別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 ルサークとデルタが部屋に戻ると、スパチーはシシトの胸に頭をうずめて泣いていた。

 なんと声を掛けたものかと悩み、ルサークは彼女の名を口にする。

「スパチー……」

 デルタは、そっと近付いて、スパチーを抱きしめていた。

 より一層スパチーが泣き叫ぶ。

「うわああああああ!!!!」




 シシトが亡くなり、その知らせは連絡石を通じてクルミン家にも届いた。

 クルミン家からの回答は、至って短いものだった。

「遺体はこちらで埋葬する」と



 しばらく泣き続けたスパチーは、ルサークに尋ねた。

「なんで、なんでシシト死んじゃったんだ!?」

「病気のせいだ。シシト様は精一杯病気と闘ったんだ」

 自分自身にも言い聞かせるように、ルサークは言った。

「病気なんて私がぶっ殺してやるぞ!!!」

 泣き腫らした目でスパチーが言う。ルサークはスパチーを見据えて答えた。

「お前がどれだけ強くても、病気や……、死ぬ事はどうしようもできないんだ」

 スパチーは泣くのを我慢しながらその言葉を聞く。

「いいか、痛いのも死ぬのも、とっても悲しい事なんだ」

 ルサークは続けて言う。

「だけど、シシト様もきっと……。お前にずっと泣いていてほしくは無いんだ」

 その言葉にスパチーは不思議そうな顔をする。

「シシトがか?」

 そして、ベッドにまるで眠る様に横たわるシシトをの顔を見た。

「あぁ、人が死んだらどうなるか……。俺にはわからない、わからないけど……。きっとな」

 スパチーはもう一度シシトを見つめ直して言う。

「シシトぉ……」

 三人は、しばらくシシトの死を悲しんでずっと部屋に居た。

 スパチーは泣き疲れて、眠ってしまったようだ。

 その時、不思議な夢を見た。

 目の前にシシトが立っていたのだ。

「シシト!!」

 何故か自分の体は動かない。シシトはこちらに手を伸ばし、頭を撫でてくれた。

 そして、眩しい光の元へ歩いていく。

「シシト!! 行くな!! シシト!!」





 目が覚めると、使用人部屋のベッドでスパチーは仰向けになっていた。

 抑えていた悲しい感情が溢れ、また涙を流すスパチー。

 そんなスパチーに気付き、デルタが声をかけた。

「起きたのね、スパチー」

 スパチーは小さく「うん」と返す。

「お腹空いたでしょ? 食べる?」

 具材を挟んだパンをデルタが渡した。

「ううん、いらない……」

 あの食い意地が張ったスパチーが食事を要らないと言うなんて。デルタはスパチーが相当堪えているみたいだと察する。

「でも、食べなきゃダメよ」

 デルタはテーブルに食事を置くと、ベッドに腰かけたスパチーの隣に座った。

「スパチー、アンタ言ってたよね? シシト様にも食べろって」

「うん、でも……」

「シシト様が心配するわよ?」

 デルタに言われ、スパチーはまた泣きそうなる。

「でも、シシトはもう居ないぞ!!」

 そんなスパチーに、デルタは宙を見つめて言った。

「きっと、きっとだけどね。シシト様は死んじゃったけどね、それでも、スパチーを見守ってくれていると思うの」

「シシトがか!?」

 驚くスパチーにデルタは話し続ける。

「人は、忘れられたときに居なくなっちゃうって言う人もいるの。スパチーがシシト様を忘れない限り、きっとシシト様はスパチーの中で生き続けるわ」

 スパチーは黙ってデルタの言葉を聞いていた。

「それじゃ、シシトは……」

「スパチーにできるのは、シシト様を忘れないこと。そして、泣いて心配させない事よ」

 ずっと黙るスパチーだったが、顔を上げてデルタに言った。

「わかった。わかったぞ!」