行くことにした。

「そうか青春だねぇー」

その前に一つ、実は一年の神居と神無の奈闇に殺された担任は演劇部の顧問なのだが…

「えぇー!」

話を通しに行くときに、平然と生きていたので驚いた。事情を聞くに生き返った先生いわく…

「あぁー神楽様が「24時間以内なら体が完全に死んでいても、因果の鎖をたどって魂さえこの世に入れば無傷で蘇生できる」と言っておられました。」
「はっはぁー」

ちなみに神楽は虹鬼なので全ての鬼の特性を使える、その中の緑鬼の治癒能力の応用だとは思うがそれにしても24時間以内の制約はあるにしろ死者蘇生は規格外が過ぎると高天原は思った。

そして迎えたデート当日、待ち合わせ場所である公園の噴水で待つ天上。

「ごめーん、まった…」
「おうすげーまった」
「そこは全然とか今来たところでしょ!」

お決まりのように5分遅れて登場したフリをするため、公園の周囲を一時間くらウロウロしていた大分不審な高天原と素直に5分前に来た天上の二人はそこから徒歩15分程度の遊園地”仁王ランド”に遊びに来ていた。

「わぁー仁王るんだぁー、写真撮ってもーらお」
「初めて見たけど、あれ可愛いか?」

仁王るんは仁王と鼠のハーフで、この前星に願いをする映画前の短編でも出演した看板キャラクターなのだ。
そんなこんなで続いて一向は、お決まりのジェットコースターに…

「なんでいきなり観覧車?」
「いや、変化球必要かなって。」
「おいおい、それどしょぱにやることじゃねぇーよ。普通最後だろ!」

らなかったが次はジェットコースターにのった?

「いやぁぁぁ!!!」
「おう、これがジェットコースターか。皆すげー叫んでんな…」
「なんであんたそんな冷静なのよ!」
「え?だってこんなん、喧嘩で顎殴られた時の揺れのが強し気持ち悪くなるだろ。それに速度だって重圧感だって…」

(ダメだこいつ、戦闘脳過ぎてまともアトラクションじゃびびらねぇー。)

まーとにかく乗った。そして続いてデートの鉄則お化け屋敷に…

「わぁ!」
「なんだ?敵か…」
「ひぃぃぃ!」

行ったのだが、気配を探知した天上のドスの聞いた声と視線と殺気にお化けが逃げてしまった。

「マジであんた何やってんの…」
(これじゃただの暗い部屋じゃん)

なにはともあれ、盛り上がりきれない雰囲気はありつつも二人は昼飯を食うため近くのレストランに入った。

「へぇーレストランって色々あんだな」
「え!天上レストラン来た事なにの?」
「ねぇーよ、そんな高級なとこ。」
「いやいや、ファミレスくらいは…」
「ねぇーって、俺いつも山にいる熊とかイノシシとか鎌イタチとか九尾とか喰ってたから。」
(いや野生児過ぎるだろ、つか後半なんかおかしくね?)

天上のあまりの野生児っぷり度肝を抜かれるが、高天原は深く考えると天上が普段どこでどんな生活をしているのかを知らないことに気づきこの機会にと…

「ねぇーあんたって普段どこでどうやって暮らしてんの?一人暮らし?」
「そうだな、いつもは裏山で河童のじいちゃんと相撲とったりしてるかな。勝ったら水浴びと洗濯に川使っていいからって条件で…」
「思いのほか人生ハードモードだったわ、困ったらうち来なさいね。リビングだったら止まっててもいいから…」
「お、マジか。助かるぜ…」

高天原は素性の知れない天上のことが純粋に疑問になり、食事中色々な話しを聞いた。

「そんでさ…”昨日神居くんと何話してたの?”」
「それは…」
「私には…話せない?」

そう聞くと天上は固まった、やましい事は無いが会話の内容が故に話ずらかったのだ。
それに何より天上にとっては、高天原がその会話の存在を知っていることに驚きがかくせなかった。

「ごめんこんなところで問い詰めるみたいになっちゃって、ちょと調子のった。」

その後も天上は高天原とのデートを続け、夜のナイトパレードの時間が近づきそれを楽しみに待っている最中だった。

「ねぇー天上、実はさ。私あんたと神居くんの会話聞いてたんだ上の階にある神無ちゃんの部屋で…」
「…」
「盗み聞きなんてひどいよね、でもさ…これだけは言わせて。私、あんたの親がどんな奴だろうがあんたの過去がどんなんだろうが…”あんたの事が好きだよ、護”」

その時、ナイトパレードの花火が高天原の最後の言葉を隠したが…天上は…その場で誰も彼もが花火に見とれ小さすぎて聞こえないはずのかけされたはずの彼女の思いを…

「悪い高天原、お前とは一緒にいられない…」

冷徹な言葉で砕いてしまった。

その真意もわからぬまま、次の日のリハーサルで二人は一言もかかわることなく一日を終え本番を迎えた。

「なぁー天上と高天原さん、昨日からちょっと怖くね?」
「もしかして別れたとか?」
「えぇーあの二人って付き合ってたの!初知りなんだけど!?」

周囲の生徒がいつも一緒にた二人の、その険悪な雰囲気から状況を考察し楽しいはずの4年に一回の祭典が少し重い空気に包まれていた。

「はぁーい!皆さんお待ちかね。四年に一回のこの祭典、星を巡りはるばるこの地に来ていただいた生徒諸君を紹介していくぜぇぇぇ!!!」
「「いぇぇぇい!!!」」

いや、そうでもないか。

「まずは今回この祭典に参加してくれた各学校の紹介から、まずは赤コーナー朱雀銀河の右隣!白虎銀河ビーム星からやってきたビム星人の名門。タイタン中学校の二名が入場だぁぁぁ!」

タイタン中学とは、朱雀銀河の右隣にいちする白虎銀河に住むもっとも主要な異星人でその特徴は何と言っても体の至る部分からビームが出せるところである。

「リーダーは何と!”宇宙最強の剣豪サイクロプス”、サブリーダーは本当に中学生か?と思えるほどの貫禄を持つ”百腕のヘカトンケイレス”が担当するぞ。」
「ちゃお☆」
「おいドンの紹介だけ酷いでごわす…」

一人は眼帯の白髪サイクロプス、もう一人はいまのところ四本腕の筋骨隆々な老け顔の大男ヘカトンケイレスが赤い壇上に上がり眩しいスポットライトをあてられて登場。

「続いて青コーナー!左隣の銀河から青竜銀河の風が吹きいや吐いたのは火炎だったか!?ウィング星ツバ耳星人の住む名門鳳凰谷中学校の二名ぇぇぇい!。不死鳥フェニ子と宇宙最速の翼韋駄天の入場だぁぁぁ!」
「テメェ―ら声が小せぇーぞ!盛り上がれよ!あたいが嬢王様だよ!!!」
「ん…」

フェニ子の登場に会場が大歓喜する。それもそのはず、彼女は宇宙に名高いギザ歯と赤髪が特徴のグラビアモデル宇宙に輝く大スターである。
そしてその隣にいる男も、宇宙最速の翼を持つ中学生と言うことで注目されてる少年。

今回そろった誰もが全宇宙にその名を轟かした優秀生ばかり、それを迎え打つ我らが誇る優秀生は当然この二人。

「そしてそして我ら八百万中学が誇る代表生徒はこの問題児二人!、天上・護と塩崎・神居!」
「「おぉぉぉ!!!」」
「頑張れよ問題児!」
「負けるな問題児!」

なんでか尺に触る歓声が多いが、天上と神居はイラつかないようにして司会者を睨む。

「さーて種目説明に入らせていただきます。」

「つか、紹介の仕方が完全にプロレスなのは誰も突っ込まねぇーのか」
「あれは放送委員の委員長、牛鬼・兒丸先輩の十八番だから。前年の体育大会とかもあんな感じだったからな。」
「おいおい、どうなってんだこの学校。ノリがバックってんのか?」

天上の素朴な疑問をかき消すように、デカい歓声が会場を熱気で包み。二人もちっぽけな疑問や悩みなんて吹っ飛ばして俄然やる気を出してきたようで二人とも拳を手の平に合わせて緑のゲートから入場する。

「それじゃーさっそく!つぶし合いと行きますかぁぁぁ!」
「つぶし合い?」

天上の疑問符とは裏腹に、何も塗られていない無職の門から解き放たれた喧嘩自慢の生徒達がゾロゾロとその門から現れる。

「え?種目って俺達だけでやるんじゃねぇーの?」
「いーや、僕達はあくまで代表校の代表生徒。銀河団中にはもっと多くの学校と異星人がいる、その中でも選りすぐり僕達なわけだけど…どうしても、この戦いに参加したいって奴らが僕らを蹴落としに来るってのが”敗者復活のラストチャンス”三つの銀河団中の代表学校で無い生徒含めた”のべ100万人”が参加している。」
「銀河で100万って意外とすくねぇーな」
「そりゃー今回の参加者の中にはあの…剣豪サイクロプスと最速の韋駄天がそろってるからね。強制参加の代表生徒以外は余ほどの命か愚か者以外はそもそも挑戦しようなんて思わないさ。」

