「菜月羽はさ、」
「ん?」
「横にいたい、みたいなこと何回か言ってるよな?」
「言ってるね」
「あれ、わざと?」
「ふふ、気になる?」
「気になる」
「基本的には分かって言ってる。でも、あの時――、(仮)のはじまりの時は、冬杞くん、気付いてないでしょ?」
「ああ。必死だったし、あの歌のこと、意識してなかったから」
「でも、あの時は私も必死だったんだよ?」
「マジ?」
「入学式があって、冬杞くんの癖を見つけて、それがなんて言うか――、限界だと思ってた。でも、あの日、あの教室で、あの姿を見られて――」
「……ごめん」
「ははは、謝らなくていいよ。なんかね、あの瞬間、『歌を聴かれたこと』よりも、『あの時間に、あの場所で、あの姿を見られたこと』の方が衝撃で。だって、何日も何ヵ月も誰にもばれないでやってきた――、あっ、私自身が気付いてないのは別として――、ルーティンをよりにもよって冬杞くんに見られて。もう、感情めちゃくちゃだよ」
「そんなにパニックになってたんだ、あの時」
「うん。『ああ、これが冬杞くんとの最後の思い出かあ』とか、あとからいろいろ考えて。そしたら、急にチャンスが、ね」
「必死な俺が来たんだ?」
「うん。でも、私も必死。無難な毎日でいい、って思ってたのに、あの頃は欲が丸出しだった。とにかく、冬杞くんと仲良くなりたい、このチャンスを逃しちゃだめだ、って」
「で、その時の口説き文句が『今原くんの横にいたい』?」
「私の中では、『今原くんじゃないとだめ』っていうのも、同じぐらい気持ちがこもってたけどね」
「そっか」
「だって、冬杞くんが『歌を聴かせてほしい』なんて言うから」
「はは、確かに。じゃあ、花火の時の『このまま、いい?』っていうのは?」
「あれはね――、ご想像にお任せします」
「何それ。じゃあ、俺の好きなように解釈しとく」
「うん」
☆
~♪
傍にいたい でも素直になれない
行くあてのない 私の涙
好きの言葉の代わりに そうだ
「君の横にいさせて」
☆☆☆
「ん?」
「横にいたい、みたいなこと何回か言ってるよな?」
「言ってるね」
「あれ、わざと?」
「ふふ、気になる?」
「気になる」
「基本的には分かって言ってる。でも、あの時――、(仮)のはじまりの時は、冬杞くん、気付いてないでしょ?」
「ああ。必死だったし、あの歌のこと、意識してなかったから」
「でも、あの時は私も必死だったんだよ?」
「マジ?」
「入学式があって、冬杞くんの癖を見つけて、それがなんて言うか――、限界だと思ってた。でも、あの日、あの教室で、あの姿を見られて――」
「……ごめん」
「ははは、謝らなくていいよ。なんかね、あの瞬間、『歌を聴かれたこと』よりも、『あの時間に、あの場所で、あの姿を見られたこと』の方が衝撃で。だって、何日も何ヵ月も誰にもばれないでやってきた――、あっ、私自身が気付いてないのは別として――、ルーティンをよりにもよって冬杞くんに見られて。もう、感情めちゃくちゃだよ」
「そんなにパニックになってたんだ、あの時」
「うん。『ああ、これが冬杞くんとの最後の思い出かあ』とか、あとからいろいろ考えて。そしたら、急にチャンスが、ね」
「必死な俺が来たんだ?」
「うん。でも、私も必死。無難な毎日でいい、って思ってたのに、あの頃は欲が丸出しだった。とにかく、冬杞くんと仲良くなりたい、このチャンスを逃しちゃだめだ、って」
「で、その時の口説き文句が『今原くんの横にいたい』?」
「私の中では、『今原くんじゃないとだめ』っていうのも、同じぐらい気持ちがこもってたけどね」
「そっか」
「だって、冬杞くんが『歌を聴かせてほしい』なんて言うから」
「はは、確かに。じゃあ、花火の時の『このまま、いい?』っていうのは?」
「あれはね――、ご想像にお任せします」
「何それ。じゃあ、俺の好きなように解釈しとく」
「うん」
☆
~♪
傍にいたい でも素直になれない
行くあてのない 私の涙
好きの言葉の代わりに そうだ
「君の横にいさせて」
☆☆☆