気づけば冬が来ていた。積もらない程度の雪がちらつき始め、タイツとマフラーが手放せない。
カイロを握りしめながら並んで歩く街は、まもなくやってくるクリスマスを待ち焦がれるようにどこもかしこもきらきらと輝いている。

「寒いね」
「うん、耳が凍りそう」

諒太くんの耳はほんのりと赤く染まっている。はあ、とマフラーに半分埋もれた口元から吐き出された吐息が、灰色の冬の空へ浮かんでいく途中で白く染まる。

「そうだ、この間、晃太の家に行ってきたんだ。命日に合わせて。――ちょっと、晃太にも前向きな言葉をかけてあげられたと思う」
「そっか」
「本当はまだ悔しいし、申し訳ないけど。孤独に苦しんだあいつを差し置いて俺ばかり楽しく過ごしていていいのかって思う時もまだある。裏切り、ずるいことなんじゃないかなって」

橋の上から川面を見下ろして、彼がぽつりとこぼしたその言葉に、わたしの胸も苦しくなる。
諒太くんは、わたしにはわからないくらいの後悔と悲しみを背負っている。折に触れてその話を聞かせてもらうことがある――まるで懺悔するように。
それはきっと、諒太くんに一生絡みついて離れない、まるで呪いのようなもので。

「……今のこの時間を生きているのは、諒太くん自身だよ。晃太さんが生きていたとしたって、諒太くんは諒太くんの時間を生きていくんだよ」

わたしにできることは、思う限りを余すことなく言葉にすること。
嘘偽りのないわたし自身の心を注ぐこと。

諒太くんはわたしをじっと見つめて、それから泣きそうな顔でふにゃりと笑った。

「香帆ちゃんのその顔、本当に大好き」
「え? 顔?」
「うん、真剣すぎて、怒ってるのかなってくらい目が強く光ってるの。俺、その光が好きだよ」
「な……ほ、褒めてるってことでいいんだよね?」
「もちろん」

からかいも多分にあるだろう。でも、諒太くんの言う“好き”は、やっぱりすとんと胸に落ちていく。
疑いようのない、本物の気持ちなのだとわかる。

「ほら、行くよ。初めてのクリスマスなんだし、プレゼントは何にしようか悩むね」
「あ、待って! わたし、いろいろ候補を考えてきたんだから」

空の遠いところで、雲の切間に陽の光が見えた。




Fin.