神居が珍しく弱気なことを言うのを見て、天上は二人の姿を確認し「ふーん、そんなに凄いのかあいつら」と興味がわいたようだ。

「それでは代表生徒にとっては生き残りをかけたサバイバル、その他にとっては復活をかけた狩りの始まりだぁぁぁ!!!」

叫ぶ司会者と共に、試合のゴングが鳴り響き。門の前に立つ代表生徒を破竹の勢いで襲いかかる無名の生徒達。

「おら天上!俺とやれぇ!!!」
「お前誰だよ…」

当然無名のモブにめける雑魚は、ここにはおらず。

「今お前がぶっとばしたの、ボクシング部の鬼我島先輩な」
「よそ見とは余裕だねぇー神居くん!」

現れた剣道部の者主将、祓村を角を引き抜き一撃で切り倒す神居。

「これが剣道部の祓村先輩。」
「あ?そうなのか、随分詳しいな!」
「まぁーお前と違ってしっかり部活も出てるし名前もあったら一発で覚えるからなぁ!」

二人は周囲の有象無象を蹴散らしながら無駄な情報交換を始めた。

「ほぉーやるじゃん、万中(よろずちゅう)」

そう会話する二人の背後に立つ、ツバ耳星人と思わしきサングラスの生徒。

「でもわるじゃん、こと今回の試合に関してはあのグラビアモデルのフェニ子ちゃんが出てるじゃん。だから…」
「気負付けろ天上!奴らツバ耳星人は耳が翼になっていて…」
「モデルのおっぱい!触りたいじゃんからどけじゃん!!!」

そんな下心満載の男から放たれた予備動作無しの、両サイドからの翼の攻撃に天上は…

「いいねぇ!面白れぇ…」
「バカな、ダイヤモンドにすら傷をつけるツバ耳星人の翼をすでで受け止めるなんて自殺行為じゃん!。」
「んなこと…知らねぇーよ!」

天上は、とっさに飛んできた六つの羽を両手と派手に二枚づつ摑みそれをそのままクナイのように投げて撃破した。

(やはり強い、天上。仲間にいるとこうも頼もしい相手もしいのか…)

神居は自身が背中を預ける相手の強さを、再び自覚した。

「なんつーか、騒がしくやってんなぁー。そう思うだろ?韋駄天…」
「…」

ツバ耳聖人の特徴を踏まえてみると、フェニ子には確かに赤い羽根があるが韋駄天には無い?なぜだろうか、そう思うのもつかのま…

「おーら!最速がなんぼのもんじゃい!」

背後から押尾セル無名の小太りの生徒に攻撃を仕掛けられると韋駄天は即座に…

「フン!」

その場を滑走し、目にもの止まらぬ圧倒的速さで周囲を一瞬で一掃した。

「韋駄天?あたいの分も残しといておくれよ…」
「…」
「はぁー…あたいも手話は覚えようかな」

他の代表者達も天上達どうように、手の打ちを明かさぬように派手に戦いを繰り広げている。

「ヘカトン?チルい展開思いついたんだけどさ!言ってもいい?」
「後にしろ!サイクロプス、手加減は武道の恥どすから話して時間を潰すのマナー違反でごわすよ。」
「えぇーいいじゃん聞いてよ、聞いてくれないなら勝手に言うよ。…”この状況”」
「ハハ!お前にとっては戦場が安らぎか、サイクロプスよ…」

そして10分が経過したころには、三つの銀河から集まった100万人の中学生の雑兵は見事に全員完敗。今年度は復活者なしで幕をとじた…

「それでは戦闘でお疲れでしょうし皆さん、演劇部によるエキシビションマッチをご鑑賞ください。」

視界者がそういうと、さっきまで闘技場だった舞台が変化し大きな劇の会場へと早変わりする。

「すっげーカラクリ、これが塩崎の財力かぁー。」
「まぁーま、4年に一回しか使われんこの会場はわしがしっかり管理しており金もかけておるでの。そこに抜かりはないぞ、ほれ見直したか天上?」
「はいはい、すげーよ本当…」

天上はそんなことよりなによりも、遊園地であんなことを言ってしまった高天原の姿に目が釘付けだった。

「ごめんな、でも…お前だけはダメなんだ…」

こうして演劇部渾身の、宇宙戦争にまつわる劇が終わりを迎え次なる第二種目は…

「次なる種目は、大爆弾借り物リレーでーす!」

「大爆弾借り物障害物リレー…」

天上以外の生徒が身構え、冷や汗をかくなか天上だけがピンと来ていない。
なんといっても第二種目は毎回ランダムで決まるが今回はその中でも最悪…

そんな不穏な影と共に、ステージが次は大きなグラウンドへと変化する。

「このグラウンドは一周1500mです、それを12周していただき。その間にある毎周変わる障害物をよけたり潜り抜け。最後のお題を時間制限内にクリアできたものが勝者です。」
「なんだか色々ごちゃまぜになってるが、つまりはただの障害物リレー…」
「ただし、背後には大玉型の対モ〇ルスーツ用兵器通称”黒玉くん”が追いかけてくるので気負付けてくださいね。ちょとでもあたると爆発して普通に死にます…」
「意味わかんねぇーよ!あぶな過ぎるだろ!」

そして始まる大爆弾リレー、大焦りで進む天上とそれに合わせる神居が首位を独走。

「…」

しかし流石は最速の男、爆弾があるのでいっきに12周は不可能だが一瞬で障害物を全てクリアし1周を終える。

「ずる過ぎるだろ!」

そうこうしているうちに天上と神居の目の前に現れるデカい砂場。

「これなんだ?」
「ビー玉探しだ、この砂場の中からビー玉を探す…」
「なんだ簡単そうじゃねぇーか」
「あぁーそうだな、ビー玉が小人族産のラムネに入ってる砂より少しだけ大きい極省サイズじゃなきゃな。」



「うぉぉぉ!!!」

天上はその言葉を聞いて三千世界の砂粒ほど途方もない塵のようなビー玉を見つけるため犬のように一瞬で堀りさり。

「よしあった!、ほれ神居お前のぶん。しっかり持てよ、それじゃー行くぞ!」

あれを見分けた天上の視覚能力の高さに驚きながら神居は天上についていく。

その頃一方劇を終えた高天原は、神無の待つ客席に戻っていた。

「今どんな感じ?」
「天上様がんばっておられますわよ、爆弾が押し寄せるなかで…」
「ふーん、でもなんであんなに焦ってるの?あの爆弾…”触れても外に転送されるだけの偽物なのに”。」

これは司会者が悪いと、誰もが思った。

「よし、爆弾との距離も話せたし次はなんだ?」

天上の目の前に広がるのは高さ50メートルの何もない壁。

「まさか…」
「上るんだよ、ツバ耳族はとべるから捕まる必要ないけど。僕らはそうじゃないぞ…」
「お前なんでそんなに冷静何だよさっきから…」

相棒との温度さに涙が出る天上は、何もないつるっつるの50メートルの壁にその異常なピッチ力で無理やり登り切った。

「僕は先に斬撃でいってるよ…」
「いいご身分だなおい!」

神居は飛ぶ斬撃を足に纏ってその勢いで空を飛んで頂上まで達した。

「んで次は…」
「ウォータースライダーだ…」
「お!やっとボーナスステージか?」
「あぁーどっちかが外れでそのまま失格になるな。」
「ここに来て運ゲーかよ!」

ちなみに爆弾には反重力装甲がついているため、50メートルの壁も一瞬で登ってくるため悩んでいる時間はないぞ。

「悩んでる暇はねぇー!入るぞ神居。」
「おい!間違えたら一終わりなんだぞ…」
「いいからこれ濡れ…」

そう言って天上が出したものとは…

「おぉぉおーとこれはスゴイ!と言うか…”エロい!”」

天上が出してきたのはペンギン星のひんやりぬめぬめローションであった。
それを使い、もし道を間違えても天上の塞がれていないスライダーの上を滑るころでいつでもジャンプして路線変更が可能だが…

「天上よ、お姫様だっこで全身ローションまみれは流石に…と言うかこれ私がローション塗る必要あったか?逆に手元が狂ってお前が落としやすくなっただけじゃ…」
「いや、最初は二人で抱きかかえていくのダメなんかなぁーと思ったらスライダーの前に女抱きかかえた男のイラスト描いてあったからあ!いいんだと思って…」
「うん、わかった。冷静に考えたうえで間違えたなら別にいいんだ。あとお前なんでローションなんか持ってるんだ?」
「武器は持ち込みOKだったから、もしリレーで最後のラストスパートで接戦になったとき滑ってぎりぎりみたいな…」
「なるほど…」

