雲一つない綺麗な快晴。
それをいいことにギラギラと照り刺す太陽。
年々、気温が上がる夏。
去年はもっと涼しかったのに、と思うことが毎年の恒例になってきつつある。
夕方になり、日が沈むころになっても、外に出るとむわっとした空気が全身を包み込む。
そんな張り付くようにまとわりつく気持ち悪い空気の中、お気に入りの場所へと自転車を飛ばす。
キィ、と音を立てて自転車を止め、いつもの定位置に腰を降ろす。
ここはちょうど岩陰になっていて、しゃがめば少し涼しくなる。
一息ついて海を見やる。
ここがお気に入りな理由は、海が一望できるからだ。
海はとても透き通っていて、この地域の観光名所としても有名で、青い海と聞いて日本人が最初に浮かぶのはここだろう。
十年前の大地震によって、沈降が起こって半分海に沈んだ神社もあり、この海と神社のためだけに、わざわざ日本を訪れる外国人もいるくらいだ。
潮風にあたり、夕焼けで赤く染まる海を眺める。
昼間の真っ青な海が一番好きだが、赤い海も日が沈んだ後の藍色の海もそれはそれで良い。
水平線の奥で太陽が沈むのをじっと見つめる。
すると、途端に過去の記憶がフラッシュバックして胃がキリキリと痛む。
過去のことなんて忘れてしまいたいのに、忘れてはいけない記憶で、そのことがぶつかり合ってお気に入りの場所でもふとした瞬間に思い出してしまう。
今日から夏休みが始まって、好きな時にこの場所に来れるようになったのに、この調子では一ヶ月と少し持つのだろうか。
息を一息つき、気持ちを吐き出す。

『嫌いだ』