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 試合は三対〇で終わった。コートを後にして駐車場の片隅に集まった俺たちは、五列に並んで座った。俺たちの前には、コーチが後ろ手を組んで立っている。
「五月三日の、女子のAとの練習試合の詳細が決まった。当日は、二十分のゲームを六本行う。初めの三、四本はレギュラーで行って、それ以降、メンバーをどんどん変えていく。それと、六本のゲーム間のハーフ・タイムは、十分間取ってある」
 コーチは、書いた物をそのまま読み上げるような、感情の籠もらない口調だった。
 俺たちの横を、サンフレッチェのユニフォームを身に着けた集団が、わいわいと騒ぎながら通り過ぎていく。
「男子Bとの試合結果は、知ってるか。三対三の引き分け。だからCじゃあ勝ち目はない。負けてもいいから、全力で食らいついて一個でも多く学べ」
 コーチは、言葉を切った。俺たち、一人一人の表情をゆっくりと舐めるように見て目を細める。
「って、言うと思ったか? んな訳ないだろうが! 勝つぞ。君らは力を付けてる。絵空事では絶対にない」
 コーチの断定的な口調に、俺のテンションは上がり始めていた。
 コーチの発言は誇張じゃあない。沖星佐三国同盟の熱が感染したのか、最近のCの練習は、殺伐って感じに引き締まっていた。理想的で独創的な環境の下、俺たちは凄いスピードで成長している。ま、筆頭は俺なんだけどね。
「お前ら、考えてもみろよ。Bと渡り合った女子Aのフルボッコを手土産に、意気揚々と昇格。宮藤官九郎も真っ青の完璧なシナリオだろ?」
 大袈裟な言い方をしたコーチは、口の端を歪めて笑った。