とにかく天上と神居はスライダーに上を滑って間違えてもいいようにしたが、最初からあっていたので無事にグラウンド側のプールについたので結果論ではあるがまーじでこの作戦はただ神居が全校生徒どころか銀河団の全学校中に痴態をさらしただけの結果とあなった。

「お前ら!記憶から消せぇぇぇ!!!」

虚しい叫びはさておき、ローションをプールで洗い流し重たい水浸しの服を脱ぎ去って爆弾静止中の30秒間で水着に着替える選手たち。

「30秒って男ならまだしも、女だと早着替えの達人でもない限り無理だろ。」
「だから皆、最初から海パンや水着を中に来ているのだ。不足の事態に備えてな…」
「お前らの中ではこれは普通なのか?俺の頭の中にはそんな不足の事態は想定されてねぇーよ。」

それからも幾度の種目を潜り抜け一周1500mのグラウンドを爆弾に追われながら無事12周した選手達。

そしてついに”最終種目借り物競争”の目の前まで来た選手達。

「あたいのは…」
「みーのは…」
「俺のは…」
「僕のは…」

参加者それぞれが手紙の中身を確認するとそこには…

「「”好きな人”」」

そのお題は皆同じだった。

(こんなお題かんたんじゃん、とりま適当につれそうな女捕まえて…)
「ちゃお!そこのレディー、俺剣豪のサイクロプスって言うだけど俺と一緒にゴールまで…」

そういって他校の女子生徒に触れた次の瞬間、サイクロプスのみの全身に電流が走る。

「それじゃーダメじゃよ、本当に心からでなければな…」

そう、そのお題の紙はただの紙ではなく一度でも封を開けた者を使用者とし、使用者が本当に心から好きなものに触れなければならない言う呪符が込められている。
ちなみに、この呪符は紫鬼の応用である相手の心を見透かす”読唇”と黄色鬼の陰陽五行の火の門で作り出した”プラズマ”を混ぜ合わせて作っている。

「わし、凄いじゃろう」
「ぐぬぬ…」

苦戦する参加者達は、おのおの思いがあった。

(おいマジかよ、あたい一様モデルなんだぜ。こんなのスキャンダルになっちまう…それに、死んでも言えない。スタイル抜群のイケメンよりも、横にいるこの言葉の通じないブサメンが好きだなんて…)

自身の立場やプライドから思いを伝えることが恥ずかしい者

(前の私なら迷うまでもなく女神を連れてゴールしていただろう、しかし…今の私にはわからない。私はこいつが好きなのか?それとも前と同じように女神高天原が…)

誰が好きなのか、自身の真意を決めかねているもの…

(うーん、正直気まずい今合うのは…)

相手との関係的に関わるのを拒むものの三者三葉に内面的な事情を感じていた。
しかし、最初に動いたのは以外にも…

「ん…」
「ちょちょっと!あんた…」

無口な速度王、韋駄天であった。
韋駄天はフェニ子をお姫様抱っこしたままゴールインを果たし第一走者となる。ちなみにこの種目での爆弾の静止時間は3分であり。もう残り1分半ですぐそこん爆弾が動き出す。

「はぁーならいいや、もう」

あきれるようにして一人でゴールインしたのは剣豪サイクロプス。

「え?」

その行動でその場の全員が全てを察した。そう、サイクロプスは…

((ナルシスト!))

なのである。

(そんなんありかよ)
(うわぁーキモォー)

天上とフェニ子の中で、彼への好感度が最低値まで下がった。
そんなこんなで残り1分。

「一つ質問でごわす!」
「なんじゃ、若いの…」
「これって好きな相手がこの場にいない場合はどうすれば?」

確かに最もな意見だ。まず第一に同じ学校内に好きな人がいるかはわからいし、相手が学生でない可能性もある。
それに今回の祭典に全学校の全生徒が参加したり見に来ているわけではない以上、この問題は重大でかつ初歩的な問題であると言える。

しかし流石は鬼神、神楽その辺は抜かりない…

「念じろ、さすればわしが空間ごと斬撃で切り抜いてここに飛ばす。そのあとはしっかりと返すさ、逆説的にな…」
「そう…ですか…」

そう神楽がさも当たり前的なノリで答えると、全生徒が「この人対外なんでもありだな」といい意味であきれた。

「それでは、鬼神様のお言葉を信じて…」

そう言ってヘカトンが連れてきたのはまさかの…

「あら?ヘカトじゃない、こんなところでどうしたの?と言うかここどこ?」

自身の”母親であるガイヤだった”。

(ナルシストの次はマザコンって…)
(ビム星人って変態しかいないのか?)

またも知らないうちに心がリンクしていた天上とフェニ子であった。
そしてほとんどの代表選手がゴールをし終えた後、残り20秒のカウントダウンの中未だに決めかねているのは後…

八百万中学の天上と神居だけ…

しかし両者には大きな問題があった。それは、どちらも好き人間が同じと言うこと…
今の状態を整理すると天上は高天原が好きで高天原も天上が好き
ここまではすんなりいくが最後の神居が高天原が好きなのか?天上が好きなのか?わからない状態になっている。

この場合はどうすればいいのか、質問する時間はもう残されてはいない。



そうこうしているうちにもう残り10秒となり微動だにせずそっぽを向いている二人。

「ねぇ、高天原さん。わたくしにいい考えがあるのですけれど…」
「何?」

そして残り5秒、観客がもうダメだと誰もが万中の敗北を確信したその時!。

「行くよ二人とも…」

突然階段から駆け下りてきた高天原が二人の手を引き走る。

「ほら早く急いで!あと3秒だよ。わかってる?」
「でもよぉー俺…」
「僕…」
「よくわんなけど、神無ちゃんがこれで上手くいくってさ。今まで通り”三人で”潜り抜ければ…」

そう言ってゴールテープを切った三名の判定はもちろん、合格。これで二人が次の最終種目への参加券を手に入れた。

「解決できない問題なんてない…だってさ、神無ちゃんがそう言ってた。」

この日二人は、神無の起点とさっしのよさに感謝し。今度何かお返しをしようと思った。

しかし二人はまだ知らない、この行動が神無にとって…

「幸せになっておくんなまし…」

恋愛への敗北を意味することを…

そんな悲しみかの第二種目を終え、第三種目はシンプルな一対一のタイマン一本勝負であることが判明し天上は「待ってました」と言った様子で拳を手の平に合わせる。
しかしここで最も不安に思っているのは天上でも、他校の生徒でもない…

(僕は…ここにいていいのか…)

他ならぬ神居である…

「えーそれでは、司会進行の私牛鬼から大戦カードを発表させていただきたいと思います。」

それは実力不足からくる明確な不安…

「第一回選!宇宙一の大剣豪サイクロプス!」

自身が、父や天上そして奈闇より弱と言う事実を知っている。だから不安なのだ、父を除いたそれらと同格かそれ以上の相手に一人で挑むのが…

「vs…我らが誇る二名の代表者の一人にして神の一族天皇家の血を継ぐもの…」

やめろ、やめろ、そう心の中で思ってしまっている。自身の血が縛る強くなくてはいけないプライドと強くない自分とのギャップに嫌悪感を感じながら生きてる神居に目の前にした大剣豪は…

「かむぅーーーい!」

荷が重すぎる。

(神居もつくづく運がないのぉー、今回の代表者の中には必ず一分野において宇宙最強の名を持つ生徒が各校から選出されとる。むろん我らが八百万中学校からもそれに並ぶかそれ以上の実力を持った天上を素行不良の面を無理やり押し切って代表にしたと言うのに。なぜお前が当たってしまうのだ…この場全体の指揮がかかった第一試合で…)

第一試合の重要性を神楽は誰よりも知っている、それはその場全体の指揮を上げるバフとなる勝利の金にもなりえ…
それと同時に仲間の声を意志を心を魂を完全な絶望へと変える恐ろしい破滅のラッパにすらなりえることを…

しかし誰もが知っている、天上・護と言う男が仲間の敗北一つで折れるような男ではないことを…
しかしこれも知っている、神居が相手にしているのは宇宙一の大剣豪であること。
そしてそれにただの一般剣士である神居が挑むことの無謀さを…

そして父と姉は心配しているのだ、気高き血を誇りに思い誰よりも負けず嫌いでプライドの高い神居が…今までの堕天との修行の日々も今までの強敵との戦いも全て…

”この敗北一つで無駄だったと言う結論に至り、もう二度と立ち上がれなく未来を…”

「ちゃお、どうした顔色悪いぞ。晒のねぇーちゃん、そう怖がらずに楽しく行こうぜ…」

そらは強者くる余裕だ。誰よりも近くで見て気た宇宙で一番ムカつく奴だ。
神居はその一つの怒りに身をゆだね、理性を飛ばして立ち向かう足を無理やり作り出そうとした…がしかし…

