別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 ロレイユは思ったより大食いだった。やはり魔王だからかとヴェガエルは思う。

「よく食うなー、アンタ」

 言われ、ロレイユは不機嫌そうに言い返す。

「いちいち見るな」

 食後の赤ワインを飲みながら、遠くを見つめるロレイユ。

 ヴェガエルはロレイユを部屋まで送り、そっと尋ねた。

「人間の生活もイイもんだろ?」

 ロレイユはまたもしかめっ面で返す。

「いや、全然だな」

 ヴェガエルは「そうかい」と笑いながら部屋のドアを閉めようとする。

 その時、ロレイユに言われた。

「逃げればこの街を壊す」

 ヴェガエルはハハハと笑って言ってやった。

「逃げねーよ。そっちこそ逃げるなよ?」

 気に障ったのか、少し怒りを向けてロレイユが言葉を放つ。

「我が逃げるはずないだろう」

 ヴェガエルはあっけらかんとしてその言葉を受け流していた。

「それもそうだな、おやすみ」



 次の日、ロレイユは目覚めて上半身を起こす。

 念のため、部屋に結界を張っておいたが、杞憂に終わったようだ。

「おーっす、起きてるかー?」

 部屋のドアを叩く音が聞こえた。騒がしい勇者だとロレイユは思う。

 ロレイユはドアを開け、目の前でヘラヘラしている勇者と共に宿屋を出た。



 一日かけて寂れた道を歩き、夜になると野営の準備をする。

 昼間は携行食を軽く食べたが、今は料理を作ることにした。

 ヴェガエルはロレイユに尋ねる。

「アンタ、料理はできるか?」

「くだらん。城では手下に作らせていたからな」 

 その返答を聞いてヴェガエルはニヤリと笑う。

「できないって訳か、しょーがねーなー。勇者お手製の料理を作ってやろう!」

 ヴェガエルは干し肉を取りだし、細かく刻んでからにんにくの芽と生姜を炒め。ジャガイモや大根といった根菜類も入れて煮た。

 十分に煮えてスープができると、フライパンに卵を落して目玉焼きを作る。

「ほい、おあがりよ!」

 ヴェガエルはスープと目玉焼き、パンをロレイユへ渡す。

「ふんっ、食ってやろう」

 ロレイユは味の感想も無いままに食事をする。



 深夜、ふと目覚めたヴェガエルは天を見上げていた。

 星が綺麗で、思わず見とれている。

「なんだ、貴様起きたのか」

 ロレイユもヴェガエルの気配で目を覚ます。

「おぉ、おはよう魔王様」

 ケラケラとヴェガエルは笑い、ロレイユは不機嫌そうにしていた。

「紅茶を淹れたんだ。飲むかい?」

「気が利くな」

 ロレイユはヴェガエルに近付いて隣に座る。

 コップに紅茶を注いでヴェガエルは尋ねた。

「お砂糖はどれほど?」

「たくさん入れろ」

「はいはい、魔王様」



 二人は旅を続け、マーピュにまで着いた。険しい山が続く陸の孤島だ。

 魔物達は魔王の気配に怖気づいたのか、不気味なほど静かであったが。

 ヴェガエルは荷物を下ろして伸びをする。

「よし、それじゃ」

 ヴェガエルは荷物を下ろして伸びをした。

「殺し合おうか」

 剣を引き抜いてロレイユと対峙する。

 待ちわびたかのように、ロレイユも右腕を振り、魔法の剣を具現化させた。

 二人は弾けたようにぶつかり合い、剣同士の合わさる衝撃が辺りに響き渡る。

 夜までその戦いは続き、そこでヴェガエルは言う。

「今日の所はここまでにしとかないか?」

 ロレイユは不満そうだ。

「なんだと?」

 ヴェガエルは叫んだ。

「飯も食いたいし、ションベンもしたい」

「人間とは本当に面倒な生き物だな」

 ロレイユは剣を収めた。

「完全な貴様に勝たねば意味はない。勝手にしろ」


 二人は作った食事を食べる。

 ふと、ヴェガエルはロレイユに尋ねる。

「そういや、アンタはなんで世界制覇したいんだ?」

「世界中を我が手に収めるのが夢だからだ」

「それで、仮に納めたらどうするんだ?」

 ヴェガエルの言葉にロレイユはしばらく考えた。

「知らんな」

「目的無かったの!?」

 ヴェガエルは思わず横転しそうになる。

 ロレイユは少しだけ笑い、ヴェガエルに言った。

「今の目的は貴様を倒す事だ」

 そして、続けて語る。

「私は貴様が気に入った」

 ヴェガエルはニコニコと笑い返す。

「ははっ、そりゃどうも」

 ロレイユは見た事もない柔らかな笑顔をして言う。

「貴様は絶対に私が殺す」