僕の部屋に着いた。帰るのに時間がかかった。もう10時をかなり過ぎている。ここがどこよりも一番落ち着くのが二人には分かっている。
沙知はこの時を待っていたように抱きついてくる。途中、電車の席に二人並んで座れると僕の肩で眠っていたので休養十分だ。二人はベッドに倒れ込んで愛し合う。
始めのころとは違って、二人とも愛し合うことに慣れてきていた。このごろ始めは沙知が積極的で未だ試したことのない体位を求めてくる。きっと貸してあげたDVDを見て予習してきている。沙知は何回も昇り詰める。
愛し合うことに疲れ果ててひと眠りすると、今度はすごく恥ずかしがって布団の中にもぐり込んでいる。そのギャップが愛おしい。布団の中で沙知が話し始めた。
「私はいつだって今が一番良い時で幸せだと思うことにしています。今日は特にそう思います」
「昨日はどうだったの?」
「昨日は今日のことを期待してとても幸せな気持ちでいられました。毎日そう思うようにしていると毎日幸せな気持ちでいられます」
「僕もいつのころからか、そんなふうに思うようになった。毎日仕事に追われていると、学生時代は良かったなと思う。時間もあって何でもできた。でもあのころは、学生だと言う閉塞感と将来の不安もあって、いつも悶々としていたように思う。早く就職したいとも思っていた」
「就職したてのころは、将来に希望を持って仕事もできた。脇目もふらずに研究していた時のことが懐かしくなる。でも、あのころは思いどおりにいかなくて日々悶々とした生活を送っていたように思う」
「毎日良いことも悪いこともあるけど、それでもいつも今が一番良い時なのではないかと思うになった。そうなら、この今の時間を大切にしなければならないとも思うようにもなった。一日一日を大切に過ごそうと思うようになった」
「私と同じように考えているのが分かりました。だから気が合うようのかもしれませんね。その理由が分かりました」
「じゃあ、今を大切にするために私をもっと可愛がってください」
「ああ、気が遠くなるまで可愛がってあげる」
沙知が抱きついてくる。二人が婚約したこの夜はまだまだ続いた。
◆ ◆ ◆
次の日の朝、沙知は僕に抱きついて眠っている。僕が動くと目を覚ました。
「おはようございます。抱きしめて寝てくれてありがとう。ぐっすり眠れました」
「僕も沙知を抱いて寝ると良く眠れる」
「毎日、こうして目覚めたい」
「じゃあ、思い切って一緒に住まないか」
「ここに私が? 一緒に住む? いいんですか?」
「1LDKだけど二人住めないことはない。こうして沙知と一緒にいると本当に心が休まるというか、癒されるから。僕はほかの人には頼らないで何でも一人でやる覚悟はできている。沙知に何かしてもらいたいから一緒に住もうと言っているんではないんだ。一人ではやはり寂しいんだ。自分のことは自分でするから、一緒に住んでくれないか。もちろん沙知のめんどうもみるから、考えてみてくれないか」
「私も一人暮らしは寂しいので一緒に住んでみたいです」
「できれば結婚式をあげて入籍して一緒に住むのがいいと思うけど、準備に時間がかかりそうだから、入籍しないで一緒に住んでくれというのはとても心苦しい。でも沙知と一緒に住みたい思いは強い」
「大好きだから、今を大切にしたいから、それでいいです。先のことは先のことですから、後悔しないように今を生きるだけです」
「そういってくれて嬉しい」
「さっそく、引越しの準備をします。いいですか」
「僕も手伝うから」
◆ ◆ ◆
それから、二週間経った土曜日に沙知が引越しをしてきた。そして3か月後に僕たちは結婚式を上げた。すぐに恩師の百瀬先生に二人で結婚の報告をした。
「二人が結婚して本当によかった。上野さんは苦労しているが良い娘なので、実はこうなることを期待して、吉岡君の会社を勧めたんだ」
「良かったら嫁にもらってやってくれは冗談と思っていましたが、先生の思いどおりになったということですね」
「上野さんにはそういうことは一切言わなかったけど、僕は吉岡君の優しい性格をよく知っていたから、すぐに挨拶に行って何でも相談にのってもらうように言っておいた」
「先生のご配慮で、良い人と一緒になれて幸せです。ありがとうございました」
「本当によかったね。二人末永く仲良く暮らしてください」
僕たちは本当に仲良く暮らしている。ただ、週末には沙知の選んだDVDを見せられて、このとおりにしてほしいとねだられている。可愛い沙知のためと努めているが、ぐったりするほど僕が疲れ果てる。あのとき全部20枚も貸すんじゃなかった。後悔先にたたず!
