別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 部屋を飛び出したルサークの前にはヴィシソワが立っていた。

「ヴィ、ヴィシソワ様!! シシト様が!! シシト様が!!」

「落ち着きなさい、ルサークさん」

 そう言ってヴィシソワは部屋の中へ入る。

「ヴィシソワ!! シシトが変だぞ!!」

 スパチーはヴィシソワを見て叫ぶ。

 ヴィシソワはシシトの元へ歩き、脈と瞳孔を確認し、至って冷静に告げる。

「えぇ、シシト様は亡くなったようですね」

 事実を受け止めきれないスパチー。

「ど、どういうことだ!!」

 そこに、冷酷にヴィシソワは言った。

「死んだという事ですよ。もうシシト様は死にました」

 スパチーはうろたえる。

「う、嘘だ!! シシトどこも怪我していない!!」

 ヴィシソワは、なお冷たく言い続ける。

「死ぬんです。人間は怪我じゃなくても病気でも死にます」

 スパチーは涙を目に貯めながら言う。

「信じないぞ! シシトは寝ただけだ! 死んでない!!!」

 ヴィシソワはため息を一つ。

「現実を受け入れなさい。シシト様は死にました」

「嘘を言うな!!!」

「嘘ではありません」

 スパチーは膝から崩れ落ちて、床を叩き続ける。

「嘘だ!、嘘だ!! シシトは!! シシトは!!!」

 ヴィシソワはそんなスパチーを見下ろしながら言った。

「いいですか? これが死というものです。悲しくて辛くて寂しい。これが死です」

 スパチーは大声で泣き始める。

「命は尊い、儚い。その事をよく知りなさい」

 ヴィシソワは、背を向けて部屋から出ていった。

 思わずルサークとデルタはその背中を追いかける。

 追い付いたルサークは気が付いたら大声を上げていた。

「ヴィシソワ様!! あんた……、もしかしてこうなる事を……」

「えぇ、スパチーさんに命の尊さを学ばせるためです」

 ヴィシソワの言葉に、ふつふつと怒りが湧き始める。

「そ、そのためにシシト様の死を利用したってわけか!?」

「私は利用できることは、なんでも利用しますよ」

 思わず拳をギュッと握りしめるルサークだったが、手を解いた。

「確かに、アンタにシシト様は利用されたかもしれない……」

 ルサークは続ける。

「だが、シシト様は……!! 俺の勝手な考えだが、最期にスパチーと会えて幸せだったと思う……」

 ヴィシソワは短く答えた。

「そうですか」

 そう短く言って、ヴィシソワはまた歩き始める。

 デルタは声を殺して泣くルサークの肩を優しく抱きしめていた。