別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 二人は斬り合い、食事を共にし、夜は寝るという生活を二週間は続けていた。

「今日はイノシシを取ってきたから豪華に焼肉だ!」

 塩を振った肉にヴェガエルはかぶりつく。

 そして、ロレイユへ何気なく尋ねる。

「そういや、アンタは俺を倒すのが目的だって言ってたけど、もし俺に勝ったらどうすんだ?」

 ロレイユは、うむと考えて答えを出す。

「また強き者を探す」

 ヴェガエルは「そっか」といった後に続ける。

「もし、俺が勝ったら。アンタには嫁になってもらう」

 ロレイユは一瞬ポカンとしたが、高笑いを始めた。

「貴様、中々面白いことを言うではないか」

「いや、アンタが俺を気に入ったように。俺もアンタを気に入ったんでな」

 ヴェガエルは肉をむさぼりながら言う。

 ロレイユは笑顔で返す。

「ならば私を屈服させてみせよ」

 ヴェガエルは残った骨を投げ捨てて立ち上がった。

「あぁ、それじゃちょっくら休んだら続きすっか」




 一カ月は経っただろうか、二人の決着は着かない。

 ロレイユは魔王であるため、傷の治りが早かったが。ヴェガエルは人間離れしているとはいえ、人間だ。徐々に疲労と傷が心身にダメージを与えている。

 ヴェガエルはロレイユと対峙しながら言う。

「そろそろ、倒さないとヤバいな。今日こそ決着を付けようじゃないか」

 ロレイユは言い返す。

「あぁ、勇者よ!」

 そんな時だった。四方から魔力の気配がする。

 ロレイユは「しまった」と思った。戦いに夢中で気付かなかった。

 強力な封印魔法が放たれ、ヴェガエルとロレイユの体はみるみるうちに結晶に覆われていく。

「くそっ、何だ!?」

 ヴェガエルは抵抗するも、あっという間に結晶に飲み込まれ、動けなくなる。

「まさか、生きていたとはね」

 ヴェガエルの前に現れたのは別の勇者だ。

「安心すると良い。手柄は君のモノだ。勇者ヴェガエルはこの地で魔王を追い詰め、戦って死んだとね」

 そう言うと、決勝に覆われたヴェガエルを剣で叩きつけて粉々にする。

 ロレイユは声も出せぬまま結晶から激しい憎悪と怒りを飛ばしていた。

「そして、魔王。お前も終わりだ」

 勇者は魔王ロレイユの元へ歩き、同じように結晶を叩く。

 しかし、それは割れることはなかった。

 何度も叩いたが結果は同じだ。

「コイツ……。自分の魔力を練り込みやがったな」

 仲間が勇者に尋ねる。

「勇者様、いかがなさいましょう?」

 勇者は苦々しそうに答えた。

「放っておけ、触ると死ぬぞ。国にはどちらも始末したと報告する」

「ですが……」

 何かを言いかけた仲間を睨みつけ、勇者は黙らせる。

「封印は何百年も持つ。何百年後の勇者に任せればいい」

 そこでロレイユの意識は途絶えた。



「お二人さん?」

 ロレイユとヴェガエルの記憶を見終えたマルクエンとラミッタの脳内に声が響く。

「いやー、俺の記憶見られちゃったねぇ」

 返事は出来ない。

「この魔人、俺と魔王の結晶から記憶を再現しやがった」

「数百年後の勇者に宿題残しちまったのは申し訳ないけど、頼む。アイツを止めてやってくれ」