これで僕と沙知の「恋愛ごっこ」のお話はおしまいです。めでたし、めでたし。
沙知はこの時を待っていたように抱きついてくる。途中、電車の席に二人並んで座れると僕の肩で眠っていたので休養十分だ。二人はベッドに倒れ込んで愛し合う。
始めのころとは違って、二人とも愛し合うことに慣れてきていた。このごろ始めは沙知が積極的で未だ試したことのない体位を求めてくる。きっと貸してあげたDVDを見て予習してきている。沙知は何回も昇り詰める。
愛し合うことに疲れ果ててひと眠りすると、今度はすごく恥ずかしがって布団の中にもぐり込んでいる。そのギャップが愛おしい。布団の中で沙知が話し始めた。
「私はいつだって今が一番良い時で幸せだと思うことにしています。今日は特にそう思います」
「昨日はどうだったの?」
「昨日は今日のことを期待してとても幸せな気持ちでいられました。毎日そう思うようにしていると毎日幸せな気持ちでいられます」
「僕もいつのころからか、そんなふうに思うようになった。毎日仕事に追われていると、学生時代は良かったなと思う。時間もあって何でもできた。でもあのころは、学生だと言う閉塞感と将来の不安もあって、いつも悶々としていたように思う。早く就職したいとも思っていた」
「就職したてのころは、将来に希望を持って仕事もできた。脇目もふらずに研究していた時のことが懐かしくなる。でも、あのころは思いどおりにいかなくて日々悶々とした生活を送っていたように思う」
「毎日良いことも悪いこともあるけど、それでもいつも今が一番良い時なのではないかと思うになった。そうなら、この今の時間を大切にしなければならないとも思うようにもなった。一日一日を大切に過ごそうと思うようになった」
「私と同じように考えているのが分かりました。だから気が合うようのかもしれませんね。その理由が分かりました」
「じゃあ、今を大切にするために私をもっと可愛がってください」
「ああ、気が遠くなるまで可愛がってあげる」
沙知が抱きついてくる。二人が婚約したこの夜はまだまだ続いた。
◆ ◆ ◆
次の日の朝、沙知は僕に抱きついて眠っている。僕が動くと目を覚ました。
「おはようございます。抱きしめて寝てくれてありがとう。ぐっすり眠れました」
「僕も沙知を抱いて寝ると良く眠れる」
「毎日、こうして目覚めたい」
「じゃあ、思い切って一緒に住まないか」
「ここに私が? 一緒に住む? いいんですか?」
「1LDKだけど二人住めないことはない。こうして沙知と一緒にいると本当に心が休まるというか、癒されるから。僕はほかの人には頼らないで何でも一人でやる覚悟はできている。沙知に何かしてもらいたいから一緒に住もうと言っているんではないんだ。一人ではやはり寂しいんだ。自分のことは自分でするから、一緒に住んでくれないか。もちろん沙知のめんどうもみるから、考えてみてくれないか」
「私も一人暮らしは寂しいので一緒に住んでみたいです」
「できれば結婚式をあげて入籍して一緒に住むのがいいと思うけど、準備に時間がかかりそうだから、入籍しないで一緒に住んでくれというのはとても心苦しい。でも沙知と一緒に住みたい思いは強い」
「大好きだから、今を大切にしたいから、それでいいです。先のことは先のことですから、後悔しないように今を生きるだけです」
「そういってくれて嬉しい」
「さっそく、引越しの準備をします。いいですか」
「僕も手伝うから」
◆ ◆ ◆
それから、二週間経った土曜日に沙知が引越しをしてきた。そして3か月後に僕たちは結婚式を上げた。すぐに恩師の百瀬先生に二人で結婚の報告をした。
「二人が結婚して本当によかった。上野さんは苦労しているが良い娘なので、実はこうなることを期待して、吉岡君の会社を勧めたんだ」
「良かったら嫁にもらってやってくれは冗談と思っていましたが、先生の思いどおりになったということですね」
「上野さんにはそういうことは一切言わなかったけど、僕は吉岡君の優しい性格をよく知っていたから、すぐに挨拶に行って何でも相談にのってもらうように言っておいた」
「先生のご配慮で、良い人と一緒になれて幸せです。ありがとうございました」
「本当によかったね。二人末永く仲良く暮らしてください」
僕たちは本当に仲良く暮らしている。ただ、週末には沙知の選んだDVDを見せられて、このとおりにしてほしいとねだられている。可愛い沙知のためと努めているが、ぐったりするほど僕が疲れ果てる。あのとき全部20枚も貸すんじゃなかった。後悔先にたたず!
これで僕と沙知の「恋愛ごっこ」のお話はおしまいです。めでたし、めでたし。