別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが@完結

 シシトが笑顔を取り戻し、しばらく経った頃。部屋のドアをノックされた。

「聖女様がいらっしゃいました。一緒にお迎えをお願いします」

 メイドの言葉に、来たかとルサークとデルタは振り返る。

 ルサークは軽く会釈をしてから部屋を出た。

「それでは、一旦失礼しますシシト様」



 城の入り口には長い金髪の美女が立っていた。

 上等そうなローブに身を包み、神々しさすら感じる。

「スフィンだ。よろしく頼む」

「スフィン様、お待ちしておりました」

 ルサークとデルタは深々と頭を下げた。

 ボケッと立っているスパチーの頭もルサークは手で押さえつけてお辞儀させる。

「早速だが、案内してもらう前に、少し話がしたい。歩きながらで構わない」

「お話、ですか?」

 スフィンの発言に疑問符が浮かぶ一同。

「率直に言おう。貴様たちの事は『ヴィシソワ』から聞いている。ラミッタが世話になったな」

 その言葉で全てを理解したルサークとデルタ。

 周囲に聞かれては困るので、ルサークは濁して言う。

「あの、色々と申し訳ございませんでした」

「まぁ、いいだろう。あと、もちろんだが、そいつの素性も知っている」

 スパチーをチラリと見てスフィンが言うので、ルサークとデルタは「ハハハ」と苦笑いするしかできなかった。

 しばらく気まずい沈黙が続き、シシトの部屋の前まで辿り着く。

「シシトー、戻ってきたぞー!!!」

 ノックもせずにドアをバーンと開けるスパチーに、嫌な顔をせずシシトは笑顔を向けた。

「聖女様、お初にお目にかかります」

 シシトは立ち上がろうとしたが、それをスフィンは制止する。

「そのままで構いません。こちらこそ、シシト様」

 スフィンはシシトに近付き、礼をする。

「では、早速ですが、治療を開始させて頂いても?」

「えぇ、お願いします」

 スフィンは手からぼんやりとした光を出し、シシトの体、隅々までその光を当てる。

「いかがでしょうか」

 だが、シシトの顔色が良くなることも、体の苦痛が取れることもなかった。

 それを察したスフィンが言う。

「私のこの力は、あくまで怪我を治すものらしく。病気の方に何度も試しましたが、治すことはできませんでした」

「そう……。ですか……」

「どこか体の一部が悪いのでしたら、荒療治ですが、そこを切り離し再生することはできます。ですが、シシト様の場合、原因が分からないので、リスクが高すぎるのです」

 うなだれるシシト。ルサークとデルタも同じだ。

「シシト治らないのか?」

 スパチーが、珍しく心配そうな顔をしていた。

「すまない。私は、自分の無力さが腹立たしい……」

 慌ててシシトは聖女に言う。

「そんな! お忙しい中お時間を割いていただいてありがとうございます」

 スフィンは残念そうにもう一度言葉を発する。

「本当に申し訳ない」

 そんなやり取りを不思議そうにスパチーは見ていた。

「シシト治らないのか?」

 スフィンは目を伏せてそれに答える。

「すまない。私の力でではな……。だが、治らないと決まったわけじゃない」

 その言葉に、ルサークも同意した。

「あぁ、シシト様なら大丈夫だ! 絶対にな!」

 スフィンとルサークに言われ、頷いた後に頭を下げるシシト。

「ありがとうございます」

「シシト、病気を治したら手下にしてやる!」

 スパチーがとんでもない事を言うのでルサークは慌て、その口を塞いだ。

「馬鹿!! 何言ってんだ!!」

「でも、うん。病気が治ったらスパチーちゃんの手下になろうかな」

 そんな事をシシトが言うもので、ルサークは苦笑いをしていた。

「シシト様まで……」


 スフィンが部屋を出て行き、残されるルサーク達。

「シシト! 何かして遊ぼう!」

「そうだね、トランプやチェスはできる?」

「なんだそれ!?」

 ルサークとデルタは「あ、こいつできないな」とすぐに理解した。

 どうしたものかと思うシシトだったが、ふと思い出してあるものを取り出す。

「これ、知っているかな?」

 取り出したのは、先の尖ったハンマーに糸で結ばれた赤い球が付いている道具だ。

「なんだそれ? 武器か!?」

「違うよ」

 クスクスと笑ってシシトは起き上がり、ベッドの端に腰かける。

 トイレや着替えは辛うじて自力で出来るぐらいなので、ゆっくりとではあったが。

「けん玉っていうおもちゃなんだ」

 そう言ってシシトはけん玉の持ち手を握り、球を皿にかこっかこっと乗せた後、先端に乗せる。

「おー!! 何だこれ!?」

 スパチーは目を輝かせてそれを見ていた。

 思わずルサークも感心する。

「けん玉、懐かしいな。シシト様、お上手ですね」

「時間だけはあるので、これだけは」

「私もやるぞ!!」

 スパチーはシシトからけん玉を受け取って、おりゃっとメチャクチャに振り回す。

「全然だめだぞ!!!」

「スパチーちゃん。ゆっくりやるんだ。まず球を下に垂らして……」

 シシトの言う通りに球を垂らし、その後で上に引っ張り上げる。

 宙に上がった球を皿に乗せようとするが、やっぱりできないスパチー。

「難しいぞこれ!!」

「ははは、やめておく?」

「やだ!! やるぞ!!!」

 シシトの相手をしているのか、してもらっているのか、これでは全く分からなかったが、シシトは楽しそうだった。