別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 二人の旅路は続く。マーピュまで三日といった所だろうか。

 遠くに街が見えてきた。ヴェガエルはそこでロレイユに言う。

「魔王さんよ、アンタの綺麗な服は目立つ。先に街に行って服を買ってくるよ」

 ロレイユは不服そうに言葉を返す。

「面倒だな、襲って焼き討ちしてしまえば良いだろう?」

 ヴェガエルは呆れた顔をしていた。

「あの、俺って一応勇者なんだけど?」

 そこで、ロレイユが疑問を口にする。

「何故、街など行く必要があるのだ?」

 靴ひもを縛り直しながらヴェガエルは答えた。

「そりゃ、マーピュでの生活雑貨なり、飯なり買わないと」

 その言葉を聞いて、ロレイユは訝しげだ。

「貴様と斬り合うだけだろ、そんな物必要か?」

 ヴェガエルはにひひと笑って返す。

「一瞬で終わったら楽しめないだろ?」

 ロレイユはその場に魔法で椅子を出し、座った。

「待っていてやる。早く行ってこい」

「はいよー、魔王様」





 しばらくすると、ヴェガエルが戻ってきた。

「いやー、お待たせ。こんな地味な服で悪いけどね」

 白いフード付きのローブを渡され、案の定ロレイユは不満そうだ。

「あぁ、貴様はセンスが無いな」

 ヴェガエルは頭を掻きながら申し訳なさそうにした。

「まぁ、目立たないことが大事だからな。それと、あんたの顔のタトゥーって消せるか?」

 ロレイユは顔に稲妻模様の様なタトゥーがある。

「あぁ、魔力を込めなければ消える」

 それを聞いてヴェガエルは安堵した。

「良かったー。やっぱそうか! 目立つからさ、それじゃ街へ行こうぜ!」




 ヴェガエルとロレイユは街の入り口まで歩いてきた。

 早速ヴェガエルは尋ねる。

「それじゃ、何か欲しいものや食べたいものはあるか?」

 ロレイユは真顔でこう答えた。

「欲しいものはこの世の全てだ」

 ヴェガエルは顔が引きつる。

「あ、あぁ、そういう冗談はやめてね?」

 魔王と勇者、二人が街を歩いているなど、誰も夢にも思わないだろう。

「アンタ、甘いモンは好きか?」

 ヴェガエルが尋ねると、ロレイユは「くだらん」とそっぽを向く。

「それじゃ要らないって事で。飴ちゃん一つ買ってきますわ」

「なっ、別に要らんとは言っていないだろう!!」

 言ってくるロレイユを見てヴェガエルは大笑いする。

「わかったわかった。買ってくるよ」

 ヴェガエルはハート形の飴を二つ買ってきた。

「それじゃ、その辺に座って食べましょうや」

 空いているベンチを指さしてヴェガエルは言う。ロレイユも無言のまま歩いて座る。

「それじゃー、イタダキマス!」

 ロレイユも飴を一口舐めると、優しい甘みが口に広がった。

 ヴェガエルはロレイユに尋ねる。

「美味いか?」

 ロレイユは短く答えた。

「普通だな」