「儚い笑顔……」

「儚いってそもそもどんな感じ?」

「んー、ちょっと待って。調べてみるから――、えっと、『束の間』、『あっけないさま』、『むなしく消えていくさま』、だって」

「なるほど」

「うん」

「でもさ、そもそも笑顔って、永久に続くものじゃないでしよ?ずっとにこにこしてる人はいるけど、それも永遠じゃない。疲れちゃうしね」

「まあな」

「てことは、だいたいの笑顔は儚い、ってことになるよ」

「ははっ、確かに」

「でしょ?」

「でもさ、『1片の花びら』ってあるだろ?」

「うん」

「花びらって、咲いたと思ったらすぐに落ちるだろ?」

「うん」

「それを見てる時って、なんかちょっと空しい気持ちになることない?」

「……ある時も、ある」

「その感じなんじゃねえかな?」

「その感じ?」

「うん。すぐに散っちゃう花びらを見て、ちょっと空しく思うみたいに、見ててちょっと空しくなる笑顔」

「……なるほど」

「イメージ湧いた?」

「湧いた。私の場合、花火の日の冬杞(ふゆき)くんの笑顔かなあ」

「あの日?」

「あの日は、あの時間がずっと続けばいい、って思うぐらい、本当に幸せだった。だから、逆に空しかった、冬杞くんの笑顔が。だって、この時間が過ぎたら――、ね。空しいし、辛いし、悲しいし、でも幸せだし――、もうぐちゃぐちゃだよ」

「俺も同じかも。あの時間がずっと続いてほしい、ってマジで思ってた」

「でも、続かないって分かってる。花火も、(仮)(かっこかり)の期間も、それ以外のことも全部……。分かってても、一緒にいたいって、最後の最後まで粘った」

「それも花火の日のこと?」

「そう!しつこかったでしょ?」

「はははっ、そんなこと思わねえよ」

「本当に?」

「うん、嬉しかった」

「なら、よかった」



~♪
君の儚い笑顔は まるで1片の花びら
右手を伸ばし 私 揺らめきを抱いた
守りたい 一緒にいたい 涙が流れてく

☆☆☆