別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 いつまで気を失っていただろう。ヴェガエルはうーんと目を覚ました。

 全身が痛み、頭もくらくらする。

「やっと起きたか勇者よ」

 ロレイユは冷たく言い放つが、ヴェガエルは瓦礫から避けられた広い場所で横になっていた。

「アンタが助けてくれたのか?」

 ヴェガエルの質問に、ロレイユは顔色一つ変えない。

「貴様ほどの者と戦える機会はそうそう無いからな。こんなつまらん事で終わってしまうには惜しい」

 ヴェガエルはハハッと笑って崩れ去った天井を見る。

「そうかい……。それじゃ希望に答えなくちゃな!!!」

 よろよろと立ち上がるヴェガエルを見て、ロレイユは言う。

「本調子でない貴様と戦っても何にもならない。出直してこい」

 そう告げられるも、ヴェガエルは剣を抜く。

「悪いが、俺は国の鉄砲玉なんでな。帰る場所なんか無いんだよ」

 ロレイユにはその言葉の意味が分からなかった。

「どういう事だ?」

 ヴェガエルはニヤリと笑う。

「俺の身の上話聞いてくれちゃう?」

 ロレイユは無表情のまま、言った。

「勝手にしろ」

 そこで、ヴェガエルの話が始まる。

「まぁ、身の上話って言ってもな。ただ単に、俺は人間の中では強すぎるらしい。それが気に食わん奴らが俺を勇者に仕立て上げ、魔王に殺させようって魂胆(こんたん)なのよ」

 ロレイユはふんっと軽く笑う。

「人間はやはり愚かだな」

 ヴェガエルもやれやれと手を上げて言った。

「まぁ、そういう事で。俺はアンタに恨みなんか無いし、ケツ引っぱたかれて戦っているわけよ」

 ロレイユはキッとヴェガエルを睨む。

「なんだ、貴様命乞いか?」

「命乞いだなんてとんでもない。こんな人生とっとと終わらせたいぜ。だが、アンタと戦うのは久しぶりに楽しくてな!」

 その言葉を聞いて、ロレイユは高笑いをする。

「ハッハッハ。そうでなくてはな!!!」

 だが、ヴェガエルは苦い顔をした。

「すまん、こんな事を言って信じて貰えるか分からんが、俺の回復を待っている暇は無いぜ。他の勇者や国の魔法使いが城を取り囲んでいるんだ」

 ロレイユはそんな事かと言い返す。

「それがなんだ? すべて蹴散らしてくれる」

「いや、相手は俺みたいに正面からって訳じゃない。結界を何重にも張ってアンタを弱らせ、そこに勇者達が束でかかって来る」

 それを聞いてロレイユは怒りをむき出しにする。

「姑息な……」

「俺はただの時間稼ぎってワケよ」

 そうヴェガエルが言った後に、目を閉じる。

「なぁ、二人で逃げ出さないか?」

 一瞬、何を言われたのか分からなかったロレイユだが、言葉の意味を理解した。

「逃げる? 逃げるだと!? 魔王の私が人間風情から逃げろと?」

「俺は国に忠誠なんて無い。アンタは何のために戦うんだ?」

 ロレイユは妖艶な笑みで返す。

「強き者と戦うためだ。戦いこそが私の生きる意味だ」

「だったら、なおさら卑怯な手で負けたらつまらなくないか?」

 ロレイユは考える。ここだとヴェガエルは思った。

「俺とアンタ、二人で逃げて、邪魔の入らない所で殺し合おうや」

「……。よかろう、貴様の口車に乗ってやる」