神無月(かんなづき)

「おばあちゃん、いる？」
家の外から話しかけてみるが返事はない。
チャイムを鳴らしてみると、ガラガラと音を立て扉が開くと
エプロン姿のおばあちゃんが玄関に出てきた。

「皐月、ごめんね。食事のお支度していてね。どうぞどうぞ入って。」

「お邪魔します。」と言い家の中へ入っていく。
居間に向かう途中に、おばあちゃんに饅頭と大福を渡す。

「おばあちゃん。これ、井馬ばぁさんの所で買ってきたのよかったらどうぞ。」

井馬菓子店と書かれた、紙袋を持ち中を見るおばちゃん。
「まぁ！皐月が買ってきてくれたのね。ありがとぅ。」
「さっ！食べましょう。」

と言い台所に向かうおばあちゃんを呼び止める。

「まって！おばちゃん。」

「どうしたの？皐月。」

「おじいちゃんがね、鍵くれたんだ。おばあちゃん家(ここ)の鍵。」

「そうなのね。いつでもいらっしゃい。靴があれば皐月いるってわかるからいつでもおいで！」

「おばあちゃん、あのね、あのね、」

「どうしたんだい、皐月。」

どうしたんだい？と話しかけてくれるおばあちゃんを見ているとどうしても【イグジスト刑務所】でのことを思い出してしまい涙が滲む。
「ゔぁ、わだしおじいちゃん、まもれながっだ。おじいじゃん、の、ごと、守れなかった。」

「皐月、、、」
「皐月は悪ない！皐月は悪ないんや！だから、元気をだしておくれ。きっとその方がじいちゃんも安心する。」

「ゔん！」
ニコッとおばあちゃんを心配させないように、私は笑った。