別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 ラミッタとシオ、アシュはテントで寝ることになった。マルクエンは荷物番も兼ねて馬車で寝る。

「それじゃおやすみ」

 マルクエンは馬車の荷台に乗り込み、ごろんと寝る。

 シオはテントにこそ入ったが、まだ不安があった。

「おい、お前。本当に私のこともう狙ってないよな?」

 アシュにシオは尋ねる。

「もう狙う意味がない」

 短い返答を貰うが、シオはまだ信じ切れていないようだ。

「うるさくするなら外で寝かすわよ?」

 ラミッタに言われ、シオは黙って毛布にくるまる。






 ラミッタは夜、魔力の結界に反応を感じ、起きた。

「やっぱり、タダじゃ行かせてくれないみたいね」

 うーんと背伸びをし、面倒くさそうに外に出る。

「宿敵ー、襲撃よー」

 マルクエンもその声で目覚めて、これまた面倒くさそうに起きた。

「やっぱりか」

 ラミッタのマルクエンを呼ぶ声で、シオとアシュも目が覚める。

「な、なんだ!?」

 シオは起き上がると、目をこすってから、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

 アシュは言葉を発さずに静かに戦いの用意をする。

 ぞろぞろとマルクエンの馬車へ集まる女性陣。

 そこで、マルクエンが少し焦り始めた。

「すまない、ちょっとその……、問題がある」

 シオはマルクエンの言葉に身構え、聞き返す。

「問題?」

「あー、そのー、なんていうか、トイレに行きたいのでな」

 シオはずっこけた!

「と、トイレって……」

 ラミッタはため息を吐いて、手でシッシッと追い払う。

「早く行ってきなさい」

「す、スマン!」 

 なんだか気が締まらない空気だが、おかげで緊張が解けた。

 しばらくして、マルクエンが戻ってくる。

「ほら、ばっちい手を出しなさい。洗ってあげるから」

「あー、すまんすまん」

 ラミッタは水魔法でマルクエンの手を洗い流した。

「本当に大丈夫なのか? 敵が来てるんだろ!?」

 シオは騒いでいるが、他の三人は落ち着き払っている。

「大丈夫よ、ざっと五十人ぐらいだから」

「ご、ごじゅう!?」

 こっちはたったの4人。しかも自分は戦力にならないと思ったシオは顔が青くなる。

「い、いくら勇者ってたって……」

「そろそろ来るわね。アンタら戦えるの?」

 ラミッタはシオとアシュの方を見た。

「わ、私はただの盗賊だ!! 無理だ!!」

 シオは物凄い勢いで首を横に振る。

「聞いてみただけよ、アンタらは自分の身だけ守っていなさい。それからアシュ。殺しは禁止よ」

 ラミッタの言葉に、アシュは頷いた。

「それじゃ行くか」

 マルクエンはうーんと背伸びをする。

「いっちょ、やりますか」

 ラミッタも抜刀し、構えた。

 遠くから多数の明かりがこちらへ向かってきている。

 ラミッタは右手を空に向け、照明弾を打ち上げた。

 辺りが昼の様に明るくなり、視界が広がる。

 シオが目の前に居る軍勢に怯えていた。

 ラミッタは敵が死なない程度に軍勢の先頭に雷の魔法を打ち出す。

 感電し、数人地面に倒れ込む。マルクエンは、そこへ突撃をした。

 立っている相手を殴り飛ばし、蹴り飛ばし、圧倒的な力の差で戦う。

 アシュはシオの近くでナイフを握っていた。

 そこに矢が数本飛んでくるが、アシュがナイフで撃ち落とす。

「す、すげぇなお前……」

 シオは震えながらアシュに言う。

 ラミッタは水魔法で敵の妨害をし、マルクエンが一人、また一人と倒していった。

「や、やっぱ勇者相手なんざ無理だ!!」

 後ろの敵たちが動揺し、逃げ出す者も出てくる。

 逃げる者は放置し、ラミッタは倒れた数人を適当に魔法で拘束した。

 さっきまでの騒動は落ち着き、拘束された哀れな襲撃者にマルクエンは尋問を始める。

「答えろ、誰に雇われた、目的は私達の命か?」

「お、俺達は!! 治安維持部隊に脅されたんだ!!」

 あっさりと白状する男。隣の男にも尋問をした。

「お前はどうだ?」

「お、俺は……」

 口籠もる男だったが、ラミッタは見透かしていた。

「装備が整っているし、治安維持部隊でしょう?」

「っつ!!」

 ラミッタに見透かされ、何も言えなくなる男。

「アシュ!!」

 倒れていた男の一人が叫ぶ。見覚えのある顔、エナハの治安維持部隊長だ。

「戦えアシュ!! どうせ秘密がバレたらお前だって処刑だぞ!!」

 その言葉にマルクエンはズンズンと男の元へ歩き、殴りつける。

「この子を利用していたのはお前達だろっ!!」

 シオは自分達に優しかったマルクエンの激高する姿を見て、身が震えた。

「仕方がねぇ、暴れやがれ!!」

 治安維持部隊長が魔力を込め、何かの魔法を発動させる。

 その瞬間、アシュは首をカクンとさせ、前のめりに立つ。

 シオは急におかしな姿勢を取るアシュに声を掛ける。

「お、おい。どうし……」

 次の瞬間、アシュはナイフをシオ目掛けて突き立てた。

 とっさに避けるも、右肩にナイフを刺されてしまう。

「あっ、がっ!!」

 シオは鮮血が流れる肩を押さえる。