「神居ぃ!それは勇気ではない!ただの現実逃避。目の前の恐怖から逃げるための”投げやり”だぁぁぁ!!!」

観客席から、叫んだのは天上でも神楽でもましてや女性陣の誰でもない。この酒焼けしたような声は…

「堕天先生…」

堕天は始めて神居とあった時のこをを思い出しながら、疎遠になった奈闇との一件のことを思い出しながら…諦めそうで挫折しそうでその全てを投げだしそうな神居の元へ駆け走り。こう叫んだ…

「最初!お前にあった時さぁー、俺。昔の俺見てるみたいだった。見栄っ張りで強がりでいつも虚勢ばっか吐いて息まいて…本当に大切に思っている人にも本音をぶつけられない本当は心の底では弱っちい奴。周りに置いて行かれるのが怖くて…でもお前は俺とはそこが違うな。根が弱い俺はいつも誰かの後ろ付いて隠れて強い奴の盾でいつも自分を守ってた、でもお前は自己防衛に走って挑戦をやめた俺と違ってずっとずっと。自身の弱さを知ってなお挑み続けてる。お前は本当は強い奴だ神居…”だから頑張れ、高見を目指すお前の先に限界はない”飛べ!地べたを眺めてニヤ付いてる俺とは違う道を行け…」

それは決して要約の無い、伝わりづらい長文のメッセージ。この距離この一瞬一瞬が勝敗をわけるこの場所では決して相応しくない先生としては、終わってるほど教え方の下手な伝わりづらいメッセージ。

それでも…だからこそ伝わるのは、それが何の嘘偽りの無い1から10まで伝えた隠し事の無い正真正銘の本音のエールであること。
そして自覚した、自身が誰で何者であるか。自身がどうやってここまで走り抜けてこられたのかを…

「その刃はおられたろう、神居。天上のやろーにおられた怒り任せの刃何て鞘に戻して蔵に入れろ…」
「どうしたの晒レディー?ブツブツ独り言いって。ヤニ男の体臭でニコチン中毒にでもなったの?」
「うるせぇーよ!このこんこん知己のアホンダラ!」
「わぁーお…」

言葉は変えない、曲げない、誤魔化さない。カッコつけない、飾り立てない、作らない。
それが自身でそれが我、認めろ自分自身を否定するばかりの人生じゃなくて…

”否定ではなく、受け入れて前に進め”

「僕は!負けない!負けたくない!。お前ら最強に、産まれながらの天才に蔑まれて馬鹿にされても”決して負けは認めない”!」

その瞬間だった、神居の体に青いオーラのようなものが発生したのは…

「これは…”斬撃の嵐を身に纏ったのか”」

斬撃の嵐、それは奈闇戦で見せた神居一番の大技である斬撃の嵐。あれは筒をイメージして無数の細かな斬撃を周囲に飛ばし続けることで成立する大技であり、見た目通り制御が難しく発生するのに相応の時間と集中が必要だった。
ましてや、今の状態のように纏いながら刀で戦う何て併用はできなかった神居最終奥義をその体力が持つ限り半永久的に持続可能となったのだ。

そして神居はその斬撃の嵐を纏ったまま、目の前の剣豪サイクロプスに斬りかかる。

「やばいね!」

それは刀なの切断とともに連続で起きる竜巻のダブル攻撃、これにより敵の一切の攻撃を斬撃で打ち消し威力の高い攻撃は発生している竜巻が遥か上空に押し上げてくれるため攻撃は効かない。

それでいて、今のサイクロプスのように迎え打てば迎え打った武器があまの多段撃に耐えきれず砕け散る。

「自分の武器(えもの)を失ったな。」
「いや、まだこれから…さ!」

神居の弱点の無い攻防一体のそれを見て、興奮が収まらずその目にした眼帯を投げ捨て目を見開いたサイクロプスはそのまま口を大きく開けて強烈なビーム砲を神居に向ける。

「ごめんごめん、俺っちとしたことが柄にもなくチルくないことしちゃった。でも大丈夫、もうこの技は使わない。」

強力な口からビームで覚醒した神居を牽制、その隙に口を閉じたかと思えばクロスさせた両手から光の刃を二刀だして神居を切り刻む。

「ハハ!ハハハ!ハハハハハ!!!これだよこれ、君って最高だぁー。」

サイクロプスは二刀になるや否や、さらに興奮しその連撃の速度を高め神居への読みもどんどんと性格になっていく。

「チルよ君めっちゃチルい!凄い凄いどんどんチルくなっていく。世界がどんどん…」

そして彼の特異体質がここで発覚する、彼の眼帯で抑えているその目は宿主であるサイクロプスが興奮すればするほど彼のその目で見た世界の速度を遅くする。

「いいねぇー君の攻撃、どんどんチルくなって行くの行くよ。いいねいいね、まるで一本の映画を見ているような気分だ!」

サイクロプス、彼にとって緊迫した戦場はこの世でもっともゆっくりと安らげる癒しもの場所。他の事をしているとめんどくさいし本当に何もしないとつまらない。
そんな日常のストレスを彼は戦場にぶつける、そして彼は現在剣豪となった。

そしてチル差を感じ続けたサイクロプスの体感時間はゆうに約3時間のハリーポッターを超えてその一瞬の音速を超える刃のやり取りをまるで映画を鑑賞するようにじっくりゆっくとなめ回すように見る。

(これだよこれ!この命のやり取りがたまんねぇー…人が動揺しもっとも慎重になる瞬間それは殺し合いの時。その時人は行動一つ一つに思いも思考も加えずただ確実に傷つける殺すと自覚した瞬間だけ思考を止めて冷静になる。でもそんなの本当のチルさじゃない本当に俺っちが思う最高のチルさ本当の闘争ってのはさ!)

彼、サイクロプスの目には唯一絶対の弱点二つある。
その一つが、体感時間をあまりにも遅らせ過ぎて…

「ありゃ、もう倒しちゃってた?」

”相手を倒した事実に気づかず、やり過ぎてしまうこと”

「でもよかったよ、君との殺し合い。凄く凄くチルかった、人間らしさとか理性も本能も捨てた”こいつに勝ちたい、こいつには負けないって”ただ単純で一途な甘い恋愛のような単純志向”それが僕にとって一番チルいんだよ!」

ちなみに補足して説明しておくが、サイクロプスの目は自身の体感時間を遅らせることで相手の攻撃を確実に見切れる。
しかしそれは裏を返せば、実際の世界で高速で動いている物体をスローで見えているそれに合わせて動いていると言うことはそれすなわち…

”現実ではめちゃくちゃ早く動いていると言うこと”。

「勝者はサイクロプス選手!」

勝者が決まった時、必ずと言っていいほど鳴り響いた歓声が彼の時だけ一切聞こえない。二刀のビームサーベルを握り返り血で血まみれになってニヤ付いているサイクロプスの勝利を誰も賞賛しなったのだ。会場の誰一人…

「はー!ハッハ」

しかしサイクロプスは笑いそして神居に近寄り、傷だらけでボロボロの血袋のような彼女に抱き着いて意識の飛んだ彼女の決して聞こえない耳へ…

「楽しかぅたよ、愛してる。また遊ぼうね、晒ちゃん…」

そんなこの世でもっとも狂っておぞましい自分勝手な求婚を、意識の名い彼女にレイプのように浴びせ続ける。

「離れろよ、もう試合いは終わってんぜ。」
「はぁー君誰…」

天上は観客席から飛び降りて、今まで通り悪路や奈闇にやったように一瞬で神居を攫い。そして護ように抱えてサイクロプスを睨む。

「ほぉーちゃお☆、結構強そうだね。君なら彼女よりもっと極上のチルさをくれそうだ…」

ニヤ付いて笑い転げるサイクロプスに、天上は対抗する一言をぶつける。

「チルい?そりゃーねぇーな。残念俺との戦いにそれはねぇー…」
「なに?あぁーね、知らないようだから言っとくけど。俺っちの目は相手が強ければ強いほどチルくなって行く目なわけ。だから、君みたいに強い奴は自ずと俺好みのチルさになるわけだけど…わかる?」
「わかんねぇーな、その理屈は。でもよぉーはっきり言えんのは…”俺との戦いにチルい何てもんは微塵もねぇー”一瞬で終わっちまうからな。お前程度の雑魚…」
「俺っちを雑魚呼ばわりか…いいよ。それじゃちゃお☆また決勝で…」

