「本当は同じ教室で聴いてたかったんだけどな。特に交流のない俺が、急に教室に来ても、逆に菜月羽は歌わなくなるだろ?」
「そうだね。多分、冬杞くんに限らず、誰か来てたら、歌うことはやめてたね」
「近くに行きたいと思うけど、近くに行けば歌はなくなる。だから、あんなところから……」
「そうなんだよね。私、全然気付いてなかった」
「ある意味、ストーカーだよ」
「ははは、ストーカーじゃないよ」
「でも、気持ち悪くない?」
「んー、確かに」
「だろ?」
「でも、ストーカーだと嫌だから――、ファンとか」
「ファン?まあ、ストーカーよりはマシかもな」
「でしょ?」
「でも、あの日言った、『新井さんの歌を聴かせて』は、別に狙ってた訳じゃねえよ。そんなこと、考えてる余裕なかったし」
「私もあの瞬間には、『あ!歌詞と一緒だ!』とは思わなかった。気付いたのは、ちょっと経ってからかな。あの時は、他の気持ちも強かったから」
「だろうな。俺もめっちゃ必死だったから」
「あ!」
「何?」
「やっぱりストーカーの方が合ってるな、って思って」
「……また、ストーカーに降格?」
「うん」
「まあ、別に誤解されてもいいや、ってあとから思ったよ。強ち、間違ってなかったな、って思うし」
「そっか」
「なんか、こういうの、昔の人も言ってなかったっけ?」
「昔の人?」
「ほら、あの、月がどうとかって……」
「あー、『I love you』を『月がきれいですね』って訳したやつだ」
「それ」
「確かに似てるかも。じゃあ、冬杞くんは、文学的なストーカーだね」
「はは、何だよ、それ」
☆
~♪
傍にいたい でも素直に言えない
行方不明な 僕の心
好きの言葉の代わりに そうだ
「君の歌を聴かせて」
☆☆☆
「そうだね。多分、冬杞くんに限らず、誰か来てたら、歌うことはやめてたね」
「近くに行きたいと思うけど、近くに行けば歌はなくなる。だから、あんなところから……」
「そうなんだよね。私、全然気付いてなかった」
「ある意味、ストーカーだよ」
「ははは、ストーカーじゃないよ」
「でも、気持ち悪くない?」
「んー、確かに」
「だろ?」
「でも、ストーカーだと嫌だから――、ファンとか」
「ファン?まあ、ストーカーよりはマシかもな」
「でしょ?」
「でも、あの日言った、『新井さんの歌を聴かせて』は、別に狙ってた訳じゃねえよ。そんなこと、考えてる余裕なかったし」
「私もあの瞬間には、『あ!歌詞と一緒だ!』とは思わなかった。気付いたのは、ちょっと経ってからかな。あの時は、他の気持ちも強かったから」
「だろうな。俺もめっちゃ必死だったから」
「あ!」
「何?」
「やっぱりストーカーの方が合ってるな、って思って」
「……また、ストーカーに降格?」
「うん」
「まあ、別に誤解されてもいいや、ってあとから思ったよ。強ち、間違ってなかったな、って思うし」
「そっか」
「なんか、こういうの、昔の人も言ってなかったっけ?」
「昔の人?」
「ほら、あの、月がどうとかって……」
「あー、『I love you』を『月がきれいですね』って訳したやつだ」
「それ」
「確かに似てるかも。じゃあ、冬杞くんは、文学的なストーカーだね」
「はは、何だよ、それ」
☆
~♪
傍にいたい でも素直に言えない
行方不明な 僕の心
好きの言葉の代わりに そうだ
「君の歌を聴かせて」
☆☆☆