サクッサクッと音がして、しばらく笑顔で噛み続けていたふゆ樹の顔が、突然ふにゃりと歪んだ。


「……大人な味がする。僕にはまだ早い味」


その情けない顔にたまらずクスリと笑ってから、ななはまた一つ袋からクッキーを摘み出して一口齧る。


「この舌にピリッとくる感じが、私は好き。立河くんは、舌がお子様だからこの美味しさはわからないかもね」


わざと意地悪くそう言って、残りのクッキーを口に入れて噛み締めていると、情けない顔で口の中のクッキーを飲み込んだふゆ樹が、また嬉しそうに笑った。


「確かに、僕にはまだ早いかも。お菓子はやっぱり、甘いほうが好きだし。でも、なーちゃんが好きだって言ってくれるなら、それでいい!」


はい、と残りのクッキーが入った袋を差し出されて思わず受け取ると、ふゆ樹は立ち上がって腕と体を大きく伸ばしながらあくびをする。

昔からそう、どんなに意地悪な事や突き放すような事を言っても、ふゆ樹は全く動じない。
そうだねと笑って受け止められてしまうから、それが何だかうまくやり込められたみたいで悔しい。

だからだろうか、ななのふゆ樹に対する態度は、昔から頑なになりがちだった。