二人の最強の邂逅は、最悪の形で始まりを迎え。神居は第三種目第一回選にて退場となった…

続く二回選、天上vsフェニ子の試合である。

「さぁー!気狂いナルシストやろーのせいで落ち込んだムードを熱くしていくかぁー!」

フェニ子の熱き闘志に焚きつけられ、再び会場の雰囲気が熱気に包まれる。

「いいな、お前。楽しい奴は好きだぜ」
「おぉーそうかい、あたいもボロボロの女の子我さきに助けに行くような正義感の熱いあんたが好きだね。」

両者は煽り共に見つめ合い、司会者のかき鳴らす「始め!」の言葉と共にまず仕掛けたのはフェニ子。

「おっと!その攻撃はもう喰らってるぜ。」

フェニ子は第一に羽で左右を攻撃し上空に天上を飛び上がらせ。

「それが狙いだっつらぁ!」

第二に、フェニ子の家系不死鳥家に伝わる”焔”の力で上に逃げて身動きが取れない天上を焼き払う。

「聞いたよ、あんたただの人間なんだって。それなら妙な能力はもってないはずだ、そのまま潔く灰に…」
「ならねぇーよ」

天上は背後を取ってそのままフェニ子の頭に触れて脳を揺らしフェニ子は脳震盪を起こし気絶する。

「これは勝負あったか…」

司会者も、天上もフェニ子の敗北とみて戦いを終わらせようとしたその時…

「不死鳥フェイ子は…部位破損や体の破損はもちろん状態異常だってそっこう回復。当然体力もな!」
「天上よ、フェニ子は厄介な相手じゃぞ。」
「厄介な相手?」

観客席に座る高天原は横にいる神楽の戦闘解説を聞いていた。

「不死鳥フェニ子、グラビアモデルと言う体を大事にする仕事をしている彼女がこの戦いに参加できた理由は緑鬼を遥かに凌ぐ全自動の超再生能力と無限のタフネスによるところが大きい。」

無限のタフネスと言う部分に、高天原は驚いた。
なぜなら、同じく再生能力を持つ緑鬼の唯一の弱点んは回復による体力消耗の激しさだからだ。
それが無限ともなれば…

「無敵じゃん!」
「そうでもない、天上ならその弱点に気づけるはずじゃ。」

そして視点は天上にうつる。

「無限の体力と再生能力にその火力は確かやっかい…」
「だろ?どうして、降参するかい?」
「いーや、ならこうしよう」
「は?まだなんか策があんのかい、あんなら見せて欲しいもんだ…ね…」

天上はフェニ子まず、瞬時にフェニ子の背後に立ち全身をまさぐるようにして揉みしだく。

「やっやめ…あぁん!」

宇宙に輝くグラビアアイドルフェニ子の喘ぎ声が、会場中に響き渡る。

「状態異常も回復できんなら、回復する間も与えずやり続ければいいじゃねーか。その身がその快楽に溺れるまで…」

なんとう言う卑劣、まだ中学生の子供にしていい仕打ちでは決してないがフェニ子は10分耐えた後そのあまりの気持ちよさに状態異常の回復を止めてしまいそのまま気絶して敗北となった。

「最低ね」
「最低ですわ」

「「最低!」」

男子全員が心の中で天上の行動に賞賛を送るなか、女子は大きな声で天上に最大級の罵声を浴びせ汚物を見るような目で彼を見つめた。

そして迎えた第三試合、神居を病院送りにしもて遊んだあの宇宙一の剣豪サイクロプスvs宇宙最速の韋駄天との宇宙一対決がここで勃発する。

「ちゃお☆最速なんてつまらない、じっくりゆっくり楽しもうよ。そのほうがずっとチルくていい…」
「…」

先ほど説明しそこねたが、韋駄天には他のツバ耳族にはないある特性がある。

「それは、あたいらと違って足に翼が付いていることだよ。」
「わぁ!びっくりした。いつの間に、てかあなた体の方は…」
「至って正常だ!と言うか、お前あいつの彼女か?」
「へ!」

なぜかさっき負けたはずのフェニ子が、すでに復活し客席にいる。
先ほどの戦いを見ていた高天原は体の様子を伺うが、フェニ子は赤面し恥ずかしそうに誤魔化したあと。
高天原が天上と手をつないでいるのを、第二種目で見ていたためそれをネタにからかった。

「そんなんじゃありせんよ、この前フラれましたし…」
「ふーん、あんた結構可愛いのにね。もったいない。」

高天原は現役グラビアモデルに褒められたことで少し嬉しそうに焦りつつ、咳払いをして話し元にもどした。

「それで、足に翼が生えていると何が違うんですか?」
「大違いさ、まずあたいらツバ耳星人は名前の通り。耳の表面が翼のようになっている、内側は普通に耳だがな。」
「はい、それは知ってますけど…」
「だが奴にはそれがない、つまれ生まれた時から耳がないんだよ。」

それを聞いて高天原は焦り、あまり聞いちゃいけないデリケートな問題足を突っ込んでしまったと思い誠心誠意頭を下げて誤った。

「違う違う、そんな障害を抱えているのは確かだがあいつはそんなこと気にしちゃいない。むろん私も、今は手話の勉強中さ…」
「へぇー、お二人こそ付き合ってたりとかは?ほら第二種目一緒にゴールされてたし…」
「そっそんな話はいいだろう、それより試合だよ。あいつは耳を代償にその足に翼を受けた、この世のどのような生物も大地を移動するのに一番重要な器官である足に…だから速度がヤバいんだ。あいつは…”最速なんだよ”」

二人の微笑ましい会話とは裏腹に、リング上での両者の戦いはお互い一歩も譲らない。

「流石早いね、移動が見えない。あとやっぱ戦い蹴り主体、だからいつもぽっけに手を突っ込んでるんだ。ならその腕…」

二人の一進一退の攻防、どちらも譲らないそれを最初に崩したのはサイクロプス。
その立った二撃でサイクロプスの両手を切断した…

「韋駄天さん!」
「安心しな、ありゃ…”残像だよ”」

サイクロプスは目の前の男を正直なめていたことにその時後悔した、自身の目が完全開放されている今なら最速すら見切れると過信していた自身に…
そしてサイクロプスのその自慢の目は韋駄天によって潰された…

「やったぞ!ざまーみろサディストやろう。これで韋駄天の勝ち…」

フェニ子含め誰もがそう思った瞬間。

「いやーまいったまいった、目を潰されたたの始めてだ。でもさ…そっちじゃないよ…」

韋駄天が間違えた?いや違う、とっさにサイクロプスが潰されてもいい方の目を犠牲に二刀のビームサーベルを当てるだけの隙を作ったんだ。

「俺っちさ、楽しむためにいつもこいつを聞いてから殺すことにしてんだ。よくない?戦いの最中に「がんばって!」とか「あの時の○○を思い出して」とかそ言う青臭しやつ。あれって戦いのいい演出になるんだ、それであ技と技を喰らってあげたりとかもするんだよ…こんな風にね…」

サイクロプスの思考回路はつまりこう、彼が好きなのは仲間の声とかで決意を決めて盲目になっている奴を映画の主人公にでもなった気の奴を自身がそれをくまなく干渉して上でボコして現実を教えること。
そのための演出なら、自身の五体を差し出したって言い。とにかく彼は”みせプ狂なのだ”。

「…」
「なにそれ、手話。わかんねーつーの…」

サイクロプスがそう返す次の瞬間、そのビームサーベルを持っていたはずの右腕がいつもまにか地面に落ちている。

「なるほど、こういうことしちゃうわけ。流石最速いまのみせプじゃない、チル映像も見えなかったから撮り直しだな。こんな映画つまらない、ゆっくりできないし何よりチルくない。もっと上手く見せてよ…こんな風にさ!」

次の瞬間、最速の韋駄天が背後に回って彼に攻撃しようとしたのを察知したのか目の前に残った残像を無視して手にもったビームサーベル投擲する。

「それはもうただの剣じゃねぇー…」

そして投擲した剣が地面に着弾すると同時に、大爆発を起こし周囲を破壊する。
幸い会場は神楽の結界で守られているからいいものの、爆発により煙が多くて中が見えない。

「これが最終必殺技、チルくない君はこれでさよなら。」

それはサイクロプスの奥の手、会場を覆い尽くすほどのその光の槍が当たればおそらく結界内の全部が対象となって爆発するだろう。だから例え最速で持避けられない。

「バイバイ、僕の天敵」

最速とスローで者を捉える目を持つ男。両者の攻防は最後、こんな力技で決着になるかに思えた…

(それでも俺は勝さ…)

