「これ、分かる」

「ん?」

「俺も見たことある」

「あ、もしかして、私のこと?」

「……うん」

「そんな恥ずかしそうに言わないでよ。私も恥ずかしくなるよ」

「ごめん」

「いやいや、謝ることじゃないから」

「……でも、あれは本当にヤバかった。初めて見た時も、菜月羽(なつは)が振り向いた時も、このままずっと見てたい、って思った」

「動けなかった?」

「うん」

「言葉が出なかった?」

「うん」

「心を奪われた?」

「うん」

「ふふ、本当に?」

「本当」

「やった」

「ちょうど、窓の向こうを見てて、その窓が写真のフレームみたいに菜月羽と周りの景色を切り取ってたんだよ」

「私はね、この写真のイメージは、夕方だったの。『君』は開けた一本道を歩いていて、その向こうには大きな夕日があって、その光景全体が1枚の写真」

「じゃあ、現実とは全然違ったな。俺が見たのは朝だったし、場所も教室。『君』の向こうには見慣れきった街並みがあって、もっと向こうには青空があって。でも、その青空は雲ひとつなくて、すごく綺麗だった。だから、あれはあれで、やっぱり記憶に残るよ」

「雲ひとつない青空か……。それもいいなあ」

「もちろん、『君』が誰かにもよると思うけど」

「確かにそうかも。『君』が特別な人じゃなかったら、青空も見落としちゃいそう」

「そうだな」

「私も見てみたいな。シャッターをきりたくなるような、『君』の姿」

「見れるよ、いつか」

「……うん」



~♪
君の後ろ姿は まるで1枚の写真
瞼を閉じて 僕は シャッターをきった
動けない 言葉が出ない 心を奪われた

☆☆☆