「私たちが恋人(仮)(かっこかり)として付き合うようになった日、」

「ん?」

「あの時の冬杞(ふゆき)くんの目だね、これ」

「そんなに大層なものじゃねえ気がするけど」

「いやいやいや。だって、『一匹狼』だよ。クラスのみんなから『一匹狼』って言われてる人から、あんなに必死でお願いされたんだよ。さっき冬杞くんも言ってたけど、冬杞くんは、そういう自分のキャラみたいなのを自覚してただろうから、余計に葛藤があったんだと思う」

「葛藤?」

「大袈裟に言えば、『一匹狼の俺が、歌を聴かせてほしいなんて言う訳ない』みたいな。そういう迷いが瞳にも表れてたんだよ、きっと」

「そう、なのかな」

「うん。そうなんだよ」

「すげー自信」

「冬杞くんのことはよく分かる」

「頼もしいな」

「で、そういう瞳で見つめられると、人って放っとけなくなるんだよ」

「そういうもの?」

「例えばさ、赤ちゃんとかの綺麗な目とか、子犬のウルウルした目とか、あれと同じ威力があるんだよ」

「その目に見つめられたらNOって言えない、みたいな?」

「そう!マンガとかアニメとかでもあるでしょ?目からキラキラビーム出すみたいな」

「はは、名前はよく分かんねえけど、言いたいことは分かる」

「本当?そういう目を見ると、放っておけないし、守りたくなっちゃうんだよ。だから、私も、うっかり触っちゃった」

「うっかり、って」

「だって……」

「言いたいことは分かるけどさ、そうしてくれたおかげで、俺たちはここにいるんだから、結果、よかったんじゃねえの?」

「……うん」

「後悔してる?」

「……ううん、してない」

「あの時、俺を拾ってくれて、ありがとう」

「……なんか、犬みたいな言い方」

「俺の瞳は子犬と一緒なんだろ?」

「ははは、そうだった!」



~♪
君の揺れる瞳は まるで 1粒のビー玉
右手を伸ばし 私 輝きに触れた
守りたい 一緒にいたい 涙が零れてく

☆☆☆