菜月羽(なつは)は昔からよく泣くの?」

「よく泣くって、なんか私、小さい子どもみたい」

「違うの?」

「あ、ひどい」

「はは、悪い」

「でも、あんまり否定できない」

「弟が言ってたよ、姉ちゃんは涙脆い、って」

「本当?恥ずかしいなあ」

「恥ずかしい?本当に思ってる?」

「思ってるよ。弟の前ではよく泣いちゃうんだよね。申し訳ない、って思うんだけど、やっぱり顔を見ると、バーッと涙が出てきて」

「俺の前でも結構泣いてたよな?」

「だって――、なんか刻一刻と終わりっていうか、別れが近付いてきてるのに、冬杞(ふゆき)くんがびっくりするぐらい優しいんだもん。それは泣いちゃうでしょ?」

「え?もしかして、俺のせいにしようとしてる?」

「そうだね。80パーセントぐらい、冬杞くんが悪いかな」

「は?」

「ははは、冗談だよ、冗談」

「でも、まあ、結局俺たちのスタートは入学式の日だったんだな」

「そういうことになるね」

「でも、さ……」

「うん、そうなんだよね……」

「だよな……」

「一目惚れ、とかじゃないんだよね……」

「うん、分かる」

「うーん、でも、あの日のあの一瞬がなかったら、冬杞くんに興味を持たなかったし、癖も見つけられなかったし、恋人(仮)(かっこかり)になることもなかったし――」

「もういいよ、分かってるから」

「……でも、その分、泣く機会も増えた。誰も見てないところでも、よく泣いてた。本当に、よく……」



~♪
ふと目が合った あの瞬間 きっと運命は始まっていた
君の横で 幸せを想う
とりとめなく 想いが溢れる
君の隣 君の温もり 私の涙が空に溶けた

☆☆☆