私の夢は
「アイドルになること」


小さい頃から、
大きくなったら何になりたい? 将来の夢は?
そんな質問に答える場面にたくさん遭遇してきた。
その度に、花屋、美容師、調理師、とまぁまぁありがちなものを答えてきた。
私はお母さんが調理師で、おばあちゃんが美容師だ。そして小さい頃からたくさんの花や植物に囲まれて生きてきた。それに影響されて、その3つの職業を答えることが多かったと思う。
中学校を卒業するまではほんとにその中のどれかになれたら良いと思っていたし、なりたいと思っていた。
そのために自分で色々調べたり、お母さんやおばあちゃんから話を聞いたりもした。
高校もその道が叶えられそうな学校を選んだ。

だけど、高校に入学して一気に思いが変わった。
自分でもこれといったはっきりしたきっかけはよくわかっていない。でも、なんでか、「アイドルになりたい」と思うようになった。

今まで誰にも一言も言ったことがない思いだ。
これまでの選択を否定せず応援してくれたお母さんにも、何でも言ってきた友達にも、全く話したことがない。
否定されるとか、バカにされるとか、そんなことは思わない。そんな人たちじゃないから。でもきっと自分自身が、なれるわけないと心のどこかで自分をバカにしているんだ。


高校で新しくできた友達の
「うち、アイドルになるのが夢なんよ!」
そう言った希望に溢れた顔が忘れられなくなっていた。


私にはアイドルの推しがいる。
バラエティーに出てみんなを笑顔にしてるところも、映画やドラマで役を演じているところも、ステージに立って何万人ものファンから歓声を浴びているところも、そのすべてがキラキラしていて目を奪われる。
SNSを開けばトレンドにあがっていて、誕生日にはたくさんのお祝いが溢れている。
『笑顔になれます!』
『幸せをありがとう』
『出会って人生変わりました!!』
そんな言葉を見る度に、ほんとにすごいな、私もそんな人になりたいなと思うようになっていた。

今までは、ただ好きで応援したくて、幸せでいてほしい笑顔でいてほしい、そんな思いで見ていたのに、今ではその姿が憧れで、羨ましいと思うようになっていた。
何万人、何十万人のファンの子がいて、
【 バラエティー番組、ドラマ、映画、ライブ 】と、
色々な仕事ができて、私たちが見れない裏側がある。そんな仕事がとてつもなく輝いて見えた。

現代ではSNSが発展していて昔よりも、有名人というものが身近になってきたような気がする。
YouTuberが職業として成り立っていたり、同世代の子がインフルエンサーとしてバズっていたり、そんな世界が当たり前になっている。

その中でも、私は「アイドル」になりたいと思った。
歌もダンスもちゃんと習ったことがないけど、ボイトレに通いたいと思うし、ダンスを習いたいと思う。
田舎で育ってきて、スカウトや事務所とは無縁の生活を送ってきたけど、上京してその夢に近づきたいと思う。
最終的にはステージに立って何万人ものファンの子にペンライトを振って欲しいと思う。
SNSを見ればトレンドに自分の名前があって、誕生日には色んな人からお祝いがもらえて、事務所にはファンレターがたくさん届くような、そんな日常を夢見ている。

ただ思っているだけでは叶わないことくらい分かってる。本当になりたいなら1歩踏み出さないといけない。でも、私はまだ何もできていない。

やりたいことを聞かれたら、心の中には少しの迷いもなく「アイドル」が出てくる。
この先、その夢が叶うときが来るかわからないし、叶えられる気は正直してない。
だけど、今まで生きてきて、やりたいと思ったことは全部自分の意思でやってきたし、その思いを応援してくれる周りの人にも恵まれてきた。

きっと「夢」が叶ったときには、苦労や苦痛が良い思いで話になるだろう。
ドキュメンタリー番組では撮れ高になるだろう。

今だけは自分を過信してみようか。

私は、ステージの上からペンライトの海を見れるように少しづつでも進んでいく。
そしていつか、その「夢」が「現実」になったときは、この小説の続きを描きたいと思う。