別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

「ラミッタ、手伝ってくれ」

「なっ、本気なの宿敵!?」

「仕方ないだろう。ヴィシソワさんも何か考えがあるんだ」

 ヴィシソワに言われたことも理由の一つだが、空を飛べるチャンスだとマルクエンはワクワクしていた。

 うぅーっと下を向いて唸ってからラミッタはマルクエンが鎧を脱ぐのを手伝う。

 すっかり身軽になったマルクエンを前にラミッタは覚悟を決めた。

「それじゃ、飛んでみましょうか」

 互いにドキドキとしている二人。ラミッタは意を決してマルクエンに抱きついた。

 ラミッタの柔らかい色々なものを体中で感じるマルクエン。

「飛べ!! 飛びなさい!! 飛べよおおおおおお!!!」

 まるで時間さえも飛び越しそうな叫び声を上げてラミッタは力を入れる。

 同時にマルクエンもきつく抱きしめられた。

 すると、どうだろう。マルクエンの身は2メートルほど浮かび上がる。

「おっ、おぉ!!」

 だが、十秒も持たずに地面へと着陸した。

「だ、だめだわ……」

「ふむ、マルクエンさんも飛ばせれば何かに使えるかと思いましたが。仕方が無い。訓練を始めますよ」

 色々とあり、顔が真っ赤なラミッタだったが、呼吸を整えて落ち着く。

「今日は一人ずつ戦います。そして、それを見て、自分には何が出来るか考えるのです」

「私から行きます」

 マルクエンは言って一歩前に出る。

「良いでしょう。掛かってきなさい」

 剣を引き抜いてマルクエンは更に半歩踏み出す。そこから目を閉じて青いオーラを身に纏い、一気に駆け出した。

 ヴィシソワは槍と盾を持ち、それを迎え撃つ。

 直線で距離を詰め、斬りかかるマルクエン。ヴィシソワが盾で受け止めると、凄まじい音が鳴り響いた。

 これが一般の兵士ならば盾ごと全身の骨が粉々になっているだろうが、ヴィシソワの魔力で強化された盾は砕けない。

(強い……。私と戦った時よりもずっと……)

 ラミッタは素直な感想を思い浮かべる。

 斬り合いを繰り広げる二人。

 途中でヴィシソワが距離を取ると、逃すかとばかりに光の刃を撃ち出す。

 一進一退の攻防をしているように見えたが、ヴィシソワはまだまだ余裕がありそうだった。

「そろそろ良いでしょう。交代です」

 そう告げると、マルクエンは一礼して下がる。

「それじゃ見てなさい宿敵!」

 ラミッタが両手を広げて一回転すると、無数の火の玉が辺りに現れた。

 それらをヴィシソワに向かって飛ばしながら、低空飛行で距離を詰める。

(多分、昔の私だったら今のラミッタには負けていたな)

 マルクエンは空を飛べること以外にも、魔法が更に進化しているラミッタに感心した。

 ラミッタは自由に空を飛び、あらゆる方向からヴィシソワに斬りかかる。

 その合間にも魔法の炎、雷を飛ばし、翻弄しようとした。

「ふむ、良いでしょう」

 ヴィシソワの声で攻撃を止めるラミッタ。

「それでは、お互いに戦いを見て良かった点と改善点を上げてみましょうか」

 まずはマルクエンが話し出す。

「そうですね……。ラミッタは空を飛べるようになり、機動力が上がったのはもちろんですが。魔法も以前より強くなっていると思います」

「ふん、当然よ!」

 宿敵からの評価に照れ隠しをしつつ、胸を張るラミッタ。

「ただ、改善点を上げるとするならば、攻撃の一打一打が軽いですね。その分手数で勝負しているのは分かるのですが」

 痛い所を疲れてウッとなるラミッタ。

「宿敵は、まぁ力が強いのは分かるわ。速さも速くなっている」

「そ、そうか?」

 マルクエンは思わず照れた。

「だけど、あの光の刃を使った遠距離戦と距離の詰め方は甘いわね」

「そうだな……。魔法は使った事が無くてからっきしだ」

 二人の会話を聞き終えると、ヴィシソワが言う。

「お二人は、まさに強みも弱みも正反対。互いを師として教え合い、戦いで補い合えば良いでしょう」

「確かに……。(おっしゃ)る通りです」

 マルクエンが言うと、ヴィシソワは二人に背を向けた。

「さて、私の出番はここまでです。明日、お二人で私と戦って頂きます」

「ご指導ありがとうございました」

 頭を下げるマルクエン。ヴィシソワが部屋の奥へと消えて行き、残された二人は特訓を始める。

「さてと、どうしたものかしらね」

「私に魔法の戦い方を教えてくれないか?」

 マルクエンの申し出にラミッタは頷いた。

「えぇ、宿敵は……。魔法の出し方はまだまだだけど、魔法を使った戦い方はそれなりね」

 元々戦いのセンスがあるマルクエンだったが、戦場でラミッタ以外にも魔法兵や魔剣士と戦っていたので、彼等の戦い方を真似てみたのだ。

「魔法を撃って同時に自分も距離を詰めるって基本の戦いは出来ているわ。ただ、出すタイミングや魔力の込めすぎが悪いところね」

「タイミングと、魔力の込め過ぎ……か?」

「えぇ、常に最大出力でやろうとするから疲れるのよ」

 ラミッタは右手の指を二本立てて説明する。

「アンタが魔力を使う場面は大きく分けて二つ。身体強化の為と光の刃を飛ばす時」

 マルクエンは元から筋力があるが、戦いの際は魔力を使った身体強化で力を何十倍にもしていた。