最後、光に包まれる寸前に韋駄天からフェニ子に送った手話でのメッセージ。
その通り、韋駄天は爆発の後もサイクロプスの上に立っていた。

「地球投げとは…考えたじゃん。」

韋駄天は光の槍が当たる直前で、最速の速度で飛び上がり背後を取って放ったと同時腰を掴み地球投げを決めたのだ。

「…」
「いーや、ありがとう。」

しかし、さっきまで自身が腹に足を乗せていたはずのサイクロプスの姿はそこになく。

「最後の瞬間、見切っちゃたんだよねぇー。君のチルさ…」

その場の全員が、韋駄天本人すらだました地べたにあおむけになり腹を踏まれるサイクロプスは全員の見たただの残像だった。

「勝者!剣豪サイクロプス」
「やっぱみんな、結局チルいんだよ。俺っちからすればね…」

宣告通り、未だに誰にも倒されないサイクロプスを後目に天上は次の対戦相手であるヘカトンケイルとの戦いを楽しみにしつつ天上は闘技上に上がった。

がしかしそれと同時刻、とんでもない事件が宇宙では起きていた。

「大変です、長官」
「何事だ。」

そこは宇宙警察の本部である、移動母船のなかでの出来事。

「死刑囚天上・釈迦が…”脱出用ポッドで脱出し、塩崎・神楽の収める惑星。緑色星(リョクシキセイ)に向かっているとのことです!”。」
「なんだと…」

その頃天上の上がった闘技場にも、ある異変が起きていた。

「ヘカントンケイル選手!入場してくださーい」

なんとヘカトンケイルが天上入場から5分経っても入場しなのだ。

「ん?どうしてんだヘケトンケイルの奴…」

しかし、いっこうに入場してこなかったヘカトンケイル側の入場口から。スタッスタッと言う足音が聞こえ天上は再び武者震いを始め。「おせーぞヘカトンケイル」と言い放った次の瞬間。

天上の前に立っていたのは…

【久しいなぁー、護。】
「父ちゃん…」

《結》交流会編…完

「父ちゃん…」

天上は最強最悪の父を前にして初めて感じた、身動きが取れないほど恐怖の感覚。
生物としての次元の違い、それを自覚しているからだろう。全身のあらゆる細胞が動くことを拒んでいるようだ…

あの最強と息巻いていた天上がうそのような、まるで父に叱られた子供のようなつらで立ちすくんでいる。

「あれが…天上のお父さん…」
「天上!その場からさっさと逃げろぉぉぉ!!!」

高天原がその異形の見た目に困惑しているさなか、その危険性を最もしる神楽が全力で初めて取り乱した表情で叫ぶ。

「そうだ!逃げ…」
【母さんはどこだ…】

神楽の声で目を覚まし、やっと動けるようになった天上の先に待ち構える父釈迦は宇宙最強とうたわれた神楽と肩を並べるその拳で息子である天上殴りつけた。

「昔も言ったはずじゃぞ、釈迦。子供に罪はないと…」

追い詰められた天上を護ったのは当然、この場で一番強いであろう鬼神神楽である。
そんあ戦場で上空から眩しい光が天上達を照らす…

「あれは宇宙警察の船じゃ!生徒達。この場におる生徒全員よ!わしが結界内で時間をかせいどる間に船に乗り込めぇぇぇ!!!」

神楽そう叫ぶ当時に、観客席の生徒全員が先生の指示に従い宇宙警察の母船から放たれるテレポート光の下まで誘導していく。
しかしこの場で一人天上だけが闘技場内に取り残されており脱出できない。

「天上!よく聞け。わしがウインクしたら外へ走れ全速力でじゃぞ!いいなぁー!」
「おす!」

しかし悲劇はこれだけでは終わらない。

「天上ぉ!」

上から天上を呼ぶ声が…

「高天原…お前だけはダメだぁぁぁ!さっさと逃げろ。」

天上は高天原の顔を見るや否や叫んで警告し、逃げるよう母船のう方を指さした。

「いけませんわ、高天原さん。ほら行きますわよ…」
「ダメ!天上が…」

何かを察した神無が、腕を引き逃げようとするが高天原は硬くなに天上を助けようと結界の向こう側で手を伸ばす。

(頼む…高天原…お前だけは…”父ちゃんに見つかるわけにいかないんだ”)
【ん?】

そう心で念じたのも虚しく、高天原の存在が父の目に入った瞬間。

【酒童?】

そして不幸は続き、最悪のタイミングでの神楽の「いまじゃ!」により一瞬緩んだ結界から一瞬にして釈迦は奪取し天上もそれに続く。

「親父ぃぃぃ!!!」

そう、天上が釈迦と高天原を合わせたくなかった理由は高天原が自身の母親。天上・酒童にうり二つだからだった。
母に未練がある父がそれを見れば、高天原を攫っていくのは容易に想像できた。
だから遠ざけたんだ、自身に関わればいつか見つかると思い。

そして今…

「いやぁ!離してぇ!」

高天原は釈迦の手の手に捕まれそのまま釈迦は何者かの介入でテレポートした。

「ブラボーブラボー、流石にチル過ぎっしょおたくら…」

釈迦が逃げ帰り、追おとした神楽を止めるのは…

「お前、一体何者じゃ!サイクロプスぅ!!!」
「やだなぁーサイクロプスは借りの名前、僕の本名は”テューポーン”。貴方を殺すために作られた魔道兵器さ…」
「魔道兵器と言うことはお前、”魔法星人”共の差し金だな。よくもこんなものつくりおって…」

サイクロプスは本当の名を明かすと同時に、神楽の張った結界をハッキングし再構築して神楽のみが出られないと言う条件を結界にかして結界の性能を対神楽専用のものへと加療した。

「天上!わしが今からお前をわしの古くからの友人の元へ送る、そいつに修行をつけてもらえ。」
「でもそれじゃぁー高天原が!」
「今のお前に何ができるぅ!、お前の実力はすでに父を超えとる。あとは…その精神をあやつの場所で鍛えてもらえ。案ずるな、お前ならきっとさほど時間はかかるまい…」

そう言って神楽は、一人星に残り。保管の皆は神居や神無も含め母船に、そして高天原は…

「くぅ!」

釈迦が宇宙戦争時代に得た莫大な富で購入したガラス惑星、ステンドグラムの中で高天原を縛り上げ。話しをしようとしていた…

【懐かしいな、酒童よ。このどこまでも続く宇宙を…そこに浮かぶ星を…ここから良く眺めたよなぁー】
「知りませんよ、私は酒童さんではありませんから」

父である釈迦にとって天上・酒童とうり二つの高天原は彼の目には、本物の酒童に見えていたのだろう。
だから高天原に多くのことを聞かせた、戦争のことから百鬼組でのことや酒童との馴れ初めも…それを聞いた上で高天原は一つの質問した。

「なぜ貴方は、護くんを恨んでいるんですか?」

そう聞くと、釈迦はバツが悪そうにしながらもその質問に答えた。

彼曰く、酒童は決して体の弱い女ではなかったらしい。だから子供産んで死んだことを知って最初は信じられなかった。
だから宇宙中のあらゆる死にかかわる場所に行きその方法を聞き出すため脅して回ったそうだ。

【ある日は冥界のハデスを、ある日は地獄の閻魔を、またある日はニヴルヘルのヘルにも会いにいった。時にはドラゴンボールだって探したさ。しかし成果はなくどの者に聞いても酒童の魂だけは知らぬ存ぜぬの一点張りでな。役に立たんかったから全員殺したが、そんなこんなしていたらある星の魔女とやらがこんなことを言っておったのだ。”子供を産んで死んだ女の中には胎児に魂を吸い取られ死ぬ者がおるとな…”】
「それってつまり、護が…”お母さんの魂を食べたってこと”」

その頃天上は、神楽に飛ばされた森が生い茂る緑の星についてさまよっていた。

「宇宙にまだ、こんな奇麗な星があるんだなぁー。」

そうやってさまよっていると、近くに大きな滝を見つけて「すっげー」と少しテンションを上げた天上。
しかし、その目を凝らしてよく見ると滝のしたに…

「あれ?褌巻いたおっさんじゃね。」

興味包囲で滝の水を浴び続け、ヨガをしてるおっさんい話しかけて見ることにした。

「おい!おっさん。」
「ん?なんじゃね君は…」
「俺の名は天上・護、神楽って奴の使いでここに来た。」
「神楽の使いじゃと?嘘言うでない。あ奴が律儀に塚などよこすものかぁー」
「それが本当なんだよ!俺の親父釈迦を倒すために”マスタースパーク”って奴に修行つけてもらわなきゃなんねぇーんだよ。」


大峰をするおっさんは、釈迦とマスタースパークと言う言葉を耳にした瞬間。
大峰をやめ天上の方を向いた…

「そういうことなら早くいえ、力になってやれる。」
「いや、だからさっきから何度もそう言ってって…」

天上はなんだかマイペースな目の目のおっさんに不安を覚えたが、とりあえず事情を説明することにした。

「てことがあってよ、もう大変なんだ。俺の大切な奴なんだ頼む!俺に強くなる方法を教えてくれ…」
「うぅーん、つってもおぬし。すでい充分強いではないか、わざわざ拙者に教わることなどなかろう。」
「いやだから…」
「ん?もしやおぬし、最恐最悪の父を前に身動きが取れんから精神修行をとか抜かすわけじゃあるまいな。」
「なんでそれを!」
「拙者には何でも、お見通し何でござるよ。こう見えてもかつては宇宙最高の英雄マスタースパークと言われたもんじゃからな…」

