別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 宿の外で、互いに大きく手を振って別れた。

 マルクエンとラミッタは城まで歩く。

 その道中、ラミッタはマルクエンに尋ねる。

「どうだった、久しぶりに会えて」

「あぁ、シヘンさんもすっかり元通りになっていて、本当に良かった」

「そう」

 ラミッタは微笑んで短く言った。

 城に着くと、これまた見覚えのある顔が待っていた。

「マルクエン様!!」

「あれ? ルサークさん!?」

 元偽物勇者のルサークだ。

「お久しぶりです」

 ヴィシソワに連れていかれ、その後を知らなかったマルクエンは安堵した。

「ご無事で良かった……」

「ははっ、おかげさまで……」

 挨拶もそこそこに、ルサークは本題へ入る。

「マルクエン様、ラミッタ様、お願いがあります。会って頂きたい方がいるんですがね。あぁ、もちろんヴィシソワ様には許可を頂いております!」

 ラミッタは首を傾げて聞き返す。

「会って頂きたい……、と言うと?」

「とある貴族の方……。小さい子なんですがね、勇者様に憧れているので会わせてやりたいんです!」

 マルクエンはラミッタの顔を見てから、返事をする。

「えぇ、大丈夫です」





「シシト! けん玉で遊ぶぞ!」

 今日もスパチーはシシトと遊んでいた。

「スパチーちゃん、だいぶ上手くなったね」

 シシトは笑顔でけん玉に興ずるスパチーを見つめる。

「私は天才だからな!!」

 そんな時、部屋のノックに気付いてデルタが扉へ向かう。

「デルタ、お連れしたぞ」

 扉越しに聞こえるルサークの声。デルタは扉を開けた。

「お待ちしておりました、マルクエン様、ラミッタ様」

 深々とお辞儀をするデルタ。

 シシトはデルタの口から勇者の名が出て、聞き間違いかと理解が追い付かなかった。

「あー!!! ゆーしゃ!!!」

 スパチーが大きな声を上げて、まさかとシシトは目を丸くする。

 金ぴか鎧の大男と、長い茶髪のヘアバンドをした女性。

 その二人が歩いてこちらへやって来る。

 金ぴか鎧の大男は、(ひざまず)いてシシトに言う。

「お初にお目にかかります。シシト・クルミン様。勇者マルクエン・クライスでございます」

 同じように茶髪の女性も跪いた。

「勇者ラミッタ・ピラでございます」

「ほ、本当に……!?」

 シシトは挨拶を返す事も忘れて、目を輝かせていたが、ハッとして挨拶を返すためベッドから降りようとする。

 しかし、上手く体が動かなかった。察したマルクエンが言う。

「シシト様、ご無理をなさらず」

「申し訳ありません」

 シシトは情けなさを感じていたが、憧れの勇者が目の前にいる喜びが勝った。

 何を言おうかと考えるシシトだったが、代わりにスパチーが声を上げる。

「ゆーしゃ!! 何しに来たんだ!?」

 ラミッタは面倒くさそうに答える。

「何しにって、シシト様にご挨拶をしに来たのよ」

「す、スパチーちゃん。勇者様を知っているの!?」

 シシトの言葉に素直に答えようとするスパチーの口をルサークが塞ぐ。

「私達が冒険者をやっていた頃、マルクエン様とラミッタ様に助けられたことがあったんですわ」

「なるほど、凄いです! 勇者様とお知り合いだなんて!」

 本当は勇者の名を騙っていた過去があるので、ルサークとデルタは思わず苦笑いをする。

「ゆ、勇者様!! あの、握手して……、あ、いや、すみません……なんでもな……」

 シシトは舞い上がって握手を求めたが、自分の病気が移ったらと冷静に思いとどまり、言葉を仕舞う。

 だが、マルクエンは屈んでシシトの手を取り、しっかりと握ってくれた。