別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

 金髪少女を抱え上げ、トイレに座らせてやるラミッタ。

「アンタ、助けてやるから変な気は起こすんじゃないわよ?」

 拘束を少し緩め、反対方向を向くラミッタ。



 一方で、マルクエンはシオと話を始めた。

「一時的に、キミには王都まで同行してもらう」

「け、けどよ! 私がそこでエナハの治安維持部隊の事を話したらどーなんだ? 捕まって手を……」

 怯えるシオに優しくマルクエンは語りかける。

「大丈夫だ、私が悪いようにはさせない」

 マルクエンの言葉にシオは顔が赤くなったが、気づかれないようそっぽを向く。

 そんな時、ラミッタが金髪少女を連れてやって来た。

「おまたせ」

 拘束魔法をかけられているので、椅子に座らされ、動けない金髪少女にマルクエンはかがんで話しかける。

「聞かせてほしい、キミはどうして暗殺なんかを?」

「……」

 答えはなかった。

 だが、マルクエンは待つ。

 しばらくして、少女がポツリと言葉を吐く。

「それしか、それしか知らないから」

「そうか……」

 マルクエンは心を痛める。同時に、こんな少女にそんな事をさせていた者に怒りが湧いた。

「キミの事も私が悪いようにはさせない。一緒に王都へ来てくれ。そこで証言すればもう暗殺なんてしなくて良くなる」

 だが、少女は目を伏せる。

「アンタほどじゃないけど」

 突然ラミッタが代わりに話し始めた。

「アンタほど大変じゃなかったかもしれないけど、私も戦って奪う事しか生きる道がわからなかった時があるわ」

 金髪少女はラミッタを見る。

「でも、変わろうと思えば、きっと自分がしたくない事をしなくて済む。やりたいように生きていける……。と、私は思うわ」

 その言葉に少女はうなずいた。

 マルクエンはラミッタを見て目で合図する。

 ラミッタは拘束魔法を解き、少女は自由になった。

「私はマルクエン・クライス。キミの名は?」

「アシュ」

 金髪少女、アシュは短くそう答えた。

「そうか、アシュ。それじゃ行こうか」

 地下牢を抜け、マルクエン達は清々しい太陽の光を浴びる。

 シオもアシュも、その眩しさに目がくらんだが、外へ歩き始めた。

 マルクエン達は王都への道を馬車で駆ける。三日もあれば着くだろう。

 馬車を運転しながらマルクエンは振り返り、荷台の少女たちに声を掛ける。

「大丈夫かい? 酔ってないか?」

 その言葉に、シオは答えた。

「平気だよ」

「そうか、アシュ。キミは?」

 会話のきっかけを作ろうと、アシュにも声を掛けてみる。

「平気」

 短く返されるだけだった。

 馬車を軽くする為、ラミッタは宙を浮いて移動している。

 そんなラミッタをシオは見つめていた。

「本当に人が空を飛べるんだな……」

 夕暮れになるまで馬車を走らせていたが、シオとアシュの間に会話は無く、気まずさを感じたシオは寝ているふりをしていた。




「シオ、起きてくれ」

「ん? あ、あぁ……」

 シオは寝たふりをするつもりが、うっかり寝てしまっていた。

 馬車から降りるとすっかり辺りは暗くなりかけている。

 マルクエンはテントの準備をして、ラミッタは料理を始めていた。

「あ、あのさー。何か私もやろうか?」

 シオが何気なく言うと、マルクエンは驚いた顔をし、にっこりと笑う。

「そうか、ありがとう。それじゃテントの端を支えていてくれ」

 言われた通りに動くシオ。

 アシュがボーっとしているとラミッタが声を掛けた。

「アンタも暇だったら何か手伝いなさい」

 アシュは抑揚のない声で答える。

「何をすればいい?」

「料理はできる?」

 その問いかけに首を横に振った。

「しらない」

「そう、でもナイフを使えるなら野菜ぐらいは切れるでしょ?」

「やってみる」

 しばらくして、テントが組みあがると同時に夕飯もできた。

 シオはスープやパン、焼いた肉を見てよだれが垂れそうになる。

「おぉ、美味そうなメシだ!」

 その言葉に対し、ラミッタがニヤッと笑って言った。

「美味そうじゃない、美味いわよ」

「そうだな。それじゃ食べるとするか」

 シオは取り分けられたスープの器を手に持つ。アシュも無言で受け取っていた。

「それじゃイタダキマス!」

 マルクエンが食事の挨拶をしたのを見て、シオとアシュも食べ始める。

「おぉ、うめぇ!!」

 シオはいつも自分がかじっているパンよりも柔らかなパンを食べ、スープを飲んだ。

 言葉を発せずに食べるアシュを見て、マルクエンは聞く。

「アシュ。美味しいかい?」

「うん」

 短く答えるだけだったが、それは本心の様でマルクエンは安心した。