そして大峰男、マスタースパークとの地獄の特訓の日々が始まった。

「まずは、お手並みを拝見しようか。ほれ!どこからでもかかって来なさいな…」
「おっおう!行くぞ」

天上はいつもの如く、凄まじい風圧を纏った拳で強烈なパンチを繰り出し木々を何本か倒す。

「ほほぉーなるほどなるほど。」

それから回し蹴りやアッパー、空手、柔道、合気道自身の持てるすべての技をスパークにぶつけ続けた。

「あれだな、おぬし技術は素晴らしし威力も十分おまけにその戦闘センスじゃから負けなしじゃったろう。」
「おう!まあな」
「じゃが、それでは神楽や釈迦には一歩及ばんのぉー」
「だからそれを教わりに!」
「教えるつってものぉー、拙者ら種族違うし。教えれる技も限られとるのぉーそもそもおぬしはそれで完成しとる。後は…立ち向かう精神だけじゃの。」

それからの修行は座禅・写経・滝行にヨガなどの修行と言うにはヌル過ぎるメニューばかりだったが、そのためか定期的に天上は苦言を呈していたが飄々としたスパークの態度に負けとにかくバランス感覚や精神統一系の修行を一日中行った。

「天上!これが最後の試練じゃ。この洞窟の中に入って一本の蝋燭を取ってこい。それが出来たらおぬしはもう大丈夫じゃ。」
「こんなんで本当に強くなれんのか?」
「疑りぶかいのぉー、いいからさっさと行ってこい。拙者はここで待っとるから」
「へぇーい…」

(この洞窟は”六天の間”、超えるためには六つの試練が待っとる。餓鬼道、畜生道、修羅道、地獄道、人間道、天道そして…最後に待ち受ける自身の内なる邪悪。波旬に打ち勝たねば…”父に会うことも、愛する者を護ることもできずにここで死ぬ”)

その頃、釈迦は高天原に延々とのろけ話を聞かせている最中。扉を開けて何者が入ってくる…

「申し訳ございません…釈迦様…」
「だそうだぞ、お前の部下の亡骸弔ってやらんのか。釈迦よ…」

瀕死のテュポーンを連れて、そこに現れたのは神楽。

【どうやってここまで侵入してきた。我のこの星には何重もの結界が…】
「なぁーに、全て壊したに決まっておろぉーが。わしを誰と心得る、天皇家最強の鬼神カグラじゃぞ。」
【そうだったな、それではどうする?爺同士お茶でもするか?】
「まさか…」

高天原はその時初めて体験した、空間が歪むほどの凄まじい宇宙最強同士の殺気を…

「行くぞ!釈迦ぁ!!!」

まず先手を取ったのは赤鬼モードの神楽、その拳は軽く振るっただけで風圧で釈迦を吹き飛ばし張った結界に貼り付けにされて動かなくなる。

そのまま追加の連撃を加える神楽に一撃

「家族そろって腹パンが好きじゃのぉー」

釈迦の放った腹パンは、神楽を一撃で船から追い出し宇宙空間へ。

【場所を移そう…】

釈迦が指パッチンをするとそこは、朱雀銀河を含む銀河団の中で唯一文明が滅びた銀河。玄武銀河の元へと二人は移動する。

「おりゃ!」

両者の拳は一撃一撃で一つの星を破壊しながら、戦いはさらにエスカレートする。

【その手は読んだ】

釈迦は神楽の放つ猛攻を次々とさばき、避け、交わし、だんだんと神楽の攻撃が当たらなくなって行く。

(まずいのぉー、釈迦の十八番は相手の攻撃を予見してのカウンター。時間がたてばたつほどこっちがフリになる…)

釈迦は攻撃を受けるたびに次は必ずかわし、それどろか神楽の技をコピーして返したりを繰り返して神楽を圧倒する。

【神楽よ、お前そんなに弱かった?】

そう告げた釈迦の直後に、神楽の腕が吹き飛ぶ。

「ほぉー15年もの間にようやるようになったもんじゃわい、それじゃわしも…少しばかり本気を出すとする可能」

そう告げる当時に、緑鬼となりその吹き飛ばされた腕を再生し。そのままの勢いで釈迦に襲いかかった。

それから数時間後、一人残された高天原の元に現れた使者が一人。

「高天原!助けに来たぞ。」
「天上!」

そこに現れたのは天上と…

「その人は…」
「このおっさんはマスタースパーク、お前の言ってた英雄様だよ。」
「えぇーーー!!!マスタースパーク様がなんでこんなところに…」
「いゃーね、平和でのどかな星見つけて余生を過ごしてたら。昔馴染みがドンパチやってるって言うからそれでね。ついてきちゃった!」
「へぇー」
(マスタースパークって意外と、おちゃらけた人なんだなぁー)

天上が高天原の繋がれた鎖をほどき、マスタースパークの種族仙人に伝わる神通力とやらで高天原は母船にいる皆と合流することにした。

「天上も早く!」

手をつないでいる対象を移動させるマスタースパークの神通力による瞬間移動を拒むとうに、頑なに手をつながない天上に高天原は手を差し伸べてそう叫ぶ。

「ダメだ、俺にはかたぁーつけなと行けない問題がまだある。ここに残るよ…」
「ダメそんなの絶対ダメ!私にはあんたが必要なの。あんたと一緒にこれからもずーとそばにいたいのぉ!」

高天原の思いのたけを聞いた上で、天上は…

「高天原、産まれた時母親の魂ってのを喰っちまったらしくてな。父親にも恨まれて、転校した先の惑星でも毎回上手くいってたわけじゃねー。だから、じっと心の底で思ってたんだ。「俺は産まれてきてよかったのかって」、でもな神居いそれを言ったら。「お前がいなきゃ僕や姉さんや高天原はここにいなかった…だからありがとう」って言われてよ。あんときは嬉しくて泣いたんだ、俺らしくねぇーだろ。つまり何が言いたいかって言うと…俺はお前に出会えて、宇宙一大好きなお前とあえてよかったと思ってるけど。”お前はどうだ?おれがいて良かったって思うか?”。」
「当然じゃん」
「そうか…ならよ、そんな大好きなお前を護らせてくれ。この俺に…それが終わったら必ずお前を迎えに行くからさ。」

天上がそう告げると、高天原マスタースパークから手を離し。天上に近寄ってキスをした…

「絶対、生きて帰ってこいよ…」
「あぁー絶対帰るさ。だから少しだけ待っていてくれ、次あったらそんときゃ俺から告白するからさ。」

二人は最後の約束と口づけを交わし、高天原はスパークと共に母船に戻った。

「高天原さん!」

母船に行くと、最初に出迎えてくれたのは神無。

「女神…天上は…」

そして奥の病室からマツバ杖を突いて出てきた神居の姿だった。

「さぁー決着だ。親父…」
【無論だ…】

釈迦は長年因縁の相手であった宇宙最強の鬼神ガクラとの戦闘から逃げかえり。瀕死の重傷を負った状態だっで帰ってきた…

「なぁー最後に聞いていいか?高天原が母さんに見えたってあれ嘘なんだろ。見た目はともかく別人なのは自覚したはずだ、本当は高天原をどうするつもりだったんだ?」
【無論、お前の腹の中にいる酒童の魂の器として利用するはずだったさ…】
「そうかい…でもわりぃーな…」

この日初めて、14年ぶりに親子は対面しお互いに臨戦態勢に入って拳を構える。

「”高天原は俺の女だ、絶対に手は出させねぇー”」

両者の墜落寸前の宇宙船の中で最後の戦いを始めた。

そしてその行方が知れぬまま月日がたち半年後、崩壊した万学園はすっかり元どうりになり学園にはいつも通りの平和が戻った。
神居の怪我は治り、神無も失恋を乗り越えダンス部で努力を続けている。当然、高天原ら演劇部もいつもどおりの平常運転と、何の異常も特別なこともない日々が流れていた。

しかし、高天原の心にはずっと消えることのない違和感が残り続けている。
そう、未だに天上は帰ってきていないのだ。

「はぁーなんか、憂鬱だなぁー」

そんな昼休みの放課後を図書室で突っ伏している高天原の形態から着信音が鳴り響く。

「ん?なにこんな昼過ぎからピーピーうっさいわねぇー。」

そう言って高天原がおもむろにスマホを見ると、そこには…

「天上・護…」

それはスマホのチャット通知に書かれた名前。

「拝啓、高天原様。元気か?俺は元気だぞ。学校すげー壊れてたけど治ったかうちの親父がごめんな。」

(なんか途方ももない文章の出だしだな)

「えぇーそれで俺はあの後、瀕死の親父を倒して宇宙警察に届けたぞ。やっぱ俺でも親父を完全に殺すことはできなくて、また別の星の別の学校に転校して楽しくやってるぜ。いやマジで、だからとにかく…心配すんなちゃんと元気にやってっから。それと…"いつかお前を迎えに行くから待っててくれな"」

