「結局、もとを辿れば入学式の日になるんだよな?」

「だね」

「うん」

冬杞(ふゆき)くんって、みんなになんて言われてるか、知ってる?」

「知ってるよ。『一匹狼』だろ?」

「あ、知ってたんだ。なんで?」

「直接言われたことはないよ。でも、話してるのが聞こえたことはある。俺、耳は鍛えられてるから」

「はははっ。そういえば、そうだね」

「だろ?」

「私も同じようなことは感じてたかもしれない。例えば、1人の方が好きなのかなとか、人が嫌いなのかなとか、無口なのかなとか、なんていうか、クールな方にイメージが引っ張られてたかな」

「まあ、全然違うっていう程でもないけどな。みんなでワイワイするよりは1人でいる方がいいし、騒がしいよりは静かな方がいい。自分でも、そういう風に周りから見られてるのは分かってる」

「でも、1個だけ違うな、って思ったこともあるよ」

「何?」

「意外とお喋り好きなんだな、っていうこと」

「ああ……、そう、かな?」

「うん、そうだった」

「柄にもなく、っていうのは、分かってたよ。柄にもなく、っていうか、イメージと違うことしてるな、って。でも、そんなこと忘れるぐらい、あの時は必死だったし、それ以降はもういいかな、って」

「これをきっかけに、クラスのみんなともいっぱい喋ろうとは――」

「思わない」

「ははっ。即答」

「俺にとって、みんなの前でいる俺も俺だし、菜月羽(なつは)の前にいる俺も俺だから。別に変えようとは思わなかった」

「そっか。でもさ、教室で私に見られるの、気まずくなかたった?」

「……まあ、多少は」

「だよね。私、自然と冬杞くんの姿を目で追ってることがあって。あんまり見ないであげればよかったね」

「菜月羽には既にいろいろ知られてるし、そんなに気にしてないよ」

「そっか、ならいいけど」

「でも、菜月羽に会えてなかったら、俺は本当に『一匹狼』のままで学生生活が終わってたかもしれない。そういう意味では、菜月羽の存在全部が、俺の生活に『色』をつけてくれたのかもな」

「本当?お役に立てて何よりでございます」

「何だよ、その言い方」



~♪
ふと目が合った あの瞬間 きっと出会いは始まっていた
君の歌が 幸せを運ぶ
柄にもなく 想いを伝えた
君の笑顔 君の歌声 僕の心に色がついた

☆☆☆