別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 マルクエンとラミッタは意識が戻る。時間にして数秒の事だった。

 ロレイユは何が起きたか察したらしく、苦しみながら小声で言う。

「余計な事を……」

 ラミッタは魔王に向かって軽口を叩く。

「アンタの事情は分かったわ。同情はしないけどね」

 マルクエンも空を見上げながら言った。

「これが、古の勇者と魔王の真実か……」

 その時、ミネスがフラフラと起き上がり、最後の力を振り絞って宙に浮く。

「ロレイユ様、一旦お引きください。そして勇者の眠るチターへ……」

 ロレイユは額を手で押さえながら光線を放っていた。

「くそっ、私が……。敵前逃亡などできるか!!!」

「そこで、勇者の聖剣を……」

 そこまで言ってミネスは力なく地面へ落ちていく。

「……」

 何かを察したロレイユは踵を返し、猛スピードで飛んでいった。

「待ちなさい!!」

 ラミッタが魔法の矢を放ちながら追いかけるが、距離はどんどん引き延ばされる。

「くそっ、逃げられたわね」

 ラミッタは深追いはせず、マルクエンの元へと戻っていった。

 マルクエンは地面に倒れたヴィシソワへと駆け寄る。

「ヴィシソワさん!!」

 ヴィシソワからは光の玉が飛び、体が半透明になっていく。

 力なく微笑み、ヴィシソワはマルクエンを見た。

「私はここまでのようですね……」

「そんな!! 王都へ戻ればスフィン将軍に手当を……」

 マルクエンはヴィシソワを担ごうとするが、掴もうとした腕はすり抜けてしまう。

「そんな!!」

 ヴィシソワは荒い息をしながら、最後の頼みごとを伝える。

「マルクエンさん。ミヌエット様に、愛していますとお伝えください……」

 その言葉を聞いて、マルクエンは力強く頷いた。

「えぇ」

 戻ってきたラミッタも走って近寄るが、状況を理解し、黙ってヴィシソワの言葉を聞く。

「国王は……。魔人である私と姫であるミヌエット様が恋仲なのを良く思っていない事、存じていましたがね……」

 ヴィシソワは最後の言葉を続ける。

「それでも、私は……。一緒に居られて良かった……」

「あの人を、国を守れて死ぬならば……。本望……」

 そこまで言って、ヴィシソワの体は段々と薄くなり、消えてしまった。

 マルクエンは宙を見て、元の世界で戦死した仲間を見送る時と同じく。深く祈りを捧げた。

「ヴィシソワさん……」

「……。宿敵、王都へ戻るわよ」

「あぁ……」

 二人は一時、王都へ戻る。さっきまでの騒々しさが嘘のように静かだ。