つばさは沢山名前を呼んでくれた。「はるちゃん」「はーちゃん」「はる」その日によって呼び方は違ったけれど、私は彼しか呼ばないあだ名がとても大好きだった。
けれども彼は人前では絶対に呼ばなかった。手も繋がないし、そもそも一緒に過ごすことが少なかった。寂しいと思うこともあったけれど、でも当時の私は彼は恥ずかしがり屋で不器用なんだとそれさえも愛おしく感じていた。
でも段々と扱いがおかしくなった。名前を呼ぶ時も「ねぇ」「お前さ」。学校で少し近づいた時は口頭ではなく
LINEで「近いからやめて」とただただ避けられた。変わらず2人きりの時は少しわがままで甘えていた。だから気づけなかった。彼の中の"モラハラ"を。
友人たちはみな口を揃えて「別れた方がはるかのためだよ」と言った。それでも私は彼から離れられなかった。彼が私にしかしない特別を知っていたし、ごめんねをすぐに言える人だったから。
でも違った。全部全部。
私の心は日に日にボロボロになっていった。毎日のように「ブス」「デブ」「痩せろ」「うざい」と罵倒され続け、人前で私の存在を隠されたり、知らないところでも私の悪口ばかり。1年近く付き合ってもキスのひとつもなかった。私の存在ってなんだろう、生きてる意味はなんなんだろう。そればかりが頭の中をまわり、私はとうとう鬱になってしまった。それでも彼は手を差し伸べてくれなかった。