別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 マルクエンは突然の凶行に驚く。

「アシュ!?」

 ラミッタは走り寄り、シオの傷を確認した。命に関わるほどではなかったが、治安維持部隊長の方を見て言う。

「アンタ、何かしたわね!?」

「へへっ、ざまぁみろ!!」

「面白そうな事してるじゃん!」

 その時、空から声が響き、皆の視線がそちらへ向かった。

「お前はっ!!」

 マルクエンはそう言葉を出す。

「お久しぶりー」

 奇術師の魔人。ミネスがそこには浮かんでいた。

「ごめん、全然気付かなかったわ」

 ラミッタはマルクエンに言う。治安維持部隊長はミネスを見て驚愕していた。

「なっ、あれは魔人か!?」

「そうだよー」

 ミネスはニコニコと返事をする。

「面白い魔法使っているけどさー、私がもっとお手本見せてあげるよ」

 そう言って、赤い光線をアシュに向かって飛ばした。

 ラミッタが防ごうとするも間に合わずに終わる。

「アシュ!! 大丈夫かアシュ!?」

 マルクエンが近付くと、アシュの目は怪しく赤色に光り、ナイフでこちらを攻撃してくる。

「やめろ!! アシュ!!」

 躱し続けるも、攻撃の手は止まらず。手こずってしまう。

 いったん距離を取り、マルクエンは剣を抜いた。素手では少々厳しいからだ。

 ラミッタは宙に浮かび、ミネスに斬りかかっていた。

「おっと、危ない」

 ひらりと躱されるが、追撃をする。

「ははっ、やる様になったね」

「おかげさまでね!!」

 よく分からないが、逃げるなら今だと思った襲撃者たちはコソコソと逃げ出そうとする。

 そんな彼らへ、アシュは弾けたように走り出し、まずは治安維持部隊長の首を軽々と刎ねた。

「アシュ!! やめろ!!」

 その様子を見て男達の悲鳴が上がる。

 次々と斬りかかり、殺戮していった。

 マルクエンはアシュの前に立ちふさがり、剣を構える。

 アシュを傷つけないように、武器のナイフだけを弾き飛ばすため、前に出て一撃を加えた。

 だが、アシュはくるりと後ろに飛び上がり、距離を取られてしまう。

 そこに、ミネスが上空から急降下した。

「宿敵!! 上よ!!」

 ラミッタの声に上を見て、斬りかかるも、ミネスはマルクエンを無視し、アシュの元へ向かう。

「この子は頂いていくよ。センスがあるからね」

 ミネスはアシュを連れ去り、はるか彼方へと飛び去ってしまった。

 ラミッタは追おうとしたが、マルクエンに呼び止められる。

「待て、ラミッタ! 一人じゃ危険だ!!」

 今回は冷静に、その言葉通り追うのをやめ、地上に降りた。

「やられたわね」

 マルクエンは、ひとまずシオの応急手当をする。

「シオ、痛むが我慢してくれ」

「っつ! 痛い痛い!!」

 刺された肩に薬を塗って、包帯を巻く。シオは痛みでうずくまっていた。

「早く、王都へ行くべきだな」

「えぇ、そうね」

 襲撃者たちは、いつの間にか全員いなくなり、マルクエン達は撤収の準備をする。

 馬車の荷台で痛みを堪えているシオを気に掛けながら、マルクエンは馬車を走らせた。

「なぁ、勇者様よ」

 シオは突然声を出す。何かあったのかと心配しながら聞き返すマルクエン。

「どうした?」

「あの、アシュって奴はどうなっちまうんだ?」

「そうだな、わざわざ連れ去るって事は、すぐにどうこうしようってわけじゃないだろう」

「そうか……」

 シオなりにアシュの事を心配している事が分かり、マルクエンは微笑む。

 携帯食料を食べながら、急いで王都に向かうマルクエンとラミッタ。

 道中は妨害もなく、丸一日かけ、襲撃を受けた次の夜には王都へ着いた。

 衛兵と話し、優先的に王都へ入れてもらう。

「ここが王都か……」

 シオは傷を抑えながらも、初めての王都に目を丸くしていた。

「まずはスフィン将軍のもとへ行きましょう」

「シオ、私が担ごうか?」

「なっ、大丈夫だ! 一人で歩ける!」

 そう啖呵を切ったシオだったが、痛みと失血でフラフラしていた。

 見かねたマルクエンはシオをお姫様抱っこしてやる。

「恥ずい!!」

「まぁまぁ、無理はするな」

 そんな二人を見てラミッタは片目を閉じてため息を吐く。

「宿敵、アンタはスフィン将軍のもとへ行きなさい。私は城で報告してくるわ」

「あぁ、頼んだ」




 スフィン将軍が現在いる病院は衛兵に聞いて分かっていた。

 マルクエンはそこまで向かい、まずはスフィン将軍を訪ねる。

「すみません、怪我人がいまして。スフィンしょうぐ……。聖女スフィン様はいますか?」

「怪我人の方ですか! ご案内します!」

 とある一室に案内されたマルクエンは懐かしい顔を見る。

「あ、マッサさん!!」

「おっ、マルクエンさん!」

 マルクエンという名を聞いて、病室中の視線が集まる。

 案内してくれた看護師も驚いて声が裏返った。

「なっ、勇者様ですか!?」

「え? えぇ、まぁ……」

 その会話を聞いて、カーテンの仕切りの向こうから人が現れた。

「なんだ、イーヌの騎士か」

「スフィン将軍!」

 未だスフィン将軍はマルクエンを訝しげな目で見てくる。

「怪我人です。治療をお願いします」

「あぁ、ちょうど手が空いたところだ。そこに寝かせろ」

 空いているベッドにシオを寝かせる。シオは緊張でドキドキとしていた。

「そう緊張するな。大丈夫だ」

 スフィンは柔らかな笑顔をシオに向け、マッサはシオの包帯に手を伸ばす。

「っつ!!」

 血で乾いた包帯がべりべり剥がれる痛み、まだ治っていない傷の痛み、それにシオは小さく声を上げた。

「大丈夫だ、すぐに治る」

 スフィンが手から光を出し、傷口に当てる。

 みるみるうちに傷が塞がっていき、跡形もなく綺麗に治った。

「傷が……」

 痛みが完全に消え、信じられない奇跡にシオは上半身を起こして傷があった場所を触る。

「あの、聖女様、ありがとうございました」

 頭を下げるシオにスフィンは優しい笑顔を向けた。