その後もpsで続られた神居や神無を心配する言葉や思い出がつづられていた。

「待ってて上げるから、早くしなさいよ」

高天原は、天上の無事がわかったからか、それとも約束の件を忘れてなかったことにかもしくはその全てかその真意は分からないが涙を流しながら文章を読み終えた。

それして6年後の成人式の日…

(天上もう私成人しちゃうよ、いつになったら…駄目駄目あいつだって辛い中頑張ってるんだから。私も我慢しなきゃ…)

「天上さんってあんなに可愛いのにまだ処女らしいぞ。」
「えぇぇ!マジかよ。俺狙おうかなぁ」
「やめておきたまえ」

周囲の男子諸君の会話を聞いていた髪を男性のようにセットして青いスーツを着こんだホスト風の神居20歳が無名の男性同期を止める。それは自身の女神高天原の思いを知っているからこその行動であった。

「お久しぶりです女神」
「神居くん、中学以来だね。」
「高天原さーん」

遅れて高天原に抱き着く豪華なドレスに身を包む神無も合流を果たした。

「二人とも、なんだか懐かしいね。…ここにあいつもいたらなぁ…」

高天原の言葉に、その場の神居や神無もその思いに同感し三人は脳裏にたったたった一ヶ月の天上との出来事を思い返す。

「考えてみれば、天上様といた頃は本当に毎日休まることの知らない日でしたね。」
「まるで止まったら死ぬ回遊魚みたいな奴だったな。」
「なもそれ神居くん、ポエム…」

高天原からまさかからかわれるとは思わず、平常時より慌てる神居。それを見て笑う二人につられて神居も笑い、三人は一緒に笑い合った。

しかしその度に三人は思う、大人になるまでにもう少しでも天上と一緒に成長できたのなら。せめて同じ中学の3年間ぐらい一緒にいられたら…そんな途方もない過ぎた過程の思いをつのらせながら三人はそこでただひたすらに願った。

((今日この場所に天上・護が来ますように))

だが三人は知っている、高校の頃からずっと願い続けても一度も帰ってこなかった天上が今日に限ってそんな都合よく帰ってくるわけがないと大人らしく少し冷めた考を巡らし。

そして始まった成人式本番、やはりそこにも天上の姿はなく名簿にも載っていない。

(やっぱり帰ってこないんだ…「いつかお前を迎えに行く」あれは嘘なの?天上…)

そんな思いをはせていた三名の真後ろの門が大きくバタン!と音を立てて開かれる。

「遅れたぜ!」

三名が再び出会うっことはないだろう、そう思った矢先に門の奥に立つ能天気で生意気そうな面をした男が一人。

「天上・護!6年経過無事帰還。つか、あれだな成人式だと皆粧し込んでてわかんねぇーな。」

天上の久々の登場に八百万中の生徒達は全員例外なく天上の方を向いている。そして…

「天上!」

走りににくそうなハイヒールで席の間にある階段を駆け走り天上の待つそのテッペンまで登り切って抱き着いた。

「またせ過ぎなのよバカ」
「おう悪い、ちょと野暮用でな。でももう大丈夫、俺は正真正銘独り立ちしたからもう俺を縛るもんはねぇー。これからはお前とずっと一緒にいられる。”結婚しよう、高天原”」
「うん…」

二人はその場で愛を誓いあい、その後ほどなくして結婚した。

「なぁー親交旅行どこか行きたいとこあるか?」
「うーん…コロニーに行きたいかな?私まだ行ったことないし。
「そうか、よし!コロニーでっ決定。早速予約すんぞ、何日がいい?」

そして親交旅行当日の朝。

「おぉーい寝坊したあっぶねぇー」
「もう!誰さんが寝相悪すぎて目覚まし時計壊すからでしょ!」

ギリギリの時間に飛行機に乗り込む二人。

「ふぅーなんか飲む?」
「そうだな、それじゃホットの茶をくれ」

二人は宇宙船の中で優雅な時間を過ごし、そしてついに念願のコロニーへ到着。

「すごーいここがコロニー」

高天原が目を輝かせてみて見ているコロニーあらゆる文化、情報、技術が集まるこの宇宙一の大都会の夜景。

「おぉーい、高天原。観光は明日だかな…」
「うん、わかってる。」

ついて早々、二人はまず予約していたホテルへと向かった。

《エピローグ》出産

「はぁーやっとホテルについた。もう正直くたくただよぉー」
「あ”?そんな歩いたか?」
「宇宙船旅行での時差ぼけとか知らないの?”ただでさえ体力使う時期なのに…”」

天上はここまでくるまでも少し疑問があったそれは高天原が異常に疲れすぎだと言うことだ。
空港でも少しキャリーケースをずって歩いただけで…

「持ってー」

宇宙船の中に預ける荷物を、レールの上に置く時も…

「持っ…て…」

おまけに宇宙船を降りる時ですら…

「待って…ちょっと疲れちゃって」
「おっおう、大丈夫か。肩貸すぞ…」

なんあか不自然なほどに常にバテバテで結婚した当初なら持てていたものや、できていたことができなくなっている。
その姿を見て天上は、ある事態を想定する。そう高天原は1動けば100動いたような疲れが出てしまうこれは一種の…”病気”なのではないかと。

されに異変はそれだけではない、それは旅行に来てから初めての食事。

「おっ!お客様」

ここにくるまでは、「このスイーツ美味しそう」「でも私食べきれるかなぁー」と言っていたはずの高天原が今。
天上の目の前で、ステーキやチキンを大量に食い漁ってバイキングなのに食べ過ぎで注意を受けている。

「申し訳ありませんが…」
(怪しい…)

突然の味覚の変化…

「うぁ!」
「おい大丈夫か気負付けろよ。」
「うっうん、ごめんちょとふらついちゃって…」

それは何もない、ただのホテルの床で高天原はふらついてコケかけあのだ。

「はぁーはぁー…」
「おい、大丈夫か」
「ううん、なんか体が熱くて…頭も痛い…」

頭痛に高熱、ふらつきに異常な味覚の変化、体力の低下…それを踏まえて天上は高天原の症状。
これが何らかの病気であると断定づけた。

「やばい!お腹がぁぁぁ!!!」
「おっおい!しっかりしろ。今病院連れてってやるからな…」

天上はその時になって初めて気づくかが、確かにお腹の一部が不自然にでかい。
まるで栄養主張者のように…

(これはまずい、これはまずい、これはまずい。)

こんな旅行先の異国どころか異星で起きた、妻が原因不明の病魔に襲われ苦熱を出しながら倒れると言う大事件。
何よりその姿を…

(ダメだ、やっと手に入れた幸せなんだ。家族なんだ、もう奪わせねぇーって決めて強くなって”コズミック・ハンター”にもなったのに。こんなのあんまりだぁ!)

天上は心の中で叫ぶ、未だに呻き苦しみもがく後部座席の妻を見て。
強さを磨き、どんな脅威にでも対抗できるように仕上げてきた自身の全てが通用しない病魔と言う敵に…
天上は、かつての父異常の恐怖を抱いていた。

「うぁぁぁ!」

その瞬間、あまりに急ぎ過ぎて目の前のトラックに「あぶねぇーじゃねーか!」と怒られる天上。
しかしそれを聞いて冷静になった。

(そうだ何を焦ってんだ、病院に着く前におっちんだら元もこもねぇーじゃねぇーか。皆が祝ってくれて、みんなが繋げてくれた…神居や神無も言葉をくれたこの結婚。今の俺にはただ!こいつを医者の元まで安全に運ぶ以外にできねぇーだろうーがーぁぁぁ!!!)

天上は走った、その車で冬で凍り付いた地面を誰よりも安全にかつ迅速に滑走し。
ついに病院に着くと、事情を説明し救急搬送される高天原。

「おい!どうなんだ、俺の妻は!なぁー先生…」

先生のなんとも言えない不穏な表情に、天上は絶望し大の男が涙を流して…

「俺の妻!”天上・華奈”はどうなったって聞いてんだぜ。」

病院で刑して出しては行けないタイプの叫び声をあげてその場に崩れ落ちた。

「おぎゃぁーーー!!!」
「え…」

しかし、扉の向こうから聞こえてきた聞き覚えの無い声に天上は驚き顔を上げて先生の方を向くと先生は…

「ここ産婦人科じゃないので、正しい処置はできかねましたが…”元気な女の子ですよ”。」
「もしかして…俺の娘…」
「そうよ天上…いや、護。この子の名前つけてあげて…」

妻の症状は妊娠だったのだ。高天原こと、華奈は今までサプライズとして黙っていたようだが確かに特徴を当てはめていくとがてんが行く。

そして天上が娘につけた名前は…

「”天上・春”俺達が出会った、4月にちなんで…」

回遊魚は止まれない…完結