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 ボールを取った後、すぐに俺はキック・オフをした。だが、サッカー歴が六年を超える沖原が、トラップ時にボールを後逸。相手チームのキック・インとなる。
 楓ちゃんが未奈ちゃんにパス。トラップした未奈ちゃんは、右足でボールを引いた。すぐに楓ちゃんに戻して、自らは前線へと移動。またしても二人の間でくるくるとパスが回り始める。
 沖原のチェックを受けた未奈ちゃんが、ボールを後ろに引く。沖原は深追いしない。
 その様子を見た未奈ちゃんはヒール・リフト。踵で蹴り上げたボールは沖原の頭上を通過する。
 楓ちゃんはいなすようにトラップ。自分をマークする佐々に背を向けたまま、踵でボールを捉えた。
 最終ラインにいた俺は、佐々の股を通ったボールに不意を突かれる。ボールは転々と無人のゴールに向かうが、コーンにぶつかって外に出た。俺たちのゴール・キック。
 俺は再びボールを取りに行き振り向いた。だが沖原と佐々は、コートの中にいたままでボールを受け取りに来ていなかった。
 憔悴、諦観、絶望。足を止めた二人の顔には、様々な負の感情が浮かんでいた。
 何だよ、その世界の終わりみてーな表情は。まったく意味がわからん。楽しくて楽しくて堪らんだろーよ。
「お前の出番だよ、沖原! 受け取れ!」
 高らかに叫んだ俺は、頬の緩みを感じながら沖原に向けてボール蹴る。
 手でボールを受け止めた沖原は、ゴール・ラインへと小走りで向かった。何かを覚悟したような顔付きで。
 俺は沖原を追い越しながら、「ヘイ、よこせ!」と叫んだ。
 沖原からパスが出る。身体を開きながらトラップした俺は、相手のゴールを視界に入れる。
 このボールを、相手のゴールに叩き込んでやる。相手に負けないくらい、鮮やかに。