「とうとう王様もポーラちゃんの力を知るところになったんだね。友人として私も誇らしいよ」
「ポーラさんほど素晴らしい力の持ち主は、王国広しと言えども二人といないでしょう」
『“聖女”としても認められるんだろ? 表彰式にはぜひ参加したいな』
「あたしは一目見て、ポーラが特別な人間だってわかったね。そしたらどうだい。予想を遥かに超えたじゃないか」

 私を褒めては納得した様子でうなずくエヴァちゃんたち四人。
 王様の病気を治してから三日後。
 みんなに王宮での出来事を話す日々を送っている。
 今もまた、花壇の水やりをしながらせがまれていた。

「もう何度も話したのに……。これでたしか七回目……」
「『あと一回で終わりにするからっ!』」

 みんな、あと一回と言いながら何度も頼むのであった。
 仕方がないので、また話すことにする。
 目を開けるとそこは王宮で……、と話し始めたとき、“久遠の樹”の方角からルイ様がやってこられた。
 エヴァちゃんとアレン君、私はお喋りを止めて姿勢を正したけど、ガルシオさんとマルグリットさんは楽しそうに話すばかりだ。

〔ガルシオ、マルグリット。ポーラたちの仕事の邪魔をしていないだろうな。喋って仕事を邪魔してばかりじゃダメだぞ〕
『こ、こらっ、邪魔者扱いするんじゃないっ』
「ガルシオはともかく、あたしがポーラたちに迷惑をかけるわけがないだろうっ」
『俺はともかく、ってどういう意味だっ』

 ガルシオさんとマルグリットさんは軽く言い合いを始めるも、これもいつもの光景であった。
 本当に怒っているわけじゃないとわかるので、むしろ微笑ましいくらいだ。
 そんな二人を横目に見ながら、ルイ様が大変興味深い魔法文字を書かれた。

〔今は流星群が見える時期だから、今夜あたりみんなで見ようと思うがどうだ?〕
『ああ、もうそんな時期か。時が過ぎるのは早いな』
「「辺境伯、ぜひ見たいです!」」
「良いアイデアだよ。今年は何を祈ろうかねぇ」

 ルイ様の言葉に、みんなは楽しそうに話す。
 オリオール家にいたときは流星群なんて見られなかったから、お話を聞いただけでワクワクしてしまった。

「ルイ様、流星群が見えるのですか?」
〔そういえば、君は“ロコルル”を訪れたのが初めてだったな。毎年この時期、“ロコルル”では流星群が見られるんだ。私も毎年楽しみにしている〕
『夜空が星でいっぱいになるくらい、流れ星が落ちるんだぞ』
「へぇ~……想像するだけで楽しみです。私、流星群なんて見たことがありませんから」

 頭の中で流れ星が降り注ぐ様子を思い浮かべる。
 夜空に延びる幾筋もの輝く白い線……。
 そんな光景を間近に見たら、目を奪われてしまうだろう。

〔ポーラは見たことがないのか。なら、なおさらみんなで見よう。あの丘の辺りがいいと思う〕

 ルイ様は西側の一角を指す。
 お庭の西側を進むと緩やかな丘があり、頂上付近には吹き抜けのおしゃれな東屋が建っていた。

『いいじゃないか。広々としているから、寝っ転がるとよく見れるよな』
〔しかし、今日は朝から曇りだな。夜晴れてくれるとありがたいのだが〕

 ルイ様は心配そうな表情を浮かべ、空を見上げる。
 最近はずっと晴れていたのに、ここ二日ほどは曇りや雨だった。
 夜まで曇りだと、せっかく流星群が流れても見えないだろう。
 ルイ様のためにも晴れてほしい……。
 そう思うと、やはりあれの出番がありそうだった。

「もしなんでしたら、私の【言霊】スキルで雲をどけましょうか? 天気に対して使うのは初めてですが、やってみる価値はあると思います」

 今まで、晴れにしてほしいとか、雨にしてほしいと言った依頼は受けたことがなかった。
 でも、やってみないと分からない。
 どんなに分厚い雲でも晴れにしてしまう気概だった。

〔ありがとう。しかし、大丈夫だ。私が魔法で雲を流せばいい。君は最近ずっと頑張ってくれていたからな。少し休みなさい〕
「そうでございますか。私は全然平気ですが」
〔いや、私がやりたいんだ〕

 私は一人で気合を入れていたけど、ルイ様が魔法を使ってくれることで話はまとまった。
 夜が楽しみだなぁ。