別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 スフィンはシオに尋ねる。

「気分はどうだ?」

 頭を押さえながらシオは答えた。

「痛みは無いけど、気分が……」

 スフィンはシオの貧血を察して言ってやる。

「そうか。血が足りていないんだろう。心配するな。飯を食えば治る」

 マルクエンもスフィンに礼を言う。

「私からも、ありがとうございました」

 そこで、マルクエンはあっと思い出した。

「そうだ! スフィン将軍! シヘンさんは!? シヘンさんはどうなった!?」

「あぁ、治してやったし無事だ」

 その言葉にマルクエンは胸を撫でおろす。

「良かった……」

 マッサがそんなマルクエンに言ってやる。

「まだロットオセの街の人達は帰ってないから、この宿泊場へ行けば会えるかもしれませんぜ?」

 簡易的な地図が描かれた一枚のメモを受け取り、マルクエンは顔が明るくなった。

「そうでしたか! ラミッタと共に訪ねてみます」

 スフィンはあからさまに不機嫌な顔をしていたが。

「ラミッタか。アイツも私に報告へ来ないなんて良い身分になったものだな」

 マルクエンは苦笑いをしながら頭を掻く。

「ラミッタには先にこの件の報告に行ってもらってまして……」

 スフィンはふんっと踵を返して部屋から出ようとする。

「まぁいい。私も忙しいのでここまでだ」

 マッサもその後を付いて行く。

「あ、待ってくださいよー。それじゃマルクエンさんまた!」

「えぇ、またゆっくりとお話ししましょう」

 スフィン将軍が出て行って、5分ほど経った時。ラミッタが部屋へ入ってきた。

「ラミッタ!」

 その言葉にまた部屋は騒がしくなる。

 今、話題の勇者が二人も揃ったのだ。無理もない。

「スフィン将軍とすれ違わなかったか?」

「いいえ、ちょうど入れ違いになったのかしら」

「そうか」

 マルクエンの言葉にラミッタは「それよりも」と言って続ける。

「簡単な報告はしてきたわ。シオ、あんたにも証人として城に来てもらうわよ」

「し、城ぉ!?」

 明らかに驚き怯えるシオ。

「大ごとになってすまないが、シオ。悪い目には遭わせない」

「あーもうわかった! わかったよ!」

 覚悟を決めたシオにマルクエンは話しかけた。

「シオ、歩けそうか?」

「だ、大丈夫だ!!」

 ベッドから降り、地面に足を付けるが、まだ変な感覚は残っていた。

「無理をするな」

「む、無理なんかしていねぇ!」

 マルクエンはまたシオをお姫様抱っこしてしまう。

「や、やめろ! 恥ずい!!」

 マルクエンはシオを抱きかかえたまま城までの道を歩く。

 もうシオは抵抗する気がなくなっていた。

「これが城か……」

 城へ辿り着くと、シオは初めて近くで見る城に圧倒されていた。

 マルクエン達に気付いた衛兵が駆け足でこちらへ向かってくる。

「勇者様! お待ちしておりました!」

「えぇ、ご苦労様です」

 城の会議室へと案内された。

「勇者様、お待ちしておりました」

 国のお偉いさん方が待っており、シオは緊張で身を縮こませる。

「大丈夫だ、シオ」

 マルクエンはシオを椅子に座らせ、隣に座る。

「お久しぶりでございます。軍の参謀長、シガレーでございます」

 そう言えばそんな奴も居たなとラミッタは思っていた。

「私はこの国の治安維持部隊の長官をしております。ターバと申します」

 ターバと名乗る男は、高齢で厳しそうな印象を受けた。

 そんな彼にマルクエンとラミッタも立ち上がり、礼を返す。

 その後、バツの悪そうな顔でターバが言う。

「さて、勇者様。この度は治安維持部隊がご迷惑をお掛けし、なんとお詫びすればよいやら……」

「いえ、大丈夫です」

 マルクエンがすました顔で言うと、それが圧に感じたのか、ターバは気まずそうに続けた。

「エナハの街での治安維持部隊の腐敗を知らず、まったくお恥ずかしいばかりです」

 話が進まなそうなので、シガレーが割って入る。

「失礼、ラミッタ様のご報告では、魔人に暴走させられた少女が治安維持部隊長の首を刎ね、連れ去られたと聞きましたが」

 マルクエンは頷いて話す。

「えぇ、その少女は治安維持部隊に利用されていましたが、証人として連れてくる途中で魔人『ミネス』に連れていかれました」

「魔人ミネス……。あの奇術師の恰好をしていると言われている」

 シガレーはうーむと考え込んだ。

 その間、今度は治安維持部隊長官のターバが話し出した。

「それで、そちらの少女がもう一人の証人でしょうか?」

「えぇ、エナハの街で盗賊をしていた少女です」

 大人たちの視線を浴びて、シオは目を伏せた。

「この少女、シオは犯罪行為を見逃す代わりに治安維持部隊へ上納金を納めていたようです」

 ターバは頭に手を当てて唸る。

「そうでしたか……」

「彼女は証人として王都まで来ました。寛大な措置をお願いします」

 マルクエンの言葉にターバは頷いた。

「勇者様がそう仰るのでしたら……。ですが、裁判は受けて頂きます」

「さ、裁判だと!? 話が違うじゃないか!!」

 シオがマルクエンを見て叫んだ。ラミッタはそんなシオをたしなめる。

「形だけでも裁判は受けないとね。大丈夫よ、縛り首や手の切り落としにはならないわ。多分」

「た、多分って!?」

 ターバはシオに優しく話しかけた。

「シオ、でいいかな? 君には形式だけでも裁判には出てもらう。エナハ腐敗の証言と、君の罪についてね」

「しょ、証人になるのになんでだ!!」

「罪は罪、償わなければいけない。まぁそれも裁判で決まるがね」

 あからさまに怯えるシオの頭にマルクエンは手を置く。

「大丈夫だシオ、心配するな」

「こ、子ども扱いするな!!」