別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 マルクエンとラミッタは重い足取りで王都へ向かう。

 王都の門では兵士や冒険者が歓声を上げていた。

 魔王が退き、魔物も逃げ出して行ったからだ。

「勇者様ー!!!」

「流石は勇者様だ!!!」

 ラミッタは無理して慣れない笑顔を作る。

「ほら、宿敵。笑顔よ」

「あ、あぁ……」

 動揺を悟られては士気に影響してしまう。

 今は、勇者が魔王を追い返したという事実を守らねばならない。

 人々の波が割れるようにして、二人を囲んで出迎えた。

 マルクエンは声を張って言う。

「皆さん!!! 今の者は古の魔王『ロレイユ』でした!!! ですが、我々で退けました!!! 一度城に戻り、追撃します!!!」

 魔王という言葉に皆、一瞬肝が冷えたが、それよりもマルクエンの退けたという力強い言葉に気持ちが持って行かれた。




「お待ちしておりました!!」

 城では近衛兵に案内され、王の間まで向かう。

 重厚な扉が開き、マルクエンとラミッタは中へと入った。

 見慣れた王の間が今は重苦しい空気で支配されている。

「シガレー。音の結界魔法を」

「はっ!!」

 軍の参謀長シガレーは音を部屋の外に漏らさないよう結界を張った。

 その瞬間、王の娘、ミヌエットが(せき)を切ったように言葉を出す。

「勇者様!! ヴィシソワは!! ヴィシソワは!!」

 マルクエンは目線を左下に向け、顔を歪ませて言った。

「……。ヴィシソワさんは……。勇敢な最期を遂げました……」

「そんな……」

 半ば覚悟していた事態が、確実な事実になり、ミヌエットはその場に崩れ落ちる。

 マルクエンはヴィシソワが最期に残した言葉を伝えた。

「ヴィシソワさんは……。ミヌエット様に『愛しています』と伝えてほしいと。……そして『一緒に居られて良かった』と言っていました」

 ミヌエットは両手両足を地面に付けて、泣く。

 マルクエンはそんな彼女と国王、国の重要人物達に前を向いて伝える。

「ヴィシソワさんが居なければ、魔王を退けることは難しかったかもしれません」

 ラミッタもマルクエンと同じく、声を張った。

「あの方のお陰で、敵の魔人を倒すことができました。そして、魔王を追い詰める足掛かりにもなりました」

 国王は目を閉じてから言葉を出す。

「ヴィシソワの存在は公にできぬが、その働き見事であった。せめて私達だけでも永遠に忘れないようにしよう」

 泣きじゃくるミヌエットを見て、国王は言う。

「ミヌエット、辛いだろう。席を外してくれ」

 そうだ、悲しみに暮れる間もなく、勇者には次の使命が残されていた。

 軍の参謀長シガレーは、一歩前へ出て話始める。

「よろしいですか。ヴィシソワ様の事、非常に残念に思います。ですが、マルクエン様、ラミッタ様、我々は魔王を討たねばなりません」

 マルクエンもラミッタも頷く。

 シガレーは続けて話す。

「魔王について、些細な事でも構いませんので、何か知り得た事はございますか?」

 マルクエンとラミッタは顔を見合わせた後、勇者ヴェガエルの記憶を見たままに話した。

 王は目を閉じ、他の者達も信じられないといった表情をしている。

 話を終え、マルクエンは最後に付け加えた。

「以上が我々が知った事です。無論、魔人と魔王の捏造である可能性もありますが……」

 王は話す。

「それが真であるならば、魔王は聖域チターへ向かったのであろうか」

 シガレーがそこで発言をした。

「恐れながら、我が王。我が軍の魔力探知では確かに強大な魔力がチターの方角へ向かったとの報告があります」

 王は何かを考えていた。ラミッタはそこで言う。

「もしも、魔王が何かをしようとしているのであれば、叩くなら今であると、私は思います。奴はまだ、本調子ではない様子でした。それならば今が好機かと」

 王はラミッタを見て話し始めた。

「勇者殿のご意見、尤もだと私も思う。各地を攻められる前に、魔王を倒す。非常に危険な頼み事ではあるが……。マルクエン殿、ラミッタ殿、頼めますかな?」

 マルクエンとラミッタは、王の前で(ひざまず)いて顔を下げる。

「かしこまりました」